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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第二章・銃と機械の世界編
52/114

迷い、決断

  Side:紅


 イエローが四輝天使の一翼、〈樺地かばじ〉のジョヌから得た情報を聴いた俺達はというと……


「……………」

「……………」

「……………」


 無言、だった。

 イエローから知った情報はそれほどまでに大きなことだった。


「なんてこった……」


 先に言葉を発したのはシアンだった。


「神が人類を管理する理由が憎しみだなんて…………」

「そうだな……」


 しかし、よく教えたなそいつは。

 何を考えているんだ?


「でも、それだけが理由じゃないの」

「なに?」


 他にもあるのか?


「もっとも、そっちは教えてくれなかったけどね」

「そりゃ、そうだな」


 もう一つの理由か……


「むしろそっちの方が重要って言ってたわ」

「…………どちらにせよ、詳しく知るには先へ進まないとな」

「そうね」


 …………ん?


「…………」

「……シアン、どうした?」


 こいつはまさか……


「マゼンタ、イエロー、オレは……」

「揺らいでいるのか?」

「……! そんなことは……!」

「無いと言い切れるのか?」

「…………それは…………」


 …………はあ。

 まったく、困った奴だ。


「シアン。俺達はもう振り返ることも立ち止まることも許されないところにいるんだ。迷ってる暇はないんだよ」

「……! そんなことは解って……!」

「いいや、わかっていない」


 解っているならそんな情けない顔はしないはずだ。


「お前、忘れてないよな。自分が抱いた志の事を」

「志……」

「俺は忘れていない。神を倒すという事を俺は一度も忘れていない」

「……でも! 神は本当はつらい目に合っていて、復讐をしようにも人類は世界の一部だからって理由で本当はできなくて……」

「シアン……」


 まったくこいつは……

 勝手に揺らぐなよ。


「シアン。勘違いするな。過去など今の行いを赦すためにあるのではない。たとえどんな過去でもだ」

「マゼンタ……」

「お前が神を倒す理由を見失ったってんならそれでもかまわない。ここに置いていってやるよ。はっきり言って目障りだからな」

「ちょっとマゼンタ! 言いすぎよ!」

「いや……」


 イエローの非難にそれを遮るシアン。


「すまないマゼンタ。オレ、少し見失ってたよ」

「ふん、謝る必要はない。これ以上不愉快ならぶん殴って置いていくところだ」

「…………そうだな」

「…………否定しろ、少しは」


 本当に困った奴だ。


「マゼンタ。やっぱりオレは神に挑むことにするよ。それでも、人類解放の志を捨てるつもりはない」

「そうか…………」

「それに、立ち止まれない理由は増えたしな」

「……約束の事か」


 ふん。吹っ切れた……にしては、まだほど遠いな。

 なら最後に釘を刺しておくか。


「……そんな情けない顔で王女の前に出られるのかお前は」

「!?」

「イエローの話を聞いたくらいで揺らぐような志じゃ結局は大したことじゃないものなんだ。迷ったままそれを果たしたところで迷いが消えることはない」

「なんだと……!」


 さすがのシアンも頭に来たか。

 だが、たとえ俺が嫌われようと、これだけは間違ったまま放ってはおけない。


「迷うくらいなら捨てろ。そして、新しい目的でも探して考えてみろ」

「そ、そんな簡単に志を捨てられるかよ!」

「ならどうする。迷ったまま果たすつもりか? もっとも、目的が同じであれば俺は構わない」

「オレは……!」


 シアンが葛藤している最中、イエローが、


(あんたいったいどういうつもりよ!)

(ん?)


 シアンに聞こえないよう小声で話しかけてきた。


(どういう、だと)

(……いくらなんでも追い詰めすぎよ。そう言うあんたはいったいどうなのよ!)

(……お前も迷っているんだな。本当は)

(……! そんなことないわよ!)


 バレバレだ。

 困った奴はもう一人いたか。

 ……仕方がないな。


「シアン。イエロー。いいか? ほんの一時だけなら迷うことは結構だが半端な結果は残してはいけない。そんなの、共に戦い、死んだ仲間に申し訳がないとは思えないのか?」

「「!?」」


 そう、あの時は他に仲間はいたんだ。

 レジスタンスの頃の仲間。

 皆はまだ若く、未熟な所も多かった。

 それでもともに頑張って来た。

 

「こんなところで躓いたらあいつらに会わす顔がない。せめて自分たちが最良だと言えるように目的を固める必要があるんだ」

「みんな…………」

「一時の感情で揺らぐな、とは言わない。だが、それでも俺達はやらなくちゃあならないんだ」

「マゼンタ……」


 本当は迷ってる暇はない。

 ここは異世界で神のいないところ。

 ここならまだぎりぎりで許されると言うだけだ。


「シアン。イエロー。少しでも迷うのならお前らが答えに納得できるよう俺が一緒に考える。逆に俺がもし、迷う事あったのなら……俺を……」

「いや、それ以上は言わなくていい」


 ……シアン。

 ようやくマシな顔になってきたか。


「そうだな。オレは決めたよ、マゼンタ」

「どう決めたっていうのだ?」

「……オレは今の志を捨てるつもりはない。忘れちゃあならねえこともあるしな。けど……」

「けど、なんだ」

「神が人類を管理するもう一つの理由がなんなのかは解らない。だから考えることにするよ」

「何を考えるのだ」

「今よりも、最善で納得できる方法を」

「……ふん。まあ、それでいい」


 さて、あとは……


「マゼンタ。あたしはね……」

「ああ、なんだ?」

「あんたの言う通りよ。誰かのため、なんてことは言わないわ。それでも、あたし達には負けられない理由はあるわ」

「そうか……」

「最後にあんたはどういうつもりなのよ」

「俺か? 俺ももちろん最終目標は変わらない。神を倒す、ただそれだけだ」

「へえ、あんたってずいぶんはっきり言うね。血も涙もないの?」

「血も涙もある。本当は迷ってる暇はないんだ。ほら、見ろ」


 そろそろだな。

 空飛ぶ船が見えてきた。


「次は失敗しない。今度こそゼウスに会う。だがまずは、イエロー」

「なに?」

「黄天使がお前に残した置き土産、しっかり持っていろ」

「ええ。でも正直、もうあんた達とは合流できたんだけど……」

「なに、必要なものだそれは。あの天使はずいぶんなものを残して言ったな」

「ははは、そうね」


 こいつをうまく使えば……

 あとは……


「シアン」

「なんだ」

「俺は【熱幻ねつげん】でこいつと俺達を隠す。お前は【無音化サイレント】でこの周りから生じる音を一切響かせるな」

「え……それって……」

「ああそうだ」


 また戦うのは厄介だしな。


「このままこっそりとあの船へ潜入する。わかったか」

「「わかった」」

「よし!」


 待ってろ。ゼウス。










「ちなみにあんた。もしかしてさっき思いっきり殴った事を根に持ってるの?」

「……そんなことはない。それとこれとは話が違う」

「……そう」


 まあ、あの時さらわれた時点で迂闊だったしな。

と、いうわけで

次からゼウスのいる船へと乗り込みます。

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