第21話 スカウト?
あまりにも予想外だった提案に、先程の悩みも一瞬にして彼方へ飛んで行ってしまった。
「え、え!? それは、どういう……」
「……俺は、ずっと武器を作ってきた。付与も勉強してみたんだが、その辺は全く分からず、ちょっとした付与しか出来ない。だから、君のような職人に、居て欲しいと思ったんだ。ずっと魔具職人を続けるつもりなら……」
「ちょ、ちょっと待って……」
俺は一旦呼吸を整えて冷静に考えた。
ここで働かないかって事は、ここで働く事を進めているって事だよな?
……おいおい、既に働き先が決まっている俺にそんな提案をするのかよ。
「……ダメなら、すぐダメと言ってくれて構わない」
……レオキヌさんは真剣な表情でそう語った。
悩むまでもない、ダメだろう。レイーナやケスタ、フクシアの事を考えたら、ここはハッキリと断っておくしかない。
そう、ハッキリ……。
「……す、少し……考えさせてください」
「……分かった。急に……変な事を聞いてすまなかった。ちょっと焦ってしまったな。今しかないと思ってしまったんだ。……いつか、また考えを聞かせてくれ」
レオキヌさんは、答えを聞くと、笑みを浮かべて、俺を見送った。
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帰り道、俺は周りからも見えそうなくらい気持ちをモヤモヤとさせ、歩いていた。
……ハッキリと答えよう、と思っていたのだが……微妙な答えを返してしまった。
別に今すぐ働く場所を変えたい、とかは無い。いや、むしろ、俺は今、ずっとあの武器屋にいたいという気持ちの方があるぐらいだ。
それでも微妙な返事をしてしまったのは……フクシアに、家に来るか聞かれた時と同じく……。
「ああ、もう、何で俺ってこう……中途半端なんだろう……」
俺はハッキリと断れなかった事を後悔しながら、武器屋に戻ったのだった。
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「スカウトされたんだってー?」
武器屋に帰ると、レイーナから早速その話をされた。ずいぶん話が早いな。
「は、はい! ちょっと……断って……来ましたけど。……え、誰から聞いたんですか?」
「ああ、普通に、ここに来た赤髪のお客さんから聞いたわよ」
ティルム……!?
……ティルム、妙に帰るのが早いと思っていたんだが、レオキヌさんがどんな話をするのか、知っていたのだろうか。
まあ友達だもんな。相談していたりはするか……。
「それで……断って来たの?」
そんな事を考えていると、レイーナは今一番気にしている事を聞き返された。
「はい!」
「ハッキリと?」
「……」
その言葉に、思わず俺は黙ってしまった。レイーナはその俺の反応を見て、やっぱりね、といった顔をしていた。
レイーナに図星を突かれた。ハッキリと断れなかった事がバレてしまった……。
「……ま、私はどっちでも気にしないけど……相手の事は、きちんと考えなよ?」
レイーナは、俺を気遣ってくれたのか、そういった言い方で話を振り、どこかへ去っていった。やっぱりレイーナは、罰も与えるタイプの神だな。
そうだよな、断るつもりなら、断らなければ……。
「……一旦、心を落ち着けよう」
こうして俺は、元の付与の仕事に戻り、ハッキリと断る覚悟を決めようとしたのだった。




