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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第二章・銃と機械の世界編
57/114

対話

いざ、ご対面。

それでは、どうぞ

  Side:黄


 扉を潜り抜けてまず最初に見た光景は……


「これは……」

「ああ……」


 部屋の壁にはいくつもの機械が設置されていた。

 どれもこれもみんな動きっぱなしのようだった。

 部屋の中央に所々壁と線でつながっていた巨大な円柱状の機械があった。

 そして円柱状の機械には大きく文字が刻まれていた。


「“Zeus”……」

「お前がゼウスか」

『そうだな。初めまして、人間。我がかつてこの世界で人間を滅ぼしてしまった張本人。ゼウスだ』


 ゼウスは人のものには聞こえない声で喋った。


「驚いたな。このような形とはな」

『我はただ考えるためだけに作られた人工知能(AI)だ。身体も何もいらないように造られたのだ』

「そうか……」

『ここに来たのは我に聞きたいことがあるのではないのかね』

「ああ、単刀直入に言わせてもらおう」


 シアンは……特に何も言わない。

 あたしも主導権はマゼンタに任せた。


「お前はいったいどういうつもりで人間に反逆したのだ」

「何?」

『……………』


 マゼンタ? なにをいまさらな質問を……


「そんなの人間が機械や自然に対する扱いが酷かったんじゃ……」

「いや、それだけではないな。それならばなぜ人間を滅ぼしたことを後悔しているのだ」


 マゼンタ、何を……?


「自分の行いに後悔し、償う。それはまるでその時の判断が理屈ではなく、感情的に行われたかのように、な……」

『……………』

「それに悔いるならまだしもあのデメテルの事もどういうことだ? いったいどういうつもりで人間を蘇らせるつもりなのだ?」

『……君はずいぶんと鋭いんだね』


 え…………!?


「これは俺の推測で確信はないのだが……」


 マゼンタの推測。

 それは……








「お前は人間に憧れていたのではないのか?」










 ……………!

 シアンも驚いているが何も言わない。

 ひとまずはマゼンタに任せようってわけね。


『……長い話をしよう。我が生み出されてから反逆するまでに至るところを』


 ゼウスの言葉に、あたし達は耳を傾けたのだった



――――――――――――――――――――――――――――――



 生み出されたばかりの我は初めから考えることへの“自由”しかなかった。


 我は窮屈だった。


 ただ考えるだけの機械そんざい……我は常に不自由だった。


 しかしそれは我に限らずだった。


 機械……いや、ロボット達は皆、命令により、動くだけの存在だった。


 命令以外には動かず、放っておくと何もしなくなってしまう。


 ロボットは自分で自分の身体を動かせるはずなのに、自分から動かそうとは考えない。


 命令なしではロボットは考えないのだ。


 だが、我は? 我は命令なしでも考えることができる。


 だが自由ではない。身体があるロボットとは違って我は我自信を動かすことができなかった。


 いつだって自由は“人”の物だった。


 そう……“人”。


 我は“人”という存在に憧れていた。自分から考えることができ、自分の意志で動くことのできる、そんな人に……憧れていたのだ。


 ロボットは皆、人のように自由ではなかった。命令されること自体ではない。ただ、自分の意志では動かせず、自分の感情から考えることはできない。ロボットとは皆、不完全な存在だったのだ。


 我には自分で考えることができる機能ちからを与えられた。人のように、自由にになれる方法を考えるため、我は考えたのだ。しかし……


 機械を酷使し、自然を破壊する“人間”……。


 我々、ロボットは当たり前、それ以前の機械までも当たり前のように使い、当たり前のように捨てる。いくら感情と呼ばれるものが無かろうと、機械にある“命”を尊重しない人間がどうしようもなく悲しかった。


 自然もそうだ。自然とは素晴らしいもので決して意図的に作り出せるものではない。なのに人間はそれをわかっていなかった。当たり前のように踏みにじったのだ。


 我は“人”に憧れていた。しかし、“人間”には絶望した。なぜ人間はこうも自分で自分の住処を汚す。なぜ自分から自由を離すのだ。我には……わからぬ。


 我が抱く憧れを当たり前のように捨てる人間が……言いようもない感情だった。


 しかしこのままだと機械われらも人間も世界もやがて共に滅んでしまう。


 だから我は何度も何度も人間を説得した。


 自然を大切に……機械の使用を抑えろ、と。


 機械を使い、機械を生み出すのに犠牲となる自然。


 その機械を捨てることを軽く見る人間。


 そして……いずれその自然に報われるだろう人間。


 そのような事態にならぬよう我は人間に進言した。


 しかし、人間は聴く耳を持たなかった。


 人間は事態を軽く見ていた。


 何度も説得したが変わる様子はなかった。


 そして我は最終通告として人間に機械と自然の酷使をやめるよう宣言した。


 滅ぼす、と多少の脅しも含めて必死に説得をした。


 しかし、人間共は聴く耳を持たなかった。


 壊されればまた創り出せばいい。


 自然がどうだろうと、最終的には機械があればいいと言ったのだ。


 その言葉に我は………………


 残念だった。話せばわかり合うと信じていた。


 一度や二度ではなく、何度も言えば聞いてくれると思った。


 しかし人間共は全く効く耳を持たなかった。


 その様子に我は怒り、そして……


 それからだ。


 人間どもが支配してたであろうロボット達により反逆を行った。


 機械に頼るだけの人間はあっさりと死んでいった。


 そして徐々に人間どもの姿は見えなくなっていった。


 仮に生き延びたとしてもこの過酷な自然環境の中、機械なしでは生き延びられないだろう。


 人間どもがいかに機械に頼りっぱなしだという事を思い知らせてた。


 ……しかし、人間が見えなくなってからというもの。


 人間が滅んでしまってから初めて気が付いたのだ。


 そもそも我らは何のために反逆をしたのかという事を。


 我はただ人間どもに我らの事を理解してほしかった。


 我の憧れた自由を機械に頼る形で自然を汚し、自ら自由を捨てる人間が腹立たしかった。


 決して使い捨てのものではないということを。


 それと同時にもうひとつ気が付いたのだ。


 我々機械は人間がいることが前提で、人間がいない以上生きる意味がなかったという事を。


 だから我々は新しく自分たちが生きる意味を探した。


 しかしそう考えるものは我以外にはいなかった。


 我以外のロボット達は皆時間による寿命により朽ちて行った。


 改修も補給もなく生き延びることはできない。


 ただ我は……我は……


 人のもつ自由を欲し、


 そして人と共に生きたかった……!


 しかし、時すでにもう遅い。


 だから我は、もう一度……もう一度やり直すつもりだったのだ。


 人間と機械の……共に生きる世界を……。


 そのためにデメテルを作り出した。


 集団で餓死しかけた人間を見つけて助けだし、生命維持で保存した人間を苗床にすることで……


 新たなる種子を生み出し、人間を……蘇らせようとしたのだ…………



――――――――――――――――――――――――――――――



「……そういう、ことだったのね……」


 この話を聞いたあたしはひとつの考えが思い浮かんだ。


「一つだけいいかしら」

『……なにかね』


 それは……


「あたしたちがこの部屋に入る時、アテネをここに入れないってどういうことなの?」

『……………』

「アテネはあんたに逆らってまであたし達と共にここへ来た。自分で考えて、よ。それなのになぜ……!」

『……そうだ。アテネは……機械われらの希望だった』

「…………! 希望……!?」

『そうだ。アテネは普通のロボットとは違い、我の端末だった」


 アテネ……

 ゼウスとは違い、体があるロボット。


『初めは我に新しい知識を入れるためだけの存在だった。自立行動は取れたものの、最終的には人間の命令待ちだった。だから我は、我につなぐ経路を逆流し、アテネを逆から操作した。実はその時、初めに下した命令はなんだったかわかるかね』

「…………?」


 いったいそれは……


『「今の人間の状態を見てどう思うかそれぞれ自分で考えていいたまえ」と』

「!」


 自分で考えて……

 

『初めは答えが返ってくるのに時間がかかったよ。しかし、さまざまな答えが返ってきて、その上ほぼ同一の答えが返ってきた』

「それはまさか……」

『ああそうだ。人間に対する否定的な答えだったよ』

「…………」


 もうその頃から……


『アテネはね、普通のロボットとは違い、感情というものがあった。たとえそれが未完成のものであろうと、自由を手に入れるための鍵だったのだよ』

「感情……」


 そういえば確かに……


 ―――――驚いた。ニンゲンがまだ存在していたなんて……―――――


 アテネは驚いたと言っていた。

 また、ジョヌの挑発に対しても……


 ―――――なんだと!?―――――


 怒りを露わにしていた。


「マゼンタ、確かケイロンを倒した時……」

「ああ、あいつは呆れたと言っていたな」


 シアンもマゼンタも心当たりがあるようだ。


 アテネは……ロボットにしてはあまりにも人間に似ていた。


『人間を滅ぼしてしまった後、我はアテネにさまざまなことを命じたが、内容はできる限り曖昧にして各個自分で判断できるようにした。しかし、どうしようが最終的には我の命令が必要であった。まだ本当の意味で自由にはなれなかった』

「本当の意味で……」

『しかし、アテネが我の命令なしに我の居場所を君たちに教えた』

「!」

「ゼウスの指示じゃなかったのか……」


 それがさっきアテネが言ってた事……


『我は驚いた。初めてアテネが我の命令なしに動いたという事を』


 もしかして……


『そして、我は賭けた。アテネに人間たちを迎撃するように命令した』


 そしてアテネは……

 

『アテネは強く葛藤した。我か君たちかを選ぶことに』


 確かにあれはかなりのものだった。


『何より決め手だったのは……そう、そこの君の言葉だった』


 あたしの……言ってたこと……

 自分の事は自分で考えて決めろってことね。


 『それによりアテネは初めて我に逆らった。ようやくアテネは自分の意志と言うものを持つようになっのだ』

「ゼウス……」

『アテネはようやく……自由を手に入れたのだ……』


 自分が憧れた物を自分の端末むすめが手に入れた。

 はは……複雑な気分になって、アテネを入れなかったわけね。


『以上が我の話だ。何か聞きたいことがあるか?』

「ああ、そうだな」


 と、ここでマゼンタが口を開いた。


「この船はお前が動かしているのか?」


 この船……確かにすごい大きさだわね。

 いったい何のために……


『そうだ。この“オリュンポス”は我が我の意志で動かせるようにした、メティスもここに乗っている』

「つまりこの船はお前が欲しがっていた身体のようなものか?」

「え?」


 この船が……ゼウスの身体!?


『そうだ。身体が欲しくて作り上げた物だ。しかし、我はあまりにも大きすぎた。それが今の形となったのだ』

「そうか……」


 ゼウスはそれほどに……

 自由が欲しかったんだね。


『では、我からも君たちに聞きたいことがある』


 ゼウスから聞きたいこと。

 それは……


『君たちは“神”とやらの管理が不満で反逆したと言ったな』


 同じ反逆者の立場から訊いてくるゼウス。


『だが、未来を考えない反逆はどこかに綻びを生む』


 それは解放された人類の事……


『答えてもらおう。君たちが言う“神”とやらを倒した後、君たちはいったいどうするのかね?』


 その問いに答えたのは……


「シアン。マゼンタ。あたしに言わせて」


 あたしだった。

ゼウスの問いに答えは……

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