第23話 ギルドへの一歩
……俺は、次の日も悩んでいた。断り方は取り敢えず、「俺は今、あの武器屋で働いていたいんです! だからここでは働けません、ごめんなさい」と言う事に決めたが……。
ギルドに行くべきか……断るべきか……。
「……大丈夫か? ヒイユ……」
「あ、ケスタ……うん! 大丈夫だよ!」
……取り敢えず、仕事中に考え事ばかりしているのは良くない。と、俺は気持ちを入れ替え、付与に集中した。
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「これが……ティルムが言っていた紙か……」
休憩時間になった時に、レイーナが、依頼の紙を手渡してくれた。依頼は確かに普通の付与とあまり変わらない様子だった。……やっぱり、問題はギルドで会う、という事だけのようだった。
「……行くべきか……いや、行くべきなんだろうけど……」
……ギルド。勇者パーティに居た頃の噂は全くされていないと思われるが……単純に、苦手意識が芽生えてしまっているからか、全力で断りたい気分だ。
だが、いつかはギルドにも行かなければ、エルティアとライフィを見返す事など出来ないかもしれない。
そして、今行かなかったら、次ギルドで仕事があったとしても、どちらにせよ行けるようにはならないのでは無いだろうか。
「……よし、行こう」
俺は取り敢えず、覚悟を口に出してみたが、全く行く気にはなれなかった。
……当日は、おそらくティルムも着いてくるはず……一人ではない分、ギルドに入るのも楽になるはずだ。
「いや、行く……! ギルドに……行くんだ……」
俺は何とか行く方向で無理やり気持ちを作り、その勢いが衰えないうちにレイーナに相談し、依頼を受ける事にしたのだった。
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「あー……二日後で……そこから……いつギルドへ……」
しかし、休憩が終わった後、段々と冷静になってしまい、依頼を受けた事を若干後悔し始めた。
「いやいや、これで良かったんだ。……よし、仕事だ……」
しかし、今更後悔してももう遅い。……悪い事をしている訳では無いのだから、いい加減覚悟を決めるんだ、俺。と気合いを入れ直し、また付与に集中した。
「……き、今日は、随分とひとりごとが多いな」
あまりにも俺の情緒が不安定に見えたのか、ケスタも少し引いているような表情で、こちらを見ていた。
……ケスタのこんな表情、初めて見るな……。そんなに、俺の様子、おかしかったか……?
いやしかし、冷静に考えてみると、一人で、「ギルドへ行くのか……」とか、「いやいや頑張るんだ!」とか言っているやつがいたら、俺でもそんな反応をするかもしれない。
「ちょっと、付与に関して悩みがあっただけだけど……今解決したから大丈夫だ!」
「……そ、そう……」
俺はケスタに心配をかけないように、出来るだけ元気を出して、大丈夫そうな雰囲気を醸し出そうとしたが、逆効果だったのか、一周回って上手くいったのか、ケスタはそう呟くと、無言になってしまった。
……仕事が終わったら、誤解のないように、事情を説明しよう。俺はそう決意し、仕事を続けたのだった。




