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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第四章・神と人間の世界編
98/114

再決意

神の元へ向かう三人は何を決意するのか

それでは、どうぞ

―――――――――――――――断章―――――――――――――――


  Side:三人称


「神様に逆らうですって!?」

「シアン。初めからとんでもないことを言い出したな」


 マゼンタと久々に会ったシアンと初めて会ったイエローは、なにか話し合いをするために結局イエローが一人で暮らしている家へと向かった。

 シアンの場合、怪我の治療にも上がったことがあるためこれで二度目だ。

 なにか大事な話があるという事でシアンとマゼンタとイエローは一つの個室に集まっていた。

 なお、イエローは性分なのか、意図的に入り口近くに座っている。

 そしてシアンは開口一番にとんでもないことをいったのだ。


「ああ、神様に逆らってみようと思う」

「ちょ、あんたいったいなにとんでもないことを言い出しているの!? ちゃんと意味わかって言ってるの!?」

「わかっている」


 神様に逆らう。

 その類の言葉はこの都市内では禁忌タブーとされている。

 もしそんなことを言えば天使に厳しく注意され、それでもなお不審な行動が見かけられれば監視の目は厳しくなるのだ。

 そうでなくてもこの言葉はとんでもない意味を含む。


「わかってないでしょ!? いい! 神様ってのは、五十年前にあたしたちの親かさらに親の世代に起こった戦争を終結させたたった一つの存在なのよ!?」

「確かに、それは危険な存在だな。俺は直に見たことはないが天使だけでも勝てるかどうかわからん」

「でしょう!? 大体あんたなんでいきなりそんな事言うのよ!」


 イエローは正気を確かめるような口調でシアンを責める。

 するとシアンはあまり迷うことなく答えた。


「簡単な理由だ。この都市で生きることが退屈になったからだ」

「!?」

「…………」


 シアンの口から出されたのは衝撃的な言葉だった。

 それこそ罰当たりで聞いた人なら誰だってとんでもないと思うだろう。


「だってさあ、考えてみろよ。この都市は神様に管理されている。管理って具体的に言えば、食べ物や住むところは与えられ、病にかかっても簡単に直され、何かほしいものがあればすぐに出してくれる。おかげでなんの不満も不足も起こさせない故に、争いとか起こさせない。でもな…………」


 シアンは昔の自分のことを思いだし、それを振り払った後にイエローに訊く。


「実際、こんな都市に住んでお前は満足だと思っているのか?」

「え?」

「オレは思わない。なんの活力も感じない。生きるための努力が感じられず、ただ生かされているだけだって思わないのか?」

「…………」


 そう言われてイエローも心当たりが浮かぶ。

 かつての自分とそれを取り巻く環境に、イエローは満足など程遠くむしろ嫌々なところが数多くあった。

 何も言わないイエローからなにかを察したシアンは、そのまま自分の主張を続ける


「それにオレだって今までは生きる目標と言うものがなくて、ただそのまま生き続けているだけのような存在だった。けど今は違う……」


 シアンの瞳に強い意志が宿っている。

 彼は正気のまま言う。


「この不満は神様にぶつけてみようじゃないか、と……それを生きる目標にしてみようじゃないかと思ったわけ……」

「あんた目標の選び方が間違っているわよ!?」


 だからといってそれはそれ、これはこれ。

 いくらなんでもそれは命知らずな行為である。

 神に逆らうなど知れたら真っ先に天使達に罰せられるのだ。


「いいや、これ以上に強い目標ってないんじゃないか? それに神様にはいろいろと言いたいことがあったし」

「…………! ねえ、あんたも何か言いなさいよ! 昔からの友達なんでしょう!?」

「…………」


 どうあっても言う事を聞かないのか、イエローはマゼンタにも止めるように言う。

 しかし、


「ふむ、いいだろう。俺もその話に興味がある」

「え…………ええええええええ!?」


 止めるはずがマゼンタも乗り気になってしまった。

 予想外である。


「マゼンタ……別にお前は無理にオレについてかなくても……」

「いいや、俺も神や天使には用がある。どうしても訊きたいことがあるからな」

「マゼンタ……」

「それに危険なことに挑むお前を見捨てられはしない」

「マゼンタ……!」


 なんだか勝手に二人で盛り上がっているが、いくらなんでもそんなことを許すわけにはいかない。

 イエローは盛り上がる二人に対して思いっきり声を出して怒鳴りつける。


「待てって言ってるでしょうが! そんなことあたしが許すわけないでしょう!!」

「おいおい、そりゃお前からすればせっかく助けた命がまた危険なことに挑むんだから止めるのも無理はないが……」


 申し訳なさそうに言うもシアンは一度言ったことは撤回しない。


「残念だが、今度は止まりそうにないぜ、オレ。神様に……いや、神に反逆をしてみせる」

「…………!」


 シアンのどうあっても動かないようなまなざしにイエローは怒りと困難を混ぜたような表情をした。


 イエローは思う。

 こいつは絶対放ってはおけない輩だ、と。



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:藍


 予想だにしなかった出会いから四輝天使の一翼、〈樺地〉のジョヌに出会ったオレ達は、この果てしない平野から故郷を目指すため、ジョヌが大雑把に指を指したところをただひたすらに先へと進んでいった。

 どれほど距離があるかわからないし、【三位一体トリニティ】もマゼンタが力の温存のためと言うから使わずにただひたすら徒歩で歩き続けている。

 いやあ【三位一体トリニティ】をしないのはよかったけど歩き続けるのは結構しんどい……

 というか……


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「アォォォォォォオオオオオオオオオオオオオン!!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「いやあああああああああああああああああああ!!」


 今、猛獣に追われているんだけどそんな事言ってる場合じゃないよね!?


「マゼンタ! ねえねえねえ、あの猛獣たち倒してもいいよね!?」

「駄目だ。お前そう言いながらも多く倒してしまっただろうが。その結果がこれだ」

「いや、確かにやりすぎちゃったことは反省するけどまさかこんなに増え続けるとは思わなかったじゃないか!?」


 ちくしょう……なんでこうも頑なに逃げるばっかり選んでいるわけ……!?

 もしかしてさっきのジョヌの言葉と関係あるのか! だとしてもこんな事態でも気にしている場合じゃないだろ!?


「第一なんだあの技は? 今まで見たことないのだが」

「いやぁ……ちょっくら試してみようかなって思ったんだけど……痛たたたた……」

「無駄話は後! マゼンタ、だったらあたし達はどうするべき!?」

「うむ、やはり【三位一体トリニティ】で逃げるか、そのまま逃げ続けるか……」

「いや前者だろ! もうオレ文句とか言わないから、早く逃げようよ!」


 逃げるなら逃げるでちゃんと逃げよう!?

 オレが言ってもなんだけど。


「仕方がない。シアン!」

「ああ、わかったよ!」

「イエローに掴まれ!」

「「え?」」


 あ、それってもしや……


「ちょ、あたしの方!?」

「よし、掴まったぞ!」

「イエロー、飛べ!!」

「ああもう! 【重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】!」


 おおおお! 空を飛んだ!

 さすがの獣たちも陸上動物じゃあ追ってこないだろ!!


「ううう……上に乗られるってこんなにもいやなんだね……」

「いやいやイエロー! お前はよくやったさ。これでもう一安心……」

「いや、まだだ。シアン、イエロー」

「「え?」」


 まだ?


「上を見ろ」

「「上?」」


 言われたとおりに上を見ると……


「ピギャアアアアアアアアアアアアアア!!」

「フゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウ!!」


 あれあれあれ?

 なんか鳥のようなもんにコウモリなのか蛇なのかよくわからない化け物がいるんだが……


「イエロー。全速力だ」

「あんたさっきと言ってること違うわよ!?」

「まずいな……来るぞ!!」

「勘弁しろよぉ!!」


 とまあ……

 こんなことがありつつもオレ達は着々と目的地へと進んでいくのだった。

 ……多分。



――――――――――――しばらくして――――――――――――



 そんでもってただひたすらに戦闘を避けて進んでいくうちにすっかり日が暮れてしまった。

 結果、なぜか谷底で野宿である。


「なんでだよ!?」

「いや、なんでって言われても道の途中なんだから仕方がないじゃない」

「だとしても……」


 途中拾った木で焚火をし、その周りを囲むようにオレ達は集まって話し合いをしていた。

 だが、さっきからマゼンタは視線をオレ達には向けず、なにか小声で言い続ける。

 が、どうも反応はよろしくない。


「……おかしいな」

「マゼンタ、どうした?」

「さっきからノワールに呼びかけているのだが、まったく返事がしない」

「は?」


 そう言えばこいつさっきからずっとなにかぼそぼそと言っていたな。

 てっきりおかしくなったんかと……


「別にいつもの事じゃない? 世界の説明以外に出てきたことなんてないんだし」

「それはそうだが、だとしても不自然な気が……」


 別にあいつの事なんてそう気にする必要はないと思うんだけどな……

 不確定な奴に違いはないが、気にしすぎるわけにもいかないだろ。


「それよりも、ジョヌの案内通りに進んで本当にオレ達の故郷に近づいているのか?」

「まあそう思うのも無理はないけど、なんにも手がかりがない以上そうするしかないでしょう」


 ……確かにそうだが、距離だってわからないし…………


「それにこれまでのことから、あいつは多分卑怯な方法とか選ばない。バカ正直な事しかしないと思うわ」

「……ずいぶんとわかったようなことを言うんだな」

「バカね。ただそう思うだけよ」


 ……どの道、示されたとおりに進むしかないんだな。

 それにいつ見つかるかもわかんないし……

 今ぐらいしか、言えないかな……

 …………よし。


「……イエロー、マゼンタ。聴いてくれないか」

「? シアン?」

「なによ、そんなに改まって」


 よし、落ち着いて……

 …………うん!


「もし、この戦いが終わって……神の管理から人類を解放して……そんでもって、他のやるべきことをやり終えたらさ……」

「やり終えたら?」


 ……止まるな、止まるな!

 言え、言うんだ……!


「やり終えたら…………!」

「シアン……?」

「…………」


 …………言うんだ!!


「リヴィアの気持ちに、応えてやるさ!」


 ……言った。

 言ってしまった。

 だが、悔いの無いようにちゃんと言い切った……

 これで……


「え……えええ!?」

「…………」


 ……あれ?

 マゼンタったらリアクション薄くね?

 せっかく勇気を振り絞って言ったのに……


「……シアン、こんな時になにを言っている?」

「はあ!? ここにきて言う事はそれ!?」


 わからないの!? オレがどういう気持ちで言っているのか!


「……これは、神や四輝天使にまた負けないよう自分なりの気合の入れ方なんだよ」

「気合だと?」

「そうだ。さらなる先の目標でもはっきりと公言して、その上でなおさら負けない気でも付けようかなって……」


 こんなんおとぎ話じゃ縁起が悪いんだけどよ……

 けど、負けるわけにはいかないって気持ちを、強く残さなきゃいけないために必要かなって思ったから……


「……じゃあシアン。あんたの言ったことってつまり……」

「ああ……その……」


 ……そんなの、決まってんだろ。


「言葉の、通りだ……」

「シアン……」

「あいつにはまだまだ話したいことがいっぱいあるからな」

「……そうか」

「あんたがそれを言うなんて……」


 ……ああもう! いつまでもこんな話してられるか!!


「はい! と言うわけで次!!」

「え?」

「イエロー! お前もいったい何を目標とするか話しなさい!」

「えええ!? あたしも話さなきゃならないの!?」

「当たり前だろ! なんのためにオレが勇気だして言ったと思っているんだよ!」

「そんなのあんたがいきなり言いだしたからでしょ!!」


 それはそうだが、前もって言っておくとなんか恥ずかしくなるじゃん!


「お前も、なにか絶対に負けるわけにはいかないための想いって奴があるだろ!!」

「うっ……!? それは……」

「曖昧なものでもいい。簡素なものでいいから言ってみろよ!」

「もう……強引なんだから……」


 イエローは不満げに言うが、その後ほんの少し考える様子を見せて言う。


「あたしは……そうね。見届けたいものがあるわね」

「見届けたいもの?」

「なんだそれは?」

「決まっているわ。……この世界よ」

「!」


 この世界のことを……?


「あたし、ジョヌに言われるまでこの世界が本当は甦っていたなんてまったく予想していなかったわ。ゆえに神が人類を管理する本当の理由も……」

「…………」

「外の世界の生物ってみんな……当たり前だけど野生の中自分の力で生きているから……」


 うん、めちゃめちゃ追われていたしね。


「そこに人間を入れてしまっても生きていられるのかどうか……」

「つまり、心配なんだな」

「お、おい!」


 マゼンタがストレートなことを言っているが……


「…………そうよ」

「!」


 あっさりと認めちゃったよ……


「あたしが反逆に加わった理由はそもそも神が人類のことを『管理』なんてやり方をするから、いろいろと綻びが出てしまった」


 綻び……

 食料も病気の問題もない一見自由が感じられる都市でも、つらい出来事は起こっていた。


「同じ都市内でも、治安の悪いところと良いところに大きな差があったし、監視ってのにも隙があった。そして、ある地域で起こった辛い出来事に、神も天使も耳を貸してはくれなかった。ただ与えるだけ与えてこちらの言葉は一切聞いてはくれなかった」


 それは……オレも思っていたことだ。

なにもかも神や天使に任せっきりで自分たちは何もしない。そんな人たちが嫌でたまらなかった。

 ただ与えられる生活に……なんの不満の持たせないようなやり方に異議があった。


 オレは……かつて小さかった姿に周りの人はなんの容赦もなくなじった。

 苦しい思いをした弟は……オレも含めて誰も手を差し出してくれなかった。

 人が人を助けることがなく、ただ神から与えられ、助けられることに、人はなんの努力もしなくなった。

 管理なんてやり方じゃ、人は生きてはいられない。


「あたしはね、たとえ神を倒して人類を解放したとしても、それで終わりだなんて考えていない」


 ……そうだよな。

 ゼウスには外の世界へ進出するって言ってたしな。


「自分で考え、自分から誰かを助け、助けられ、そうやって生きていけることができるということをあたしは見届けたいのよ」

「たとえそれが、同じ過ちを繰り返すかもしれなくてもか?」

「マゼンタ?」


 なにを言っているんだ?


「問題はそれだけじゃない。仮に人類が外の世界で生きていられるとしても、再び世界が滅ぼされてしまえば、それこそ元も子もないだろ」

「マゼンタ! なにを言っているんだ!」

「……神はそれを恐れ、人類を管理しているんだ。それを忘れてはならない」


 それは、そうだが……


「マゼンタ、珍しいな。お前神に対して悪感情しか持っていないってのに……」

「実際、間接的ではあるが神が涙するところを……」

「え?」

「いや、なんでもない。そう見えただけの話だ」


 …………? よくわからないが……


「イエロー。お前が言っていることはおそらく反逆以上に厳しい事だ。それでもなお、やるというのか?」

「当り前よ」


 イエローは少しも迷うことなく答えた。


「自分で決めたことよ。迷いはないわ」

「そうか。ならばそれでいい」


 イエローの言葉を聞くと、マゼンタは特に何も言うことなく頷いた。

 安心したということだろうか。


「そして、ゼウスに見せるのよ」

「え?」

「自分の言ったことを見届けさせるために」


 見届けさせる……?

 そういやゼウスはイエローのやろうとしていることを不可能だと憤っていたな。

 だからそれを証明さるために……

 けど……


「どうやって見せるんだ? ゼウス今は巨大な船じゃん」

「そんなの簡単よ。アテネを一人連れて行けば彼女越しに見れるでしょ?」

「あ…………」


 そうか、アテネが見聞してきた情報は全てゼウスに流れていくんだな。

 というか……


「アテネを連れ出すのかお前……」

「いろいろと気になることがあるから」

「ふーん」


 なるほどね、イエローが……

 となると……


「さて、最後に……」

「わかっている。俺のことだろ」

「そう来なくては」


 ってまあ、すでにそれがなんなのか聴いたけど改めてだ。


「俺の目的……簡単なことだ。ルルゥのいる世界へ戻り、残りの賭けに勝ちに行くこと」

「だよな」

「それと、もしかしたらでいいが……」


 え、まだあるのか?


「あの小僧と再会する事だ」

「え?」


 あの小僧って……


「それってアユムのこと?」

「……そうだ」


 ……なんか意外な名前が出てきたな。


「へえ~、マゼンタったらなんでまたあの子に会いたいと思っているわけ?」

「簡単な理由だ」


 するとマゼンタは全身の傷跡を指して、恨みがましく……とは違うが、無表情に言う。


「この傷の礼をまだ言っていない」

「おいおい……」


 ……その台詞は悪役に聴こえるぞ。


「あの小僧にはいろいろと気になることがある。それも含めて話し合いたいことがあるからな」

「いろいろって?」

「あいつが関わっている、あの世界での人間の事や、あいつ自身の事とかな」

「へー」


 少し意外だな。

 けど……


「本当に簡素だなお前」

「俺にもやることは多いがな」


 まったく、マゼンタも容易じゃない道を選ぶんだな。

 が、それも立派な目標だ。


「そんじゃあまあそれぞれの目的がはっきりしてきたところで……」


 言うとしますか。


「イエロー」

「なに?」

「マゼンタ」

「なんだ」


 言いたいことは……たくさんあるけど……

 まずは目的を果たすために……


「……勝つぞ」

「もちろんよ」

「当然だ」


 ……と、そろそろ夜も深まってきたところで。


「シアン、イエロー。明日は早い、そろそろ寝るぞ」

「了解」

「おやすみ、シアン、マゼンタ」


 焚火の火はそのままに、一応耳を澄ませた状態で、オレもイエローもマゼンタも明日に備えて眠りについたのだった。

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