休息 シアンの場合
シアンの一日です
ここから動き出します
それでは、どうぞ
Side:藍
天使との戦いから一週間ぐらい。
オレは今、休息を取っているのである。
はずなんだが……
「何でオレはウェイトレスをやっているんだ…」
「坊主! 口を動かさずに体を動かせ! あとウェイターだよ!」
「はい! すみません、マスター!」
理由は解っている。
金が必要という事だ。
なぜなら城を一部破壊したことでとんでもない修理費がかかったのである。
別にリヴィアや王子が催促してくるわけではないが、税金とやらを使うようである。
オレが破壊したせいで国民の金が使われると思うといたたまれない気持ちになってしまうのだ。
せめて負担は減らそうとこうしてアルバイトで働いている。
もちろんマスターには動機は変えているのだが……
「はあ……」
なんというか、妙なものだ。
この前まで命がけで事を起こしたのが遠く感じるよ……
ま、それも今日で終わりだがね。
「マスター。終わりました」
「おう坊主、一週間お疲れさん。ほれ給料だ!」
マスターから給料袋を受け取るが…
「……少し多くないですか? マスター」
「なぁに! こんなにちっこくても頑張ってくれたんで少し色を付けてやったよ!」
「マ、マスタァー!」
なんていい人だ! こんななりでも採用してくれたことといい、いい人だよ! 小っちゃいは余計だが
とにかくオレはマスターに感謝の言葉を述べ城の方へ向かったのであった。
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城に到着し、入り口の使用人さんにリヴィアのもとへ案内してもらう
「よっ! リヴィア」
「あ、シアンさん! 今日も来てくれたのですね」
さて、今日も渡すか。
「はい、リヴィア。これ」
「あ、また持ってきたのですね。しかしいいのでしょうか? 折角シアンさんが働いて得たお金なのに……」
「いいんだよ。最低限の分は取っているのだから」
ここは異世界でいずれ去っていくのだから、あまり多くのお金を持っても意味ないしな
「ですが、お城が壊れたのはシアンさんのせいじゃ……」
「オレのせいだよ。ずいぶんと派手にやっちまったのが裏目に出てしまったんだよ」
まったくあの緑天使、ほんとになんてことをするんだ。
お前の雷人形が大半なんだから。
「ですがこれ以上シアンさんにお世話になるには……!」
「大丈夫大丈夫! そう思うのなら一刻も早く城が元通りになればいいんだから」
「……わかりました」
さて、これからどうしようか。
最低限の宿代があるがそれだけだしな。
「あの、シアンさん」
「ん? どした」
「でしたら、これから私とちょっと城下町の方へ行ってみませんか?」
「へ?」
お出かけか?だけど……
「いいのか?」
「いいんです。今日の分のお仕事は終わりましたから」
「いや、そうじゃなくて」
オレあんまり金持ってないし
「大丈夫です。シアンさんにお聴きしたいこともありますし」
「ん? オレに?」
話ってなんだろうか
気になるし仕方がないな
「よし、わかった。行こう」
「はい! どこに行くかは私に決めさせてもらえませんか?」
「いいぜ」
こうしてオレとリヴィアは城下町を一緒に巡ったのであった
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リヴィアはよく城下町に行くことが多く、なじみの店では名前で呼ばれることが多い
たとえば、花屋
「あら、リヴィアちゃん。いらっしゃい! 久しぶりだね~」
「こんにちは。ファニーおばさん。今日はこれとこれの花の種をいただけないでしょうか」
「いいよ。全部でこれくらいだよ」
リヴィアは庭の花壇の花を育てている
こうして花の種を買いに行くことがあるそうだ
「まいどあり! ところでリヴィアちゃん」
「あ、はい。なんですか?」
「そこのちいさい子は何? もしかして彼氏?」
「えぇ!?」
おい。花屋のおばさん……ちいさいは余計だ!
「ち、ちがいます! か、か、彼氏ではありません!」
おいおい、リヴィアが狼狽えてんじゃん
「そうですよ。友達ですよ」
「……そうです。友達です」
あれ? なんで弁明したのにしょんぼりしてんの?
「おやおや、彼氏も困った子ね~」
なにが。とは聞かなかった
聞かない方がよさそうだと思ったからだ
次に訪れたのは喫茶店である
オレがバイトした所とは別だが
……ってか、
「あの~、リヴィア。オレ、あまり金は持ってないんだが…」
「いいんですよ、シアンさん。ここは私が払いますから」
まさかの奢り宣言だった
断ろうにも「大丈夫です。シアンさんの金は使いませんし、第一にお礼みたいなものですよ」と言われた。
あの金は御詫びのようなものだったのだが、と思ったが気にしないことにした
「あの~、すいません」
「ん? おお~、リヴィアちゃんじゃないか! 久しぶりだねぇ。」
「はい。お久しぶりです。ロットさん」
「連れでここに来るのは珍しいねぇ。そちらの子はボーイフレンド?」
「えっ! ええっと、そ、それは~」
「まあ、そんなもんです」
「え!? ちょ、ちょっとシアンさん!?」
なに驚いてんだ。男友達だろ実際。
カタカナは解るんでね。
……あれ? そういえば異世界なのに言語は通じるんだな。なんで?
«教えてあげようか»
(うわっ!?)
危うく声に出るところだった
(なんだよノワールびっくりさせるなよ! 最近出てないから一瞬誰かと思ったよ。だいたい教えるって何を?)
«異世界でも言語が通じるのは偶然ではない»
(……と言うと?)
«我が、君を含む三人に言語を理解する術をかけたのである»
(言語を理解する術?)
«左様。このメニュー表を見てみよ»
ノワールに言われた通りにメニュー表を見てみる
そういえば確かにオレには知らない言語だ。それなのに…
(読める。見ない言語なのに読めるぞ!)
«それが我の言語理解の術である»
(なるほどなぁ。オレ達知らないところでノワールに助けられたんだな。いや~感謝感謝)
「あの、シアンさん?」
「ん?」
「先ほどからメニューを見ながら何か独り言を言ってましたので一体何かと…」
「げっ……」
いかんいかん。ノワールの声はオレ(マゼンタとイエローも)しか聞こえないんだったな
こういう時は、えっと……
「いや、メニューでどっちを選ぼうか迷っていたんでね」
「あ、そうでしたか。それならこれはどうでしょうか。こちらの料理はこの―――」
オレとリヴィアはこの後美味しいメニューをいただいた後いろんなところを回ったのであった
しかし……
(何でみんなリヴィアに同じことを聞いているんだ)
そこは解らなかったのであった
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日もそろそろ沈みかけ、夕焼けとなったころ
最後に訪れたのは城下町とは反対側の城の裏手にある丘であった
「うおっ! すげーなーここ」
「はい。ここは城下を見渡せるとこなのです」
こんなところがあったとはね。
いい所だ。
「あの、シアンさん。お聴きしたいことがあるのですが…」
そういえば言ってたな。
なんだろうか。
「シアンさん……
……もしかしてあなたたちはこの世界の人ではないのですか?」
「……………」
突然だった
「何者ですか」ならまだ分かる。
「だがこの世界の人じゃないの?」と聴かれるのは予想外だった
「どうしてそう思ったんだ?」
「はい。それはあなたたちがある伝承の話に似ていたからなのです」
「伝承?」
「はい」
リヴィアから聞いた話によると、
この国を創り上げた賢者様はもともとは『ある場所』から突然現れたそうだ。
その時に賢者様はここである事を言ったそうだ。
「ここはどこだ。儂は確か妙な穴に吸い込まれて」と
その後賢者様はこの世界に初めて魔法を作り出したり、さまざまな知識を教えたりと、この世界にはなかった物を『初めて』創り出したそうだ。
その後、一般では賢者様は死んだとされているが、実際は違うそうだ。
なぜなら賢者様は突然大きな穴のようなものに飲み込まれてしまい、そのまま帰ってこなかったと言う。
しかもその場所は賢者様が初めて現れた『ある場所』と同じだったと
その場所は向こうの山の頂上で現在では賢者様来訪の地として神殿が建てられている、と
「その場所ではいつでも穴が開いているのか」
「いいえ。穴を開けられるのは賢者様の血を継いだ私だけなのです。お兄様は開けることができないようなのですが…」
そうか、それで鍵となる人物と言う訳か
「その上、穴が開くのは賢者様が初めてこの地へ現れた日、つまり賢者様の誕生祭にしか開けられないのです」
まじか。誕生祭ってあと三日後ってとこか
急がないといけないんじゃ……
「シアンさん。あなたたちは魔法とは違う不思議な力を持っている上にどこかここではない感じがするのです」
「それは…」
「シアンさん。答えてください。あなたは賢者様と同じ、遠いとこから来たのですか?」
いつになく真剣な目だった
ここは…
正直に答えないとな
「そうだ。オレやマゼンタ、イエローはいわゆる異世界って所から来たんだ」
「あの不思議な力も異世界の力ってことなのですね」
「そうだ」
違う気もするがな
「実はな……」
オレは異世界の事、神の事、天使の事、悪魔との契約で姿が変わっている事、この世界に来た事、この後どうするのか、みんな話した。
「神様が人類を管理する世界…」
「そうだ。オレ達はそこから脱するために戦ったんだ。…結果は敗けちまったがな」
だが諦めない。諦めるつもりなんてないんだ!
「もう一度挑むつもりなんですか? その神様に」
「ああ。だから頼むよリヴィア。オレ達と一緒に神殿に行って次元の穴を開けてくれないか? 最後にこんなこと頼まれるのもあれだけどよ、ね?」
まあ、リヴィアなら断る必要はないと思ってたが…
「………嫌です!」
「…………え?」
え? あれ? あれぇ?
今なんて言ったの?
もしかして断ったの?
「なぜ、ですか……。なんでまた戦いに行くようなことをするのですか!!」
「え? ちょっと……」
「この世界にいれば管理された世界から抜けた事になるのです。だからわざわざもう一度行く必要はありません!!」
「ちょ、ま……」
「折角こうして仲良くなったのに……、シアンさん達とは別れたくないのです! だから神殿には行きません!!」
「なに言ってんだよ! 悪魔との契約で姿が戻るにはもう一度…」
「私はその姿でも構わないです! 自由が欲しいのならこのままここにいてもいいじゃないですか!」
「そっちが良くてもこっちがよくねーよ! この姿はなぁ、“もっともなりたくない姿”なんだよ! こんな姿で一生を終えるのは辛いんだよ!」
「じゃあシアンさんはこの世界の人と別れることになっても辛くないという事なのですか!」
「そうじゃねーよ! ただ、ただオレは……!」
どうなってんだよ
こんなにわがままなリヴィアは初めてだよ
「もういいです! 私は神殿には行きませんから!」
「おい! リヴィア!」
リヴィアはさっさとどこかへ行ってしまったのであった
「なんだってんだよ……」
別れがそんなに辛いのかよ……
オレはどうも釈然としない気持ちだった
とにかくオレは歪んだ空間の力場の情報らしきものも得たので
イエローやマゼンタがそろそろ帰っているであろう宿を目指したのであった
別れを惜しむリヴィア
そんなリヴィアに対しどうするのか……




