報告
イエローがなぜ空を飛べるかというと……
それでは、どうぞ
――――――――――ほんの少し前――――――――――
Side:三人称
ある研究所の中心部でのこと。
そこには大きなコンピューターが一台しかありませんでした。
「どういうつもりだ、9073」
しかし、誰もいないはずなのに喋り声が聴こえます。
それはこのコンピューターが声を発していたからです。
「なぜ、我の居場所を教え、その上小型飛行船まで貸したのかね」
コンピューターの名は“Zeus”、通称ゼウスと呼ばれていた。
かつて人間の科学者により生み出された完全なる自律性を持つ機械である。
今、端末の一つである“Athene-9073”……通称アテネを問い詰めていた。
『申し訳ありません、お父様。しかし、自分はあの者たちを信じてみたくなったのです』
「それがたとえ我に反してもか?」
『それは……』
口ごもるアテネ。
その様子にゼウスは考察する。
(即答はしない、つまりは葛藤してるという事か……驚いたものだ)
考察は続く。
(ふむ、しかしアテネが一時とはいえ我に逆らってまで我の居場所を教えた。それほどまでにあの者どもを……)
しばらく考えたのちにゼウスは……
「いいだろう。ならば我は我のやり方であの者どもを歓迎しよう」
『お父様、それは…………!』
「我はまだあの者どもの覚悟を認めておらぬ。足りないものの答えを見つけだしていないだろう」
『それは……そうですが…………』
反論できないアテネ。
(とはいえ、今の端末は9073に限らずほとんどが動けないであろう。端末同士の情報共有が仇になったな。こうなると使えるものは……)
そう考え、ゼウスはこの研究所内のロボットに命令を出した。
「君たちに命令する。ここに近づいてくる人間どもを迎え撃ちたまえ。なお、生死は問わず、だ」
『お父様!?』
「うむ、アテネよ。無論君たちにも働いてもらうよ」
『お父様、いったい何をお考えに……!』
プツン!
ゼウスは通信を切ったのだった。
「さあ来給え、人間どもよ。君たちがここに来てどうこたえるか……」
もし顔があったらゼウスは不敵に笑っていたであろう口調で、
「待っているぞ」
そう言い放ったのだった。
――――――――――時、同じくして――――――――――
Side:黄
ちょ、ちょっと何よ! 研究所の中央の高い塔の壁が開いたのかと思ったらなんか変な鉄の箱が出てるし!
しかも……
「あいつら………!」
なぜかシアンとマゼンタが乗っていてどこかへ行こうとしていた。
「また置いてけぼりにする気……!」
そうはさせない!
「【重力操りで浮遊移動】!」
あたしは【重力操りで浮遊移動】で自分自身を浮かせ、鉄の箱についていった。
他人の場合、【重力操りで浮遊移動】は触れないと無理だし、触れても一分以内の制約がある。
ただし自分の場合は制約なしに使える。
それにより、あたしは擬似的に空を飛ぶことが出来る。
のだが……
「ちょ、うわ、危なっ!」
実はけっこう操縦が難しい。
なにせ重力の方向を変えるのだから。
「っし! 安定した!」
これで、シアンとマゼンタのもとへ行ける!
若干向こうが速いけど、見失うほどじゃない!
「あいつら……再会したらまずは……」
と、ここで再会の時を考えていた時だ。
「え…………!?」
シアンとマゼンタを乗せていた鉄の箱の行先が見えてきた。
そこは……
「なによ……あれ……!?」
そこには、巨大な船があった。
何やら凄い速さで回っている板や激しく火を噴きだしている翼を取り付けている巨大な船が建物を乗せて浮かんでいた。
「あれはいったい……!」
本当にあれに向かっているの……!? だとしたらいったい……
と、ここで…………
「ん?」
船から何かが出てきた。
あれは……
「あの時の円盤……!?」
シアンとマゼンタを狙っているの!?
「危険ナノデ安全運転ニ移行シマス」
「!」
鉄の箱が速度を緩めた。
そして、シアンとマゼンタはあの円盤に対抗するために構えた。
「……考えてる暇はないわね!」
あたしはひとまずシアン達を巻き込まないよう円盤だけに狙いを定め……
「【重たい空間】!」
「……!? 制御不能! 制御不能!」
「墜落シマス! 墜落シマス!」
円盤を墜落させた。
どんどん下へと落っこちてしまい……
ドォン! ドォン! ドォーーーン!!
戦うことなく破壊した。
「今の声は……!?」
「ああ……!」
シアン達がこちらに気づいたようだ。
まったく、なんて顔で驚いているのよ。
「あんたら! 見つけたわよ!」
「イエロー!」
「イエロー、無事だったか!」
あたしはシアン達のもとへと飛んでいった。
「あたしは大丈夫よ! あんたらはどうなのよ!」
「オレは大丈夫だ!」
「俺もだ!」
「そう……心配させるんじゃないわよ!」
よかった……シアンもマゼンタも無事で本当に良かった!
だったら…………!
「じゃあ一発殴っても大丈夫だね♪」
「へ……?」
「は?」
覚悟してね……
おかげで散々大変な目にあったんだから………!
「【通りすがりの一撃】!」
「ちょ……!」
「お前……!」
喰らいやがれ……!
「やめ……!」
「うおおおおおおおりゃあああああああああああああ!!!!」
ドッ……!
「「ごほ……!?」」
命中!
「どうよ! これであたしの苦しさがわかったか! あはははは…………ん?」
あれ?
シアンとマゼンタが鉄の箱からずり落ちて……
「って、ちょっと!?」
そんなに重たくしたつもりはないのに何で気絶してるの!?
このままだと……!
「せめて安全な所で殴るべきだったわ……!」
あたしはそう後悔しつつ、落ちていくシアンとマゼンタを抱え、地上に降りて行ったのだった。
――――――――――しばらくして……――――――――――
「う……うおぅ…………」
「あ、シアン。起きた?」
「まったくお前は……いったいなんだってんだ……」
「それはこっちの台詞よ、マゼンタ」
二人とも何とか復活した。
あの後、翼の箱(シアン命名。どうでもいいけど)が降りてきたので多少警戒しつつも乗り、低速力で飛行中よ。
とはいえ結構離れてしまったわ。かなり長い時間気絶したものだから……
ま、なにはともあれ今は……
「あんたたちがいないせいでね、こっちは本当に大変だったのよ」
「なんだよ、大変なことって」
「……四輝天使と一人で戦う羽目になったわ」
「「!?」」
あたしの言葉に驚く二人。
ま、そりゃあそうよね。
「本当か!? イエロー」
「本当よ。四輝天使が一翼、〈樺地〉のジョヌだったわ」
「それで、勝てたのか?」
「ええ。なんとかギリギリで勝ったわ」
まあ……嫌な思い出も……あったけどね……
「どうしたイエロー、目が虚ろだが……?」
「あはは、なんでもないわ……あはは……」
「本当に!?」
うんうん。何も見てない何も見てない……
「おい。おまえ本当は何かされてないか?」
「あはは……無茶やったり……戦わされたり……“アレ”を見せられたり……」
「イエロー!?」
いけないいけない。また思い出しちゃったよ。
あはは、あはははは…………
「イエロー! 何があったか知らんが、目を覚ましてくれ!」
「あはははは……………」
――――――――――またしばらくして――――――――――
「ふう、もう大丈夫よ。気にしないで」
「一体お前に何があったんだ……?」
「ふむ、大丈夫だといいが……」
さて、ここからはというと……
「それじゃあお互い、情報交換といきましょ。そっちもなんか大事なことを知ってるんでしょ」
「そうだな、俺達もが今どこへ向かってるか教えないとな」
さっきの船までまだ距離はある。
今の状況を整理するため、あたしたちは情報を交換したのだった。
まずはシアン達からの情報を聴こうとしよう。
――――――――――またまたしばらくして……――――――――――
「ゼウスが……人間を造り出している……!?」
「そうだ。ゼウス自身、人間を滅ぼした事を後悔していたんだ」
あたしがいない間にそんなことがあったのね。
しかし、そうとなりゃあ……
「折角あいつの置き土産も意味がないわね……」
「ん? 置き土産とはなんだ」
「それはね、あいつがアテネ達からあんたらを取り戻すために交渉材料に残したものよ」
そう言ってあたしはこれを出したのだが……
「なに!?」
「ちょ、どうしたのマゼンタ!?」
いきなり驚かないでよ。
「おいおい、ずいぶんな置き土産を残したなそいつは!」
「え……やっぱりそうなの?」
「ああそうだ! これで足りなかったものはそろった! よくやったなイエロー!」
「なんで上からよ」
やっぱりあいつ、すごいものを残したわね!
なんだかんだで感謝よ。
「で、イエロー。お前はどうなんだ」
「え?」
「実際に四輝天使の一翼と会ったんだろ? なにかいい情報は聞けたか?」
「そうね……」
あいつから聞いたこと。
ひとつしか聞いてないけど……でも、
「すごく大事なことを聞いたわ」
「なんだそれは」
「それは……」
あたしはジョヌから聞いたことを二人に話したのだった。




