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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
72/114

懇願

一方、三人はどうなっているのか。

それでは、どうぞ

  Side:黄


「シアン。本当にあたしたちとは別の異世界の人間だったの?」

「ああ、間違いない。あいつ、オレと同じとかなんとか言ってたし、他に思い至ることなんてそれしかねえ」


 裸の仮面男の襲撃から翌日。

 あたしとシアンはあの後人竜族というおっさんたちに特に何かされることなく、仲間の治療を優先して行っていた。

 負傷したマゼンタも話を聴くためという理由で共に治してくれるとのこと。

 正直信じられないと言うか、安心できないと言うか、素直に任せられないのだが、あたしたちじゃ直すすべがないため、ここは人竜族とやらの人たちに任せ、あたしたちは案内されたところで一晩休むことにしたのだった。

 そして翌朝、あたしはシアンと昨夜のことについて話し合った。

 主に、あの少年のことである。

 

「あの服装、あの態度。明らかに仮面男たちとは違っていた」

「そうね……あんまり戦いたい様子じゃなかったしね」


 それにあいつ、どこか怪我をしていた。もしかしてリュチェちゃんのお父さんとたたかったのかしら。

 必死でやせ我慢しているけど、バレバレよ。

 シアンは多分気付いていないけど……


「多分マゼンタはあの少年を死なせないように取引をしたのかもしれない」

「……それはつまりあの少年に歪んだ空間の力場(ゲート・スポット)の手掛かりがあるかもしれないって事?」

「さあな。そこまでは解らないが、放っておくわけにはいかないだろ」


 そう言えばあの少年名前はなんだったのかしら。

 あの時はいろいろとあわただしかったから訊く暇がなかったね。

 まあ、それはそれで考えるとして……


「シアン」

「ん? なんだ」

「結局、リュチェちゃんの言う人竜族ってなんだったのかしら……」


 リュチェちゃんはちがうと思うけど、他の大人たちはみんなして人間の事を憎んでいた。

 まあ、あたしたちはなんとかここに留まることはできたがかなりギリギリの事である。

 昨晩、あの戦いに加勢したという事がなければやばかったかもしれない。


「わからない。こういうのはリュチェ本人に訊けばいいんじゃないのか?」

「何言ってるのよ。それだと全部を知ることはできなそうだし、何よりつらそうなことを喋らせるなんて……」

「だとしても、他に手掛かりはあると言うのか?」

「…………」


 ない、わね……

 男性はもちろん、女性の方もあたしたちの事を親の仇のように見ていた。

 子供は……よくわからないのか、そうは見られてなかったけど。

 ……ああもう、どうすればいいのよ!


「……イエロー。考えるのもあれだし、マゼンタの事が心配だ。様子を見に行こうぜ」

「……そうね」


 あたし達は考えを中断し、さすがに治療は済んだであろうマゼンタの元へと向かった。



――――――――――――――――――――――――――――――



 マゼンタがどの部屋で治療されていたかわかる。

 正確には怪我したマゼンタがどこに運び込まれていたかだが……


「ここね」

「ああ」


 おそらく監視と言う意味で、部屋を出てから常に感じる視線を気にしつつ目の前にある扉の前で深呼吸をした。

 そして、洞窟内なのにしっかり作り込まれた扉を叩き、


「失礼します」


 取っ手に手をかけて扉を開けた。

 その中には……


「マゼンタ……」

「よかった……ちゃんと治療されている」

「ああ」


 その中には植物で作った寝台に寝かされたマゼンタがいた。

 全身には葉のようなものが貼られ、その上を蔦のようなもので巻きつけられていた。

 いいのか悪いのかよくわからないけど、放っておかれてはいないから、いいという事なんだろう。

 出血だって抑えられているし……


「ん?」

「どうした、イエロー?」

「いや、マゼンタのそばに誰かが……」

「え?」


 寝台で寝ているマゼンタの近くに誰かが床に座り込んで眠っていた。

 この子は……


「リュチェ? なんでここにいる?」

「……もしかして…………」


 もしかして、マゼンタのこと心配していたの?

 あたしはそう思いリュチェちゃんの顔を覗いていると、


「んう……」

「あ、起きる」

「ん……ん~~~~~!!」


 先ほどの声に反応してか、リュチェちゃんは顔を上げて体を伸ばした。


「…………」


 そして、まだ開き切っていない目であたしたちの顔を見ていると


「……! おねーちゃん……!?」

「おはよう、リュチェちゃん」

「おねーちゃん!」


 リュチェちゃんは目の前にいるのがあたしだとわかるとあたしの胸に飛び込んできた。


「わ……! ちょっとリュチェちゃん!?」

「無事だった! おねーちゃんは無事だったんだね!」

「あ……」


 そうか、確かあの後、一度洞窟を抜ける前に会った後、一度もリュチェちゃんと顔合わせしていなかったんだね。

 いけない。心配かけてしまったな。


「おねーちゃんも……おじちゃんみたいに……怪我したかと思っちゃったよ……!」

「リュチェちゃん……」


 あたしは抱き着いて泣きそうなリュチェちゃんの頭を優しく撫でた。


「ごめんね。無事に帰るって言ったから早くそう言えばよかったね」

「うん……でも、無事でよかった……よかった……!」


 リュチェちゃん。心配かけてごめ……


「待て待て待て。オレも一応大丈夫なんだけど……」

「…………」


 …………シアン。こんな時くらい空気を読みなさいよ。

 いくら空気扱いされたからってぶち壊しはないでしょぶち壊しは。


「おにーちゃん……」


 リュチェちゃんは今さら気が付いたかのようにシアンを見つめた。


「おにーちゃんも無事でよかった!」

「あ、ああ……当たり前だ……」


 ……シアン。ついでみたいに言われたからって落ち込まないこと。

 まったく……


「オレ達は大丈夫だ。何の怪我も追っていない。しかし……」


 シアンは自分の身体に異常はないことを告げた後、寝台で眠るマゼンタを見た。


「すまない。マゼンタの奴を一人で行かせてしまった」

「おにーちゃん……」


 シアンはリュチェちゃんに頭を下げて謝っていた。

 別にあんたが謝ることじゃないのに……



――――――――――しばらくして――――――――――



「そろそろか……」

「え?」


 リュチェちゃんがなんとか落ち着き始めたところでシアンはリュチェちゃんに向き合った。

 その表情は……真剣であった。


「リュチェ。もう大丈夫か?」

「う、うん……おじちゃんも、命に別状はないってわかったし……」

「そうか……」


 シアンは何かをためらう様子だったが、ひとつ深呼吸して話し出した。


「すまない、こんな状況で悪いが教えてほしいことがあるんだ」

「え?」


 ちょっとシアン。いったいなにを……


「人竜族と人間の事について知ってる限りでいい。教えてくれないか」

「え…………?」

「ちょっとシアン!?」


 それは後で考えるって言ったんじゃ……!?


「な、なんで?」

「そもそもこうなってしまったのは仮面男……つまりお前の一族が言う人間がここを襲ってきたことが始まりだった。だったらなぜこんなことになったのか教えてくれないか」


 シアンは再びリュチェちゃんに頭を下げて頼んだ。

 こんなシアン……ちょっと珍しい。


「お願いだ。同じことが起きないようオレ達が頑張ってみる」

「……なんでボクに頼むの?」


 リュチェちゃんはもっと詳しい大人がいるだろうと言う意味でそう問いかけてきた。

 シアンは迷うことなく答えた。


「……理由は簡単だ。お前は人間に対し強い恨みを持っていない。だから固定概念のある話はしないと思ったからだ」

「…………?」


 シアン……たしかに簡単な理由だけど難しい言葉が混ざっているわよ。

 けど、シアンの言いたいことが分かったのかリュチェちゃんは少しだけ考えると……


「それって、おとーさんや他のおとながたたかわなくてすむの?」

「ああ。頑張ってみるよ」


 シアン。あんた……

 昨夜の戦いから何かを感じ取ったのね。


「……いいよ。ほんのちょっとしか知らないけど……」

「ありがとう。ちょっとだけでいい。教えてくれ」


 リュチェちゃんはシアンの頼みを引き受けてくれたのだった。

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