第3話 聖人
「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」
家に着くと、フクシアは一旦、一人で家に入っていった。
……だがその後俺は冷静になり、フクシアが信じてくれたとして、流石に家族は、疑うんじゃないかと思い始めた。
ギルドから離れたくて必死だったが、やはりここはやっていないという態度を……。
「両親に聞いてみたんですけど、部屋が空いているから住んでも大丈夫だそうです」
「ええー!?」
予想外の言葉に、思わず大袈裟な反応をしてしまった。
「ちょ、ちょっと……え、す、住んでも大丈夫!?」
「ああはい……あ、あれっ、もしかして、家に来るって……一旦って意味でした!?」
「ああ、うん……」
「すすす、すみません!! あっ、ああそうですよね、良く考えたらおかしいですよね、いきなり家に行くのはあれだって言っていたのに、ギルドに行きたくないってだけで、住む……なんて言うわけが無いですよね! 本当にごめんなさい!」
フクシアは謝りながら家に戻ろうとした。
おそらく両親にもう一度断りを入れるつもりだろう。
「あ、ちょ、ちょっと……待って……」
俺はとっさにフクシアを引き留めた。
……明確な理由はない。だがこれで本当にいいのだろうかと思ってしまっただけだ。
もう一度冷静になろう。俺に今与えられた選択は、フクシアとフクシアの家族の優しさに甘えるか、どんな目で見られようが気にせず、自力で暮らせる所を探すか……のどちらかだ。
……正直、甘えたい。一人でいたくない。
だが、俺も、もう善意に寄り縋るだけでいい歳じゃないだろう。一応勇者パーティの人間だった身……。
社会的に見れば、自分の力で状況を何とかすべきだろう。
……ふたつの選択を半々くらい取るのであれば、自分でやってみて、ダメだったらフクシアの善意に頼るというものだが……それは普通に縋るよりダメな気がする。
保険をかけるのは、例えその後どっちの選択になっても、とってもかっこ悪い。
「うーん……うーん……」
「……あ、ヒイユさん、じゃあちょっと、私の知り合いがやっている武器屋に行きますか?」
しばらく悩んでいると、フクシアは察したのかそう提案してくれた。気を使わせてしまって非常に申し訳ない。
「はい……」
フクシアは、俺の前を歩き、ギルド関係の人物が居ないか見てくれていたようだった。
「あの……今更聞くのかって思うかもしれないけど……どうして、そんなに優しくしてくれるんだ……?」
フクシアの知り合いがいる武器屋に行く間、俺は思い切ってそう聞いてみた。
「えっ? ……困っている人が居たら、助けるのは当たり前じゃないですか?」
フクシアは、なんでそんな当たり前のことを聞くのだろうか、という様な顔をしていた。
……聖人か何かか?
変なプライドで迷っていた俺がバカみたいに見える。
そして俺は、武器屋に着くまでの間、フクシアに尊敬の視線を送っていた。
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