vs ジョヌ1
今度は天使との戦いです。
それでは、どうぞ
――――――――――シアンとマゼンタがケイロンを倒した頃――――――――――
Side:黄
「さぁて! ここなら思う存分やり合えるぜぇ」
「はあ……」
なんでこうなったんだろうか。
今、あたし達は研究所を離れて、外の荒野にいる。
周りには枯れた植物ぐらいしかなく、他に何もない。
確かに思う存分やり合えるけど……
「はっ! いつまでうじうじとしとるんでぇい! こうなった以上腹を括れぇい!」
「……そうね」
あんたに言われると腹が立つけど、やるしかない。
あたしは改めて眼前の敵を睨んだ。
「ほぅ、いい眼をしているねぇ! そう来なくっちゃなあ」
「……あんたは………」
その前に聞きたいことがある。
「あんたってさあ、今の神がやっていることをどう思ってるの?」
四輝天使の中で珍しい部類に入るこいつならどんな風に思ってるのだろうか。
「あん? 人類管理の事かぁ? はっ! 別に何とも思っちゃあねぇよ。俺様にゃあほぼ関係ないし」
「関係ないって……!」
「ただな」
ジョヌは続けた。
「正直、神は楽しそうじゃあねってぇことは確かだ」
「楽しそうじゃないって……」
あんたはそればっかりか。
「ま、怯えてるってぇとこだな」
「へ?」
怯えてる?
なんで?
「それって……」
「っと! いかんいかん。これ以上は言えねぇ。後は戦うのみよ」
「む……」
気になるけど、やるしかないわね。
「勝敗を決めるなぁ簡単だ。俺様を楽しませろ。そうすればお前ぇの勝ちだ」
「ずいぶんシンプルね。あっさり行くかもよ」
「はっ! それはどうかな!」
ジョヌは不敵に笑い、こちらを見ている。
「俺様はここ最近、自分が危機に陥るくらい戦ったことがねぇ。俺様が敗けてしまうと感じるくらいの気持ちを持ってねぇ。だからこそ!」
ジョヌは脚を高く上げて言った。
「俺様に危機感を、緊張感を味わせろ。それが俺様の新しい楽しみ方だ」
そしてジョヌは思いっきり脚を振り下ろした。
「【衝撃伝達】!」
「……!」
あの技はたしか……
……なら!
「【浮かぶ我が身】!」
「ほう……!」
あたしは自分自身を地面から少し浮かせることで回避した。
「はっ! そうでぇい。いずれ敵となる男だからぁよう! ちゃんと俺様の技を見ておかねぇとな!」
「そうね!」
その技は散々アテネに使ってたわ。
それは……
「自分が放った衝撃を地面を伝って相手に与える。なら、常時地面に足がつかないようにすれば……!」
「なるほどねぇ。考えたな。しかし……」
構わない。
あたしは突貫し、ジョヌの顔を殴ろうとした。
「【重たい一撃】!」
「【形質練成】」
すると、
突如、目の前に大きな金属の壁が地面から出てきた。
「!?」
もう止まることはできないので構わず殴ったが……
ドンッ……!
「う………!」
さすがに分厚い壁は破壊できなかった。
「はっ! こっちは対策なしかぁ!」
「この……!」
回り道をしようとしたが……
「【形質練成】」
「え………!?」
あたしの足元から大きな棘が……
「うわっ!」
急遽、後ろへ跳んだ。
なんとか躱すことはできた。
「こいつ……!」
「はっ! どうするんでぇい!」
やっかいね。
【形質練成】は恐らく土を金属に変える。またはその逆も可能ってとこね。
だとしたらこんな荒野じゃ地面、けっこう厄介ね……!
ここは【引する重力の爆弾】で壁ごと飲み込めばいい。
しかし……
「はっ! ぼさっとしてるならこっちから行くぜぇ! 【形質練成】!」
「ちっ!」
準備してる暇がない。
あたしの技は強力な技ほどタメが長いのが弱点なのよ。
あたしは左右両側から向かってくる刃を躱し、
「この!」
もう一度、ジョヌのもとへ突貫したが……
「【地面隆起】」
「!?」
その時、あたしの周りの地面が盛り上がっていき……
「なに!?」
あたしの周りをドーム状に覆ってしまった。
「【形質練成】」
しかも金属に変えられてしまった。
「……どうしようか」
覆われたことじゃない。どうやってジョヌに接近して一撃を入れるかだ。
あの【形質練成】って技、けっこう厄介ね。
壁が出るわ硬いわしかも自在。
まあ、ひとつ手はあるが……
「まずはこの壁を壊さないとね」
あたしはすぐに力を溜め……
あたしは、端の部分にまで退いて……
「【引する重力の爆弾】!」
【引する重力の爆弾】を壁に向かって放った。
グオオオオオォォォォォォォ!
いくら堅い金属の壁でも関係なく飲み込む!
そして、開いた穴から外へ出た。
「はっ! やるねぇ!」
「それはどうも!」
さて、やるしかないか。
このまま安直に突進しても【形質練成】の壁に阻まれる。
……正直賭けよ。でも!
「【重たい一撃】!」
「あぁ?」
やるしかない!
あたしはを【重たい一撃】で思いっきり……
ドォン!
「なに!?」
地面を殴った。
そして……
「く……土煙か……見えねぇ!」
目くらましに土煙を出し、
そして……
「ここぉ!」
「なに!?」
あたしはジョヌの後ろ側に回りこみ、接近する。
この近さなら壁は出せない!
今度こそ決める!
「いっけえええええええええええええ!」
ゴッ………
「え………?」
命中したはずだ。
角度もタイミングも決まった。
【重たい一撃】は強力な技だ。
なのに……
「手応えが、ない……!?」
そして、少し遅れて、
ドォン!!
ジョヌの足元の地面が爆発した。
「うわっ!」
「惜しかったな!」
これって……まさか!
「はっ! 危ないところだったぜ。咄嗟に【衝撃伝達】を使わなかったらやられていたな」
「…!? そう言う事ね……!」
つまり、あたしの【重たい一撃】で与えた衝撃を【衝撃伝達】で地面に逃がした。
こんなことができるなんて……
……でも!
「まだまだだな! ほら近いぜぇ」
「!?」
「離れなぁ! 【形質練成】!」
「がっ………!」
あたしの足元から出てきた鉄の柱に飛ばされてしまい、また距離を取ってしまった。
「………!」
「はっ! どうしたどうしたぁ! こんなものかぁ! お前ぇの拳は通用しないんだぜぇ!」
「………それは……どうかしらね」
「……なに?」
【重たい一撃】は通用しなかったけど……!
本当の狙いは当たった!
「ジョヌ!」
「あぁ?」
「次の一撃で、あんたを倒す!」
これで準備は整ったわ。
「なに強気になってるんでぇい! そもそも接近できるのかぁよ!」
「ええ、接近させてもらうわ! ……あんたからね!」
最後のチャンス、外すわけにはいかない!
「なに? ……いったいどうするってぇんだい」
いくよ!
「こうするのよ!【重力操りで浮遊移動】!」
「…………!?」
あたしはジョヌに対する重力の向きだけを操作した。
つまり……
「な……なんでぇい、これは!?」
今、ジョヌは宙を漂っている状態だ。
「まさか……俺様が操作されているだと……!?」
「そうよ! 触れた者にだけ、自在に浮かべたりして動かすことができるのよ! あたしの本命はこっちなのよ!」
「触れた者………まさか!?」
そう、さっきの一撃は外してしまったが本当の狙いはジョヌに触れること。
こうなった以上はこっちの物よ!
「こっちに……来い!」
「うお!」
あたしはジョヌを思いっきりこっちに引き寄せた。
引き寄せられているジョヌは無防備。
あたしは思い切り右正拳突きの構えをとる。
「喰らった衝撃を地面に逃がすのなら、地面から離せばいいだけよ!」
「……!? はっ! やっぱやるねぇお前ぇ」
「そりゃどうも!」
そして、ジョヌと至近距離になったところで……
「【重たい一撃】!」
ドッ…………!
「が………ぁ…………!」
渾身の一撃を当てた。
今度は手ごたえがあった。
「…………!」
ジョヌは何も言わずに倒れてしまったのだった
「ふぅ……」
正直、一か八かだった。
なにせ【重力操りで浮遊移動】は触れてから一分以内しか操作できない。
一分経ったらまた触れないといけないのだ。
「なんであたしの能力ってこうも制約が多いのだろう」
主に時間に関することだし。
とはいえ……
「……勝ったん、だね。四輝天使に……」
正直、実感がわかなかった。
なんというか、突然すぎて呆然となっている。
でも、これは事実……
「あたしは……四輝天使に……!」
ようやく嬉しさが込みあがってきた。
「勝った………」
しかし、
「…………【天使化】」
「え………?」
突然の呟き。
そして、
「まだだ……!」
「なんで……?」
「まだ俺様は満足してねぇぞおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「…………!?」
ジョヌの背中の翼が輝きだした。
「はっ! 楽しい。楽しい! 楽しい!! 楽しいねぇ!!!! ここまでやるたぁ俺様、久々に本気を出しちまうぜええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
う、嘘でしょ!?
【重たい一撃】をまともに受けて、それでまだ……
「はぁ! ようやく温まってきたところだ! もっと楽しませてくれぇい!」
そうだ、こいつは四輝天使。
ヴェールだってあんなにボロボロでも立ち上がっていたのだ。
むしろここからが本番……!
「俺様ぁ久々に脱ぐとするぜぇ!」
「へ?」
そう言ってジョヌは黄色い魔術師のような服を脱いで……
「俺様、久々の本気だ!」
パンツ一丁になっていた。
「ちょ、ちょっと! なんて格好してるのよあんたは!?」
「あぁ? 体を動かすんだからぁ、これぐらい動きやすくたぁな」
う、嘘でしょ! 戦闘狂の上に露出狂だったのこいつ!?
「俺様はどちらかというと肉体派でなぁ!」
知らないし知りたくないわよそんな情報!
確かにえらい筋肉質だけどそんなことはどうでもいい!!
「あ、あたしは女の子よ! 女の前でその恰好は……!」
「んなもんどうだっていい!!」
さ、最悪よこいつ!
まさかこんな天使がいたなんて……!
「さて、第二ラウンドだ! 挨拶代わりに持っていけぇい!」
「!」
「【地殻変動】!!!」
その時、
世界を破壊しかねない、と錯覚するほど地面が揺れたのだった。
あたしとこいつの戦いは、まだ終わらない……
戦いは続く




