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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第三章・竜と狩猟の世界編
68/114

もう一人の……

少々遅めの投稿になりました。

矛盾がありましたので改訂しました。

それでは、どうぞ。

  Side:紅


「シアン。お前どこへ進めばいいのかわかるのか」

「ああ、とにかくオレについてこい! 正直この洞窟は迷路みたいにごちゃごちゃしているが幸い音が進む先へと示している! 音を頼りに進めば……!」

「そうか……わかった」


 現在、牢屋に入っていたはずの俺達は勝手に檻から出て洞窟内を走り、外へと向かっている。

 なぜなら……


「……何でこうも立て続けに面倒事が起きるんだよ!」

「シアン、落ち着いて。気持ちはわかるけど……」


 どうやら何者かがこの洞窟に向かって襲撃してきたようだ。

 襲撃とはいえこの洞窟内ではなく外にある森でこの洞窟内に入れないようにと襲撃者と戦っているらしいが……


「ほら! 落ち着いて、こっちよ!」

「なんでこんな時に来るんだよ!」

「うう……怖いよう……」


 万が一に備え、女子供は一か所へ逃げているようだ。

 皆慌てているのか俺達には気づいていない。

 とにかく俺達は先へ先へと進む。

 が……


「待って!」

「「「!」」」


 すると後ろから聞き覚えのある声が、


「待って! おじちゃん!」

「この声は……」


 俺たちは急いでいるにもかかわらず足を止め、後ろの方へと目を向けた。

 そこには……


「リュチェちゃん……」


 少女が後ろへと引いていく女子供とは逆に俺たちの方へと歩いていた。


「おじちゃん、おねーちゃん、おにーちゃん。いったいどこへ行こうとしてるの?」


 少女は険しい顔をしてこちらへと寄っている。

 その表情は……心配か、疑いか、


「外で戦っている奴らの所へ行く」

「そう……」


 ある程度予期していたのか大して驚いていなかった。

 しばらく沈黙すると少女は顔を上げると、


「ねえおじちゃん。ひとつ聞いていい?」

「なんだ」


 俺たちは急いではいるが少女の顔が真剣であったので聞くことにした。


「おじちゃんたちはいったい何者なの?」

「「「…………」」」


 いったい何者なのか。

 初めは恐らく俺たちの事を自分と同類であると思ったのだろう。

 しかし、父親に誤解され、連れていかれ、閉じ込められ、いったいなぜそうなったのかを考えていたんだろう。


「教えて。おじちゃんたちは“ニンゲン”? それとも……」


 恐る恐る少女は問いかける。


「ボクと同じ“人竜族”なの…………?」

「「「…………」」」


 人竜族……

 それが少女の……ここで生きている者たちの種族名か。

 ならば……


「俺たちは……人竜族とやらではない」

「!?」

「不思議な力を持つ……人間だ」

「そう……なの……」


 そこも予想内なのか少女はただ小さくうなだれしまう。

 だが、


「でも、おじちゃんたちは悪い人じゃない!」


 だが少女は男たちとは違い敵対心を持たなかった。


「おじちゃんはボクの事を身を挺して守ってくれた! あんな強い力があるのにおとーさんに酷いことをしなかった! だから……」


 これ以上は……時間の無駄だ。


「時間がない。行くぞ」

「え、おい!」

「ちょっと!」

「あ、おじちゃ……」


 悪いがただでさえ急いでいるんだ。

 これ以上は時間が取れん。


「待って! ボクも……!」

「来るな」

「!」

「お前がついていく必要はない」


 ハッキリ言って足手まといだ。

 だから……


「お前の父親もその仲間も、みんな助けに行く」

「!?」

「だからお前は安全な所で待っていろ」


 俺はそう言うと少女は少しだけ迷うような表情になったが……


「……うん!」


 少女はしっかりした様子で返事をし、他の者と同じく後ろの方へと退いていったのだった。


「……行くぞ」

「あ、ああ……」


 そして、洞窟内を進み続けてようやく外へ出ることができたのだが……


「森……」

「その上暗いわ……」

「厄介な状況だな」


 外を出ると、目の前には森が広がっており、その上現在は夜のせいでかなり暗いようだ。

 まあとにかく……


「シアン! 人らしき気配がしないんだけど!」

「まだもう少し先だ! そこで戦っている!」

「ならば進むぞ」


 外を出てもうしばらく夜の森の中を進んでいると……


「!?」


 突如、シアンが耳元に手を当てると……


「お前等!」

「「!?」」


 何か気づいたのか後ろへと下がりだした。

 すると……


「オオオオオオオオオオオオオオゥ!」

「「「!」」」


 俺達の頭上、近くの木の枝から何かが落ちてきた。

 それは……


「……誰だ?」


 それは、身の丈ほどの大きさを持つ槍を軽々と扱う大男であった。


「ん?」

「なんだ?」

「なに……こいつ……!?」

「逃がさん…………」


 その男は顔に模様が入った仮面を着けており、その上裸で腰に植物を巻きつけただけの恰好であった。

 防具も何もないのだが、その男の体つきはがっちりとしており、厄介そうな相手であった。

 ただ……


「なんでまた……裸の男が……!」

「ん?」


 イエロー?

 なにやら頭を抱えているが……


「おい、どうした」

「また……またなの……また裸なの……?」

「イエロー!?」


 ……どうしたイエロー。なにかあったのか?


「お前たち一族…………覚悟しろぉ――――――――――!!」

「げ……!」


 すると男が槍を出して突っ込んでくる。

 逃げようにもシアンは必死になってイエローの名前を呼び掛けている。


「イエロー! おい、眼を覚ませよ!」

「あいつ……あいつ……あいつ……!」


 イエロー? なんか殺気が……


「あたしに変なトラウマ刻み込むなぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」

「なに?」

「イエロー!?」


 イエローが突然激怒し、思いっきり拳を上げると……


 ゴッ!!


「ごぼぉぉぉぉぉぉぉぉ…………!?」


 それが思いっきり男の顎に引っかかった。

 あまりの勢いに仮面は粉砕され、男はそのまま上昇し……


「…………ぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!」

「ふんっ!」

「ごばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 落下してきたところを再び殴られたのだった。

 仮面の男は気絶してしまった。


「……イエロー?」

「どうした?」

「……ああ、大丈夫よ。あたしは正常……」

「…………そうか」


 それ以上は聞かないことにしたのだった。


「しかし……なんなんだこいつ?」


 シアンは気絶した大男を不思議そうに見ていた。


「なんだって……襲撃者じゃないの?」

「いや、恐らく襲撃者だろうな……」

「こいつは……もしかして人間か?」

「わからん」


 もしかしてこいつが少女の父親が言っていた奴らか?


「シアン。早く行くわよ」

「ああ、ちょっと待って……」


 俺は先ほどと同じやつがいないかどうか少し周りを見たが……


「よし、大丈夫だ」

「じゃあ行く!」



――――――――――――――しばらくして――――――――――――――――



「見つけたぞ! あれだ!」


 長いこと森の中を進むと見つけたのかシアンが前方へ指差した。

 そこには……


「…………!? 貴様ら何時の間に牢を……!」


 少女の父親以下十数名がさっきの仮面男と変わらない格好の集団と戦っていた。

 両側ともそれぞれ怪我を負っている。


「なんだ、あれは!」

「人……じゃあない! 敵だ!」


 仮面男たちはこちらを見て少しだけ戸惑ったがその後すぐに敵であると認識した。

 イエローの髪や俺の肌を見てからだから恐らく……


「貴様ら! いったいどういうつもりだ!」

「なに?」


 と、こんな時にもかかわらず少女の父親がこちらに敵意を向けてきた。


「集落……貴様ら集落に何かしたのか!」

「おい! この期に及んでまだそんなことを……!」

「うるさい! 貴様ら人間など信用できるか!」


 けんもほろろにこちらを拒絶している。

 どうやら聞く耳持たず、だな……


「なに? 人間なのかこいつ……」

「だが、あの肌にあの髪……」

「しかしよく見ればこいつら……」


 ……いかん。

 このままだと俺たちが本当に人間であることが確定してしまう。

 このままだと……


 その時だ


「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!」

「!?」


 突然の大声に驚く俺達。

 その声の主は……


「イエロー……」

「小娘……どういうつもりだ」


 人竜族たちの強い眼光にひるまずイエローは続ける。


「あんた! 後ろにある集落を護るんでしょ! リュチェちゃんを護りたいんでしょ! だったらあたし達に協力しなさいよ」

「…………!」

「あたしたちと敵対するのは結構だけどね、まずは目の前の襲撃者をどうにかすることが先でしょ!」

「……くっ!」


 イエローの言っていることに男は反論できない。


「後でいくらでも謝るしどんなことにも答える。だから今だけは護ることを優先しなさい!」

「……………」


 しばらくの沈黙。

 そして……


「わかった……今は……この状況を何とかしてからだ」


 どうやら今のところはなんとかなるようだ。


「ああ、それがいい」


 シアンはそう言うと視線を仮面男たちに向け、一度深呼吸をした。

 イエローも俺も視線を向け、構える。


「と……いうわけで」

「「「?」」」


 俺たちは今だ戸惑っている仮面男たちに……


「覚悟しろ」

「行くぞ!」

「この先へは行かせないわ!」


 ……全力で突撃した。


「こいつら…………!」

「やはり敵か。なら……」

「かかれぇ―――――――――!!」


 向こうも向こうで返り討ちにする気だ。


 しかし……


「ぎゃああああああああ!!」

「!?」


 すると突然近くから男の悲鳴が響いてきた。


「なんだ、この声は……」

「いやあ、俺達からじゃない!」


 仮面男たちは自分たちの方からじゃないと言った。

 という事は……


「この声は……ヤクト!」


 どうやらこちら側の者の悲鳴らしい。

 続いて驚きを含んだ声で男が声を上げる。


「な、なんだこの動きは!? 本当に人間なのか!?」

「? よくわからんが驚いていることは分かった」

「がぁ!?」


 返ってきたのは、軽い調子の少年の声であった。


「とと! ジャンプ!」

「ワォ!」


 この声、他の奴と様子が違う。

 なんだ?


「悪く思うな……おれっちも必死でね」

「ぎゃああああああああ!?」


 再び響く男の悲鳴に……


「ヤクト!? ヤクトォ――――――――――――!!」

「待て! ルルゥ!」


 少女の父親は仲間の悲鳴を聞くとすぐさま仲間の元へと駆けて行った。

 ……ちっ!


「一人で夜の森の中を走るな!」


 俺も少女の父親についていった。


「おい! マゼンタ!」

「ちょっと! 離れちゃ……!」

「構わん!」


 後ろの仲間の静止も聞かずに俺は進んだ。


「お前等はお前等でそこの奴らを頼む!」

「「……わかった!」」


 さて、そうとなると……

 俺は体の差など知らずに目の前を走る男へと追いついた。


「おい、待て! 一人で先へ進むのは危険だ!」

「仲間を放っておくわけにはいかないだろ!」

「ああそうか。ならば俺も同行させてもらう!」

「…………勝手にしろ!」


 勝手にさせてもらう。

 お前は……ここで死んではいけない。


「ヤクト!?」

「ん?」


 森の中走り続けると、やがて広場のようなところへ出た。

 その中央に、血を流して倒れる人竜族の男が……


「ヤクト――――――――!」


 少女の父親は倒れている仲間の元へ駆けた。


「ヤクト! 無事か!」

「ル…………ルルゥ!」


 少女の父親は仲間を抱き起すと、顔を覗き無事を確認する。

 ヤクトと呼ばれた仲間は、右腕が切断されてしまい、そこから血を流すも何とか生きている状態であった。


「しっかりしろ、おい! 出血が……」

「いや、何とか俺は無事だ。だが……!」

「ヤクト?」

「あいつ……オイラを負かすどころか……生き恥を……うぅ……!」

「…………!」


 血を流す男は悔しそうに、片腕の傷にうめき声を上げた。

 すると……


「まったく……次から次へとこりねーなー」

「「!?」」


 突然横から先ほどと同じ軽い調子の声が聞こえた。

 俺はその声がする方へ視線を向ける。


「ったく、いい加減おれっちを狙うのはやめてくれない? おれっち基本的に自分から殺しにはいかないからね」


 な、なんだこいつは………………?

 現れたのは、線の細い容姿で黒い髪に白い肌の少年だった。

 少年のうんざりした言葉を聞くと少女の父親が顔を険しくした。


「……貴様が人間である以上……見過ごすわけにはいかん!」


 怪我した男が言うと少年は嫌そうな顔をした。


 こいつは……妙だ。

 戦う気がある仮面男とは違いこいつは嫌々戦わされている様子だ。

 それに格好も先ほどから出ている仮面の者たちとは明らかに違う。

 形状だけなら普通にズボンとシャツではあるが、見たことのないデザインがされている。

 いったい誰だ?

 人竜族……でもなさそうだ。


「だからさーおれっちはおたくらの言葉がわからないの。わかる?」


 なに?

 言葉がわからない(・・・・・・・・)だと?

 まさか……


「おい」

「ん?」


 俺はあることを確かめるため前に出た。

 少年は先ほどとは違うのか俺を見て驚いた顔をしている。


「お前……何者だ?」

「…………あれ?」


 俺が問いかけるのに対し少年はとぼけている。


「聞こえないのか。お前は何者だと聞いている」

「……どういうことだ?」


 なに?


「なんでおれっち……おたくの言葉がわかるんだ?」

「なんだと……?」


 人竜族の言葉がわからないのに俺の言葉がわかるだと?

 いったいどういう…… 


«ほう……これは珍しい»

(ノワール!?)


 突然俺の頭の中に聞き覚えのある声が響いた。

 珍しい、だと?


(どういうことだノワール。こいつはいったい……!)

«なに、簡単なことだ。君も察しがついているだろう»

(…………まさか)


 今、俺の目の前に立っている少年。

 その姿恰好はここでは浮いているどころか俺にも見たことがない。

 だとするならば……ありえない。

 だが……


《そう、目の前にいる少年も異世界人さ》

(!?)


 まさか……

 俺たち以外にもこの世界へ流れ着いた人がいただと…………!


「よくも……ヤクトの右腕を……!」

「!」


 少女の父親は仲間を怪我させた少年を強く睨んだ。

 すると少年は……


「はあ……またか。またなのか……」


 と、うんざりしつつ少年は両腕を前に出して構えを取った。

 両腕には鋼のような籠手を着けている。

 そして、自分を睨む男を見て一言、


「しかたない。また同じく、迎え撃たせてもらう」


 そう言ったのだった。

いったいどうなる。

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