第2章 15 あの、ちょっと……
久々更新です!
「どうも、初めまして。我は大悪魔のゲイルと申す者である。
貴様らの刺客として来た」
ドラゴンを見るために玄関のドアを開けると、目の前には自称大悪魔かつ、刺客を名乗る人型の生物が立っていた。
俺達は呆然とそれを見ていた。
「………これが、ドラゴンですか? お父様?」
ちょっと脳の処理が追いつかない。これ、ドラゴン? こんなドラゴンいんの? ここって?
そもそもドラゴンって二足歩行なの?執事服みたいなの着てお辞儀すんの? ……喋るの?
ていうか、倒したんじゃないの? 超ピンピンして見えるんだけど。こいつ何?
「……い、いや、違うんだが……」
「私達が倒したのはあの後ろのでかいやつよ」
「で、ですよねー」
だ、だよねぇ……え、じゃあ、こいつ誰?
悪魔とか言ってたんだが。悪魔ってこう、人を騙して悪感情食べて生きてたりするんじゃないの?
なんか正直に包み隠さず言ってきたのだが。刺客だのなんだの。
「あー……とりあえず、ドラゴンを見に行きますか」
「……そ、そうね。そうしましょう。
ローナ、食べられるのなら解体して家の中に運びましょう」
「かしこまりました。では、肉が傷む前に確認しに行きましょう」
「……あ、待ってください! 私も行きます! 置いてかないで下さいよっ!」
………………。
………………………………。
「……おい、貴様ら無視とは大層ではないか。
我は大悪魔であるぞ? 貴様らが今何を考えているのか、そしてこれから先何が起こるのか見通すくらい容易いのだぞ?
付け加えて言うのであれば、その我が貴様らの刺客として……」
「おぉっ! お父様、お母様! これは凄いです!
こんなに大きなドラゴンを倒したのですか?!
凄いなぁ!! マイカスコンビにも負けないんじゃないでしょうか?!」
「ははは、レントはいいこと言うなぁ!
なに、俺とベスタに掛かればこんなの朝飯前ってもんだ!」
カントがいい気になったのか、そんな事を言う。
「もう、あなたったら。すぐに調子に乗るんだから」
「べ、別にいいじゃねぇか、自分の息子の前ぐらい……」
見栄を張ってベスタに窘められるカント。見ていてなんだか和むなぁ。
「ベスタ様、このドラゴンは食べることができるようです。
早速解体して家に運んでおきたいのですが……」
「えぇ、ありがとう、ローナ。
私達も手伝うわ! 皆、運ぶのを手伝ってちょうだい!」
「わ、分かりました!
解体したものを家に運べばいいんですね!
あ、でもどこに置いたらいいんでしょう……?」
キャリルが困った様にベスタに訊ねる。
「うちには食料庫があるのよ。
そこで保存しておけるから、皆について行ってちょうだい。」
「あ、了解です。」
キャリルがベスタに教えてもらい、テキパキと動いていく。
そしてドラゴンは瞬く間に解体されはじめた。
「あ、あの、我は大悪魔の……」
「お母様! もう下のものから運んでもいいですか?」
「ええ、大丈夫よ!
じゃあ、私とローナが解体をするから3人は運んでちょうだいね。」
「おー、わかった」
「了解です!」
「はい! 分かりました!」
カントとキャリルと俺はそれぞれ肉塊を持って家の中に運んでいく。
……働きアリってこんな気持ちなのだろうか。
「あ、あの……」
「あ、そこちょっとどいてくれる? 今、そこ通るから。肉が幅とるんだ」
「あ、すいません」
自称大悪魔がペコリと頭を下げてドアからちょっと横に逸れる。
「ん、どうも」
カントは礼を言ってスタスタ歩いていく。俺とキャリルもカントに続いて家の中へ肉を運ぶ。
ベスタとローナはどんどん解体を進めていく。
「……我は何をしてるのだろうか……?」
自称大悪魔が自嘲気味にそう呟く。その呟きすら解体作業中の家族には届かない。
とうとう、自称刺客が隅の方で体育座りをしていじけはじめた。
「うぅ……どうせ、どうせ我は……そこまで重要視されていないのだ……ポンコツの、ダメ悪魔なのだな……」
顔を膝に埋めながら地面を指でグリグリしている。その間にもどんどん作業は進む。
「……ふぅ、これで最後よー!」
「あいよ! ……っと、ほれ、戻るぞー」
「かしこまりました。お疲れ様でした、皆様」
「お疲れ様です!」
「疲れましたねぇー」
皆、思い思いに言いつつお家へと戻る。
そして……
………………………。
…………………………………………。
「……あれ、どうするか……」
「どうしましょうか……」
「現実逃避していたのだけれど……」
「……殺りましょうか?」
「……で、どうするんですか?」
家に入る直前に一同はピタッと止まり、ドアの側で体育座りでボソボソと何か言いながらうずくまっている自称なんとかに目を向ける。
というか、なにか物騒な言葉が聞こえた気がするんだが……?
「さすがにやりすぎたかなぁ……?」
「どうかしらねぇ……」
「うーん……とりあえず話してみるか」
物騒な一言は聞こえていなかったらしく、カントはそう提案する。
そのうずくまっているそれに声をかけることにしたらしい。
「……あの、それで、何の用でしょうか?」
「どうせ……我なんて…………ん?
まさか……呼んだのか? 我を? 必要としているのか?」
「あ、いや、必要ではないですが……」
カントがナチュラルにその自称刺客にダメージを与える。
「そ、そうか……」
捨てられた仔犬のような表情をしていた刺客(仮)だったが、カントに言われてやはりといった表情に変わる。
それを見たカントはいたたまれなくなったのか、慌てて言い繕う。
「い、いや、そういう訳じゃないんだ。あんたが要らない訳じゃなくて、俺達に必要ないというか、その……」
もう、カントは喋らない方がいいんじゃないかな。どんどんダメージを蓄積させていく。
もう止めてあげて! 彼の心のHPはもう0よっ!! 聞いてるこっちも心が痛くなるんですが……
「あの、とりあえず、あなたはここに何しに来たのですか? 冷やかしですか?」
……あーぁ、やっちゃったよ、この子。キャリルが天然でダメ押しの一撃を食らわせる。
か、可哀想に……
「……う、うあぁぁぁぁ!! どうせ、我は何も出来ない出来損ないのクズなのだぁぁぁぁ!!!」
もう、精神が持たなかったのか、叫びながら飛び去っていこうと……
飛び去って、行こうとして────
「あ……一応、捕まえておくか」
カントに足を掴まれ、地に引きずり下ろされて、ロープで捕縛された。
………本当、可哀想に!!




