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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
73/114

少女の本音

リュチェが語る、人竜族の正体とは……

それでは、どうぞ

  Side:藍


 リュチェが人竜族とはなにか教えてくれるそうなので、オレはそのままでイエローはしゃがんでリュチェと同じ高さの目線になって話を聞いた。


「えっとね、おにーちゃんにおねーちゃん。人竜族ってのはね、竜の力を宿した種族の事なんだよ」

「宿した?」

「うん、正確には竜を自分のなかに取り入れることができるんだ」

「「!」」


 取り入れるって、あんな獰猛な生き物を……!?


「ボクはまだ無理だけど、おとーさんとか大人ならできるんだ」

「ああ、たしか昨日そう言ってたな」

「それでね、竜を宿すと、翼が生えて不思議な力が使えるんだ」

「そうか。それでリュチェちゃんには翼がないんだね」


 なるほどな。不思議な力だけじゃなく翼とかも大人だけなんだな。

 ……あれ? だったら……


「……なんでマゼンタの事を人竜族って思ってたんだ?」

「それは……」


 リュチェはどこか思い出すように話した。


「おじちゃん、あのときボクをかばって炎に焼かれたけど平気だったからもしかしたらって……」

「けどよ、見た通りマゼンタには翼がないんだぜ。その時点でおかしいとは思わなかったのか?」

「それはそうだけど、肌の色とか同じだったし、翼は隠しているだけかなって、あんまりそのことについては考えていなかったから……」

「「…………」」


 そうか……

 そもそも助けてくれたのは普段から敵対している人間とは思わなかったからかな?

 だったら……


「リュチェ。それで人間ってのはいったいどういうやつらなんだ? 人竜族とはいったいどういう関係なんだ?」

「それは……」


 人竜族のおっさんたちの尋常じゃない“何か”

 敵対心ってなだけじゃあ収まらないくらいの“何か”があるんだが……


「おとーさんが言うにはね、『人間は許してはおけない奴ら』って言ってたの」

「許してはおけない?」

「どういうことかしら?」

「実はね……」


 リュチェはなにか……ここら一帯を見回しつつその内容を口にした。


「ボクたちは今ここに住んでいるんだけど、実は昔ね、違う所に住んでいたんだって」

「違う所?」

「うん。《聖地》とか呼ばれていたところなんだけど……」


 聖地?

 なんだそりゃ?


「おとーさんが子供だったときにね、その《聖地》って所に住んでいたんだけど、突然ある集団が襲ってきて無理やり追い払われたんだって。そのせいで今はこんな洞窟に住んでいるんだって」

「……まさか、そのある集団って……」

「うん。それがニンゲンだったらしいの」

「「…………」」


 あの仮面男たちがね……


「でね、おとーさんたちが聖地を取り戻すために何度も何度もニンゲンと戦ったりしたんだけど、結局取り戻せなかったんだって言ってた」

「なるほどな……」


 聖地とかなんとかそう言うのは分からんが要は住処を奪われたってことだ。

 確かにそれなら怒るのも無理はないが……


「ねえシアン。ちょっと妙だと思わない?」

「え?」


 と、オレが考えごとをしているとイエローが小声で話しかけてきた。


「妙って、何が?」

「何がって、人竜族が人間を恨むのは分かったけど、逆に人間が人竜族を恨む理由が分からないわ」

「あ……そう言えばそうだな……」


 昨夜の襲撃では人間の方からこちらへと攻め込んでいた。

 人間も人間で人竜族を恨んでいそうなのだが……


 けど、いったいなんだ?


 リュチェから聴いた話だけじゃあまだ分からないな……


「ねえ。おにーちゃん。おねーちゃん」

「ん? なに、リュチェちゃん」

「……ひとつ訊きたいことがあるんだけど……」

「訊きたいこと?」


 リュチェはどこか不安な表情でこちらを見て訊いてきた。


「おにーちゃんたちはニンゲンだよね?」

「まあ、そうだな」

「でも、不思議な力が使えるんだよね?」

「そうだな」

「じゃあ……」


 リュチェは恐る恐ると言った様子で口を開く。

 何を言い出すのかある程度察していた。


「おにーちゃんはいったい何者なの? 本当に人間なの?」

「「…………」」


 そうだな……まあそう思うのも無理はないが……

 イエローはしゃがんだままリュチェを目をしっかり見て言った。


「リュチェちゃん。あたし達はね、ある事情で特殊な力を宿してはいるけれど、それを除けば普通の人間よ」

「普通の……人間?」

「そうよ。でもあたしたちは人間ではあるけれど、普段から敵対している人間の味方じゃないわ」

「え?」

「けど、人竜族の味方でもないわ」


 イエローの言ってることに意味が解らないのか混乱するリュチェ。


「リュチェちゃん。自分の父親が別の種族と戦い合っているけど、どうしたいと思うの?」

「ボクは……」


 リュチェは少しだけ俯き、ゆっくりと話し出した。


「ボクはね、おとーさんやおとーさんの仲間がいつもいつもニンゲンに対して怖いことを言うの。……確かに住処を奪われたのは悲しいことだと思う。でもそれは昔の事だし今も引きずることじゃない事だと思うの……」


 本当に怖かったのか、少し震えている。


「住処なんてここでも十分だし、危険を冒してまで取り戻す必要はない……」

「それじゃあ、リュチェ。お前は……」


 そしてリュチェは自分の本音を思いっきり吐き出した。


「ボクはおとーさんにこれ以上……危険な事なんかさせてほしくない!」

「「…………」」


 叫ぶように言うリュチェのその姿は本気で父親やその仲間を心配しているようだった。


「ボクはニンゲンを知らない! どんなことがあったのか詳しくは知らない! でも、もうこれ以上戦いなんてしてほしくない! おと-さんにこれ以上怪我してほしくない!」


 自分の父親が怪我しているのを知っているのか、辛そうに叫んでいた。

 そして、次に言った内容は少々予想外の言葉であった。


「……おにーちゃん。おねーちゃん。ボクはもうこれ以上だれにも傷ついてほしくないの。だからボクはニンゲンに会うために…………ニンゲンが住む聖地へ行こうとしたことがあったの」

「「え?」」


 オレもイエローも意外な言葉に驚いていた。


「でもね、おとーさんも他の大人の人もそのことを許してはくれなかったの。だからボクはいつも大人に内緒で友達と協力してこっそり外を出たことがあったの」

「……リュチェちゃん」


 ずいぶんと度胸ある行動をしているな。


「何回も聖地を探したんだけど、見つからないの。だから昨日も探そうとしたんだけどその時は運が悪く竜に見つかっちゃって……」

「え? それって……」


 オレ達が初めに会ったあの時の事?

 人間が住むところへ行こうとしていたのか……


「リュチェちゃん。どうしてそうまでして人間の事を知りたいの?」

「おとーさんと戦わないでほしいってお願いするため」

「そうか。よくわかった」


 なるほどな。少なくともリュチェはこういう事はもうやめてほしいことは分かった。


「とはいえ、リュチェから聞いた情報だけじゃあよく分からないな……」

「そうね、せめて人間からも話を聞いてみないと分からないわね」

「くそ……せめてあの仮面男を一人ぐらい捕まえておけば……」


 しかし、あの場にいた奴は全員あの謎の少年に連れていかれちまったし……

 ……ん? 待てよ?


 あの場にいた奴?


 たしかそれよりも前に一人……


「……そうか!」

「! シアン、どうしたの?」

「もしかしたらまだいるかもしれない!」


 オレは一つあることを思い出していた。

 たしかあの少年はあの方向とは逆に向かって行ったはずだ。

 つまり……


「い、いるっていったい誰が……」

「仮面男だよ仮面男! イエローが訳も分からずに殴った仮面男がいるだろ!」

「あ…………」


 確かオレ達が戦場にたどり着く前にこちらに襲い掛かってきた槍を使う仮面男が一人いた。

 なぜかイエローが怒って仮面ごとその男の顔面を殴ったのだが……


「もしかしたらそいつから話を聞けば……!」


 こうしてはおけねえ!


「イエロー! お前はマゼンタを看るためにここに居ろ! オレはあの男の元へ向かう!」

「ちょ、ちょっと待って! ここでの単独行動は危険よ!」


 心配そうにオレを止めようとするイエローだが構いやしない。


「なに、問題ない! たとえ時間はかかっても必ずここへ戻ってくる! だからしばらく待ってろ!」

「おにーちゃん!?」

「ちょ、シアン!」


 オレは後ろからの声に気を留めずに走り出した。

 後手に回るのは性に合わないんでね。



―――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:黄


 まったくあいつったらホント無茶をするわね。

 たしかに、まだ知らないことが多い以上手掛かりは欲しいところだけど……


「あ、あの……おねーちゃん」

「ん?」


 するとリュチェちゃんが恐る恐るこちらに視線を向けてきた。


「おにーちゃんを止めないの?」

「別に止めないわよ。あいつはそう簡単にやられるような奴じゃないわ。信じて待つのも大事よ」

「でも、おじちゃんの方は怪我しちゃったよ! おにーちゃんも同じことになってしまったら……!」

「あー…………そうね…………」


 まあ、シアン(あのバカ)マゼンタ(このバカ)もいつもいつも大丈夫って言っておきながら怪我の一つは負っちゃうんだよね……

 でも……


「それでも信じているからよ。あいつもこいつも、たくさんのものを残したまま死ぬほど無責任な奴じゃないわ」

「……なんでなの? なんでそんな危ない目にあってまで……」


 リュチェちゃん。あたしたちの事、心配してくれるんだね。

 でも、なんで危ないことをしてまでって?


「リュチェちゃん。さっきも言ったけど、あたし……いや、あたし達は人間の味方でも、ましてや人竜族の味方でもないわ」

「……じゃあ、いったい誰の味方なの?」

「簡単よ」


 あたしはこちらを見続ける少女の瞳を真っ直ぐ捉えていった。


「あたしたち皆、リュチェちゃん。あなたの味方よ」

「!?」


 意外なのかリュチェちゃんは少し驚いた顔をしているが構わない。


「どんな理由であっても戦ってほしくないことは誰だって思っているわ。だからあたしたちはそのために動くわ」


 まだマゼンタは意識がないけどいずれは起きるはず。

 シアンだって帰ってくると言ったから大丈夫。

 だからあたしはせめて二人が無事に戻ってくるのを待つとするわ。

 こっちもこっちでいろいろと大変そうだしね。

あれ? このままだとシアン……

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