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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
94/114

忘れないもの

第三章の終わりです。

そして久々にあの方が……

それでは、どうぞ

  Side:歩


「はあ…………はあ…………はあ…………!」

「ウウウ~~~クゥ~~~~~ン…………」


 あれから……いったいどれくらい時間が経ったかな……

 よくわからんが、そんなに経ってはいないと思う。

 だが…………


「グ……ギュア………………!」

「フゥゥゥゥゥゥゥ…………!」

「ブオォォ……ォ…………!」


 みんな……

 おれっちの話を聴いて、共に戦ってくれた同志よ。

 すまない……そして、


「ありがとう……みんな」

「ギャ、オ……」

「グ……アァ…………」


 おれっち同志たちはそれぞれ疲労とダメージによって動けない状態になってしまったけど……


「みんなが頑張ってくれた結果、無駄にしない」

「バウッ!」


 結果は上々と言うべきだ。

 仮面戦士のほとんどは同志たちと戦ったことにより疲労と負傷による無力化がされていた。

 もちろん死傷者はいない。指示通りみんな手加減はしてくれた。

 これだけの数によくやったと思う。


 まあ、もっとも……


「まだ……まだだ……!」

「諦められるか…………!」


 まだほんの少しだけ動ける人もいるけどね。


「おっさんたち。そろそろあきらめた方がいいんじゃない?」

「……そう言うアユムこそ、満身創痍であろうが」

「はは…………そうだな」


 おれっちの前にまだ立ち続けているのは三人の仮面戦士。

 しかも偶然か必然か、その三人とはおれっちと初めに会ったおっさんたちだ。


「少年……まさか君がそこまで強い子だとは……正直予想外だったよ」

「いやいや、竜と戦うのと人と戦うのとじゃあいろいろと違うもんだし」


 さっき仮面戦士と言ったが、一部または半分以上が破壊されて素顔が見えてしまっている。

 その内、さっき話しかけたのはおれっちに聖地の事を教えてくれた怒髪天おっさん。


「アユムの坊主……お前、結構根性があるじゃないか」

「へへ……そいつは嬉しいぜ」


 まだまだ倒れないと言うように、でかい槍をぶんぶんと回す、仮面が砕けていた槍使いの兄ちゃん。

 そして……


「アユム……お前は何を思って俺たちを止める」

「…………」


 三人の中でもう倒れてもおかしくないほどの疲労と負傷を追う、リーダーらしき体がでかいおっさん。

 おっさんは味方のほとんどが戦闘不能に陥ってもなお不屈の目でおれっちを見ている。


「お前は……まだ出会ってからほんの少ししか経っていないはずだ。なのになぜ命を危機にさらしてまでそんなことをする?」

「……親密度に長いも短いもないさ」


 それにに速い遅いもそうはない。

 惚れた腫れたもそうだろう? 今は関係ないが。


「……おっさん。家族ってさあ、かけがえのないものだよな」

「なに?」

「おれっちの家族はさあ、まあいろいろと妙なことがあるが母も父も兄姉もみんないる。まあ行方不明がいるが無事で会ってくれと信じている。だから、失ったことのないおれっちに奪われたおたくらのことは分かり切ってはいないかもしれない」

「「「…………」」」


 まあもっとも、祖父とかが寿命でコロッと逝っちゃったけど、病であって奪われたわけじゃないしね。

 ただ病で死ぬよりも、形あるものに意図的に奪われたことが何よりも憎らしいということか。

 まあ、どうにせよ……


「でもなおっさんたち、おたくらはとにかくおれっちにとってはおっさんたちはもう他人という関係では済まされないんだ」

「なに?」


 そうさ、会ってまだ一か月もたっていないが、それなりにたくさんの思い出がある。


「共に戦い、共に命をさらし、共に勝利し、共に頑張り、共に必死になり、共に喜びや哀しみを感じ合う。……人と人とがなにかを共有し合った人たちの事を、おれっちは友達といい、そして仲間って呼ぶんだ」

「友達……だと……!?」

「そうさ。おれっちはおっさんたちのことを大事な仲間だと思っている」


 口にすると恥ずかしいし白々しさを感じさせる

 だが、言わなくちゃあならない。


「おっさん。おれっちはまだ十と四の時しか生きていない子供だ。でも、そんなおれっちでもいろいろと考えて考えて、それで言うんだ」


 大切な人を奪われたら、おれっちはどうなるんだろうか……

 耐えることができるのか、それとも堪え切れないのか、

 わからない……わからないけど……!


「おっさん。家族を失った痛みは……実際おれっちには測り切れないかもしれない。でも耐えてくれ。復讐なんてせずに耐えてくれ!」

「…………!」

「おっさんたちの傷ついた心を癒してくれる人はいる! 残った人たちの事に目を向けてくれ!!」


 おっさんたちだってわかるだろ……

 こんなことをしても、なにも生み出せないって……


「……それでももし、ほんの少しだけ人竜族のことが許せないと思って、耐え切れないことがあったら……」


 だからおれっちは……


「その時はまたおれっちと喧嘩をしよう!」

「なに…………!?」

「おれっちがおっさんの憎しみを受け止めてみせる!」


 別に八つ当たりされる気はない。

 気の済むままその怒りを放出させるだけだ。


「何度でもおれっちはおっさんを止める。おっさんの辛さや哀しさを受け止めて戦ってやる。おっさんの気の済むまま、何度でもおれっちは付き合ってやるぜ」


 そう簡単に発散されないのなら……

 全ておれっちが受け止めてみせる。


「だからな、おっさん。改めて言う」


 これは……嘘偽りのないおれっちの本音だ。


「もう、自分の命を危機にさらすことはやめてくれ。人竜族を襲うなんてことはやめてくれ。誰かを憎み続けるのはやめてくれ。そして……」


 おれっちの断鋏は……

 まだ動く!


「この戦いに決着をつけよう!」

「アユム……!」

「少年……!」

「小僧……!」


 ……おっさんたち皆武器を構えてこっちを睨んでいる。

 まだまだそう簡単には倒れないってことだな。


「とと、悪いがもうしばらく付き合ってくれ」

「バウッ!」


 ……ありがとうな、我が愛犬にて、我が相棒よ。

 それじゃあ……行くとするぞ!!


「ここを通りたくば、おれっちを倒してから行けぇ――――――――――――――!!」

「「「うぉ――――――――――――――――――!!」」」


 おれっちは友達を……仲間を守るさ!!

 たとえ、敵に回すことがあったとしても!!



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:紅


「開いたか……」

「ああ、そのようだな」


 首長竜の首を斬りおとしてから数時間後。

 落下地点の平原から黒くて大きい穴が出現した。

 間違いない。次元の穴だ。


「……なんなのだお前等は……!?」

「ん?」


 俺たちが穴を前にしていると後ろから少女の父親の信じられない声が聞こえた。


「俺たちが苦労を掛けても倒せない《ムシュフシュ》を、貴様ら人間がなぜこうも簡単に…………!」

「言ったはずだぜ。オレたちは、全ての戦争を終えた神を相手に戦っている。こんなところで躓くわけにはいかない」

「……ならばその小娘が話したことは…………」


 少女の父親はほんのすこし呟くと……


「…………本当に、お前たちはとんでもない人間だ」

「まあ、とんでもなくさせたのはオレ達とは少し違うが……」

「そうか……」


 すると少女の父親はほんの少し俯き……


「一つ、訊かせてくれ」

「……なんだ?」


 少女の父親はなにか訊きたいことがあるようだが……


「お前等は神と呼ばれるものが人間を管理することに不満を抱き、反逆したと言ったな」

「ああ、そうだ」


 俺たち目的は同じだが動機は大きく違う。

 特に俺は……かつては神に対してのみであった。


「なら、お前たちは神を殺すつもりなのか」

「…………」


 この男は……

 おそらく人間や人竜族の事についてとにかく言ってくる俺たちに対してのことだな。

 だとするなら……


「……そうだな。そうしてまで人類を解放させるつもりだ。だがな……」

「?」


 気づいたのはほんの少し前だが……


「このチビが何かとんでもない事を考えている。神を倒すのとは別の、とんでもない考えをな」

「ギグッ!?」

「え?」


 シアン、図星か?

 悪いがお前が何かを考えていることは丸わかりだ。

 特に悩み事をしている時はな。


「そうなの? シアン」

「ああ……いや……その…………」

「まあ、詳しいことは後で訊くが……」


 俺は改めて少女の父親に振り向く。


「少女の父親。賭けの事、覚えているか?」

「ああ。一つは貴様らが《ムシュフシュ》を倒し、聖地を作り上げれば……」

「人竜族は人間の所へ攻めてもらう事をやめさせてもらう」


 そして、もう一つの賭けは……


「もし、俺が再びここへ帰って来れたら……」

「俺はお前と手を組み、いずれは人間と人竜族を和解させ、共存させる、か?」


 そうか、賭けの事はしっかりと覚え……


「ええ!?」

「なに!?」


 ……シアン、イエロー。

 お前等驚きすぎだ。


「マ、マゼンタがそんなことを言うなんて……」

「か、変わったなあいつ……」


 ………………。


「……それは不可能に近い絵空事だと思わないのか?」


 ……まあいい。傍で驚いているこいつ等はさておいて。


「そうだな。個人どころではない集団と集団の問題だ。お前の言っている大きな流れと言うのはそうそう変えられるものではない。だが……」


 山は高いからって登れないわけではない。

 道は遠いからって歩けないわけではない。

 つまり、何もできないわけではない。


「そこで何もしないより、何かをして動いた方が遥かにいい。たとえ全力で動いて、最後までかなわなかったとしても、今よりは遥かに良くなる可能性がある」

「今より……」


 せめて俺たちが今こうしてやったことが争い事を遠ざけることなになるのなら幸いである。


「そして、いつか俺たちのことを理解してくれる人がいれば、いずれ俺たちの残したものを継いでくれる」

「…………」

「そして何より、本当に不可能なことなど何処にも存在しない」

「なに…………!?」


 ……反逆もそうだ。

 俺たちは神に逆らうなど、どう聞いても不可能な事を実際に起こした。

 最終的に敗れたとはいえ、神や悪魔の考えにより好機はまだ終わらずに続いている。


「少女の父親よ。流れなど、確かに一人の力だけでは変えられない。変えられるのは多くの者だ」


 実際、ここまで来たのは多くの者の協力が不可欠だった。

 シアンもイエローも当然の事だが……

 ノワールを呼びだしたかつての仲間や、異世界に飛ばされた後も力を貸してくれた人たち。

 そのおかげで俺たちはここにいる。


「だが、変えられるほど多くするにはまず一人が動かないといけない」

「!?」

「動かす姿を見せるものが必要となる」


 ……俺たち反逆者が動き出したのはあの事件が始まりだ。

 いや、それ以前に俺たちよりも前の反逆者たちが始まりか?

 まあ、どうでもいい。


「少女の父親。俺がここへ戻ったら、俺に力を貸してくれ」

「……その答えは今返せないな」


 なに?


「返すのはお前が戻ってきてからだ。それまで俺は俺のままでいる」

「…………そうか」


 ……確かに、まずは神を倒してからではないといけない。

 話はそこから、だ。


「え!? ちょ、ちょっとこれって……!」

「!? おい、マゼンタ! 急げ!!」

「? シアン、いったいどうした」

「次元の穴が閉じ始めている! 早く話を終わらせろ!」

「なに!?」


 いかんな、急がないと……


「少女の……いいや、ルルゥ」

「! お前、俺の名前を……」

「お前の仲間がお前をそう呼んでいたんだ。間違いはないだろ」


 後にお前とは長い付き合いなるかもしれないし、な。


「それよりもお前の娘に、こう伝えてくれ」

「なんだ」


 せめてこれだけは言っておかなくては。


「リュチェ。俺は少しだけ遠くへ行く。だがいずれはここへ帰ってくるつもりだ。待っていろ」

「……わかった」


 さて、言いたいことは伝えた。


「じゃあなおっさん! オレ達がやったことは言うんじゃねーぞ!」

「当たり前だ」

「娘と自分、この二つをもっと大切にしなさいよね!」

「……その通りだな」

「ルルゥ! また会おう!!」

「ああ、待っているぞ。マゼンタ!!」


 そして俺たちは、次元の穴の中へと入っていったのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――



「なあ、マゼンタ」

「なんだ」

「お前がここまでさっきの世界のことを考えてくれるなんて吃驚だ」

「そうね。普段のあんたを知っている人が見たら驚きだよね」

「……いったい俺はお前等からどう見える」

「「…………」」

「……まあいい。俺には俺の考えがあると思っておけ」

「まったく、あんたは容赦がないのかそうでないのか……それよりシアン」

「なんだ、イエロー?」

「あんたが先ほど考えていたことって何?」

「え?」

「ほら、マゼンタが指摘したとんでもない考えって……」

「!? あ、いや……それは…………」

「どうせ俺やイエローの事で遠慮して言えないだけであろう」

「ぐっ!?」

「そうなの、シアン?」

「……はい、そうです」

「どうせ次の世界までまだ時間がある。話してくれないか」

「そうよシアン。あたしとかマゼンタとかの事はあたしやマゼンタが判断するわ。だから遠慮しないで行ってちょうだい」

「わかったよ……本当は、機械の世界からここに来るまで考えていたことだが」

「うん」

「実は…………」



――――――――――――――――――――――――――――――



 シアン、マゼンタ、イエロー。

 神に対する反逆者たち。

 三人はこの世界にて、争う事はどういう事かを直に見た。

 争いとは、互いの恨みから生じ、時間と共に広がっていくこと。

 争いとは、だれかが止めないと願い、実行に移さない限り続くと。

 人と人が争うのに理由は数多くある。

 しかし三人はその中でも最も強く厄介な場面を見た。

 そして、自分たちの過去はいったいどうだのだろうか、と

 合理と感情、個と集団、正しさや間違い。

 そう、流れとは多いものが勝るのである。

 それに逆らうには、周りを自分と同じに変え、自らを大きな流れに変えない限り逆らう事は難しいのだ。

 ならば、たった三人の反逆者はいったいどうなのだろうか。

 この反逆は本当に元の世界の、人類のためになるのだろうか。

 三人は先ほどの世界の事を胸に秘め、

 そして、迷うことなく先へと進んでいったのであった。

 その途中、一人が話したこととは……



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:三人称


 シアン達が次元の穴に入った一方、神が存在する空間にてある存在が立っていた。

 それは、何とも形容しがたい存在であった。


 身長よりも長い髪も、ほんのわずかしか見えない肌も、全身のほとんどを覆うように着ている衣服も、すべて真っ白であり、更にその容貌はとても中性的で男とも女とも見える。

 そいつは感情を読ませないような無表情で、たった今異世界から帰ってきた天使に迎えの言葉を放った。


「おお、ルージュ。よくぞ戻った」


 戻ってきたのは全身赤を基調とした服装の天使、ルージュであった。

 ブルーも戻ってきてはいるがここにはいない。一足先にここへ向かったのだ。

 彼女はその白い存在にたいして片膝をついて言った。


「ただいま戻りました。……神様」


 神様

 ……そう、彼女は言った。


「ブルーは無事、自ら抱えた問題を解決したようです」

「そうか……」


 そう……この者は三人の反逆者がたびたび名前を出した存在……

 神……である。


「そのブルーはいないのかね?」

「はい。わたくし一人で行かせてほしいと懇願したからです」

「…………」


 ルージュの言っていることに特に疑問を抱かず普通に聴いていたが、


「神様、そろそろあの背信者たちがこの世界へ降りてきます」

「!」


 その言葉を聴いた神は、無表情ながらもどこか自分の中が跳ね上がった感覚がした。

 その感じを保ちつつ神は呟く。


「……そうか。ようやくここまで来たか」

「喜ぶところではありません」


 それをルージュは喜びと感じ、なぜか不快感をほんの少し露わにして言う。


「神様、わたくしにはわからないところがあります」

「……なにかね?」


 ルージュは釈然としない様子で神に訊いた。


「そもそも神様はなぜ、背信者たちを一度見逃すような真似をするのですか」

「……また、その話なのかね」


 神は無表情ながらも呆れるように言った。


「言ったであろう。彼らは私の管理を快く思わず、それどころか徒党を組んで私に逆らいだした存在だ」


 その言葉を聞いてルージュはさらに不快な気分になる。

 神は変わらずに続ける。


「しかし、彼ら三人は人間でありながらも真摯な眼をしていた。自分たちの行いを理解した上で、だが何も知らないまま私に反逆をした存在だ」


 過去を思い出し、無表情ながらも何かを思う神。


「なら、その何も知らない事をなくして、再び私の前に立ちはだかった時、彼らはどういった行動をとる?」

「どう、とは……」

「そうだ。その答えを知りたいがために彼らを異世界へ送った」


 長らく神は人間に接してはいないが、最後に会った人間はどれもこれも私利私欲のみで酷い人間しかいなかった。

 自分の国……ひいては自分のためにしか戦わない人間。そのために周りを介しない人間、そんな人間のために何も知らないまま動かされる人間に強い嫌悪を感じた。

 さらにはどいつもこいつも良識では生きてはいけないのである。そう言ったものは決まって従わされる方か従わせても裏切られるか滅ぼされるかであったのだ。

 挙句の果て、人間が皆共通して『正義』を掲げていることが何よりも耐えられない事であった。

 自分や同じ人間ばかりに気をかけて世界を見ない者たちのいったいどこが正義なのか。

 全世界が戦争の中、たとえ平和主義者な人間がいたとしても、そんなものは『正義』を掲げる人たちに埋もれて消えてしまう。

 だが……


「もっと早くあのような人間がいれば、少しは世界は変わっていたかもしれない」


 それでも神様は、そんな人間に会えなかったことを憂いた。

 もっとも、たとえいたとしても大きな流れは変えられない。世界が終わるのが速いか遅いかの違いであろう。

 だが、戦争は終わり、人類が管理されることになった今、神はあの者どもに何らかの期待をしたのだ。

 もしも、異世界の人間を知り、外の世界を知り、それで明確な答えが出せるのなら……


「彼らなら示してくれるのかもしれない。この世界をどうであるべきかを」

「…………」


 神さまは、ほんの少しのやり取りのみで反逆者に何かを感じ、期待をかけ、異世界に送った。

 神の話を最後まで聴き、それを知ったルージュは……


「……煮え切らない」

「……なに?」


 怒りに声が震えていた。


「煮え切らないと言っているのです。なぜ、絶大な力をもつ神様ともあろう存在が、そんな弱い命のために苦労しないといけないのですか!!」

「!?」


 神はルージュの叫びに内心驚いている。


「人間は……共に生きることを自ら捨て、くだらない争いから神様の愛した世界を破壊した! それが神様を困らせた!!」


 その言葉には怒りしか含まれておらず、号哭のようなものは感じられない。


「わからない! 人間はなぜくだらない争いが終わってもなお、神様を困らせるの!?」

「…………」

「なぜ! いっそのこと人間すべてを滅ぼそうとしないのですか!!」


 ……ルージュは怒りを表しにそう叫ぶと、すぐにはっと正気に戻って、


「……申し訳ありません。わたくし、少々感情的になりました」

「……そうか。君はまだ怒りを残している。それがわかっただけだ」

「…………」


 落ち着きを取り戻した彼女はその後踵を返す。


「わたくしは、この世界に来た背信者を容赦なく迎え撃ちます。構いませんね?」

「構わん。そこで負けて死ねば、それまでの者たちよ。ただし、世界は壊すな」

「わかりました。では……」


 そう言うとルージュは颯爽とどこかへ行ってしまったのだった。


「……………………」


 神様はほんの少しだけ、沈黙すると、


「……さて、彼ら人間はただ利用されているだけか、それとも自らの意志でここにいるのか」


 どこか懐かしむような、それでいて敵愾心を持って……


「それもまた見物だな。ノワールよ」


 ある悪魔の名を呼んだのだった。

 自分以外に誰もいない空間でその声はどこまでも響いたのだった。




 第三章・竜と狩猟の世界編 完

 第四章・神と人間の世界編 へ続く……

さて、突然ですが次回の更新は十月です。

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