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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
85/114

再戦

ブルーとマゼンタ。仕切り直しです。

それでは、どうぞ。

  Side:三人称


 ある所に作られた即席の仮想空間にて、

 四輝天使が一翼、青の天使であるブルーは一つの大きな氷塊を前に溜息をついていた。


「マゼンタ。結局あなたとは……解り合うことはできませんでした」


 目の前の氷塊は、人間一人を封じるくらい大きく、また全体的に真っ白であるため中の様子は解らなかった。

 ブルーは嘆くように目の前の氷塊に話しかける。


「あなたは……何を思ってこんなことを……」


 ぽつりと呟くが目の前の氷塊は何も返事はしない。

 ブルーはもう一度ため息をつくと、氷塊に背を向け、距離を取るように離れていく。


「……帰りましょう。ルージュは不満を言いそうですがここならだれにも踏み込めないから大丈夫でしょう」


 そう言って、元の空間に戻るために唱えようとした瞬間。


「…………?」


 背後に何かが動く気配を感じ、ブルーは即座に背後にあった氷塊を見た。

 そこには……


「…………!」


 何も動いていない。

 何も聞こえない。

 それなのに何か嫌な予感を彼は感じた。


「まさか……」


 その瞬間。

 目の前の氷塊が爆弾が爆発したように蒸発した。



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:紅


 強すぎる力には必ずその分だけ欠点がある。

 イエローの《重力》は溜めが必要であるように。

 シアンの《音》は発動に喉や耳が決定的に必要とするように。

 俺の《熱》にも、欠点はある。


「はぁぁぁぁぁぁぁ…………」


 熱い……熱い…………

 俺の身体が……燃えるを通り越して熔けるように熱くなる。


 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………


 それにより、俺を覆う氷は徐々に徐々に音を出して融けていく。


「はぁぁぁぁぁぁぁ…………」


 俺の《熱》は主に広範囲に渡る攻撃が多く、他を巻き込む事が多い。

 シアンの【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】もイエローの【全てを飲み込む黒い穴(ブラックホール)】も巻き添えが出そうではあるが、シアンは気を付けて出せばいいし、イエローは穴を消すことが可能だ。

 だが、俺は違う。

熱々熱視線(あつあつねっしせん)】は視界に映る者全てを焼き、【熱国ねつこく】は俺を中心に広範囲を灼熱の空間に変える。

 つまり、俺の大技はほか二人と違い調整ができず、射程範囲内に入れば容赦なく巻き込んでしまう。

 故に、仲間の近くでは使えない大技が多かった。


 ああ……熱い……

 肉が焦げ……血が沸き上がり……臓腑が固く……

 そして何よりも……骨が赤を通り越して白くなるほど熱い。

 腹部の傷など……もはや何も問題はない。

 ただ、意識を保つだけでも…十分精神的にくる……


 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………


 ……ブルーの奴相当な厚さの氷で俺を封印したな。

 だが……


「この程度何の問題もない」


 一度試しに出したのは四本足の時。

 あの時は……


「シアンを巻き込まずに戦うのが大変だったな」


 四本足の攻撃にではない。

 俺の攻撃にだ。

 もしこんな作り物の空間が無かったら二度と出さないほどに……


「覚悟しろブルー。これが俺の本気だ!!」


 俺は体の内に溜めた熱を一気に外側に開放した。

 すると……


 ジャァァァァァアアアアアアアアアアアア!!


 俺を封じた氷は一瞬にして蒸発し、俺を外へと解放した。

 ただし、大きな氷を蒸気と化したために、一気に爆発を起こし俺の周りを完全に覆っていた。


「……な、なんですかこれは……!?」

「…………」


 すると前方からは聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 どうやら、まだいてくれたようだな。

 時間が経つと、やがて氷から急激に昇華した湯気は晴れ……


「…………!?」


 驚愕の表情を浮かべたブルーが俺の目の前に立っていた。


「マゼンタ……!? なぜ僕の【永氷の棺(セクエイル・グラス)】をこうも簡単に……!?」

「まだ終わっていない……」


 俺はブルーに近づくために一歩足を踏み出した。

 すると……


 ジュァァァァアアアアアアアアアアアアア!!


「!?」


 踏み出した部分の水面が一気に蒸発した。

 白く熱い蒸気が俺の足元から立ち上がる。

 さらにもう一歩、


「!?」


 さらに踏み出した部分の水も一気に蒸発した。

 海であるため、仮想空間であるためか、どこまでも水は尽きないようだが本気で全て気化するほどの勢いであった。


「な……なんですかそれは……!?」


 ブルーは明らかに先ほどとは様子が違う俺に戸惑いを見せていた。

 逆に俺は……冷静だ。


「ブルー。俺はほんのついさっき目を醒ました」

「なに……?」


 ブルーが怪訝な表情で返るが構わずに続ける。


「どうやら俺は自分の気持ちがなんなのかを勘違いしていたようだ」

「勘違い、ですと……?」

「ああ。俺が望んでいたのは……俺の目的とは少し違うという事を」

「…………」


 ブルーは深呼吸をして、いくらか気分を落ち着かせると、残ったもう片方のサーベルを右手で構える。


「何があったのかよくわかりませんが、封印から解放された以上もう一度殺す必要があるようですね」


 そう言ってブルーのサーベルに水が纏わりつくように集まりだした。

 そして、サーベルを振りかぶると……


「【飛水刃フェイ・ラム・ドゥ】!」


 まだ距離があるのにこちらへ向かって思いっきり振った。

 すると、サーベルに纏った水が斬撃のようにこちらへ飛んできた。

 このまま回避をしなければ水の刃は俺の胴体を真っ二つに裂くだろう。

 だが……


「……………」

「! 回避しないのですか!?」


 回避しない? いや……

 回避する必要などない。

 鋭利な水の刃が俺に触れそうになった瞬間……


「え…………!?」


 水の刃が俺を刻むことなく一瞬で蒸発した。

 まともに命中したはずが、怪我はまったくない。


「ど、どういう事ですか……!?」


 ブルーは目を見開いてこちらを見ている。

 ならば少し、種を明かすか。


「【完全燃焼(かんぜんねんしょう)】とは俺自身を一つの大きな熱の塊にする、俺のとっておきだ」

「熱の塊……?」

「そうだ」


 さらに一歩踏み出すと、その部分の水面が勢いよく蒸発した。


「だが、これでも俺はまだ制御しきれているかどうか自信がない」

「え?」

「熱いのは俺自信だけではない。俺の周囲の空気も熱くなっている。とてつもなく、だ。俺の力はどうも周囲を巻き込むのが多いからな」


 直接触れた所に限らず、その周囲の水面も勢いよく気化し、蒸気を上げている。


「前回これを使った時は大変だった」


 俺はあの四本足との戦いを思い出しながら語る。


「仲間を巻き込まないことに精いっぱいだったからな」

「!?」

「熱を自分自身に押し込め、圧縮して……まあ何とかなった」


 だから今回は【熱国ねつこく】と同じ理由で使わせてもらった。


「もっとも、もうすぐ効果は切れる」

「え?」


 ブルーが一瞬呆けたような声を出すが構わない。


「満身創痍。さらには【熱々熱視線(あつあつねっしせん)】【熱国ねつこく】【熱線ねっせん焼太刀やきたち】と、強力な技を連続で使ったからな。これ以上の維持は不可能だ」

「なにを……?」

「だがな……」


 初めからこの技でこいつと決着をつける必要はない。


「この技の本質は別にある」

「?」


 その瞬間。

 俺の身体にある変化が訪れる。


「俺は……とある事情でこの姿にされたが……正直不便でしかない。なにせ、無駄な物ばかりが俺の身体に詰まっているからな」

「…………!」

「気付いたようだな」


 ブルーが気づくと同時に俺の変化も外見ではっきりとわかるようになった。

 それは……


「脂肪燃焼……自らの身体を燃焼することで無駄なものを取り除き、疑似的に元の姿に近くなれる」


 俺の動きを邪魔する脂肪…………

 それらのほとんどを自らの力により燃焼する。

 その結果……


「これが俺の本気の姿だ」

「…………!?」


 俺の身体はもうそれほど熱くなくなってしまい、冷めてしまった。

 いかし、燃やし尽くした俺の身体は先ほどとは比べ物にならないほど細く、それでいて動きやすい恰好になった。

 筋肉の方はやや不足気味ではあるが……

 自らの身体を確認したら、あとは目の前のブルーを見据えて言う。


「とはいえ元の姿はあくまで“奪われた”。ブルー、この体型がいつまで維持できるかどうかは疑問だが俺は本気だ」

「本気……」

「ああ。お前にひとつ言いたいことがあるからな」

「何ですって……?」


 肩を貫かれた右手が動かせない。

 俺は左手の人差し指を相手に向けて宣言した。


「お前を倒し、屈服させたうえで話してやる」

「!」


 言い終わると同時、俺はブルーに向かって走り出した。

 足跡のように俺が通ったところの水が蒸発する。


「そう、ですか……その様子は何か覚悟を決めたのですね」

「ああ……」

「なら、仕方がありませんね」


 ブルーは手の中のサーベルを俺に向けて言う。


「それがなんなのか、聴かせてもらえます」


 もっとも、と

 ブルーは刀身に水を纏わせながら言う。

 そして、


「あなたが勝てたらですけどね! 【飛水刃フェイ・ラム・ドゥ】!」


 それを思いっきり薙いで水の刃を飛ばした。

 それも複数、俺にめがけて飛んでいる


「ならば……」


 俺は、再び回避はせず、そのまま前に向かって走り出した。


「! なにを!?」


 相手が何を言おうがかまわない。

 目の前には水の刃が迫りくるも構わずに俺は走る。


 そして、水の刃が俺に触れそうなところで、助走から一気に水面(地面の様だが)を蹴り、跳躍した。


「な…………!?」


 ブルーが驚きの表情をするが無理はない。

 俺は迫りくる水の刃を軽々と越え、それどころか水面を大きく離れてはるか上空を跳んでいた。

 そして、俺はブルーの頭上の空中にいる。


「…………正直、ここまでとは」


 前回の時もそうだったが“もっともなりたくない姿”であるあの太った身体と、今のこの細い体ではあまりにも身体状況が違うために、起こした行動による結果も大きく変わっていた。

 筋肉はあまりないはずだが……


「ここで考えている暇はないか」


 落下していく中、下を見ればブルーが何かを唱えている。

 何か出されるとやっかいだ。


「【焼脚しょうきゃく】」


 俺は脚を熱くすると、身体を縦に回転させ、踵を落とすようにブルーに向かって落下した。

 しかし、いち早くブルーの方が仕掛ける。


「【飛水刃フェイ・ラム・ドゥ】!」


 またそれか……

 今度は下方向から攻めてくる複数の水の刃にどうするか考える。


「どうですか! 空中では避けられませんよ!」


 そうだな……それなら…………

 俺はもう片足も熱して回転速度も早める。


「こうするまでだ!」


 空中から落下する途中にぶつかるだろう水の刃を……


「なんですと!?」


 熱した両脚二つを動かし、空中で水の刃を捌く。

 水の刃をまともに受けるも、高熱と勢いある両脚に弾くことができた。


「覚悟しろブルー!」


 そして、とうとう落下してきた俺がブルーに到達した所で、俺は熱した足をブルーに落とした。

 目指すは頭。熱い踵が相手を焼き砕くが……


「はぁ!」

「!」


 奴はそれを躱すどころか、サーベルで受け止めた。

 俺の熱く熱した脚が当たっても、サーベルは全く壊れる様子がない。

 しまったな、水の刃を弾いたために威力を落としてしまったな。


 目の前のこいつは突然の跳躍や空中での攻撃の回避には驚いていたがすぐに元の平常心に戻り、俺の攻撃を防いだ。

 やはり一筋縄ではいかぬか。

 だが、


「【付焼刃つけやきば】!」

「!」


 俺はサーベルで脚を防がれた状態のまま、踵から赤い刃を出した。

 予測不能の部分からの攻撃にブルーは反射的に避けた。


「うわっ!?」


 攻撃を防いだかと思いきや、そこから更なる追撃にブルーはたじろぐ。

 その隙を突く!


「はあぁ!」


 俺はもう片方の足の踵からも赤い刃を出し、両手を水面に着けた状態で猛攻撃をする。

 普段なら脚での攻撃は不可能だ。今だからこそできる。

 二足による二刀流は着実にブルーを追い詰める。


「くっ…………!」


 対しブルーはサーベルは一本砕かれたため、もう一本のみで二本とも捌かなければならない。

 このまま隙も与えずに攻撃を続けるが、


「!?」


 来る…………!

 攻撃される感じた俺は、猛攻から回避に切り替え、側転でブルーから距離を取った。

 すると、俺が先ほど立っていた所の水面から、また水の刃が不意を打つように飛び出していた。


「あ、危ないところでした……」


 咄嗟に水の刃を出したブルーは俺が離れたのを確認すると俺を警戒したまま態勢を整えた。


「まったく……なんて身体能力ですか……」


 感心と言うよりも呆れた様子で言うブルー。


「それを言うならお前の戦い方もだ。お互い様だ」

「ええ、そうですね……お互い厄介です、ね!」

「!」


 ブルーが喋り終わると同時に今度は自分から俺の方へと攻めてきた。

 そして、また何かを唱える。


「【氷刃ラムデ・グラス】!」


 すると、奴の両脚……正確には膝から下の部分が氷で覆われた。

 その氷が徐々に刃状に形を変える。

 これは……


「両脚を剣にするとは……」


 刃状の氷に覆われ、水面を剣先で踏みつけながらこちらへと向かう。

 つまり……


「来てください。直接勝負です」

「望むところだ!」


 俺は両手の甲から【付焼刃つけやきば】を出し、ブルーと真っ向勝負に挑む。


「行きますよ!」

「ああ!」


 そして、ブルーと俺がぶつかるほどに接近すると、まずはブルーが右手のサーベルで斬りかかってきた。

 それを俺は左手の赤刃で防ぎ、もう片手の赤刃で反撃する。

 すると、今度はいつの間にか左腕も刃状の氷を纏わせており、それで右の赤刃を防ぐ。

 これでお互い両腕を防がれた状態だが……


「まだだ!」

「ええ、喰らってください!」


 ブルーが片足のを動かし、おそらく足の刃で攻撃し始めたことと、俺がその足に【熱視線ねっしせん】を仕掛けたのは同時だった。

 ブルーは俺の視線に気付き、攻撃から回避へ移行。足を動かすのをやめ、思いっきり右に回り込むことで避けた。


「なにを…………!?」


 俺は体を右に回して避けようといた途端気が付いた。

 俺の両脚がいつの間にか氷で覆われ続けており、水面に固定されている状態だった。

 いつの間に……!


「先ほど、足を挙げることで注意を向けた隙に唱えさせてもらいました」


 あの時か……!

 どうやら俺は脚に視線を向けた一瞬でやられてしまったようだ。

 すぐに俺は【焼脚しょうきゃく】により両脚の氷を融かしはじめる。

 だが、


「そんな隙は与えません!」


 視界の端、俺の右隣からブルーがサーベルを振り上げた。

 まだ両脚を動かすには時間がかかる。

 すぐに右の赤刃でサーベルを受け止めるが、


「甘い!」


 今度は本当に片脚の氷の刃で俺を斬ろうとしていた。

 だが、


「甘いのはお前だ」

「なに?」

「【熱線ねっせん】!」


 俺は左手を右の脇を通すようにブルーへ向け、指先から熱い線をブルーに向けて放った。

焼太刀やきたち】は不可能だが一二本なら可能だ。

 左指先から放たれた線がブルーの身体を貫く。


「がぁぁぁぁあああああああああああああ!!」


 突然の攻撃にのけ反り、悶えるブルー。

 脚を上げようとしていたため、姿勢を崩す。

 チャンスだ。

 両脚の氷が融けた俺は脚を動かすとブルーにとどめの一撃を与えるべく接近する。


「させ……ません!」


 だが、ブルーもかろうじて持ちこたえ、脚に踏ん張りを入れるととどめの赤刃をサーベルで受け止める。

 俺がもう片手を動かす前に氷を解いた左腕でつかまれ、そのまま攻撃を封じられた。

 そして、


「【絶氷の牢獄(グラッソン・ラーゲル)】!」

「!」


 その技はまさか……!

 考えるよりも早く、俺とブルーは大きな氷の中に封じられ、身動きが取れなくなった。


(しまった……!)


 深追いをしてしまった。

 相手が弱っているところを見て、焦ってしまった。

 だが、そう後悔するも遅い。


「無駄ですよ……あなたはここで負けます……」


 隙間なく氷で埋められた俺は全くと言っていいほど動けない。

 しかしブルーの方は氷の中からすり抜けるように出た。


「さて、今度はどうしますか?」


 ブルーは足元の水が湧き出るように勢いよく噴出すると、まるでそれが足場のようにブルーの身体が水面から高い所へと移った。

 そして、俺を前にして右手を上に向けて掲げている。

 いったい何をするつもりだ……


「【集氷の巨球シュグラス・サーキエノーム】!」

「!?」


 ブルーが言うのと同時に周りの水面から大量の水が吸い込まれるようにブルーの掲げた手の上に集まってくる。

 まずいな……このまま何か大技を仕掛けてくるか……

 ならば早く俺を封じている氷塊を融かさないといけないが……

 さっきから【焼籠手やきごて】や【焼脚しょうきゃく】で融かそうとしているが、ほんの少しづつでなかなか融けない……!


「無駄ですよ。その氷は特には融けにくいようにしていますし、今のあなたにはそれを融かすほどの力はないのでしょう?」


 まったくだがその通りだ。

 もう【熱国ねつこく】は使えないし、それに準ずる技も同じく使えない。

 それにさっきから徐々に徐々に俺の身体が元の形に戻りつつある。

 ちっ! どうする……!


「それに、そんな暇も与えません」


 ブルーの方はもうすでに準備万端だ。

 奴の掲げた手のひらの上には圧倒的な質量の氷の球体ができている。

 まともに当たればひとたまりもない……!


 ちっ…………!

 俺は……ここで死ぬわけにはいかない!

 シアンにイエロー、それにあの少女が帰りを待っている。

 あの少年や犬からも気になることがある。死ぬわけには……!


「マゼンタ。あなたが何を思うと構いませんが神様に逆らう以上……」


 ん? いや、待てよ…………

 そう言えば確かあいつは……


「…………」


 ……この体勢なら可能かもしれない。だが、もうじき攻撃が来る。


「……容赦はしません。ここで終わりです」


 チャンスは一度限りだ!


「【付焼刃つけやきば】!」

「!」


 一度赤刃を仕舞い、もう一度体の至る所から赤刃を出す!

 その結果、融かすことはできなくても貫くことはできた。


「だからどうしたのですか! 体を動かせないのなら変わらないのではないですか!」


 それはどうかな!


付焼刃つけやきば! 走れ!」

「!」


 俺が体中の刃に力を入れると……


 ザザザザザザザザザザザザッ!!


「!?」


 赤刃が手の甲から二の腕へ、踵からふくらはぎへ、背中から首筋へと、俺の身体全身へと移動する。

 刃そのものを動かすことで俺を封じる氷はみるみる刻まれていく。

 体を動かせないなら刃だけを動かせばいい!


「まさか……くっ! 喰らいなさい!」


 いかん……

 巨大な氷の球体がブルーの手から俺の方へと落ちていく。

 迫りくる氷の球体に俺は急いで刃の身を動かす!


「間に合え!」


 そして……


 ガッシャァァァァァァァン!!


 巨大な氷の球体が届く寸前でいち早く封印が解けた。

 だが、これで終わりじゃない!


「行くぞ!」


 俺は封印が解けるや否や急いで跳躍し、迫りくる氷の球体の上に着地。


「……!?」


 その後すぐにもう一度、水柱の上のあいつに向かって跳躍をする。

 その時氷の球体は水面に着地し、大きく音を立てて割れた。

 ブルーは驚いているのか水柱の上で硬直しており、全く動かない。


「覚悟しろ! ブルー!」


 俺の声にはっとしたブルーはサーベルを構え直し、


「なにを! ここでやられるわけには……」


 悪いが全てを聴く暇はないし、力を使わせる隙を与えない!

 俺はまだ全身から出している【付焼刃つけやきば】をさらにさらに新しく出しまくる!


「!」


 ブルーが驚いているが構わない。

 俺は赤刃を全身から出すと体を勢いよく縦に回転させ、ブルーに迫る。

 そうだ、確かこれは……


「悪いが借りるぞ。……車輪剣舞しゃりんけんぶ!」

「!」


 全身から出した刃と勢いよく縦回転する俺の身体。

 俺の全身の刃がブルーを捕捉する!


 ジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリ!


「ぐあああああああああああああああ!?」


 悪いがこの攻撃はサーベル一つでは防ぎきれない。

 似た物を俺は喰らったからな。


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 次に俺は片腕から二本の刃を出し、サーベルを持つブルーの片腕を挟むように切る!


「こっちも借りるぞ。……断鋏たちばさみ!」


 ジョキン!


「がああああああああああああああ!!」


 熱を持つ刃で挟み切ったため、傷口は焼き塞いでしまったが構わない。


 ……そろそろか!

 そして、ブルーの身体を刻みまくり、断つと最後に刃を仕舞い……


「これで……」


 ダメージからふらふらとよろけるブルーの頭をわしづかみ、俺は水柱から高く跳んだ。


「これで終わりだ!」


 ブルーの頭を掴んだ俺は、水柱のさらに上から速く落ちるように落下する。

 そして落下から速度と重さの全てを掛け、勢いよく水面に叩きつけた!


「ぐっ……あ……あ……!」


 ……これで、どうだ…………

 動く、なよ……

 もうこれ以上は……戦えない…………


「……はは……参り……まし、た…………」


 そう、か…………

 俺の勝ちだ…………


 しかし、意識は失われなかったが急激に体型が元に戻ったことで俺も水面に倒れてしまったのだった。

ブルーは死んでいません。念のため。

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