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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
84/114

闇の中で

氷に封じられたマゼンタはどうなるのか。

それでは、どうぞ

  Side:藍


「あいつは基本的に親しくないやつや関心のないやつは名前で呼ばない」

「はい?」


 ある時ふと思った事だが、そう言えばイエローは知らないと思ったからな。


「ほら、マゼンタって俺やイエローの事は名前で呼ぶけど基本的には他人の事を名前で呼ばないだろ」

「そう言えば……」


 リヴィアの場合は『王女』。

 アテネの場合は『女人形』。

 リュチェの場合は『少女』。

 あいつは頑なに他人の事を名前で呼ばない。


「あいつは基本的に誰かと仲良くする気はないからな。だから必要以上に親しくしないって意味で名前を呼ばないんだ」


 まあ、オレ達の場合は長い付き合いだからな。さすがに名前で呼ばないといけないが……


「でも、ゼウスのことやノワールのことは名前で呼んでたわよ」


 ああ?

 ……そう言えばそうだな。

 多分……


「ノワールは反逆の間だけとはいえ、長い付き合いになるし、ゼウスの場合はただ単に他に形容する言葉がないか、あるいは……」


 ゼウスと話したいって言いだしたのはあいつだから……


「同じ反逆者として、興味があったって事かな?」

「あ……そうね……」


 それなら名前で呼ばないと失礼だよな……

 敬意を払うって意味だな。


「……解らないわね」

「ん?」


 イエローが怪訝な表情でなにか呟いているが……


「けど……なんであいつはわざわざそんな面倒なことを言うの?」

「それは……」


 正直それは……

 ……つーかいきなりなんでこんな話をするのかな?

 やっぱりあれかな……



―――――――――――――――ほんの少し前――――――――――――――――――



「誰だ!」


 洞窟に帰ろうとして何故か迷ってしまったオレは背後に気配度感じて振り返った。

 すると、


「…………!?」


 そこにいたのは…………


「どうかされました?」

「!?」


 そこにいたのは見覚えのある顔に見覚えのある姿。

 ばかな……何でここにきてあの男がここにいるるんだよ!?

 まさか、幻覚か? あんまりな状況にオレは現実逃避でもしているのか!?


 と、オレしばらく思考停止していると……


「どうかされましたか、少年?」

「うわあああああああああああ!?」


 声をかけたのはやっぱりオレにとって忘れたくても忘れられない、それほどまでに印象深い見覚えのある男だった。


 な、なんで……


「なんでお前がこんなところにいるんだよ!?」

「ずいぶんなご挨拶ですね」


 ずいぶんもなにも、こんなところで会うなんて全くの想定外だよ!


 青を基調とした軍服のような服。

 透けるほどに白い髪。

 そして、半透明の淡い翼。


 忘れるわけねえ!

 魔法とかがあった世界で、リヴィアの兄である王子を……ヴェール曰く規律を冒してまで蘇生させた天使……!


「四輝天使の一翼、〈蒼海そうかい〉のブルー……!」

「お久しぶりですね。反逆者の少年」


 うるせえ。オレはもう二十歳はたち超えているんだよ。少年じゃねえ。


「なんでお前が……ここにいるんだ。いや、それ以前に……」


 お前まで規律を違反していいのかよ……

 オレの表情を察したのかブルーは自分の事について説明した。


「天使である僕が規律違反をしていいのか、ですね。もちろんそんなことをしては駄目ですが、いくつか制約を受けたうえで、神様に特別に許してもらえました」

「なに……?」


 許してもらえただと?


「この世界でのすべての生物に遭遇してはならない。この世界に自分の痕跡を残してはならない。そして、この世界に自分の力を使ってはならない。以上を踏まえて……」


 ブルーは特に目立った動きもせず淡々と説明を続けた。

 ブルーの受けた制約とは……


「ほとんど力は使わず、僕がこの世界に現れたこの地点で一歩も足を踏み出さないと言う制約で許してもらえました」

「ええ!? 一歩も動くな!?」


 いやいや、ちょっと待てよ!

 ここを一歩も動くなってどんな罰ゲームなんだよ!?


「大して周りに影響を及ぼさない程度の力を使って僕の存在感を消せば、何者かに遭遇することはありません。ここで待ったまま目的を果たし、すぐさま元の所へ帰ればそれで問題はないのです」

「いや大有りだろ!?」


 ここで待ったまま目的を果たすってなんだよ!


「目的ってのはオレ達のことだよな!? いったいどうやってこのままオレ達のもとに現れるつもりだったんだよ!?」

「別に、僕自身が移動するつもりはありません」

「なに?」


 移動する必要ないって、じゃあどうやってオレ達に会うつもりなんだ?

 簡単です、と言うようにブルーは続けた。


「目的の人物がこちらへ来るように誘導すればいいだけです」

「はあ?」


 ますます訳が分からない。確かにそうすればいいと少し思ったがやっぱりおかしい。

 だって誘導も何もそうするためにはいろいろと下準備が必要だし、それにこいつには協力者なんていないんだし……


「現に僕は誘導はできませんでしたが、誘う事には成功しました、後は来てくれるかどうかはその人次第ですね」

「なに!?」


 こいつ……いつのまにそんなことをしたんだ!?

 オレは誘導なんかされた覚えはない。ってことはオレがいない間に……


「いったい誰だ。マゼンタか? イエローか? お前はいったい誰を……」

「マゼンタです」

「…………あれ?」


 こ、こいつ……やけにあっさりと答えやがった……

 おとぎ話でももうちょっと粘るのに……


「おや? ちゃんと答えましたのに以外ですか?」

「い、いや……なんか面食ってしまって……」


 ほ、ほんとにこいつはよくわからない……


「少年。ここで一つ、僕からお願いがあります?」

「なに? おねがいだと?」

「はい」


 オレは突然おねがいを聴いてくれないかと言われ、オレはつい相手の表情を見た。

 その顔は……落ち着いた様子である故、結局分からない。

 第一、こいつはなんだかんだで敵だ。いくら王子を甦らせた恩があるとはいえ……


「もし付き合ってくれるのなら、あなたの目的地の方角を教えます」

「お願いってのはいったいなんだ」


 あ、やば。ついつい乗せられてしまったじゃん!

 けどまあ、このまま走り続けた所で帰れるかどうかわからないし……

 いっちょ、ここはつきあってやるか。


「ありがとうございます。お願いと言うのは……」



――――――――――――――そして現在――――――――――――――――



 ……本当にあいつは何を考えているのだろうか。

 それにあいつとマゼンタにいったい何の関係が「シアン!!」


「うおっ!?」


 ちょ、イエロー!? いきなり大声出すなよ!


「まったく、なに考え事でもしているのよ」

「あ、いや……なんでもない……」


 いや、俺がしばらく黙ったままだったか。


「で、なんだ。イエロー」

「ええ。なんでわざわざそんなことをするのかしらって訊いているのよ」

「そうだな……」


 あいつは他人の事を名前で呼ばない。

 長く付き合わないことを意味し、つまり親しくする気はないと意味する。

 それは……


「あいつは……自分の事をろくでなしだと思っている」

「へ?」


 あいつがオレやイエローと共に挑んだ理由は、オレやイエローのような思想を持って行ったわけではない。

 あいつは……ごく私的な理由のみでそれを行っている。


「あいつはな、なんだかんだでわかっている。自分のやっている行いが正しのかそうじゃないのかよくわかっている。けど……」


 そんな自分に、誰かがついてきても自分はろくなことにならないと思っている。

 故に、誰とも仲良くなる気のない面倒くさいやつだから……


 しかし、もし……

 あいつが名前を呼ぶような相手がいるとするのなら……

 いつかその相手がマゼンタの傷をいやしてくれるような人で「おい小僧!」あったら……………………

 ……ん?


「誰だ!」


 おいおい、今オレは考え事をしているから話しかけるなよ!

 と、半ば愚痴りつつも突如部屋の入り口から声がしたので振り向いてみると……


「あ……」

「あんたは……」


 そこにいたのは片手と背中に包帯を巻いた見覚えのある人竜族のおっさんが、ものすごい形相で立っていた。

 ってこいつは……


「リュチェの父親……」


 おいおいもうけがは大丈夫なのかよ、と言おうとしたら……


「貴様ぁ!」

「ぐぉ!?」


 なぜか胸倉を掴まれて上にあげられていた。

 ってかなんか怒ってない!?


「シアン!?」

「ちょ、落ち着けよおっさん! いきなりどうした!」

「黙れ! やはり貴様らは所詮人間だ!」

「いや! だからやはりって何!? いきなり何だってんだよ!」


 つーかおっさんそろそろ降ろしてくれ!

 く……首が…………!


「俺の娘……リュチェを何処へやったぁ!!」

「ええ! リュチェ!? いやオレは別に知らねーけど……」

「嘘をつくなぁ!! 俺は聞いたぞ! リュチェはずっと一日中、ここで怪我をした人間と一緒にいたことを!」

「いやいやいやいや! それオレじゃないから! オレ何も知らないから!」


 ちょっとこのおっさん錯乱しているんですけど!?

 と、俺が揺さぶられていると横からイエローが声をかけてきた。


「ちょっと待ってください。リュチェちゃん……自分の部屋に戻って寝たんじゃないの?」

「なに?」


 ナ、ナイスだイエロー……

 おっさんがイエローに注目してくれたおかげで拘束が緩み……


「そんなわけがないからここにいるだろうが!」

「「!?」」


 ……いまいちオレにはよくわからないが……

 いやな予感がする…………!


「イエロー! 最後にリュチェを見たのはいつだ!」

「えっと……マゼンタが起き上がる少し前だけど……」

「マゼンタが?」

「ええ。なんだかすごく気にしてたけど…………」


 え? じ、じゃあまさか……

 イエローも同じことを思ったのか顔がどんどん青ざめていく……


「…………」

「…………」

「…………」


 ………………。

 と、とりあえず…………


「探しに行くぞイエロー!」

「もちろんよ!」

「あ、おい貴様ら! どういうことだ!」


 構わない構わない!

 オレとイエローは後ろで怒鳴るおっさんを無視してリュチェを探しに行ったのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:紅


 何も見えない……

 何も聞こえない……

 何も感じない……


 俺は今、ブルーに氷漬けにされていたはずじゃなかったのか?

 氷の中だと言うのに、なぜ真っ暗なんだ?


「…………」


 ……まあいい。どちらにしろ俺が封じられたことに変わりはないか。

 不思議と冷たさを感じない。いや、それとも感じる感覚が麻痺でもしているからか?

 それすらも……俺はわからなくなっている。


 ブルー……本当にあいつは、なんのために涙を流していたのだ……

 俺も……これが正しくないことは解っている。

 果たされようがされないが、待っているのは破滅だ。

 だがそれでいい。幸せなど……もう帰ってこないだろう。


 ならば俺は、ここで死ぬのか?

 いや、死ぬと言うより封印の方が正しいか。

 だがどちらにしろここを抜けるのは難しそうだな。


「…………!」


 シアン、イエロー。

 すまない。俺はせめて最後にお前等と話をしたかった。

 こんなどうしようもない俺を仲間として受け入れてくれた俺に、せめて……


「……ん…………」


 ……?

 なんだ……?

 今何か声が聞こえたような……

 俺が言ったわけじゃ……ない……


「おじ……ちゃん……」


 ……また……!?

 それにこの声は……


「聞こえる? おじちゃん……」


 ……なぜだ?

 ……なぜここにきてこの声が聞こえる……


「ねえおじちゃん! 返事してよ!」


 ……まあいいか。

 死ぬ間際の会話がこの子なら……悪くない。


「ああ、聞こえているぞ。少女」

「……おじちゃん…………」


 俺は今、何も見えないし何も聞こえないはずだ。

 だが、不思議と少女の声が……俺の中に響いてくる。

 俺はそれを……不快には思わなかった。


「おじちゃん。やっとおじちゃんと話ができたよ……!」

「……そうだな…………」


 だが、細かくいえば少女がなぜここにいるか疑問に思わなくもないが、そんなのはどうでもいい。


「少女よ。お前は何処に居るのか知らないが……ここにいて大丈夫なのか?」

「いいんだよ。だってボク……」


 俺は少女が見えない。

 だが少女には俺が見えているのだろうか……


「おじちゃんのことが心配だったからだよ」

「心配……」


 少女の姿が見えるわけではない。

 だが俺にはそれが本気である事が伝わった。


「おじちゃん……全身に傷を負っていたし……ううん。そんなことよりも……」


 なに?


「おじちゃん……なんだかどこか遠くへ行こうとしているみたいで……怖かったから……!」

「…………」


 声が……震えている……

 なぜそこまで俺を……


「ボクはまだ……おとーさんを救ってくれたことに感謝していないし……お話だってまだほんのちょっとしかしていないし……!」

「待て」


 俺は……少女に感謝されるようなことを……やっていない。


「俺は……あの男を救えたわけではない。結局怪我を追う破目に……」

「ううん。怪我はその……いいの。死んじゃったりしないなら……大丈夫だから……」


 なんだと?

 普通ほんの少しの怪我でさえ安心できないと思うはずだが……


「ボク……いつもおとーさんがいなくなるかと思っていると……怖かったから…………!」

「いなくなる、だと?」

「だっておとーさん……いつもニンゲンに戦いに行っているから……」

「…………」


 確かにあの男は、人間に対して強い恨み言を言っていた。

 それは……無関係である異世界人の少年を大きく巻きこむほどだ。


「ボク……正直に言うとおとーさんのことが怖かった」


 少女の声は二重の意味で震えている。


「おとーさん、普段は優しいし、ボクのことを大事に思っているのはわかるの。でも、ニンゲンの事になると、まるで違う人みたいに怖い人になって……」

「…………」

「ニンゲンを赦すなとか、ニンゲンは敵だとか、そんなことばっかり言うの。そのことを聴かないとボク……おとーさんにぶたれちゃうの」

「!? なぜだ……なぜそうまでして、人間を憎む……!?」


 自分の娘を傷つけてまで……憎んでいると言うのか……!

 無垢な子供に……感情を植え付けることに躊躇がないのか……!?


「だっておとーさん……ニンゲンに家族を殺されちゃったから……」

「…………!?」


 家族を……殺された……!?

 あの男が……!?


「おとーさんが子供だった頃にね、違うところに住んでいたんだけどその住処をニンゲンに奪われる際に、おとーさんのおとーさんも、おかーさんも、きょうだいも、みんなみんな………」

「…………!」


 だとしてもあの男は恥ずかしくないのか……!

 自分の娘に……自分の悪感情を無理やり見せつけていることに……!

 いや……


「少女よ。俺は……あの男に何かを言えるような人じゃない」

「え?」


 俺も……人のことは言えない……


「少女よ。俺も昔、あることにより自分の両親が何者かに殺された。その何者かがなんなのか、俺には解っていた」

「!?」


 俺は……あの時のブルーの言葉を思い出す。


『あなたのその強すぎる感情。それは何の躊躇も容赦もなく他者を巻き込み、蹂躙する』


 ああ、その通りだ。

 復讐心は……そのものの問題だけに収まりきらない。


「俺は……その何者かを激しく憎んだ」


 そのために犠牲にしたものもあった。


「俺は……拾ってくれた親の意志に反した。俺を幸せにするために育てたはずなのに、いつまでたってもこの胸の中の苛立ちは収まりきれなかった。それこそ、幸せで終わらせるつもりがないと、思うほどにな」

「…………」

「……すまない。こんなことは子供に聞かせるものではないな」


 そうだ。憎しみとは一人で抱えるべきものだ。


「ましてや無関係な子供に、植え付けるべきではない」


 感情とは、共感することであり、強制させることではない。


「俺も……少女の父親も……大して変わらない」


 俺は……これでよかったのか、など訊かない。

 それが正しくないと、理解しているから……


「ううん。そんなわけがないの」

「なに?」


 だが少女は……否定した。

 適当にではなく、確固とした意志があるように……


「おじちゃんとおとーさん。どこか似ているようでどこか違う気がするんだけど…」

「?」


 違う、だと?

 あの男とどう違うと言うのだ?


「えっとね、おじちゃん……本当にその人の事を恨んでいるの?」

「……どういうことだ?」


 少女の予想外の一言に俺は一瞬何も言えなくなるとすぐにその理由を追及した。


「おとーさんはね、ニンゲンの事を話すとき、『殺してやる』とか『苦しめてやる』とか、直接は言わないけどそう言ったものを感じているの。でも……」


 でも?


「おじちゃんはね、なんだか……怒っているようにしか思えないの」

「なに?」


 怒っているようにしか思えない、だと?


「どういう意味だ?」

「え、えーと、うまく口にはできないからなんていえばいいか……」


 自身が無さげだが探るように少女は言った。


「おじちゃん。本当にその人の事をことを……殺したいって思っている?」

「…………!?」


 俺は……神を倒し、天使を倒し、それによって両親の仇を討つ。

 故に、笑いながら人を殺すヴェールも、半端な慈悲をかけるブルーも、あの事件を起こしたルージュという奴も……

 みんなみんな殺すと、そう決めた。そう決めたんだ!

 だが……


「おじちゃんからはまったくそういうものを感じないの」

「…………」


 ここで、バカバカしいとか、勘違いだとか、すぐに斬って捨てるように言うべきだ。

 しかし……なぜか否定ができなかった。


「おじちゃん。たぶん自分でも自分が解らないってことがあるから……」


 少女は、自身があるようなないような、曖昧なように言った。


「もう一度、考えてみて」

「…………!」


 俺の感情……

 考え直すのではなく、考えろと…………?

 いったい……


「何をどうしろと……」

「…………!?」

「? おい、どうした少女……」

「おじちゃんの声が……小さくなっていく……!?」

「なに?」


 言われてみれば少女の声もどこか遠くなっていくように感じる……


「いっけない! せめて大事なことは言わないと!」


 だがかろうじて少女の声が聞こえるため、少女は必死につなぎとめるように一番言いたいことを言った。


「おじちゃん! おとーさんを助けてくれてありがとう!」

「…………」


 俺は……

 この少女に感謝されて、いいんだろうか……


「言っただろ。それでも怪我をさせたことに変わりないと」

「それでも……生きていれば十分だよ」

「!」


 生きていれば……!


「生きていれば……傷だっていつか治る……いつか優しくなれるって思えるから……」


 少女は一旦息を大きく吸い、もっとも強く、叫ぶように言った。


「だから死なないで! おじちゃん!」

「!」


 少女の切実で悲痛な願いは、俺の心に強く響いた。


「ずっとずっとどこか辛そうな顔をしていたけど……ボクはもっともっと、おじちゃんに……」


 なにを……


「おじちゃんに、生きてほしいから!!」

「!」


 なぜだ……

 なぜこの少女はここまで俺の事を…………


「だから……だから……!」


 少女は何かを言いたかったが……

 これ以上は、何も聞こえなくなってしまった。



―――――――――――――――――――――――――――――



 俺は……両親を殺された時から復讐をすると誓った。


 だから、神も天使も殺すと決めた。


 そのはずだ。そのはずだったんだ。


 だが……


 あの少女は、いったい何をいいたかったのだろうか。


 俺の中に残る感情は、憎しみではないのか?


 そんなはずがない。俺は……


 両親を失ったと聴かされ、悲嘆に暮れていた俺。


 なぜ罪もない両親が殺される、と理不尽な出来事に喚いた俺。


 周りに誰もいないそんな中、俺の前に現れ、手を差し伸べたディース。


 俺を幸せにしようと努力をしたディース。


 暗闇の中、ディースを刺した何者かの背中には……翼があった。 


 そして、ディースは……天使たちに作られた人形だった。


 それを聞いたとき俺は……


 ……そうか。


 俺は……勘違いをしていたのか……


 許せないことに変わりはない。しかし本当は……


 ならば……ここで死ぬわけにはいかない。


 ならばまずは……俺を封じているだろうこの氷を、解く!


 まだそこにいるかブルー?


 ならば見せてやる。俺の本気を……!


完全燃焼(かんぜんねんしょう)】!

戦いはまだ終わっていない

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