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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第四章・神と人間の世界編
99/114

vs 天使

―――――――――――――――断章―――――――――――――――


  Side:三人称


 突如反逆宣言をしたシアンと、それに乗っかったマゼンタと、それらを正気じゃないと止めるイエロー。

 いろいろと話し合ううちにやがては大乱闘となり、最後引き分けたまま勝負は終わった。

 その後、シアンとマゼンタは各々自宅に帰り、イエローは自室の中で一人うずくまって考え事をしていた。


「…………」


 かつてこの世界の人類は五十年前、世界のいたるところに大きな戦争を引き起こし、内外問わず様々な国や地域が血なまぐさい殺し合いをしていた。

 しかし、争いに巻き込まれた世界の環境はだんだんと荒廃の一途をたどり、そのことが神の怒りに触れた。

 神は自らの持つ絶大な力をもって、天使を生み、力をいかんなく発揮し、各国々の戦争を終わらせていったのである。

 そして、世界の中で比較的無事なこの場所に都市をつくり、そこに人間達を住まわせて管理させた。

 それが父や母のさらに上の世代から継がれている昔の話のなのである。


 長話になったが、要はあの少年は世界中の戦争を終わらせ、さらにこんな小さな世界を作り上げた神に逆らいだすというのだ。

 どう考えても正気じゃない。イエローはそう思い続けていた。

 だが……


『こんな都市に住んでお前は満足だと思っているのか?』


 シアンが言ったあの一言が彼女の頭に強く残っていた。


 確かに自分は決して良いとは言えない家庭環境で育ったが、これはあくまで家庭内の問題であり、神様に逆らう事は逆恨みになるだろうと思った。

 だが、あの地区では男が女に差別的なことをするのに天使達は何もしてくれなかった。

 ささいなことだと思ってたのか、なんにもしてくれなかったのだ。


 しかし……


「それとこれとは話は別よ……」


 いくらなんでも無茶苦茶すぎる。神を相手にするなど本当に無茶苦茶すぎる。

 本当になにを考えているのか理解に苦しむ。

 それなのに……


「なんでほんの少し揺らいだのかしら……」


 今でもイエローの頭の中にはシアンのある一言が未だ残っている。

 そしてほんの少しでも考えてしまった自分に不覚を感じてしまった。


 だが、だからといってシアンがやろうとしていることを看過することはできない。


 つまりイエローは二律背反に陥っている。

 迷っているのだ。いつのまにか……


「ああもう! 細かいことなんていいのよ! どっちみちあいつを止められればいいのよ!」


 ぐるぐると思考する頭の中を大声で払拭する。

 かつて死にかけた人間を助けたってのにバカなことをしてまた命を費やすなんて後味が悪すぎる。

 どこか義務めいた感情をもってシアンたちを止めると決心したイエローだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――



 Side:三人称


 三人の再決意から後日。

 神の存在する空間にて天使たちもそれぞれ準備を進めていた。


 あるものは自らの戦う相手を想定し、あるものはかつて戦った記憶から想像による相手の動きを一つずつ咀嚼するように思い描き、あるものは何を考えているのか不気味に嗤い続けていた。

 つまり彼らはイメージトレーニングをしていたのだが、


「……あら?」


 その中でヴェールが、都市の外にいる存在を感知した。

 直後、彼女の口の端が上がり、いつもよりも強い笑みを作る。


「どうしたのですかヴェール」

「……うふふふふ♪ とうとう来ちゃったわね、彼ら」

「!」


 ヴェールは待ち焦がれたかのように自分たちより外に、三人が現れたことを告げた。

 それを聴いたジョヌは自ら湧き上がる感情を必死に抑えるように大声を上げて三人を愚痴った。


「はっ! まったく遅せぇってんだい!」

「本当ね。うふふふふ…………♪」

「…………」


 反逆者を迎え撃つだけなのに妙にワクワクしている二翼に、ブルーはもうため息すらつくことなく続けた。


「そうですか。ここまでたどり着いたのですか」

「ええ、正確には見えてきたっていう方が正しいか。うふふ、でもね……」


 一度含み笑いをすると今度は悪戯するかのような意地の悪い笑顔を浮かべ、ブルーに許可を求めた。


「ブルー、まずは小手調べにやっていい?」


 小手調べ。

 その言葉を聞くとブルーは訝しげな表情になって詳しく聞く。


「……詳しくは?」

「あの子たちを使わすわ。あたしたちの前に、ね♪」

「……そうですか」


 特に詳しいことには聴こえないがブルーは何をしたいのか理解したようだ。


「ええ、構いませんよ。好きなようにしてください」

「はっ! だったら俺様も同様にやってやるぜ!」


 三翼はそれぞれ言うと、ここにはいない誰かに、何かを告げた。

 一方、それぞれ三翼がなにか準備を進める中……


「……わたくしは神様のもとで待たせてもらうわ」


 ルージュは静かに、自らの内側から何かが煮えるような感覚を自覚しつつ、最終地点で三人を待つことにしたのだった。



―――――――――――――――一方こちらでは――――――――――――――――



  Side:三人称


「……長い、道のりだった」

「ああ、まったく荒ぶる猛獣どもを凌ぐのは大変だったが……」

「ようやく、ここまで来たわね」


 三人は疲労や嘆息の交えた声で呟いたのち、目の前の光景を見てそれらは全て吹き飛んだ。

 初めの黄天使ジョヌの指示からここまで来るのに、かなりの時間を要した。

 途中で禽獣を、自然災害を、過酷な環境を切り抜けた結果、とうとうたどり着いたのだ。


「あれが……」

「あたしたちの故郷……」

「そして、神の住む地……」


 三人の目に映ったのは、自然豊かな世界の中で異様な雰囲気を放つ建物であった。

 それは、絶海の孤島に建つ上半球のドーム状があり、それを串刺しにするかのようにてっぺんから塔のようなものが天に向かって伸びていた。


 ドームの内側を知ってはいても外側から見たのは初めてだった。

 様々な世界の新鮮でいて異様な光景に見慣れた三人も、さすがにこれは異様どころではない様に見えた。

 だが、異様ゆえにあれがなんなのかを三人はすぐに理解した。

 あれが自分たちの故郷であり、敵である神の住む地であり、管理された人類の住む地でもあった。

 さらには……


「まさか周りが海っつー絶海の孤島とは全く思わなかったな」

「そう言う意味でもあの建物は内も外も寄せ付けないといったか」


 ドーム状の都市は遠く離れた海の中心に位置づけられており、向かうには海を渡る必要がある。

 しかし、渡るにしても船は何処にもない。

 となると……


「マゼンタ」

「仕方がない」


 シアンはマゼンタに、海を凍らせて道を作ろうと考えた。

 マゼンタも同じことを考えていたらしく、シアンが全てを言わなくても前に出て、右手を海の中に入れた。

 そして……


「【永久凍土えいきゅうとうど】」


 パキッ!!


「「…………え?」」


 マゼンタの一声に海は瞬きよりもはやい速度で凍りついてしまった。

 無論、現在地から目的地まで長い距離を全て固めてしまったのだ。


「おいおいおい! ここまでやってて大丈夫なのか!?」


 まさかここら一帯を全て凍らせるとは予想していなかったため、シアンはあきらかにやりすぎだと思った。

 それに対しマゼンタは平気そうに答えた。


「問題ない。凍らせたのはここから都市までの間で、都市から向こう側までも凍らせてはいない。それに……」


 それに? とシアンとイエローが訊くと、マゼンタはドーム状の都市を見据えながら言う。


「敵の本拠地近くだ。何が起こるかわからん」

「……そうか」


 用心深く、と言う理由で広範囲を凍らせたためシアンはそれ以上追及しなくなった。

 イエローはすでに凍った海を渡る気でいる。


「だったら、この海早く渡って先へ進みましょ」

「当然だ。足元には気を付けていくぞ」

「……わかった」


 イエローに促され、マゼンタに注意されたシアンは、凍った海に足を乗せ、そのまま目的地へと進んでいく。

 そこから慎重に、ゆっくりと三人は海の上を進んでいく。


「うおっ! あ、危ねぇ!」

「ほら、滑るから気を付けてって言ったでしょう!」

「そう言うイエローはなんで足元がちょっと浮いているんだよ。無駄な所で力を使うな!」

「あたしはいいのよ、これは大して消費しないんだから」

「…………」


 シアンとイエローが言い合い、マゼンタが特に何も言わずに進んでいく中……


「! お前等、待て!」

「「!」」


 先に気づいたのはマゼンタだった。

 突然の彼の行動にシアンもイエローも驚いて彼を見る。


「マゼンタ、どうした」

「お前等、前を見ろ! 来るぞ!」


 来る? と、シアンとイエローは話を中断して前方を集中して見ていると……


「!?」

「あれは……」


 三人の視界の先に奇妙な存在が現れた。


 白を基調とした甲冑と聖衣クロスの中間のような恰好。

 栄えるほど真っ白な翼。

 頭上には綺麗に整った真円状の輪っか。


 その者どもは百を超えるほどの沢山の群れをなして、三人のもとへと飛んで来ていた。

 これは明らかに向かってくる敵に対して迎え撃つ様子である。


「シアン、あれらって……」

「ああ、ずいぶんとまあ手厚い歓迎な事……」


 イエローとシアンは疲れるように言った。

 三人は向かってくる存在がなんなのか知っている。

 なぜなら三人は……いや、かつての仲間も含めて相当苦戦した相手である。

 その正体は、


「下位天使……! それもこんなにたくさん……!」

「ふん。四輝天使やつらと戦う前の肩慣らしにはちょうどいい」

「だな、しっかしこんな所戦うとは……」


 三人は初めに反逆した時のことを思い出した。

 神の力の一部から生み出され、命令のままに動く天使〈輪あり(ラ・セルクル)〉。

 四輝天使のような実力や感情はなく、〈輪なし(ノ・セルクル)〉のように自ら自立して行動することはできないが、その分いくらでも神の力から生み出すことは可能であり、数による圧倒的な戦いを得意としていた。


 反逆者たちはこの天使の軍団には苦労させられていた。

 リーダーでもある三人も例外ではなく、実力ならまだしも数の意味でも相当苦戦していた。


「もっともそんなの昔の話に過ぎない!」


 過去のことを思い浮かべ、しかし今はそんな風にはいかないと頭を振った。


「今のオレたちは負けられない理由が増えたんだ。ここで苦戦するなんて冗談じゃねえ!」

「そうね。こんな所でつまずいてちゃ結局は神にも四輝天使にも勝てなくなるわ」

「ゆえに、敗けるわけにはいかない!」


 三人も迎撃の準備に入ったところで天使達は視線を三人に集中させ各々独り言のように喋り出す。


『侵入者、三名。確認。反逆者、シアン=セーラン、マゼンタ=シャッコー、イエロー=オーキの三名と判明』

『これをもって、我々天使は侵入者の迎撃に移ります』


 天使たちは確認を終えた後、各々手元の部分を光らせると、突如武器が浮かび上がってきた。

 剣、槍、弓、盾など多種多様の武器が浮かび上がる。

 中でも遠距離に優れた弓や投げ槍などの比率が多い。


 相手の武器が出てきたとたん、マゼンタは構えながら二人に注意をする。


「シアン、イエロー! 足元には注意して戦え! 奴らは空を飛べる分いろいろと不利だ!」

「わかってる!」

「空ならあたしだって飛べるわよ!」

「力の配分には気をつけろ! あまり出し惜しみ過ぎても負けたら意味がない!」

「わかったよ!」


 三人もそれぞれ武器や拳を構え、戦う姿勢を取り出した。

 天使達はまたも各々独り言のように喋り出した。


『まずは、遠距離攻撃の一斉射撃によって、侵入者を迎撃します』


 弓を持った天使達が前に出て一斉に矢を引き絞って構えだした。

 その後ろから投げ槍を持った天使達も構えを取る。


『【聖なる弓(セイントアロー)】発動!』

『【聖なる槍(セイントスピア)】投射!』

「!」

「来るぞ!」


 天使の言葉に、光る矢と槍が大量に三人に襲いかかる。

 それに対し……


「みんな! あたしの傍から離れないで!」

「イエロー!」

「防御する気か!」


 イエローはシアンやマゼンタの前に出ると、両手を前にかざして、


「【強引な重力の歪曲グラビティディスタート】!」

「!?」


 すると、天使たちの矢と槍がイエローのかざした両手を避けるように軌道修正してきた。

 その結果、攻撃は三人のはるか後方に着弾してしまった。


『全弾……回避……!?』

「イエロー、すげぇ!!」

「まあ、この程度の攻撃ならね。でも……」


 イエローの防御を前に攻撃はやむ様子はない。

 その理由は……


『攻撃を続行! 隙を与えずに攻撃を続ける』

『イエロー・オーキが攻撃を防御していると判明。相手を封殺する!』


 どうやら防御されているにもかかわらずあえて攻撃を続けることでイエローの動きを封じる気である。

 さらにそれだけではない。


『相手の防御、前方のみと判明。これより別隊は後方に回り込み攻撃を開始する』

「!」


 矢や槍を放っているのとは別の天使達が、今度はイエローの後ろ側に回り込んできた。

 このままでは挟み撃ちされてしまう。

 だが、


「マゼンタ! 頼むよ!」

「ああ……」


 今度はマゼンタがイエローの後ろに出て、天使達に向かって両手を前へ突き出した。

 ただし、イエローのようなかざす方ではなく、指先を向けるような構えだ。


『後方、前に出た個体から力の流れを感じます』

『攻撃をします。回避行動を!』


 マゼンタが攻撃をすることを察した、天使達は急いで身を退こうとするが……


「逃がさん。【熱線ねっせん焼撃やきうち】!」

「!」


 それよりも早くマゼンタの攻撃が襲いかかってきた。

 通常線のように出し続ける【熱線ねっせん】とは違い、【焼撃やきうち】は銃の弾丸のような小さな熱の塊を指先から放出する技である。

 マゼンタの十の指から放たれた小さな熱の弾丸が、弾幕となって天使達に襲いかかる。


『ぐっ…………!?』

『がぁ…………!!』


 羽を撃たれ、風穴を開けられ、頭上の輪を破壊された天使達は、そのまま落下し、動かなくなってしまった。


「シアン。天使を倒す方法ってなんだった?」

「確か、頭上の輪でも破壊しない限り再生し続けるものだった気がする」


 しかし的確に全ての頭上の輪を破壊された天使達は、受けた傷も回復できず、そのまま機能を停止した。

 だがまだ残っている天使はまだまだ多い。


『後方、先手を打たれると判明』

『前方、遠距離攻撃のみは通用しないと判明……!』

『これより接近戦と援護に分け、侵入者を迎撃します!』


 前方で、弓や槍を使っているのとは別の天使が、剣や盾などを手に突撃してきた。

 となると……


「シアン、速攻で行け!」

「了解!」


 シアンが軌道をずらした矢や槍に当たらぬよう気を付けながら、速攻で横から抜け出して、前方に向かって走り出した。


『!』

「悪いが接近戦は……得意なんだよ!」


 シアンは懐から音叉刀スイングフォークを取り出して、音の速さで駆け出して行く。

 一瞬、イエローに接近してきた天使達は皆……


「じゃ、そういうわけで」

『…………!』


 頭上の輪を真っ二つに斬りおとされ、機能を停止されてしまった。

 だが、これだけではシアンは止まらない。


「うおおおおおおおおおおおお!!」

『……!? 回避!』


 なんとシアンは空中に留まっている天使を足場にしてさらに上へ上へと飛んでいき、次々と天使達の頭の輪を斬り落して行った。

 攻撃を加えようにも味方に巻き込まれる恐れがあるし、それ以前に彼の速さは捉えきれない。


『どこへ……!』

「残念、ここだ!」

『ぐぅ!?』


 そしてシアンが遠距離射撃をする天使達の輪を次々と斬りおとして行くと……


「オーケー、シアン! そこを離れて!」

「了解!」


 シアンが急いで天使達のもとから離れていくと、イエローはいつの間にかタメていた技をシアンが去った後のもとへ放った。


「【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】!」

『! 急いで攻撃から離れよ!』


 イエローの放った手のひらサイズの黒い球体が天使達の隊列の中央に到達すると、


 グオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!


 急激に巨大な球へと膨張しだした。

 それにより数名逃げ切れなかった天使が球体の中に飲み込まれた。

 だが、これだけでは終わらない。


「マゼンタ! 逃がした奴を撃って!」

「当然だ」


 マゼンタが【熱線ねっせん焼撃やきうち】で【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】を回避した天使に間髪入れずに射撃しだした。

 隊列が乱れたところにこの攻撃は不意を打つようであり、うまく対処するのに少し時間がかかった。


『【聖なる盾(セイントシールド)】 防衛!』


 何とか天使はマゼンタの攻撃を防御しつつ、【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】から離れて再び隊列を立て直した。


『攻撃を受けた! 再度遠距離攻撃を仕掛け……』

「させるかぁ!」

「!?」


 だが、そうしている間にシアンはマゼンタの攻撃に巻き込まれぬよう、もう一度走ったり飛んだりしつつ天使を攻撃していた。

 別の角度から攻めているため盾では防げない。


「うおりゃああああああああああああああああ!!」


 イエローは防御や大技で隊列を崩し、

 マゼンタは射撃で崩れたところを撃ち抜き、

 シアンが速度による遊撃で徐々に天使を仕留め、


 結果天使達は大して有効打を与えられないまま数ばかりを消費していった。

 そして……


「シアン、イエロー。そろそろだ、決めるぞ」

「ええ、わかったわ!」


 天使たちの数が総合的に減ったところでマゼンタは一気に決めようとシアンとイエローに合図した。


「【攪乱不快音波ブラックノイズ】! 『―――――――――!!』」

『…………!!』


 シアンの口から放たれる、形容しづらい声に天使達はほんの少し動きを止めた。

 その隙に、


「【熱々熱視線(あつあつねっしせん)】!」


 ゴォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


『!』


 マゼンタの視線により、一斉に天使達は焼け落ちてしまった。

 無論、弱点の輪も視界に入っており、抜かりはない。


『近接攻撃を仕掛ける!』

「ちっ! まだ残っているか!」


 だが、かろうじてまだ焼け切っていない天使たちが剣や盾で接近していく。


「イエロー!」

「わかったわ!


 だが、どんな状況でもうろたえない。


 シアンも何かをするつもりであり、イエローに合図だけを送った。

 天使の剣が強く輝きだし、シアンたちに襲いかかる。


『【聖なる剣(セイントセイバー)】! 攻撃!』

「無駄なことすんなよ!」


 シアンが、再び走り出すのと同時にイエローが天使達の動きを鈍らせる。


「【重たい空間(グラビトン)】!」

『!』


 イエローの加重により、シアンたちに向かって飛んでいた天使達が、戸惑うように速度を落とす。

 その瞬間。


「【音速移動(クイックムーブ)】!」

『!』


 シアンの走りに、すれ違った天使達は皆……


『そんな……ことが……!?』


 身体に傷はなく、しかし頭上の輪のみを切られ、行動不能にされた。

 その間際、天使達の表情からは信じられないような目で三人を見るのだった。


「…………」

「…………」

「…………」


 ……しばらくの沈黙。

 こうしている間に三人を襲う天使は……いない。


「よし、これで……」

「掃討完了」

「ようやく、だね」


 三人はそれぞれやり遂げたように小さく呟く。


 戦い始めてから今に至るまでかかった時間はそれほど経ってはいない。

 にも関わらず、百を超える数の天使達をたった三人の人間が圧倒した。

 これは、かつての反逆にはなかった出来事であった。

 かつて苦戦した相手を圧倒した三人は……


「ちょ、ちょっとマゼンタ! 地面が……!」

「って、マゼンタ! さっきのお前の視線で地面が燃えちまっているぞ!!」

「……いかんな、急がないと」

「お前自分で言っておいて何をしてるの!?」


 ……今更のように地面のことについて危機を抱き、天使たちを全て落としたことを確認した三人は、そのままドーム状の都市の方へと向かっていったのだった。









「ようこそ反逆者の諸君。よくぞここまで来られましたね」









「「「!」」」


 突如聞こえてきたのは聞き覚えのある声。

 そして、


「【尖氷の連山センデュモータニュ・グラス】」


 ザザザザザザザザザザザッ!!


「「「!?」」」


 三人の背後の地面から氷の剣が次々と生えてくるように三人のもとへと向かっていく。

 似たような技に覚えのあるマゼンタは素早くシアンやイエローの前に出る。


「シアン、イエロー、下がれ!」

「あ、おい!」

「【焼籠手やきごて】!」


 マゼンタは両手を高温に熱すると、自分に向かって生えてくる、一際大きな氷の剣を、


「はぁ!!」


 ジュゥ!!


 白刃取りの要領で掴み、融かして破壊した。

 それと同時に生え続ける氷の剣も納まりだした。


「…………」


 先ほどの声に今の技。

 つまり……


「さすがです。不意打ちにもしっかりと対応しているようですね」


 三人の前方。

 凍った水面の中から一人の人間……否、翼を輝かせた天使が浮かび上がってきた。


 青を基調とした軍服のような恰好。

 透けるくらいに白い髪。

 そして背中には光り輝く翼。

 そして両手にはそれぞれ一振りのサーベル。


 見覚えのある顔にシアンは驚きの表情を浮かべた。


「お前は……!」

「……ここでまず一人お出ましか」


 動揺するシアンとは逆にマゼンタは落ち着いた様子で、かつて一対一で交えた相手の名を改めて言う。


「四輝天使〈蒼海〉のブルー!」

「待っていましたよ。あなた方」


 四輝天使の一翼、ブルーはサーベルを手に臨戦態勢で迎えていた。

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