第2章 17 見えてしまった未来
まさかのエロシーン……?!
自称刺客が来て、それを捕らえて根掘り葉掘り聞いた翌日。リビングにて。
「ん、んむぅぅぅぅぅ!!」
「さぁ、観念なさいっ! 早く、中にいれさせてっ!!」
「む?! んむぅ! んんんぅぅぅぅっ!!」
ハァハァと息を荒くしているベスタと簀巻き状態で抵抗するゲイルが奮闘していた。
「ぐぬぬぬぬ! いーれーなーさぁーい!!」
「むむむむむ! んむ! んんんっ!!
ぷはっ! ダメだ! いかんぞ、それは! それだけは、中にいれてはダメだ!!」
頑なにベスタに応じようとしないゲイル。
「……しょうがないわね。これを使うしかないようね」
そういってベスタが何かゴソゴソしだした。ボソボソと何かを呟いている。
「む……? ……っ?! な、や、ちょ、やめ」
「ハイヒール!!」
ベスタがボソボソと呟いていたのはどうやら魔法の詠唱だったらしい。そして、その完成した中級の治癒魔法を容赦なくゲイルに浴びせる。
「ひゃあぁぁぁぁぁっ!!」
「それっ!」
ゲイルが魔法を食らった瞬間を狙ってベスタが中に入れる。
「ぁぁぁぁぁむぐっ!? ……っ?!?!?!」
ベスタが中にいれた瞬間ゲイルがぴたっと止まった。そして、すぐに血相を変えて暴れ出す。
「んむぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ゲイルは芋虫のように、くねくねしながらもがき出した!!
時は数時間前に遡る────
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ふぁぁぁ……」
庭に出て大きく伸びをするベスタ。
「さて、今日も頑張りましょうか!」
いつもはこれから洗濯、掃除とローナと一緒にやるのだが、今日は違う。
なにせ、知らない土地に飛ばされてしまったのだ。カントと調査に行くという仕事がある。
まぁ、転移2日目な訳だが。
「皆を起こしてきましょうか。
ローナは……もう起きてるだろうし、レントとキャリルちゃんを起こすだけかしらね。
……カントはなんやかんやで起きてくるでしょう」
妻にぞんざいに扱われるカント。不憫である。
そして、ベスタは皆を起こしに行こうとして、そういえば、と振り返りリビングを見渡す。
「くかー……くかー……」
「…………」
ベスタはジト目で簀巻き状態のままだらしなく口を開け、あまりにも無防備な状態で寝ている悪魔を見る。
「……悪魔って眠るのね」
ポツリと一言呟き、気を取り直して皆を起こしに行く。
「レント! キャリルちゃん! 朝よ! 起きなさいっ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おはようございます! お母様、お父様!」
「おはよう、レント」
「あぁ、おはよう」
「ローナさんと師匠もおはようございます!」
「おはようございます。レント様」
「あ、おはようございます」
俺は皆にしっかりと挨拶をする。よし、これで俺の朝一番の日課が……
「おい、小僧。まだ日課とやらは終わっておらぬぞ?
我にまだ挨拶はしておらんではないか。ん? ん?」
「……」
悪魔ってこう、こいつみたいに面倒なのばっかなのだろうか。どうしてこんなくだらん事に能力を使うんだろう。
宝の持ち腐れとはまさにこの事だな。
「おっと、そんな目で見られるのは本望ではないな。
しかし、その悪感情は美味であるぞ。ごちそうさまです」
ニヤニヤしてるのが余計に腹が立つ。
「くははは! 貴様は本当に上等な悪感情を発しおるな! これからもどうぞよろしく頼みます」
「謹んでお断りします。というか……まだいたんですね」
「っ?!」
腹いせにちょっとダメージを与えておく。こいつは精神攻撃に弱いと昨日実証済みだからな。
「おい、その言い草はないんじゃないか?
我は見ての通り簀巻き状態だ。どう抜け出せと?」
「そこをどうにかするのが悪魔じゃないんですか? ねぇ、自称大悪魔様?」
「ぬぐぐ……」
よし、ちょっと論破できた。これでよしとしておこう。
「レント、そいつは必要な情報源なんだ。あんまり口撃するなよー」
「分かりました、お父様!」
俺はゲイルに一瞥くれてから、そのままご飯を食べる。
「……ちょっと気になるのだけど、いいかしら? 悪魔さん?」
「……なんだ?」
俺に論破されたからか少し不機嫌な態度でベスタに顔を向けるゲイル。
「その、悪魔って一応食べ物も食べるのよね?」
「まぁ、肉体を維持するために食べんことも無い」
「その事なんだけれど、食べられないものだとかってあるのかしら?」
ベスタの質問にゲイルは記憶を探るようにして考える。一応回答はするのか……律儀な奴め。
ゲイルはむむっと唸りながら質問に答える。
「ふむ、食べられんものか……
……特にはないとは思うが……ん、一つだけあるな。
まぁ、教える気などないがな。くははははっ! 馬鹿め、そんな簡単に自分の弱点を……おっと、美味な悪感情、ごちそうさまです。
……あ、ちょ、や、やめ! やめんかっ! 分かった、言う! 言うから、治癒魔法の詠唱をしながら掴みかかってくるのはよせ!
……その、あれだ、柑橘系の果物だ。あれは悪魔全般は食べられんと思うぞ?
……しかし、そんなことを聞……………」
ベスタの質問に答えたゲイルが急に固まる。そしてみるみるうちに顔が引きつっていく。
「お、おい、貴様。貴様に一つ、助言をしてやろうではないか。
我は少しだけ未来を見通すことができるからな。
汝、今考えている事を実行するべからず。
実行すると、何かしら良くないことが起こるであろう。何もせずにすぐに調査に行くと吉とでた。
さぁ、行くがよい。遅いと自覚しながらも最近ツンデレに目覚め始めているツンデレっ子。
今すぐ行くと何かしら成果が得られるぞ?」
どこか慌てたようにそう捲し立てるゲイル。急に饒舌になった所を見ると、何かしらベスタがゲイルにやろうとしているのだろう。
まぁ、会話の流れからしてもう分かるのだが。
「……へぇ。それはご忠告感謝するわ。さて、皆、食後にデザートでもいかが?
ここに来る前に住んでた所のものだから早く食べないと傷んでしまうわ。
それにそこの悪魔さんも大好物だって言うし、丁度いいと思うのだけれど」
ベスタはニッコリと笑いながらゲイルに一瞥くれる。その目は明らかに笑っていないことが分かる。
「お、おい、我は忠告したぞ。
ど、どうなっても知らんぞ。我には関係あるまい」
「そうね、あなたには関係ない事だものね。私が誰に何をしようと、ね?」
そう言うとベスタが凄まじい速さで食料庫へと消えていった。
「………」
「「「「………」」」」
………………………。
………………………………………………。
「こ、殺されるぅぅっ!!」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
────そして、現在、冒頭に至る。
「おい、やめろ! それだけは、絶対にだめだ! いけないやつだぞ、それは!
貴様、人としてどうなのだ?! 貴様には人の心というものがないのかっ?!」
「人の心は分かってるつもりよ。でも、人じゃない者の心までは分からないわねぇ?」
そう言って両手にレモンのようなものを持ってジリジリとゲイルに迫っていくベスタ。
「や、やめろ! よせ! 柑橘系の果物は悪魔にとって致命傷なのだ! 身体の内部から浄化されかねん!
例え我のような大悪魔であろうとそれだけは変わらん! 浄化されなくともダメージが残るのだ!
なかなかきついのだぞ!? だからそれを持って近付いて来るでない!」
もう、冷静さを失っているのかどんどん自滅していくゲイル。
「ふふふ、そう、致命傷、ねぇ……
さぁ、この両手一杯のリモン、どうしてくれようかしら?」
あのレモンのようなものはリモンというらしい。初めて知った。なんかあっちのやつと名前似てて覚えやすい。
「や、やめ! ……んんんっ!?」
ついにベスタがゲイルの口にリモンを押し付ける。
「んんっ! んむっ!!」
「ふふふふっ! あっはははははっ! さぁ、このリモンは美味しいわよ?」
高笑いしながら容赦なく口に入れようと押し付けるベスタ。
こんなに生き生きとしたベスタは初めて見たかもしれない……
「んむぅ! んんんっ! んむむっ!!」
「ほら、お口を開けなさい? 私がアーンしてあげるから。ほらアーンして?」
ニコニコとベスタは笑っているが、腕には相当な力が込められているのが傍から見ていて分かる。
というか、いつまでやるのだろうか。なんか他の皆も止めもしないで談笑し始めている。
てか、ちょっとワクワクしながら見守っている。
「ほら、口の中に入れてあげるわ!」
「ん、んむぅぅぅぅぅ!!」
「ほら、観念なさいっ! 早く、口の中に入れさせて!」
「む?! んむぅ! んんんぅぅぅぅっ!!」
「ほら、ちゃんとお口を開けなさい?
じゃないと入れられないじゃない、リモンが。」
「んん!? むぅぅぅぅっ! んんっ!!」
「ぐぬぬぬぬ! 入ーれーなーさぁーい!!」
「むむむむむ! んむ! んんんっ!
ぷはっ! ダメだ! いかんぞ、それは! それだけは、口の中に入れてはダメだ!」
「……しょうがないわね。これを使うしかないようね」
「……む? ……っ?!?」
ベスタがボソボソと何かを呟き、それを見て何かを察したのかゲイルはより一層もぞもぞと暴れ出す。
「な、お、おい貴様っ!! ちょ、まっ、やめ」
「ハイヒール!!」
ベスタの渾身の中級治癒魔法の光がゲイルを包みこむ。
「ひゃあぁぁぁぁぁっ!!」
そして、治癒魔法を食らって叫んだゲイルの口を見てベスタがニヤリと不敵に笑う。
そして、
「それっ!」
「あぁぁぁ……むぐっ?! ………っ?!?!」
中級の治癒魔法をくらい、叫んだゲイルの口の中に勢いよくリモンを放り込むベスタ。
ゲイルはそれを食べ、一瞬固まる。そして次の瞬間、顔を青くして悶絶する。
「ぎゃぁぁぁぁっ!! ああぁぁぁぁぁっ!!!」
ゴロゴロと転げ回るゲイル。あれ? なんかちょっとだけ薄くなってる気が……
まぁ、いっか。悪魔だし。刺客だし。
「ふぅ、これでよし、と。
……じゃあ、皆、そろそろ準備をしましょう!」
「「「はーい」」」
「後処理はお任せ下さい」
ベスタとゲイルの漫才(?)を楽しんでいた皆は、そのままゲイルを放置して準備をし始めるのであった。
というか、ローナ、後処理任せろって言ったのにスルーかよ。
俺の心の声は届かず、ローナは華麗にゲイルをスルーして行った。あ、食器とか片付けるのね。そっちの後処理でしたか。
ローナの言葉に納得した後、俺はそのまま部屋に向かった。
「……うぐ……初めて見通して後悔したぞ……」
そうボソッと呟いたゲイルの一言をもう誰も聞いてはいなかった。
茶番はいいからはやく進めろだって?
こっちも進めたいけど進まないんです!泣
エロシーンなんてあるわけない。あるはずがない。
KENZENですもの。この作品は実にKENZENなものです。




