第2章 21 抗えない欲望
じゅるり…
夕方、日がそろそろ沈みきるかという頃。
カント達が調査から帰ってきた。というか、なんか凄い沢山担いで帰ってきた。
ミミックコドラとかいうトカゲらしい。
なんか周りに擬態して獲物を待って目の前を通ったらパックリ行くんだと。なんともカメレオンみたいなやつだな。
まぁ、それはさておき。何でこんなに狩ってきたんだ?
なんか強そうにも見えないし……
むしろ愛着湧く顔というか可愛い方に入るくらいの顔をしてるのに。
「お父様、お母様。どうしてこんなに捕まえてきたんですか?」
「え、えっとだな……」
「ちょっと興が乗っちゃってね……」
え、興が乗ったらこんなに取れるの?
いや、しかし。
「それにしても多すぎませんか! 昨日のドラゴンでも沢山あるのに、これは多すぎですよ!」
「「本当、ごめんなさい。」」
俺がつっこむと口を揃えて謝る2人。
というか、何かあったらベスタが止めてくれると思ってたんだが。
ベスタもちょっと楽しくなってしまったようだ。まぁ、そんな時もあるか……
人間だもんね。そんな時もあるよね。
それはともかく、次に気になってる事は……
「……それで、これって食べられるんですか?」
「……お、おう! そりゃもう、美味いぞ!」
「えぇ! 市場ではとっても高級な部類に入るくらい!」
おぉ、そうなのか。
……あぁ、なるほど。カント達はそれにつられたのか。というか、そこまで美味しいのだろうか。
そんなに捕まえてきて普通とかだったらなんかもう……
まぁ、食料が増えるのはよろしいのだが、増えすぎて腐らせたら勿体ないし……
「あのドラゴンもなかなかだったが、これには全然及ばないなぁ……これの美味しさと比べれば……あ、いけね。涎が……」
「そうねぇ。これの美味しさといったら……ふふふ……あら、いけない。思い出しただけで涎が……」
……これ、中毒性とかないよね? なんか二人共キャラが崩壊しかかってるですが。
うーん、こいつってそんなに美味いのか。あの2人がああなるくらいに。
……なんか食べてみたくなってきたじゃん。
「……じゃあ、今日はこれを食べるんですか?」
「「当たり前だろ(でしょ)!」」
「そ、そうですか……」
2人同時に即答する。ちょっとその剣幕に圧される。そんなに食いたいのか。
どうやら、どこの世界でも美味しい食べ物というのは人を魅了するらしい。
「では、カント様、ベスタ様。
調理はお任せ下さいませ。厚切りにする予定ですが、何かご要望はございますでしょうか?」
「んー、じゃあ俺はレアルで」
ふむふむ、ご要望とな。ステーキにする以外に食べ方が……
…………え? 今なんて?
「じゃあ、私はミディアックで」
……はい? 何言ってんの?
「わ、私もいいんですか? じ、じゃあ私もミディアックで……」
皆が次々に言う中、俺の頭の中でははてなマークが浮かんでいた。
いや、なんだよレアルって。ミディアックってなんだよ。
あ、なんか皆言い終わったから自然と俺に視線が向いてる。え、これ俺も言わなきゃいけないの?
うーん。どうしようか……仕方ない、必殺技を繰り出すか。
「……僕はおまかせします!」
必殺、おまかせで。
この技はほとんどの事象において有効だからなぁ。
「かしこまりました。では、皆様。
できるまでの間、リビングで少々お待ちくださいませ」
ローナが綺麗なお辞儀をしてから足早に台所へ向かう。今日はベスタは手伝わないらしい。まぁ、疲れてるだろうしな。
それにしても、さっきはどうにか切り抜けた。てか、本当に何なんだろう?
肉……肉の時にする注文って……あ、もしかして、焼き加減だろうか?
え、まじで? あれって焼き加減の事なの?
……なんか似てる気がするし、多分そうだろう。
でも、どれが強めとか弱めとか分からんしどっちにしろおまかせでよかったな。そもそも肉は美味けりゃ焼き加減なんてどうでもいいんだが。
とにかく、俺に必殺技が残されてて助かった。
俺がそんな事を考えていると、キャリルが興奮したような面持ちで話しかけてきた。
「レント! レント!
アレですよ! ミミックコドラですよ! あの超高級のミミックコドラですよ!
あぁ、アレがこんな所で食べられるなんて……!」
ずいっと紅潮した顔を寄せてくる。
うぉっ、めっちゃ興奮していらっしゃる……
興奮したキャリルは子供のように目をキラキラさせながら話してくる。
そして、チラチラと台所を見ながら待ち遠しいと言わんばかりの視線を向けている。
……こんな所を見てたら本当に大人なのか? って疑いたくなる。
この人は本当は子供なんじゃなかろうか? なんか変身する魔法とかあるんじゃなかろうか?
俺はそう思いながらキャリルを見る。
「……」
「あれは本当に……レ、レント? そんな目で私を見ないでください。いや、確かにはしゃいでましたけども。
そんな目で見られるとちょっと心苦しいというか……」
おっと、顔に出てたらしい。
俺はすぐに顔に出るなぁ……ポーカーフェイス出来ないものだろうか?
「……」
「レント? 急に真顔になってジト目で見ないでください!
なんで私がそんな目で見られなきゃいけないんですか! というか、なんか喋ってください!」
あれ? 俺はただ単にポーカーフェイスの練習をしてたのだが……
まぁなんか涙目になってきてるし、段々ハァハァ言ってき……た…………
………と、とりあえず、やめてあげるか。
「いや、僕ってすぐ顔に出るなぁと思いまして。
ポーカーフェイスの練習をしてただけですよ。」
「そ、そうですか……
もう、急に黙り込んでジト目でじーっと見てくるから変な気も……こほん、ちょっと心苦しかったですよ?」
もう、キャリルはダメっぽい。歯止めが効かなくなってきたのでしょうかね?
「と、とりあえず、料理楽しみですね!」
「そうですね! 早く焼けないかなぁ……」
俺は無邪気にキャッキャッ言っているキャリルを見て、本当にさっきのハァハァ言っていたのと同一人物なのか疑いつつも、こっちが本当の姿なのかもしれないと、現実逃避をするように偽物を頭の隅っこに追いやった。
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「「「「「いただきます!」」」」」
「うむ、我にも作ってくれるとは感心したぞ。
まぁ、無くても大丈夫ではあるのだが、せっかく作ってくれたのだ。いただこうか」
皆がソワソワしながら一斉にいただきますを言って肉にがっつく。
「「「「う、美味いっ!!!」」」」
「ありがとうございます」
え、何これ! めっちゃ美味いんだけど! これはカント達があんなに狩ってきたのも頷ける。
食べた瞬間に口の中に肉汁がジュワッと溢れてきて、噛む度に味が染み出てくる。
……俺は焼肉のタレを掛ける派だったのだが、これはそんなの無くてもめちゃくちゃ美味い。こんなの初めて食ったぞ。
「おふぉーはま! おふぁーはま! ほっへもおいひいえふ!」
「だろう? これ凄く美味いんだよ!」
「こら、レント。美味しいのは分かるけど、飲み込んでから喋りなさい」
「ふぁーい!」
俺はゴクリと飲み込んでもう一度カント達に美味しいと伝え、また肉にがっつく。
「お、美味しすぎます……! これは、これは……!!」
キャリルはブツブツ言いながら肉をパクパク食べている。
「ふむ、これは美味であるな。
ミミックコドラは何度か食べているが、これはなかなかいけるな。いつもは丸焼きであったからな」
ゲイルはパクパク食べているが、意外にもその食べ方はとても上品だった。
……こいつ悪魔のくせにすごく綺麗に食べやがる。なんか負けた感じがして悔しい。
まぁ、俺もベスタに教えられたからある程度は綺麗だとは思うんだけど。なんというか、俺のにもっと上品さをプラスした食べ方なんだよな、こいつ。
「……む? 何故か感じる悔しがる感情……まぁ、不味くはない、むしろ美味である」
……肉だけ食ってろ、クソ野郎。
俺はゲイルを無視して肉を口いっぱいに頬張る。あぁ、もうこれは美味すぎて止まらない!
皆を見ると皆も同じだったようで、ゲイルを睨んでからやけ食いするように肉に齧り付いていた。
……今日だけで捕まえた内の4分の1のミミックコドラが食された。
残るミミックコドラのストックはあと3日分らしい。
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「ふぅ、食った食った。というか美味すぎて食いすぎたなぁ……」
「そうねぇ……分かってはいたのだけれど、いざ食べてみるとやっぱり止まらないものねぇ……」
カント達はチラッと在庫(残りのミミックコドラ)を見る。
「……また、狩りに行かねぇとな」
「……そうね。これは是非行きましょう」
今日の食事でカント達の食料調達場所が決まったのであった。
胃袋鷲掴み!




