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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
93/114

vs ムシュフシュ

空中戦って難しい……

二次元から三次元だから……

それでは、どうぞ

  Side:紅


 ……妙なことになってしまったな。

 まさか本当に首長竜と空中で戦うことになってしまうとは。


 状況をまとめて見ると……


 俺たちと少女の父親の四人が、例の竜を倒すべくある山を目指したのだが、その首長竜(ムシュフシュ)がアユムが示した場所に待たず、ご苦労なことにわざわざ自分から赴いて来やがった。

 おかげで俺たちは空中に投げ出され、常に空を飛び続ける相手と戦うために、俺たちは擬似的に空を飛行することができるイエローの背中に乗って対抗した。

 が……


「マゼンタ。もうちょっと前に行ってくれねーか? 落ちそう」

「文句を言うな。ただでさえ狭いんだ」

「そうよシアン! そもそもあんたら人の背中に土足で乗っているんだから」

「あ……ああそうだな。ごめん」

「…………」


 ……いろいろと不安定な所が多い。

 イエローが主体の【三位一体トリニティ・改】も本当は考えてはいただけで、実行するとは思わなかった。

 だが、まあ……


「それよりイエロー! 正面から来る。上へ昇って避けろ!」

「了解!」


 今のところ、うまくはいっている。

 俺の指示にイエローは自らを急上昇させ、正面から突進してくる首長竜を紙一重で回避した。


「「「…………!」」」


 巨体に見合わず、なんて速さだ。


「マゼンタ! 後ろから来るぞ!」

「!」


 シアンの言葉にイエローは素早く方向転換し、真後ろを向いた。

 するとほんのついさっきすれ違ったばかりの首長竜が再び羽を動かしてこちらへ突進してくる。


「ちっ! あの大きさでもう切り替えて来たか!」


 とにかく厄介だ。


「イエロー! 奴の横を通り過ぎるように避けてくれ!」

「わかったわ!」


 今度は奴とすれ違うように紙一重で奴の左側へ避けた瞬間、


「【付焼刃つけやきば】!」

「!?」


 俺は右手の甲から出した赤い刃によりすれ違いざまに……


 ザクッ! ザザザザザザザザザザザザザッ!!


「!? ギィアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「うおおおおおおおおおおおお!!」


 奴の脇腹に深く切り込みを入れ、そこから刃を走らせる。

 切れると焼けるの同時の痛みに首長竜は大きな悲鳴を上げる。

 が……


 ブンッ!!


「「「!?」」」


 尻尾……!?

 まずい!


「イエロー! 回避を!」

「だめ! 間に合わない!!」

「ぐっ……!」


 やられた……!

 奴め、捨て身で俺たちに尻尾を叩きつけるつもりか……!

 このままだと正面衝突……


「なんの!」

「「!」」


 なんだ……!?

 イエローが急上昇したのか……!


「何とか回避できた……!」

「今の内だ!」


 俺は【付け焼刃(つけやきば)】を消し、イエローは上昇からすぐさま首長竜から距離を取った。

 その際、追尾が来ないかどうか確認しつつ、奴から距離を取った。


「ふぅ……危ないところだ」

「まったく、いつまでジリ貧の状態のままなんだよ」

「ジリ貧ではない。様子見だ」


 今のところ、奴と接近と俺たち退避による攻防を繰り返している。

 奴の毒息ブレスがどれほどのものか知らぬ以上、うかつには近づけぬ。

 だからこうしてカウンター狙いの攻撃を行っている。


「マゼンタ。もっと踏み込むことはしないわけ?」

「いや、せめてもう一度、奴の毒息とやらを見てみない限りは……」


 俺もイエローもシアンも、どの力であれ毒に対抗するのは難しいと思う。

 まあ俺がこの状態で奴を【熱視線ねっしせん】焼くのもいいが、いかんせん相手が速すぎる。

 迂闊に踏み込んで毒を出させるなら、あらかじめ警戒した方が……


「グゥゥゥゥゥ………………!」

「ん?」


 ある程度同じことを繰り返していると、首長竜は唸り声をあげ……


「?」


 急に翼を大きく広げ出した。

 なにをするつもりだ?


「!? いかん、耳を塞げ!!」

「!」


 すると、後ろで静かにしていた少女の父親が大声を上げてきた。

 なんだかよくわからんがとりあえず言う通りにしようと耳を塞ごうとしたが……


「ちょ、ちょっと待ってよ! あたしこの体勢じゃ……!」

「…………」


 ああ、イエロー…………

 お前は無理か。

 まあそうだな。腕も足場として活用しているし。


「シアン!」

「わかった! 【無音化サイレント】!」


 シアンが力を使うと、俺たちの周辺の音が消えた。


「…………!」


 少女の父親は驚いているが構わない。

 俺たちはそのまま首長竜の動向を見た。

 すると……


「…………なに?」

「なにやっているの?」


 翼を広げたまま何もしていないようにしか見えないが……

 ……? いったい何のつもりだ?


「……!? …………!?」


 少女の父親はどこか驚いているようだが……


「グアアアアアアアアアアアアア!!」

「「!」」


 すると突然首長竜は見るからに怒り出した。

 通用しなかったってことなのか? なにを?


「……なるほど、そういうことか」

「!」


 どう見ても翼を広げたままなのだが、シアンは何をしているのかわかったようだ。

 いつの間に技を解いたのか、もう会話はできるようだ。


「シアン。あの竜なにをしているのかわかるの?」

「ああ。あれは恐らく【撹乱不快音波ブラックノイズ】と同じ、特殊な音を放っている」

「え!?」

「なに……!」


 あの竜はそんな器用な真似もできるのか……

 つまりシアンの【無音化サイレント】はそれを防いだ、と……


「どういうことだ……!? 小僧、お前今の攻撃を防いだのか!?」


 少女の父親は今の状況に驚いている。

 そりゃそうだ。シアンや俺はとにかく、耳を防いでいないイエローがなぜか通用しない。

 そのひとつ前にシアンが何をしたのか察したのだろう。


「まあな。音に関してはオレの範囲だ」

「…………!」


 シアンがいなければ危ないところだ。あの竜の攻撃は直接的だけじゃないようだ。

 …………!


「シアン! 話はそこまでだ。来る!」

「!」


 再び首長竜がこちらへと突進してくる。

 そこまでは先ほどと同じなのだが……


「あの構え……!」


 首長竜が息を大きく吸って腹を膨らませている。

 ということは……


毒息ブレスだ!」


 来るか……!

 なら一つ確認だ。


「イエロー! お前、今の状態でなにかできないか!」

「無理よ! 【重力操りで浮遊移動(グラビティムーブ)】に集中でいっぱいいっぱいよ!!」

「なら…………」


 ここはあえて一旦技を出させる!


「イエロー。俺が合図をしたら思いっきり上空へ跳べ!」

「わかったわ!」

「シアン! 耳を良く澄ませて集中!」

「おう!」


 その後俺はこっちに向かってくるも息を吸い続ける首長竜を、集中して凝視する。


 スウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ………………


 吸い続けた息が止まりだした。

 だが…………!


「マゼンタ!  そろそろぶつかるわよ!」

「イエロー! まだ上昇するな! 横へ回避しろ!」

「え!?」

「急げ!」


 首長竜は息を吸いきってはいるがまだ吐き出しそうな気配はない。

 イエローがなんとか突進から横へ回避することができた。

 すると、


「マゼンタ!」

「ああ、来る!」


 首長竜の口が動き出した。

 今だ!

 

「イエロー! 昇れ!!」

「もう! 無茶、言うわね!!」


 俺の合図にイエローは上空へと上昇しだした。

 横へ回避からの上昇はいろいろ負荷がかかる。

 だが……


 ブワッ!!


 ……!

 危ない。上昇していなければ確実にぶつかっていた。

 ……なるほど、結構な飛距離だ。


「イエロー! そのまま滞空しつづけろ!」

「わかったわ!!」


 さて…………

 今現在、奴の頭の上にいる。


「覚悟しろ……」


 この機を逃さない!


「【熱線ねっせん】!!」


 俺は十の指を首長竜に向け、指先から熱線を放った。

 指から放たれた赤い線は皆、首長竜の身体を貫く!


「ギィィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「当たった!」


 体中穴を開かれ、悲鳴を上げる首長竜。

 だが、まだ動くようだ。


「ガァァァァァアアアアアアアアアアアア!!」


 首長竜はさらに怒り出し、思いっきり翼を動かそうとする。


「イエロー! 毒息ブレスの残りに巻き込まれないように!、奴の後ろに下降しろ!」

「ちょ、面倒くさい注文ね!!」


 そう文句を言いつつもイエローは周りに気を配って奴の背後へと下降する!

 よし!


「グアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「飛ばせはしない! 【熱線ねっせん焼太刀やきたち】!」


 このまま奴の翼を……!


 ヒュ!


「!」


 横に躱された……!


「グアァァ!」


 こっちへ来る!

 速い!


「イエロー!」

「もう! 人使い荒いわね!!」


 イエローが回避をしようと急上昇をするが……

 だめだ、早すぎて間に合わない!


「マゼンタ、どいてろ!!」

「シアン!」

「【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】!! 『うああああああああああああああ!!!』」

「「!」」


 シアンは咄嗟に【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】を首長竜に向けて放った。


「ギャア!?」


 首長竜は突然来た攻撃に戸惑い、攻撃を回避した。

 だが、隙ができた……!


「イエロー!」

「わかったわ!」


 今のうちになんとか俺たちは首長竜から離れることができた。


「さて、どうすることか……」


 とりあえず奴の毒息ブレスの射程範囲がわかった。

 意外と距離は短いが、速度はある。さっきのように集中して見ないと当たってしまいそうだ。

 だが、ある程度近づかなければ攻撃は当たらないし、【熱々熱視線(あつあつねっしせん)】ではいろいろと巻き込んでしまう。

 どうするか……


「マゼンタ! イエロー!」

「シアン?」

「なんだ!」


 と、ここでシアンは何かするつもりなのかオレに頼みごとをしてくる。


「あの《ムシュフシュ》って竜に近づいてくれ!」

「なに!?」


 随分と直球的な頼みだな。

 イエローも驚いている。


「はぁ!? いったい何でよ!?」

「オレがあいつの動きを一瞬だけでも止めるからだ!」

「なに?」


 こいつ、何か考えがあるのか?


「小僧、お前何か勝算があるのか?」

「ああもちろんだ。オレがムシュフシュの動きを止める。そしたらマゼンタの大技で一気に倒してくれ!!」

「…………」


 ……何をするつもりなのかはわからない。

 だからイエローと俺はシアンに質問した。


「……シアン。それは成功することができるの?」

「ああ」

「お前自身に危険は?」

「……多分ある。だが怪我なんかするつもりはない」

「……そうか」


 ならばここはシアンの言うとおりにするか……


「スウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「「「!」」」


 この音は……


「ウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………!!」


 ……奴が大きく息を吸い込み始めている……?

 ということは毒息ブレスか? いや、それにしては結構距離はある方だが……


「……ん?」


 ……なんだ? 奴の腹部が異常に大きく膨れている!?


「おい、少女の父親! 奴はいったい何をするつもりだ!」

「…………!」


 …………ん?


「おい、どうした」

「……わからない」

「なに?」

「奴がいったい何をするつもりなのか分からない!」

「!」


 ということは、少女の父親でも知らない攻撃……?

 すると息を吸い終えた首長竜の口から……


「『グゥゥゥゥゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』」

「!?」

「なに!? 叫び声!?」


 イエローが驚いた様子で言うが……

 いや、違う。これは……【超絶崩壊音声砲ハウリングボイス】!?


「ただの叫びじゃない! 攻撃だ!!」

「え!?」

「イエロー! 早く回避を……!」

「マゼンタ、無理よ!」


 向こうの攻撃が速い……!

 このままだと間に合わない!


「ぐっ!!」

「うわっ!!」

「きゃっ!?」

「ぐぅっ!?」


 ぐっ……直撃は避けたが掠ったか…………!

 いかん! 体勢が…………!


「み……みんな!!」


 俺とシアンは奴の攻撃にイエローから落ちてしまった。

 このままでは……


「ちょっと待ってて!! あたしが……!」

「いや、俺が行く!!」

「!? リュチェちゃんのお父さん!」


 少女の父親……!

 お前……翼が……!?


「お前等、掴まれ!!」

「! わかった、シアン!」

「お、おう!」


 俺は共に落ちるシアンの手を掴み、もう片方で少女の父親の手を掴んだ。

 そのおかげで何とか落下死は避けられたが……


「少女の父親。お前……翼は切られたのではなかったのか?」

「ふん。あれだけ時間を掛ければ再生くらい可能だ」

「おいおいおい!! お前そのことなら早く言えよ!! お前戦うことはできるんかい!!」

「お前等だけで竜を倒すと言っただろ。だが……」


 すると少女の父親は腕に力を籠め……


「ふんっ!」

「!」

「うおぃ!?」


 おいおいおい、この男……!

 俺たちを上の方へぶん投げやがった!


「受け取れ、小娘!」

「わかったわ!」

「ぐっ!!」


 上空へと投げられた俺たちはなんとかイエローにキャッチすることができた。

 すると、


「あ! ちょっと待ってくれおっさん!!」

「!」


 シアン、なにを…………?


「なんだ!」

「力を貸してくれ!!」

「なに?」

「さっき言ったオレが竜の元へ近づけばの話し、おっさんに協力してもらえばできるかもしれない!!」

「なんだと……?」


 そうか……

 この男も空を飛ぶことができるのなら、シアンを運ばせることは可能だ。

 標的が固まっているより分散していれば首長竜も攻撃に多少の迷いがいる。


「頼む!」

「……仕方がない!あの竜を倒す為だけだぞ!!」

「おう!」


 少女の父親……


「マゼンタ! イエロー! オレがあの竜に隙を与える! そうしている間にお前等は竜の真上に移動してくれ!!」

「?」


 真上?


「ちょっとシアン! 真上っていったいどういう…………!?」

「小僧! 奴が動き出すぞ!!」

「わかった!! すまない! 真上に移動したら止め刺しに落ちてくれ!!」

「あ、ちょっと!? 意味がよくわからないんだけど!?」


 そしてシアンは自らイエローから飛び降り、少女の父親に受け取られると、背負われるような体勢になり、


「行くぞ! おっさん!!」

「小僧! 少しは目上の者には気を使え!!」

「大丈夫だ! オレ達はとっくのとうに反逆ばちあたりなことをしている!!」

「ああ、そうかよ!!」


 少女の父親とシアンはそのまま首長竜の元へ突貫して行った。


「マゼンタ!!」

「シアンを信じろ! 黙って見守れ!」

「……わかったわよ!」


 しかしシアン。お前の作戦はいったい……


「スウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「!!」


 奴め……また同じ攻撃を……

 その上狙いはシアンか!!


「シアン! 避けて!!」

「『グゥゥゥゥゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』」


 イエローが叫ぶと同時に奴の口から声の砲撃が……


「そんなもの効くか!! 【無音声砲サイレントボイス】!! 『―――――――――――!!』」


 パァン!!


「!?」

「!!」


 首長竜の音声砲をかき消した……!?


「危ねえ……ぶっつけだけどうまくいった」

「「…………」」


 こいつ……今のは賭けだったか。


「おっさん。加速してくれ」

「無茶を言いやがる!!」


 こいつ……

 首長竜は離れた俺よりも近づいてくるシアン達を優先して攻撃してきた。


 しかし音に関する技は効かず、突進は全て避けた。


「【超絶崩壊音声砲ハウリングボイス】!! 『うわあああああああああああああああ!!』」

「グアァ!?」


 今度はシアンの声に怯んでしまった首長竜。

 その隙に少女の父親は首長竜の上空の方へ飛んで行ってしまった。


「小僧! 奴の上空の方をとっちまったが……!」

「よし! ここまでくれば上々だ!」

「なに!?」


 シアンはここからなにを……


「行くぞムシュフシュ! とうっ!!」

「…………なに!?」

「ええええええ!?」


 俺とイエローはシアンが起こした行動に驚愕した。


「あいつ、なにをしているの!?」

「いや、どう見ても……」


 首長竜に飛び落ちようとしているしか見えないが……


「ぬおおおおおおおおおおおおおお!!」


 シアンの大声は離れていてもこちらによく伝わる。

 声からして必死そうに落ちている。

 そして……


「到・着!!」

「「…………」」


 シアンはそのまま首長竜の背中の上へ着地することに成功した。


「グアッ!? ガアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!」

「うわっ!?」

「ちょ、おい!!」


 すると、背中の異変に気付いた首長竜はシアンを振り落とそうとその身を暴れさせている。

 逆にシアンの方は……


「そう簡単に落とされねーよ!! 行くぞ! 【音速移動クイックムーブ】!!」

「「!」」


 シアンは暴れる首長竜の上で、落とされないよう奴の上を走っているが……


「まだまだぁ! 【二重奏デュエット】!」

「「!?」」


 この技は……!?


「シアンが……増えた!?」

「いや、そう言う風に見えるよう走っているんだ」


 初めて見たイエローは増えるシアンの姿に驚いている。

 遠目だが少女の父親も驚愕の表情を浮かべている。


「グアアアアアアアアアアアアア!?」

「「驚いているのか!! 【三重奏トリオ】!!」」


 ……まさかこいつ。


「イエロー!! 行くぞ!!」

「え!? シアンからの合図は……!?」

「あいつのやろうとしていることは読めた! だからイエローは奴の真上のはるか上空へと移動しろ!!」

「だから何で真上!?」

「後で説明する! 行け!!」


 俺の指示にイエローは渋々奴の上空へとめざし、飛んで行く。

 そうしている間……


「「「まだまだぁ!! 【四重奏カルテット】!!」

「グアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 シアンの撹乱の走りは続く。

 器用にもあいつは振り落とされないような走り方をしている。


「「「「これが最大数!! 【五重奏クインテット】!!!」」」」


 走行しているうちに奴の真上、はるか上空へとたどり着くことができた。

 そろそろか……


「「「「「どうだムシュフシュ!! 体がでかいからって強いとは限らねーんだよ!」」」」」

「イエロー。この後の作戦を伝える。よく聞け」

「う、うん。あたしはいったい何をするつもりなの?」


 さて、シアンがやりだす前に全て説明しないとな。

 だからこう簡潔に……


「落ちろ」

「え?」

「耳を塞ぎながら奴の元に向かって落ちろ」

「ちょっと待って! どういうこと!?」


 イエローは訳が分からないように俺に詳しい説明を求めている。

 さて、全ていうのに間に合うか……


「「「「「今からお前にあの翼を広げてやったことと同じことをしてやる!!」」」」」

「…………!?」


 いや、さっきの台詞でシアンが何をするつもりかわかったようだ。


「……マゼンタ。耳を塞いで落ちたらその後どうするの?」

「塞いでいる間にシアンの声が止んだら、落下していく俺たちは隙ができた首長竜に……」


 少しだけはるか下のシアンを見る。

 奴は準備ができている様だ。


「落下の勢いでやれ」

「……わかったわ」


 イエローがあからさまに嫌そうな顔をしている。

 内容が内容だけにとんでもないからだろう。

 よく見れば少女の父親は何かを察したのかシアンから離れている。


「「「「「それじゃあ行くぞ!!」」」」」

「力からしてイエロー。お前が先だ!!」

「わかったわ! じゃあしっかり止めを刺してね!!」


 合図と同時に俺とイエローは耳を思いっきり塞いだ。

 そして……


「「「「「【撹乱不快音波ブラックノイズ大合唱フルコーラス】!! 『―――――――――――――――――――!!!!』」


 シアンは五人がかりでよりにもよって嫌な技を選びやがった。

 その威力は……


「…………!!」

「くぅ…………!!」


 耳を塞いでも、耳の中に響く!

 頭が……おかしくなりそうだ……!!


「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 だが、首長竜はまるで発狂するように大声を出して悶えている。

 聴いているようだ!!


「『――――――――――――――――――――!!』 …………かはっ!!」


 シアンの技は解けた。

 今だ!!


「イエロー! 行けるか!!」

「まだぐらつくけど……大丈夫よ!!」


 するとイエローは片足を思いっきり上にあげて……


「この高さは相当よ! 【振り下ろす一撃(ヘヴィギロチン)】!!」


 突然イエローの落下速度が加速した。

 殺人的な加速で落ちていくイエローはその振り上げた足を思いっきり……


「うらあああああああああああああああああああああ!!」


 ゴォォォォォォォォ…………………!!


「グギュォ…………!!」


 首長竜の頭に振り下ろした。

 見事に命中し、ふらつく首長竜。

 だが、


「次でこそ終わりだ!!」


 俺は空中で両腕を思いっきり伸ばし、


「【熱線ねっせん焼太刀やきたち】!!」


 指先から赤い刃を思いっきり出す。

 それを両手で重ね合わせ……


「悪いが……覚悟してもらう!!」


 すると、首長竜の頭がなぜかこちらを向き……


「スウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………!」

「!?」


 バカな……!?

 頭を殴られたのにもう攻撃を……!

 しかもこの吸い方は毒息ブレス……!


「……いや!」


 悪いがその手は効かん!!


「…………グゥ!!」

「【冷可視ひやかし】!!」


 ピシィ!!


「ムグゥ!?」


 危ない……何とか口を防いだ。

 咄嗟に思い付いたものだが何とか防げた。

 あとは……


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ムグウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」


 いくら悶えようともう遅い!!

 終わりだ!!


 ザッ…………!


「…………!?」


 俺の赤い刃は奴の首に斬り込み……


 ザザザザザザザザザザザザザッ!!


 奴の長い首を斬り落とした。


「…………」


 そして、首を無くした首長竜は……


 ドォォォォォォォォォォン………………!!


 当初の予定とは少し違う、平原の中に落ちてしまった。


 ………なんとか……倒したか……

 しかし、落下していく事は止められない。

 さて、どうすることか……


「ちょっと、待ちなさいよ!」

「!」


 ……!

 落ちていく俺は突然空中のまま制止した。

 ということは……


「……イエロー」

「なんとかなったわね。マゼンタ」

「……お前なら受け取れると信じていたぞ」

「まったく……あいつったらなんて作戦を考えるのよ」


 まあいい。何とかこの竜は倒すことができた。


「……信じられん。お前は本当に人間か?」

「…………!」


 すると不意に横から声がかかってきた。

 そこにいたのは驚きの表情を浮かべた少女の父親とその腕に抱えられたシアンだった。


「シアン……」

「いやぁ……うまくいったようだな……ゲホッ! ゲホッ!」


 ふん。お前の作戦はろくなものではないな。

 だが、まあ……


「どうだ。少女の父親」


 俺は近くでシアンを受け取った少女の父親に言う。


「狩ってやったぞ!」

「…………!」


 少女の父親は信じられないような目で俺たちや首長竜の死骸を見ているのだった。

決着……!

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