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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第四章・神と人間の世界編
95/114

天使たちの会合 その2

皆さんどうもお久しぶりです、ゾンビ―鈴木です。

本日をもってこの作品の投稿を再開します

それでは、どうぞ。

―――――――――――――――断章―――――――――――――――


  Side:三人称


 神が人類を管理する都市。

 その中のとある地域にはかつて男尊女卑の王国から流れてきた人たちが、相も変わらず男尊女卑の思想のまま、水面下で差別が続かれていた。

 そして、一年前、父親のある行動がきっかけで家を出たとある少女は外の世界に合わせて、擬似雪の降る暗い夜の時間に偶然あるものを見つけ出した。

 それはあまりにも予想外のものだった。


「な……なにをしているのよあんたは!?」


 少女が見つけたのは一人の傷ついた少年と、おそらくは傷つけた危険な少年たちであった。

 一方は全身のいたるところに傷をつけ、雪の降る中激しい出血をしている少年。

 もう一方は、いかにも真面目そうな格好をした、しかし危険な雰囲気を醸し出す者が数人もいた。

 危険な少年たちは予想外の部外者に対して慌てた様子はなく言う。


「おいまずいぞ。せっかくの死角だってのに見つかっちまったじゃねえか」

「おいおい、どうすればいいってんだぁ?」

「死角ですって……!?」


 少女は見渡す。たしかにどこにも天使達はいない。

 つまりこいつらは天使の監視が届かないところで喧嘩……いや、ただ一方的に少年をいたぶっているだけであった。

 その光景が少女にとって嫌な光景にしか見えなかった。

 かつて女は男に劣るといったバカげた思想で、男が女を虐げていたあの頃に既視感を覚えた。

 とにかくこの時点で少女に逃げるという選択肢はなかった。


「ちょっと! なんだかよくわからないけどやめなさいよ! この子、血とか流して大けがじゃない!」


 少女は、通用しないと思いつつも危険な少年たちに静止するように言う。

 しかし、三人の中でもっとも威圧感のある巨体な少年が前に出て言う。


「あぁ? 何言ってるんだお前? このガキは自ら望んで俺たちに叩かれているんだよ!」「えっ!?」


 案の定通じはしなかった。

 それどころか巨体な少年が驚くべきことを言い出したのだ。


「自分から望んでって……そんなの信じられるわけないじゃない! この子が喋れないからってなに勝手なことを……!」

「勝手なわけないだろ!」

「!」


 と、ここにきて傷つけられた少年が、傷ついた体に構うことなく大声で叫びだした。

 どうやら自分がされてきたことに途中から入って苛立っているという事だ。

 少年の敵を見るような目に、少女はなぜなのか理解できずほんの少し臆した。


「な、なによ……」

「いや、なんでもない。間違ってここに来てしまったんならまだ運がいい。見なかったことにしてとっとと去れ」

「…………!!」


 少年の命令するような言葉に少女はカチンときた。

 その上から命令するような態度は、かつて散々自分や母親を虐げてきたあの父親にそっくりなのである。

 さらに少女は、自分から傷つくためという行為が理解できず、それゆえに頑なに少年の言う事を聞きたくなかった。


「……嫌に決まっているでしょうが! なによ! 自分から望んで他人に傷つけられるなんて、あんたバカじゃないの!?」

「…………うるさい。せっかく逃げるチャンスを与えたというのに」

「…………!」


 少女はとうとうキレた。

 この怪我をした少年は今初めて会ったばかりの赤の他人であるが、怪我をしていることと、そのどこか諦めたような態度は見ていて不愉快であり、放っておけばさらに不愉快であった。

 つまり少女の嫌いなタイプであった。


 なにがなんでも少年を助け出そうとする少女の目の前に、危険な少年が立ちはだかる。


「おい、なに勝手に二人だけで盛り上がっているんだ」

「これ以上踏み込んで邪魔をするなら、女でも容赦はしねえぞ!」

「今なら間に合う。見なかったことにして帰れ!」


 危険な少年たちの警告と勧告を、少女はあっさりとはねのける。


「そんなもん結構よ! 一人を集団で傷つけるなんて卑怯な真似、あたしが許さない!」

「上等だ、ならば覚悟しろ!!」


 そして、天使の監視が届かないところで、少女と危険な少年たちは派手な喧嘩を繰りだしたのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:三人称


 ここは神が存在する空間。

 先ほどルージュと神が話していたとことは別の場所で、四輝天使の一翼〈蒼海〉のブルーは、ルージュに貫かれたお腹を時々確認するように押さえつつ、深刻な顔をして重要なことを話そうとしていた。

 が……


「……ヴェール、ジョヌ、お願いですから聴いてください」


 だが、どうもブルーはどこか憂うような表情になって、手で顔を覆いながら眼前にいる天使たちを見た。

 現在ルージュはここにおらず、いるのは三翼の天使達。

 そのうち二翼はいつもと様子が違っていた。


 常に攻撃的な含み笑いをする緑天使ヴェール。

 いつもいつも自分優先で動く黄天使ジョヌ。


 いつもはうるさかった彼らは、どこか心ここにあらずと言った様子で宙を眺めていた。

 話を聴かない様子にブルーはため息を吐いていると、突如二人は話し出しす。


「ねぇ……ジョヌ……」

「はっ……なんでぇい……」

「あたしたちって……いったい何のために生きているのかしらね……ふふふ…………」

「はっ……他人に求めることじゃあねぇだろ……」


 かすむような声で二人は言う。

 その様子にブルーは沈痛な様子で項垂れてしまった。


「……ルージュにお仕置きを頼んだのは間違いでしたか…………」


 こうなってしまった原因はブルーには明確にわかっていた。

 前にブルーは、ルージュに規律違反の事でヴェールとジョヌにお仕置きを頼んでいたのだ。

 彼女はどういう手を使ったのか、それが原因でヴェールとジョヌはこんな感じに精神的に燃え尽きた状態にされたのだ。

 別にいつもの事だから放っておけば何とかなるのだが今は間が悪いことに話さなければならないことがある。


「……うふふふふ……いっそのこと……いっそのこと…………」

「はっ……俺様って……なにを求めていたんだろうなぁ……」

「……まったく、あなたたちは…………」


 ブルーは思う。

 いつもいつも面倒なのに、こうして静かな時もそれはそれで気味が悪い、と。

 そう思う自分、身勝手な考えであるとは自覚しているのだが……


「……仕方がありません」


 重大な話ではあれ、今までの事からもうそろそろ燃え尽き状態から回復すると読んだブルーはもうしばらく待つことにした。



――――――――――――――――しばらくして―――――――――――――――



「うふふふふ♪ まったくルージュも困ったものね」

「はっ! あの状態ってのはまったくいいもんじゃねえからなぁまったく!」

「…………」


 自分の考え通り復活したのはいいが、また面倒な状態になったのかとため息をつくブルー。

 そんな様子に二人は……


「あら、どうしたのよブルー。ため息なんかついて辛気臭いわよ。うふふふふ♪」

「はっ! そんなんじゃあ全然楽しくならねぇぜ!!」

「…………」


 もう何も言う気力もないブルーは無駄話を置いて本題に入ることにした。


「ヴェール。ジョヌ。早速で悪いですけど聴いてほしいことがあるのです」

「うふふ、重大な事?」

「はっ! お前ぇのことだからある程度予想はできるがぁ、いったいなんでぇい?」


 二人が話を聴く体勢に入ったので、ブルーは一旦息を吸って、内容を話しだした。


「彼ら反逆者が……とうとうこの世界まで足を進めてきました」

「「…………」」


 しばしの沈黙。

 そして、


「……うふふふふ♪ そう……とうとうここまで来たのね♪」

「…………?」


 ヴェールはどこか待ち焦がれた者に対して歓喜するように、ジョヌはどこか驚くように……

 いや、驚くというより呆れている。


「ジョヌ? なんですかその表情は」

「いや、思っていたほど大したことねぇ事態だったな」

「なに?」


 自分たちが仕える神に反逆した脅威がもう近くまで来たのに大して驚いていないようである。

 それどころかよほどの事を思っていたのか、今聴いた事が大したことないと言いだした。


「はっ! 挑戦者たちがこの世界へと帰ってくることなど、不可能たぁ信じられねぇんでぇい」


 どうやらジョヌは反逆者がここまで来ることを半ば確信しているようだ。

 じかに戦ったからだろうか、ジョヌの瞳には確信めいたものがある。

 そんなジョヌにヴェールは面白そうに笑う。


「へぇ~、ジョヌったら随分とあの大罪人ゴミクズたちを買っているのね」

「そんなん当然でぇい! 挑戦者たちが途中で脱落するなど、そんなの俺様が許さねぇからな!」

「……あなたは本当に誰の味方ですか…………」


 ブルーがげんなりした様子で、今さらなことを聴くと迷うことなくジョヌが答えた。


「誰の味方でもねぇ! 俺様は俺様だ!」

「…………」

「だが! 挑戦者と戦う上では、挑戦者の敵である!」

「……そうですか」


 だが、同じ主に仕える者としてここは素直に聴いておくことにした。

 なんだかんだで神様に危害を加えるようなことはしないと分かっているからである。


「うふふふふ♪ ちなみに本当はいったい何のことだと思っていたの?」

「あぁ?」


 ヴェールは先ほどジョヌが何を思っていたのかを訊いた。

 反逆者たちがここまで来たことより上の事が何かと……


「いや、お前ぇが言うからにはノワールの事について何かわかってんじゃねぇのかってな」

「…………!」


 予想外な所で懸念していたところを突かれ、ブルーは素直に驚いた。

 確かに、問題ごとはもうひとつある。


「……あのおチビちゃんたちに手を貸している不届き者の事?」

「確かに、直に会ってはいませんがマゼン……反逆者からはそれらしい力が感じられました」


 ブルーがマゼンタと対峙した時に、感じられた力。

 もしもジョヌから話を聴かなければ大して気にしないのだが、聴いた以上意識せずにはいられない。


「はっ! 挑戦者と戦えることはまだいいが……」


 ジョヌは今ここにいない誰かの顔を思い浮かべ、懸念するように言う。


「……あの野郎が無粋なことをしでかさないか心配でぇい」

「……あなたが心配するところはそこですか?」


 そう、懸念しているのは勝負の邪魔という所であった。

 自分の従える神の事ではない。

 結局自分中心の内容にそろそろブルーも苛立ち始めた。

 苛立ちが本質であるわけではないのになぜこうもストレスがたまりやすいのだろうかとブルーはまたもため息をつく。

 すると、


「さて、そんじゃあまあ行くとするか」

「え!?」


 突然ジョヌが踵を返し、どこかへと脚を進めようとしていた。

 ブルーは慌ててその理由を訊く。


「ちょっと待ってください! いったいどこへ行くのですか!?」

「はっ! なぁに、奴ら挑戦者をここまで向かわせるのに、案内ってもんが必要だろ?」

「うふふ、そうね。闘うにふさわしい場所ってものが必要だしね」

「あ……」


 ブルーは理解した。

 確かに、今自分たちがいるのは神が人間を管理する場所であるドーム状の都市。

 その中でもある場所を指すのだが、恐らく反逆者たちが現れるのは……


「外の世界……」

「そういうことだ。……教えなくちゃならねぇだろ?」

「……そうですね。でしたら僕も……」

「いや、俺様一人でいい」

「え!?」


 ブルーはジョヌが早まって戦闘をしないのか心配しての同伴だったのだが、さすがのジョヌもブルーの言いたいことがなんなのか察し、すぐに断った。

 笑いを堪えるヴェールを横目にブルーはジョヌの言いたいことを聴いた。


「安心しろぃ。俺様にだって分別ぐれぇは弁えている。心配するな」

「しかし……」

「安心しろってんでぇい」

「しかし…………」

「さすがに三対一で独り占めする気はねぇ」

「しかし………………」

「だああああああああああ!! しつけぇわ!!」


 なかなか引き下がろうとしないブルーに激昂するジョヌ。

 正直言うと今のジョヌはどうも信用できない。

 なにせ、機械の世界で大地を滅茶苦茶にした張本人でもあるからである。

 もっとも、それ以外にも要素は多いのだが……


「……あっはははは!! ジョヌ、あんたって今は信用できない状態なのよ」

「なに?」

「だってそうでしょ? なんだかんだであんた大罪人ゴミクズ追っていろいろとしでかしちゃっているんだから」

「……ったく、信頼されねぇのもわかるがよぉ」


 苛立ちに頭をかきむしりつつジョヌは確固とした理由を話し出す。


「俺様は挑戦者のあの女に言ったんでぇい。神がいったい何を思って人類管理をしているのか、知りたければ先へ進めってぇな」

「…………」

「今がその時でぇい。行かせろぉい」


 ジョヌは珍しく真剣な目でブルーの瞳をまっすぐ見た。

 気圧されるような感覚にブルーは諦めのようなのも交えたため息をついた。

 そして、


「……わかりました。そこまで言うなら行っても構いません。ですが……」

「わかっている。分別ぐれぇはわきまえるってなぁ」


 ようやくブルーの了承を得たジョヌは歩を進めて、おそらくは反逆者たちのもとへと行ってしまったのだった。

 取り残された二翼はそれぞれ対称的な心情で話す。


「うふふふふ♪ ジョヌったら、大罪人ゴミクズに会うのを楽しみなんかにしちゃって……」

「そう言うヴェールこそ、あなたのことですから一緒に行くのかと思ったのですが?」

「いいえ、あたしはここで彼らを待っているわ」


 ヴェールはそう言うと今にも獲物に齧り付く獣のような笑みを浮かべ、そしてすぐにニコニコした表情に戻って言う。


「どうせ再会するなら、こんな改まった場所でないとね♪」

「…………」


 ヴェールは待ち焦がれるように、感情をうずうずとさせつつ反逆者たちを待つことにしたのだった。

 ブルーはこんな時でも変わらないヴェールとジョヌに呆れつつも、自分も反逆者たちの再会を待っているのだった。

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