第2章 20 成果あり……?
更新遅れてすいません。
「……なぁ、これって……」
「……えぇ、アレよねぇ」
カントとベスタが目の前のそれを見ながら言う。
「ここにもいるのか。というか、何でいるんだ?」
「私に聞かれても……でも、これは……」
そして、2人は口を揃えて言った。
「「これはどうみても……」」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ー 数十分前 ー
「なぁ、ここって俺達が思ってるよりも遥かに広いんじゃないか?」
「私もそう思ってたわ。というか、昨日の時点で思ってたわ」
「え? 本当?」
「えぇ。広すぎじゃないかしらってずっと思ってたわ」
並んで歩きながらそんな話をするカントとベスタ。
傍から見ると一見、和やかな空気だが、ちゃんと見ると2人共全く隙がない。
少しでも警戒していないといつ何が来るか分からないからだ。
昨日のドラゴンしかり、ゲイルしかり、である。
「そうなのか。というか、本当に広いなぁ、ここ……」
「そうねぇ……見渡しても景色が変わらない気がするわ……」
大陸の広さに感嘆の声を漏らしつつ、二人は歩みを進めていく。
「そういや、ここって植物少ないよな?」
「えぇ、かなり少ないわね。見たといえばコルストくらいかしらね?」
「そうだよなぁ……しかも、部分的にしか生えてなかったし。
普通は結構な数が群生するはずなんだが……」
コルストは普通は群生している植物なのだ。あの様に一部分だけ、ということは滅多にないのである。
それに、こんな荒地のど真ん中に生えている点もなかなかにおかしな事である。
「そもそも普通はもう少し険しい山道の日の当たらない場所に群生する植物なのよねぇ……
それがあんな道端のど真ん中っていうのも……」
「……なんか少しずつ常識が変えられている気がするんだが」
「……あなた。まだそれが自覚出来てるなら大丈夫なはずよ、多分」
だいぶ検討が外れてきている気がしないでもない二人の会話は少しずつ逸れた道から元に戻っていく。
「多分って……まぁ、とにかく。ここから元の世界に戻る為にもっと頑張らなきゃな!」
「そうね。もしかしたらこれに巻き込まれているのは私達だけではないかもしれないし、村の人達のことも少し心配だしね」
「……それもそうだ。ロールズなんかは大丈夫だろうか?」
「大丈夫よ、きっと。ロールズさんはお人好しが過ぎるけれど、ちゃんとレインちゃんが手綱を握っていると思うわ」
「ならいいんだが……」
心配するカントに、ベスタは内心でクスっと笑いながら、1番のお人好しは目の前にいるあなたなのだけれど、とカントをチラリと見ながら歩くのであった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ふぅ、そろそろ休憩するか、ベスタ?」
「えぇ、そうしましょう」
二人はそう言って無造作に地べたに座り込む。今日はベスタが弁当を持っている。
そのため、そのまま昼食タイムとなる。
「ほら、昨日は持ってなかったのだけれど、今日はお弁当を持ってきたわ。一緒に食べましょう」
「おぉ! ちょうど腹減ってたんだよな! いやぁ、助かるよ、ベスタ」
カントがとても嬉しそうにベスタに寄っていく。
傍から見ると飼い主に尻尾をブンブン振って寄っていく犬のように見える。
「朝食の余りを詰めただけなのだけれど、意外と上手く盛り付けできたと思うわ」
そう言いながらベスタがカントに弁当の中身を見せる。カントは目をキラキラさせながらそれを見ている。
「じゃ、早速食べようか! いただきます!」
「いただきます」
2人で仲良く弁当をつつく。
たまに、あーんをやりあったりとバカップル感丸出しの状態で昼食タイムを過ごしていた。
そして、全部食べ終わって満足している所で、カントがなにかに気がつく。
「……?
なぁ、ベスタ。あれって、見た事あるよな?」
カントが指をさす。
「なぁに? あなた。……あぇ? あれ……?」
ベスタはカントが指をさした方向に目を向け、カントが示したそれを見つけると、抜けた声を出し、そして無言になる。
「あれって……」
「と、とりあえず、近くから見てみましょう」
ベスタは少し混乱している頭をどうにか落ち着け、出来るだけ冷静に考える。
「……なぁ、これって……」
「…えぇ」
カントの言葉にベスタが頷く。目の前の光景を飲み込みつつあるが、まだ少し混乱はしている。
「ここにもいるのか。というか、何でいるんだ?」
「いや、私に聞かれても……でも、これは……」
そう言って2人は同時にそれを口にする。
「「これはどうみてもミミックコドラだよな(わね)」」
それと同時に岩に擬態していたらしいモンスターがモゾモゾし始めた。
ミミックコドラとは、周りに擬態してジッとして獲物を待ち、目の前を通ったらパクっと食べる、いわばカメレオンのような性質をもったトカゲだ。まぁ、自ら動いて餌を追いかけたりもするが。
ただ、カメレオンとは違って舌は伸びない。
「……えっと。これ、隠れてるつもりなのか?」
「……どうかしらね? なんか動いてるし」
2人はそう言いながらモゾモゾしているミミックコドラを見る。
「…………」
モゾモゾと動いている途中でちらっとカント達が見えたのか、一瞬ビクリとするミミックコドラ。
「「………………」」
「………………」
見られていることに気がついたのかピタリと動かなくなり、岩の真似をするミミックコドラ。
「「いやいやいや、擬態できてないし」」
「?!」
とうとう観念したのか、カント達と対峙するミミックコドラ。
名前とは裏腹に、意外と可愛い外見をしている。
だが、その肉はとても美味しく、市場では高級な部類の肉として売られているぐらいである。
「……これは、今晩の夕食は贅沢出来るんじゃねぇか?」
「……そうね。そこまで厄介なモンスターでもないし」
「ぎゃぅぅぅぅ……」
カント達と対峙しながら低く唸り、威嚇している。
「「…………」」
「ぎゃぅぅぅぅぅぅ……」
「「……じゅるり」」
「ぎゃうっ?!」
カント達の舌なめずりに本能的に怯えるミミックコドラ。そして、背を向けて逃げようとする。
だが、既に遅く、カント達は舌なめずりと同時に動き始めていた。
「はぁっ!」
「岩砲!!」
「ぎゃうぅぅ!」
カントが剣の腹で叩きつけ怯ませて、ベスタが魔法で頭を貫いた。
阿吽の呼吸とも言える程のコンビネーションである。
「ふぅ、よし、まずは一体だな」
「そうね。じゃあ、今度はあっちの奥の方で隠れてるつもりの子を殺りましょうか」
カント達は嬉嬉としてミミックコドラを狩りまくったのであった。
この日の調査結果はミミックコドラが沢山いる場所を見つけた事だけだったのはここだけの話である。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「なぁ、そろそろ我も仲間に入れてはくれんか?
別に貴様らをどうこうするつもりはないと言っておるだろう?
ただ、時たまちょこっと悪感情を喰らうだけであって、有害ではあるまいて」
「「最後のがなければいいんですけどね!」」
ゲイルはリモン100%ジューステロを行った事により俺達から完全にハブられていた。まぁ、元々ハブってはいたが。
イジメはいくないと思うが、こいつはその定義自体が違う気がするからハブっててもなんとも思わない。
むしろ無視し続けたい。切実に。
まぁ、それはそうと、さっきの事からキャリルがどうにか立ち直り、授業を再開しようとしていたのだが。
「なに、貴様らに害はないだろう? 身体的な」
「精神的に有害なのは認めてるんですね。というか、自覚あるんですね」
「当たり前であろう?
散々相手を馬鹿にして悪感情喰らっているのに精神的にも無害だと言い張るのはいくら何でも無理がある。
だから、身体的に無害だと我は言っておるのだ。
それくらいも分からぬのか? 貴様らの脳みそはその程度の判断もできないボンクラか?
ふむ、これだからすぐ治癒魔法という暴力に訴えかけるしか能のない脳筋は……おおっと、凄まじい怒りの悪感情。
我の好みとは少し違うが、まぁ、美味であるな」
くそ、こいつ的確に人をイライラさせてくるな。わざわざ一言多いんだよ。
正直面倒くさい。というか、ウザイ。
「そんなんだからハブられるんですよ。ぼっち悪魔さん」
「な、我に向かってぼっちとは失敬な。
そこの、昔友達に自分から話しかけることができずにただモジモジしているだけで、その上その事にまでなにか感じ始めていたそこの金髪と一緒にするでない」
俺の言葉にゲイルがそんな事を……
「なぁぁ!! もう、あなたは口を開けないでくださいっ!!!」
そして、キャリルが顔を真っ赤にして涙目になりながらゲイルに掴みかかる。
「くはははははは!
その羞恥の悪感情。我の好みに非常に近いぞ!
最高に美味である! くははははは!
くははははは、くは……お、おい、やめんか!
掴みかかりながら治癒魔法の詠唱をするでない!」
キャリルが涙目になりながらも早口で詠唱を唱える。
「ハイヒールっ!!」
「くぉっ!?……ふ、 ふぅ……くくくっ! くはははは! 今回は避けられたぞ! さぁ、今度はどんなプレイがお望みか?」
間一髪で魔法を避けるゲイル。そして、続けざまにニヤニヤしながらキャリルを挑発する。ちっ、そのまま浄化されちゃえばよかったのに。
「うぅぅ……もうお嫁に行けない……」
またもやキャリルが顔を覆って蹲る。
あぁっ、やっと立ち直ったのにまた落ち込んでしまったじゃないか!
余計な事をするのだけに特化しやがって、あの悪魔。
まぁ、さっきは俺が傷口に塩を塗り込んでしまったが、今度は間違えないぞ!
「大丈夫ですよ、師匠! その時は僕が貰ってあげます!」
出来るだけ無邪気に見えるように明るく声を掛ける。
「レント……! やはり、あなたは優しいですね。危うく惚れそうになりましたよ。
さ、こんなやつは放っておいてカントさん達が帰ってくるまで魔法の訓練のつづきをしましょう!」
「はい! 師匠!」
「くくく、今度はもう少し我を楽しませるのだぞ?」
ほっ、今のは正解だったようだ。俺はキャリルの言葉に元気よく返事をする。
キャリルはまだ顔は赤く、涙目であるが、魔法の訓練をするために頑張るようだ。
ゲイルは……もういいか。何か言っているがあいつはキャリルが言ってたように放っておこう。
「では、先程の続きから……」
俺達は気を取り直して訓練を再開するのであった。
……何かを意識の外に追いやるようにして。




