vs ケイロン2
Side:藍
オレのとっておきの切り札。
ここで使う!
「行くぞ! ケイロン!」
「主砲発射用意!」
すると、ケイロンの背中から巨大な筒が現れた。
そしてそれをオレに向けた。
あの大きさ、まさか……
「シアン! 気をつけろ! あれは……」
「なに! 当たらないよ!」
当たったら大変だ……
「始めるぞ! 【音速移動】!」
オレは加速して一気に突っ込む
通常ならいくら速くても接近すればまた……
……だが!
「【二重奏】!」
「!?」
「なに!?」
オレは走りにステップを加え、二人になった。
そう、これは……
「目標、複数増エル?」
「「どっちが本物かな!!」」
同時に喋るオレ。
そう! これは分身だ!
素早い体の捌きで、相手に自分が複数人いるかの様に見せて錯覚させる技法。
オレは二人もいない。実質一人で速い動きと素早い動きで惑わしている。
「結果、射程範囲内、複数含マレル。結果、纏メテ放ツ」
「「げっ!?」」
いかん。複数いても一掃される!
「【熱線】!」
「!」
マゼンタは【熱線】でケイロンの注意をそらした。
「俺はここだ! 来い、四本足!」
「ロケットランチャー発射!」
肩から放たれた飛ぶ爆弾がマゼンタへ向かう。
「【冷可視】!」
マゼンタは爆弾を凍らせた。
「!?」
「今だシアン。行け!」
「「了解! 【三重奏】!」」
まだ増えるぜ。
オレは三人に見えるように走り、ケイロンを撹乱する。
「「「火炎放射、当ててみろぉ!」」」
「!?」
だが、実際オレは一人だ。
分身を起こすには相当の体力がいる。
「「「【四重奏】!」」」
四人。
それぞれがそれぞれを牽制する。
そう、初めて四輝天使ち戦った時。
オレはヴェールにボコボコにされ、一人では手も足も出なかった。
それ以来、オレは必死に考え、編み出した!
もう一度、挑むであろう戦いに備えて!
「……………!?」
ケイロンは混乱してもはやどれがどれだかわからない。
「「「【五重奏】!」」」
そして、五人になる!
「「「「「マゼンタ! 切り札を出すから後は頼む!!!」」」」」
「わかった!」
分身は五人が限界!少ししか持たない。
体力も相当消費される。
「「「「「ケイロン! オレのとっておきを食らいやがれ!!!」」」」」
「!」
五人になったオレはそれぞれ、大きく息を吸い、そして……
「「「「「【超絶崩壊音声砲・大合唱】!!!!」」」」」
マゼンタの【熱線】さえ効かない、堅くて頑丈な相手の表面を破壊した大技を……
分身五人で放つ!
「「「「「『うあああああああああああああああああ!!!!』」」」」」
「……! 危険! キケ……!」
逃がさんよ!
オレは最大音量で叫んだ。
そして……
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Side:紅
「はあ……はあ……ゲホッ……はあ……ゲホッゲホッ!」
シアンが息も絶え絶えで倒れている。
「シアン、よくやった」
「マゼ…ンタ……ケイ…ロンは……どうなって……いる……」
「そうだな……」
ケイロンの様子はと言うと……
「ガ、ガガ……機体ガガッ、ノ状態……約70%……破損……ガガッ…自己修復機能……発動……!」
ギュイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!
「後もう少しだ」
「そうか……後は……頼んだ、ぞ…………」
「ああ、安らかに眠れ」
「いや……それ、違う…………」
そう残し、意識を失ったのだった。
「さて……」
「自己修復……ガガッ……完了………再起動シマス」
ギュイイイイイイイイイイイイイン!!!!
後もう少しってとこだな。
俺はシアンを【熱源】で隠し、四本足に向き合う。
「来い。第二ラウンドだ」
「戦闘続行。排除シマス」
今の四本足はボロボロだ。
体のほとんどが表面がはがれて中身が露わになっている。
今の状況は……
気絶しているシアン。
ここにいるのは俺と四歩足。
そしてこいつは完全に倒す。
つまり……
「この技を目撃するのはお前が初めてだ」
「ロケットランチャー、発射」
できればこいつは誰にも見られたくない。
まだ試しの段階だしな。
感謝するぜシアン。今、四本足の身体は穴だらけだからやりやすい。
迫りくる爆弾に動じず、俺もとっておきを出した。
「【完全燃焼】」
ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!
その掛け声に、俺の身体は熱く、焼けるように、燃えて……
そして……
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Side:藍
「……い…無事………おい……」
な、なんだ。この感覚は……
誰かが呼んでいる……?
「……きろ! シアン……」
その声に俺は目を開けると……
「起きたか! シアン!」
「お、おまえは……!」
赤黒い肌に太った醜い顔。
それはまるで……!
「怪物……!」
「誰が怪物だ」
ボゴッ!
「痛てっ!? なんだ!?」
「おい、折角心配したのに怪物呼ばわりとはな」
「マゼンタ……! 無事だったのか!」
「無事じゃなきゃここにいないだろ」
それもそうか。じゃあ……
「ケイロンは?」
「ん」
マゼンタが指を指したところを見ると……
「へ?」
真っ黒のガラクタが山のように積まれていた。
「なに……あれ……?」
「ああ……四本足だ」
「え……ええ!?」
あれケイロン!? 嘘だろあれ!?
原型全く留めてないだろこれ!?
何で表面耐熱だったのに焦げてるの!?
しかもなんか一部溶けているし変形してるぞ!?
「マゼンタ! いったい何をどうやったら……?」
「……? どうした」
「……マゼンタ、なんかやつれてない?」
なんと言うか、いつものマゼンタより細くなっているんだが……
「ああ大丈夫だ。俺もとっておきを出したからこうなってしまっただけだ」
「え!? とっておき!? 【付焼刃】の事か?」
「違う。別の技だ。それに【付焼刃】がとっておきとは言ってない」
「ええ!?」
おいおい、鋼鉄をどろどろにさせるなんていったいどんな……
ちくしょう! 気絶しなければ見れたのに……!
「まあいい。これで倒したって事になるんだな」
「ああそうだ。そう言うわけで……」
マゼンタはこの空間に大声で叫ぶ。
「女人形! 四本足は破壊した! 出てこい!」
マゼンタの声に向こうから……
「……呆れたわね。まだあんな切り札を隠していたなんて」
アテネが現れた。
「手札ってのはなるべく隠すものだ。初見の物ほど恐ろしい物はないだろ」
「そうね。それじゃあ……」
アテネはもはや何だったのかわからないくらいに変容してしまったケイロンを見て……
「あなた達の言葉通りの身を削るような覚悟、見せてもらったわ」
「それじゃあ……!」
「ええ」
アテネは踵を返して言った。
「お父様の居場所を教えるわ。ついてきて」
アテネはそう言ってまたどこかへと行こうとした。
しかし……
「マゼンタ、頼みがある」
「なんだ」
「……肩、貸してくれ」
あの技、実戦で使ったのはこれが初めてだ。
そのせいで今でも体はガタガタだ。
「……わかった。ほら」
「ああ、ありがとよ」
マゼンタも疲労していたが貸してくれた。
「いくぞ」
「ああ」
ゼウスに会うために、必死でケイロンを倒したオレ達はアテネについていったのだった。
……ん?
「なあマゼンタ」
「なんだ」
「オレ達、なんか大事なもん忘れてないか?」
「大事なものだと?」
「そう、なんだろうか………?」
なんだったっけ?
「シアン。忘れるようじゃあ大したことないだろ。行くぞ」
「まあ……そうだな」
後にしよ後に。
そう思いオレ達はアテネについていったのであった。
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Side:黄
今、なんだか腹立たしいものを感じたわね。なぜかしら、
まあいいわ、今はそう……
「そろそろ着くぜえ! 戦うにはとっておきの場所と」
「ええ………」
こいつ……四輝天使の一翼、〈樺地〉のジョヌと闘うんだからね。
まあもっとも心の準備はまだなんだけどね……
お次はジョヌとの戦いです。




