第30話 “フクシア”
「よかった、ハッキリと、断る事が、出来たんだ……」
レオキヌさんの屋敷からの帰り道、俺は、安堵と喜びを感じていた。
言葉が出てこなかった時は焦ったが……そのお陰かもしれない、俺は自分の気持ちがハッキリと分かった。
俺の事を知っていたとはいえ、初対面で、俺の境遇に泣いてくれたフクシア。
きちんと、俺の為になる事を言ってくれる、レイーナ。
付与の事で分からない事があったらすぐ教えてくれる、ケスタ。
……皆、いい人だ。
ここのギルドのも、皆、付与に感謝をしてくれた。
俺はあの武器屋で、あの武器屋に恩返しがしたいんだ。
「……よし、ちょっと武器屋を見に行ってみるか」
俺は、再びギルドの人に感謝された時のような暖かい気持ちになり、何となく、武器屋に顔を出したくなってきた。
休みだけれど、ちょっと顔を出すくらい問題ないだろうと、武器屋に向かう……すると、ちょうど武器屋からフクシアが出てきていた。
「あっ、ヒイユさん。久しぶりですね。付与の噂、聞きましたよ。すっかり有名人ですね」
「ああ、久しぶり……ありがとう」
「応援してますね! それじゃあ、私は、また仕事がありますから……」
「ああ、待って、その……俺も、話を聞いたんだけど……フクシアの両親が、どんな難しい依頼でも簡単にこなせる、『伝説の魔法使い』『伝説の剣士』だって……」
俺はフクシアを引き止め、気になっている事を聞いた。フクシアが一体どんな仕事をしているかは不明だが、また何日かどこかへ行くのだろう。今のうちに聞いておきたい事を聞こうと、俺は思った。
「ああ、そうですね。そう呼ばれているみたいですね」
「それで、両親も人助けをしているとか……」
「そうですよー」
「な、なるほど……」
フクシアは、何を当たり前の事を? という様な顔をしていた。
……家族全員聖人なんだな。
もう会っている可能性もあるが、もしバティヤがフクシアと家族を見たら、眩しすぎて見れないんじゃないかと思うくらい眩しい。
後光が差しているよ。
「では、そろそろ行きますね!」
フクシアは、また馬車で仕事に行ったようだった。
……おっと、そうだ、武器屋に顔を見せようとしていたんだった。フクシアのあまりの眩しさに、目的を忘れる所だった。
俺は、首をブンブンと振り、武器屋のドアを開けた。
「ああ、ヒイユ……ちょうど良かったわ」
……武器屋のドアを開けた先には、レイーナ、ケスタ……そして、初めて見る、長い黒髪の、幼い女の子が、こちらを見ていた。
俺はその瞬間全てを察した。
“フクシア”……か……。




