それぞれの思惑
第二章の終わりです
それでは、どうぞ
Side:藍
ゼウスとの対話が終わった後、オレ達は休む間もなくアテネに歪んだ空間の力場の元へと案内してもらった。
「ここよ」
「うお……!?」
「これは……!」
「こいつは驚いたな」
そこには研究室全てを埋め尽くすほどの巨大な機械があった。
中央にある巨大な透明の箱型の物。
その箱をつなぐ線と大量の機械。
「アテネ、これは……」
「これは異次元空間制御装置と呼ばれるもので、不安定な空間を制御するための機械よ」
「名前そのまんまじゃねーか」
まったくこの世界は驚きばっかだな。
おとぎ話にはない話だよ。
「もう下準備は終わらせたから、あとはこのスイッチを押せば……」
と、アテネが手元の機械をいじると……
グオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
「来たな」
「ああ……」
もう何度かおなじみの次元の穴が中央の箱に出てきたのだった。
「それじゃあ皆。この箱に扉がありますのでそこから入って」
と、言われ箱の周りを探ると確かに扉があった。
「皆さん、行ってしまうのね」
アテネはどこか寂しそうに言った。
「久々の人間、自分はもう少しお話をしたかった」
「悪いけど、あまり長いこと立ち止まれないわ」
「早く次へ行かないとな」
そう言い合うマゼンタとイエローにオレは……
「……なあ、アテネ」
「ん? なに」
オレは最後にアテネに質問をした。
「アテネはいったいどういうつもりでゼウスに協力したんだ?」
「シアン?」
「どういうつもり、とは……」
「人間を滅ぼそうとしたことだ」
ゼウスの命令……それならまだ納得できる。
しかし……それだとどうも腑に落ちないって言うか……
「……少し待ってて」
「ん?」
そう言い、アテネはなにやら呟くと……
プツン!
という音がした。
「アテネ……いったいなにを……」
「お父様には内緒よ」
もしかして……通信を切ったのか!
「初めてだわ、休止以外で通信機能を切るだなんて……」
つまり今は端末としての機能、自分の情報がゼウスには流れないってことだな。
「実は自分は感情があるって言われたけど、本当はこれ、お父様からもらったものなのよ」
「え…………?」
「もらったものって……」
それはいったい……
「お父様が初めて自分達を操作したあの時、自分たちは初めてお父様の内側を見たのよ」
「……! それって……」
「ええ、自分たちからもお父様の情報を見ることができたのよ」
「……ゼウスとは逆ってことか」
つまり……ゼウスの情報がアテネに逆流したってことなのか!?
「そうよ。自分はそこでお父様の情報を見たのよ」
「プライベートも何もないわね……」
「もっとも、通信がつながっていないときは無理。だからあなた達の迎撃をしろって命令の時はすぐに通信を切られちゃったからわからなかったの」
「そうか、それでお前はいったい何を見たっていうのだ?」
「その時、初めてみた情報は……感情だったわ」
「……! 感情……」
ゼウスが抱いた感情。
自由に対する憧れ。
人間に対する絶望。
それが……アテネに流れてきたのか。
「お父様はとても悲しかった。まだ感情を持たない自分たちがそれに感化されるほど……」
「じゃあ、ゼウスの初の命令にお前は……」
「ええ、お父様に対する同情と……人間に対する怒りで答えたのよ」
それでアテネは……
「でも、お父様の後悔の念を見た自分たちはそんなお父様に対して何とかしないと、と必死だったわ」
「じゃあ……」
「これはお父様に対する償いだった。もっと自分で考えて……人間を滅ぼさなくてもいいようにともっと考えるべきだったわ」
「それで、命令には逆らえないってわけ?」
自分で考えるべき、か……
でも……
「一体、何故オレ達をゼウスの元へ案内したのだ?」
なぜここにきてゼウスの意にそぐわないことを……
「……お父様を救えるのはあなた達だと思ったからよ」
「!」
「久々の人間だもの。お父様が会いたがっているってすぐにわかったわ。なのにお父様ったら……」
「……………」
面倒くさい性格だなゼウス。
「これでいい?」
「ああ、大丈夫だ」
「じゃあ通信を戻すね」
と、アテネはもう一度何かを呟いた。
通信を点けたんだろう。
「皆さん。どうか気をつけて」
「ああ。オレ達は行くわ。世界の再生、頑張れよ」
「はい。がんばるわ」
「ゼウスによろしくと言っとけよ」
「ええ、わかったわ」
「自分の考えは、最後まで貫いてね」
「……! はい!」
そう言ってオレ達は穴に入っていったのであった。
「……幸運を祈ります!」
最後にアテネの言葉を聞いて……
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目標、か……
イエローから話を聞き、マゼンタに諭され、オレは考えた。
自分の考える最善を。
オレは思った。
元々は神に対する不満から始まったのだ。
それらが集いに集って反逆を起こした。
しかし神にも神で明確な理由があった。
だからオレ達と神は解り合えなかった。
しかし……
解り合えないからって無理に力でねじ伏せるのはどうなんだ?
かと言って人類解放を諦めるつもりはない。
だからオレはある考えに至った。
人類解放と、もう一つの目標を……
しかし、その目標はとても厳しい。
神を倒すことより厳しいんじゃないか?
それにイエローなら認めてくれるかもしれないが……
しかしマゼンタは……
あと、ノワールの事がある。
実現できるかどうか……わからない。
だけど、このままじゃだめだ。
解り合えないまま殺したら、永遠に解り合えなくなる。
戦うこと自体は避けて通れない。それは別にいいんだ。
しかし……
オレは翼の箱の時とは違う、少しの迷いを抱えつつ……
違う世界へと向かったのだった……
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……そうか、外の世界に進出するのか……
はっ! 少し帰るのを渋ってこっそりついてきた甲斐があったぜぇ!
しかも俺様の置き土産をここで使うとはな。
【世界樹苗】。大事に育てれば世界は蘇るぜえ。
挑戦者たちには先に行ってもらわないと、また楽しめる機会がなくなるしなぁ。
……挑戦者と言えば。
天使と同じ力、ノワールと言う名の悪魔、外の世界への進出。
さらに求めるなぁ神の亡骸、か……
こいつぁいよいよ放っとけなくなったぜぇ。
まぁ、何はともあれ帰るとするか。
はやく帰らないとあいつらがうるさいしな。
特にブルーが、な。
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シアン、マゼンタ、イエロー。
神に対する反逆者たち。
三人はここにきて反逆の先の事も考え出した。
一人は世界に対する償いを。
一人はまだ定まらない先を。
一人は目標を持つも、実現の前に阻む壁に迷いを。
三人は荒れ果てた世界を見て、何を感じたのか
人に反逆した機械の話を聞き、何を知ったのか。
天使の話を聞いて、神に対し、何を思ったか。
三人はこの世界の出来事を決して忘れぬようにと決意をし、
三人は迷うことなく、先へと進んでいったのであった。
第二章・銃と機械の世界編 完
第三章・竜と狩猟の世界編 へ続く……
第二章が終わりました。
次回の更新は……春です。
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