第2章 11 テンプレなんてない。
前回のあらすじ:ヤベェ事になった。
俺は今の状況で1番言いたい言葉がある。この状況にピッタリの言葉だ。
多分、どうしようもない状況になったり、予想もしていないような展開になった時、人は誰しもこう思うであろう。
………………どうしてこうなった、と────
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俺達は上の空でご飯を食べていた。
先程よりは落ち着いているが、皆そわそわして何か落ち着かない様子だ。
「……あの、これからどういたしましょうか」
この空気に耐えかねたのかローナが皆に訊ねる。
「「「「………」」」」
「あ、あの……」
珍しくローナが困っている様子だ。
俺はこれからどうするか、という質問についてまだ考えているので、答える事ができない。
別に、ローナの珍しい様子を観察したいからとかそんな訳ではない。いや、本当。
俺がそんなくだらない事を考えて、ローナを見ていると。
「……あぁぁぁ!!! どうしてこうなったぁぁ!!」
「「「「?!」」」」
急にカントが叫びだし、皆がビクッとする。というか、いきなり叫ぶとかやめて欲しい。
ビックリするし、心臓に悪いし、なにより耳が痛い。
「あ、あなた、落ち着いて? 今から、皆で話し合って決めましょう」
「何がどうして、こう……あ? ……あ、あぁ、悪い。少し取り乱しちまった」
「いえ、気持ちは分からなくもないもの」
ベスタがカントを宥め、カントが少し落ち着く。
「とにかく、今の状況を確認しましょう」
ベスタがそう仕切りながら話を進める。
「寝て朝起きたら知らない所に居た。ってことですよね?」
「……それは少し噛み砕き過ぎじゃないですか?」
「そ、そうでしょうか……?」
キャリルの発言に対して、俺がつっこむ。
というか、この人は本当に先生なのだろうか。ときどき疑問に思う。
いや、当たってるんだけれども。色々抜けてるし、なんか違う。
この人は多分こういう場面では使い物にならないタイプだ。
とりあえず、俺もまとめてみた事を言ってみよう。
「あの、僕からもいいですか?」
「ん? なにかしら、レント?」
ベスタが返事をし、俺に喋るよう促す。
「あのですね、まず、寝る前までは確かに何も起きていなかったと思います。
僕は興奮してて、少し長く起きてましたから。
だから、皆が寝たあとにここに転移したんだと思います。
次に、ここがどこかを知りたいですね。僕は海なんて初めて見ました。
僕的に海を調査したいですが、家の反対側は断崖絶壁なので調査できません。
なので、日帰りで戻ってこられる範囲で家の門の向こう側を調査した方がいいと思います」
「そ、そうね……」
ベスタが気のない返事をしてくる。
あれ? というか、なんか皆がぽかんと口開けて俺を見ている。なんでだろう?
うーん…………あ。そゆことね。
流石にやりすぎたか。子供が考える範疇を超えてるもんな。俺も学習しないなぁ……
「……レント。お前って……」
やべ、これはマジでやりすぎたんじゃ……
「お前ってやっぱりすごいなぁ! 流石、俺とベスタの子供だ!」
……どうやらカントは鈍感らしい。まぁ、助かったけども。ほかの事には敏感であって欲しいが。
「よし、じゃあ支度するか! とりあえず、家を空けたままにするのはいけないから、調査は俺とベスタが行く。ベスタは魔法も使えるしな。
ローナは家の事を頼む。レントも同じだ。
で、キャリルはレントとローナを守ってやっててくれ」
おぉ、カントがようやく再始動し始めたようだ。意外とこういうことに関しては頭がキレるらしい。よかった、こういうのが鈍くなくて。
「わ、分かりましたっ!」
「承りました」
「……分かりました」
俺はあまり釈然としない気持ちだったが、一応従うことにした。
釈然としないのは、2人が心配というのが第一だ。心配するに決まっている。大切な家族なのだから。
第二は、俺も行きたかった、というわがままです。
「心配しなくても大丈夫よ、レント。ちゃんと帰ってくるわ」
おっと、心配しているのが顔に出ていたようだ。ベスタがこう言っているのだ。信じよう。
「……はい! ちゃんと、帰ってきてくださいね?」
「ええ、約束するわ。レント」
ベスタはそう言って優しく微笑んだ。やっぱりベスタは美人さんだ。
あぁ、俺ももっと知識があれば役に立てたかもなぁ……
てか、もっとラノベ読んどくべきだった。こんな状況のときどうするのか解決法があるかもしれなかったってのに。
くそぅ、テンプレなぞるのは好きじゃないが、なかったらなかったで困る。厄介だな。
はぁ……穏やかに暮らして行ければそれで充分だったってのに、本当にどうしてこうなった……
俺がそんなふうに思っている間に皆は支度をし始めていた。
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「んじゃ、行ってくる」
「いい子にしてるのよ、レント?」
1時間程経った後、支度を終えたカントとベスタの2人の調査組を見送る。
「お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「気をつけてくださいね!」
「はい! 行ってらっしゃい!」
「ふふっ、じゃ、行ってくるわね、皆」
ベスタがそう言って俺のおでこにキスをしてきた。
……なんか最後の別れみたいじゃないか。そんなフラグ立てるようなことしちゃだめなんだぞ!
いたずらっぽく笑ったベスタはなんだか子供のように見えた。
2人を見送った居残り組の3人はそそくさと家へと入る。
「あの、私達も何かできないでしょうか……?」
「そうですね。私は家事全般はやることがあります。
ですが、キャリル様とレント様は特にやることがないはずです。なので、いつも通り魔法の訓練をなさったらいいと思います」
ローナがそんな言い返すことの出来ない正論を言う。
い、いや、キャリルだって、少しはやる事くらいあると思うよ?
あ、もちろん、俺はいつでも暇ですが。
「そ、そうですか……分かりました。レント、ここはローナさんに従いましょう」
「分かりました! 先生!」
俺とキャリルは、ローナが言ったように特にやることがなかったのでその案に従うことにする。ローナに従うと言ったキャリルは、本当にやることがなかったらしい。
少しキャリルが落ち込んで見えるが、気のせいだろうか?
まぁ、授業をやってればそのうち治るだろう。
あ、授業って言葉で思い出したのだが、魔法って、ここで使えるのかな?
……これ、カント達に言っとくべきだったな。やばい、どうしよう。もし、ベスタがこれで……
いやいや、悪い事は考えちゃだめだ。とりあえず、俺が使ってみて使えたら大丈夫なのだ。
そう、大丈夫だ。きっと。
俺が自分にそう言い聞かせていると、キャリルが声を掛けてきた。
「では、庭に行きましょうか、レント」
「……はい!」
俺は若干の憂いと共に玄関のドアを開けた。




