第2章 22 ちゃっかり、うっかり
ミミックコドラ大量収穫(?)から2週間程経った。
そして、ここ2週間くらいで判明した事がいくつかある。
まず、家から3時間程歩いた場所から周りを見渡しても何もなく、奥にまだ荒地が続いていること。
……これは分かった事なのだろうか? まだまだ未知数ってことだよね?
……ま、まぁいい。他に分かったことは、植物があまりないこと。
……えっと。これも見たら分かる気がするんだけども。だって荒地だもん。草とか木とか生えそうにないよね、どう見ても。
……なんだろう、カント達に任せて本当に大丈夫なのか? かなり不安になってきたんだが。
……気を取り直して。
えっと、他には野営した跡があっただとか、食事した跡が残ってたと……
……え? ちょっ、こっちの方が重要じゃんっ?! なんで、先に出てこなかったんだよ! 生態系云々より重要だよ!
はぁ……もう、つっこむだけ無駄だな……
とりあえず、分かってることはこのくらいだ。この最後の2つがかなりの手掛かりのはずなんだが……
「おーい、レント! そろそろ行くぞー! 早く来ーい!」
「あっ、はい! お父様! 今行きます!」
ったく、カントはやっぱり空気読めねぇなぁ……
そうそう、何故カントが俺を呼んでいるのかというと、今日は皆で遠出してみようってことになったのだ。
留守番は何故かあの自称大悪魔に任せることになった。いや、反対はしたんだけどもね……
他に案が出てこなくって。
意外にもベスタが賛成派であいつをこき使えばいいんじゃないかしら? とか言ってた。
女の人って怖いなぁっ改めて思った瞬間だった。
っと、それはともかく急がなくては。皆待たせちゃってるし。
「レント、ちゃんと荷物は持ったかしら?
忘れ物したらダメよ? 結構遠出するんだから」
「はい、お母様! 大丈夫です!」
忘れ物はないか昨日の夜に入念にチェックしたからな。よし、じゃあ出発と行きましょうか!
……アレに家を任せるっていうのが腑に落ちないところだが。
「くはははは! 行ってくるがよい!
貴様らが留守の間我がこの身をもって留守番をしておいてやる。この我がここまでしてくれると言うのに気に食わんなどと抜かす小僧には帰ってくるなり100%ジュースをプレゼントしてくれよう。
無論、安心してくれて構わぬ。この我にかかれば番など朝飯前である。人っ子1人通さぬぞ?
貴様らが帰ってきても通さないかもしれんが。
くはははははは! さぁ安心して楽しむなり疲れるなりしてくるがいい!」
……もう、本当に不安しかない!
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俺達が皆でまとまりながら歩いていると不意にキャリルがポツリと。
「本当に、何もないんですね……」
「あぁ、何もないんだよ」
キャリルの言った言葉にカントが頷く。家を出てから2時間程経ったであろうか。
それにもかかわらず景色はずっと空と荒野が広がるばかりである。
「でも、たまにコルストが自生してるわよ?」
「いや、コルストって言えば普通日陰に、それも群生する植物じゃないですか。なのに、なんで道のど真ん中に、しかも一点に集中して生えてるんですか。
群生するんじゃないんですか! 日陰にはえてるんじゃないんですか!」
「そこを私に言われてもねぇ……」
ベスタが言った一言に過剰に反応するキャリル。どうやらつっこむ所が多すぎてついていけてないようだ。
「はぁ……もう、意味が分からないです。つっこむ所多すぎませんか……
つっこむだけ無駄だって分かってますけど、これはつっこまざるを得ませんよ……」
はぁ、とため息をもう一度つき、頭を抱えるキャリル。
気持ちは分からないでもないが、もう受け入れた方がいいと思う。楽になろうぜ?
「師匠、もう気にしたら負けだと思いますよ?」
「分かってますけど……」
うーむ、どうしてもつっこみたくなるようだ。分からんでもないんだけれども。
「……あっ、師匠! あっちに何かいますよ!」
「えっ! どこですかっ!」
俺がそう言って指を指すとキャリルが目を輝かせて食いついてきた。うぉ、凄い食いつき。
「ほ、ほら、あそこです! 何かモゾモゾしてますけど……」
「……モゾモゾしてますね」
そう、なんかさっきからモゾモゾしてるんだが……
「「………」」
「……あの、お父様? お母様?」
あれ? カントとベスタがなんかじっとそのモゾモゾを見つめている。
どうしたのだろうか。なんか目が怖いんですが……
「「……食料だ(わ)!!」」
「「えっ!!?」」
カント達はそう言うと同時にモゾモゾに向かって駆け出した!
「「ちょっ!!」」
俺とキャリルも焦って追いかける。ローナさんは無言でついてきている。
「ベスタ! これで飯は気にしなくても良くなるぞ!」
「そうね、あなた! ふふふっ! さぁ、狩るわよー!」
あ、これはダメだ。二人共もう止められない。俺がそう思っているうちにモゾモゾの正体が暴かれていた。
「……なるほど、そういう事でしたか……」
「あれがミミックコドラだったんですね……」
キャリルと俺がそう感心しながら見ていると、
「おーい、レント! 運ぶのを手伝ってくれ!」
「あ、はい! お父様!」
カントに呼ばれたので急いで駆け寄る。
「あのモゾモゾしてたのがミミックコドラだったんですね、お父様」
「あぁ。俺達は結構見た事あるから分かるんだよ」
「そうなんですね!」
ほぅ、結構見た事ある、と。多分昨日の事の話ではないな。忘れかけてたが、2人が元々は冒険者だった説があったんだった。それが有力になってきたな……
よし、ちょっとカマかけてみるか……
「ほかの依頼ではどんな生物を見たんですか?」
「うーん、そうだなぁ……
あ、下級ドラゴン討伐とかでドラゴンを見たなぁ。あれってドラゴンって言うにはどうも違うんだよ。どっちかってと鳥と蝙蝠を足した感じかなぁ」
よし、うまく引っかかった。
「へぇ、そうなんですね! 冒険者って楽しそうですね!」
「おう! 冒険者は楽し、い……ぞ…………?」
カントの声が段々と尻すぼみになっていく。そして、気付いたようにやっちまったって顔をしている。
というか、隠す必要あるのだろうか? 別に両親が冒険者でもなんとも思わないのに。
むしろ、カッコいいと思うけど。あ、厨〇病とかそんなんじゃなくって。
「……え、えーっと、レント? それは誰から……?」
「え? お父様が言ったじゃないですか」
「え! 俺が言ったのか?! いつだ?!」
「今ですよ?」
「な……」
あーあー、自ら墓穴を……
「……はぁ、あなた。もういいんじゃないかしら?
私はそこまでして隠すことでもないと思うわ」
「いや、でもだな……」
ベスタがそう言うが、カントはなかなか渋っている。何か話したくない事情とかでもあるのだろうか?
「話したらダメって理由なんて特にないでしょう?」
「いや、あるぞ!」
ベスタの言葉にカントが即答する。え? 話したらダメな理由あんの?
「へ? そ、そうなの?」
ベスタが困惑したように聞く。
「あぁ、それはだな……俺が、心配だって事だ!!」
……はい?
「もし、レントが冒険者になったとする。
するとどうなる。まず、お家に帰ってこなくなるだろう。
そして、どこで暮らしているのかも分からなくなって野垂れ死にしたとしても連絡が来ないからわからない!
あぁ、こんなおぞましいことが起こって欲しくないから俺は話したくないんだっ!!」
……えっと、俺はとっても愛されているらしい。
「はぁ……そんなに心配ならそもそもな話、『マイカス伝記』もダメでしょうに……」
「あ……」
カントってこう、結構なイケメンなんだが、残念な所が多々あるんだよなぁ……
「はぁ、いい? あなた。子供はいつかは巣立つものよ。それを見守ってあげるのも親の役目。
巣立って消息不明になったとして、心配するのはいいのだけれど、行かせなければよかったというのは筋違いだと思うわ。
親が縛っていいものでもないのよ、子供は」
おぉ……ベスタがなんかいい事言った。いや、別に縛られてる感じはしてないけど……
むしろ、のびのびやらせてもらってますけども……
「うっ……そうだな、分かった。今夜、話そう。俺達のことを。
いいか、レント。これは他の人にはあまり言わないでおいてくれると助かる」
「わ、分かりました、お父様」
カントがいやに真剣な顔、そして眼差しを向けてくる。ど、どんな秘密があるんだろうか……
というか、冒険者の話から飛躍してないか……?
そう思いつつ俺は唾をゴクリと飲む。
「……まぁ、あくまでも、夜に話すんだ。
今はそんな雰囲気じゃないし、とりあえずこれを皆で運ぶか!」
「……は、はい、お父様」
「……下手くそねぇ」
「ですねぇ」
「ん? なんか言ったかー?」
「いいえ、あなたって人はなんていつも色々凄いんでしょうと話をしてただけですよ」
「そ、そうか……なんか面と向かって言われると恥ずかしいな……」
カントが照れながらミミックコドラを運ぶ。
「……チョロいわね」
「……ですねぇ」
「……」
お、女の人ってやっぱり怖い。
俺がそんな事を思っているのを他所にいつの間にか倒されていたミミックコドラを皆で運んでいった。




