新たなる脅威
昔話です
それでは、どうぞ
とある世界のとある都市
そこに一人の少年がいました
運動も勉強も普通の少年でしたが異様に背が低いことが特徴でした
しかし、そんなことは微塵も気にしてはいませんでした
少年には一つ下の弟がいました
その弟は自信家で勉強も運動も何でもでき、さらには身長も兄である少年を超えていました
少年は弟に特に劣等感を抱かず、弟と仲良くやっていきました
少年が十二の時
ある日、少年は弟とケンカをしました
理由は些細なことでした
弟はある好きな子に告白しましたが振られました
弟の好きな子は少年の事が好きだと言ったからです
弟は普段は、勉強も運動も身長も少年より上だったため、それだけは許せませんでした
それが原因でケンカになってしまったのです
初めは口論、次は暴力、そして最後に罵り合いました
そして弟は少年に対しこう言い放ったのです
「勉強も運動も身長も僕より下だってのに、どうしてこんな奴が僕の兄として生まれたんだよ!」
それが決定的でした
その時から少年は自分の身長を気にしだしたのです
少年はそのことから弟とまったく接することはありませんでした
弟がどうであろうと寂しくありませんでした
あれから弟は何度も謝ろうとしました
しかし少年は全く聞く耳を持ちませんでした。それどころか
「もうお前には干渉しないから放っといてくれ」
と、言い放ったのです
それから少年は自分の身長に対し極度のコンプレックスを持つようになりました
それに対し弟はどんどん高身長になっていきます
周りから比べられてしまい、バカにする子もいました
それに対し少年はどんどん自分に対し嫌悪していく一方です
弟はそれを心配しましたが、拒絶してしまいました
弟は自分がいなくてもうまくやっていける、と思ったのです
それほどまでにあの言葉は深く少年の心に残ったのです
しかし少年が十四の時
弟が自殺してしまいました
少年が診療所に駆け付けたころにはすでに息を引き取っていました
少年は両親宛であるはずの弟の遺書を読みました
それにはこう書かれていました
-せめて死ぬ前に兄さんと仲直りしたかった。あの頃のように戻りたかった。でも、僕は兄さんにとんでもないことを言ってしまった。だからもう戻れない。僕は取り返しのつかないことをしてしまった。僕があんなことを言ったせいで兄さんは…-
それを聞いた少年は改めて弟の想いに気が付いたのです
弟は本当に後悔したのです。あの言葉のせいで少年は自分自信を嫌っていくことを。
弟は本気で何とかしたかったのです。少年をバカにする周りを。
弟は戻りたかったのです。仲良しだったあの頃に。
それに気づいた少年は
叫ぶように泣きました
どうして気づいてやれなかったか。弟が本気で自分を心配したことを
どうして気づいてやれなかったか。弟が自分のせいで少年はこうなったと思っていたことを
どうして気づいてやれなかったか。弟が死ぬほど後悔していたことを
どうして……
どうして…
どう…して…
その後少年は自暴自棄になってしまいました
天使たちの監視の死角であるプライベートエリアで日々、不良と暴れるようになってしまったのです
その後、ある人物と出会うまではずっと
自分を壊し続けたのです
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Side:藍
「これが、この少年の話だ」
まったく、こんな話を他人にするとはな。
今思うと確かにこれは“もっともなりたくない姿”だな
「シアンさん……」
「なんと……」
「オレはな、王子。弟の気持ちに気づいてやれなかったけどよ。せめて弟はさ、誰かに相談してほしかった。一人で悩むよりは誰かに自分の想いを言ってやれれば……いや、もう終わったことは言わない」
オレは今も後悔している
自分が拒絶したせいで弟が死んだことを
「王子はさ、頑張ったのは解ったが、そのせいで周りが見えていないんじゃないか?少なくともお前を見てくれている人はいる。そうだろ、リヴィア」
「はい」
そしてリヴィアは王子と対面し、自分が今までに想っていたことを吐き出した。
「お兄様。ずっと頑張ってくれたのに、お兄様の苦しみに気づいてあげられなくて本当にごめんなさいでも、お兄様もお兄様です!」
「リヴィア……」
「お兄様とお父様の間にどんなことがあったのかはわかりません。でも、お兄様の事を誰も見てくれないわけがありません! 私は知っています! お兄様が努力していることを!」
「リヴィア……!」
「私は今でもお兄様がお父様を殺したことを許せません! お父様には何か考えがあったのです! だからそんなに悲しいことを言わないでください! 私もお兄様が王になるように頑張りますから!」
王子も、そしてリヴィアも堪えられないように涙を流しだした
「リヴィア……すまなかった……すまなかった……!」
「お兄様、もう一度やり直しましょう。私はお兄様を……」
と言いかけたその時……
ボゴッ!
「えっ………?」
突然謎の音が響いてきた瞬間、王子の胸の部分に……
拳ひとつほどの大きな穴が開いていた。
「えっ………?」
おい……なんだよこれ……
どういう、事だ……なんで…? どうして……?なんで……!?
オレもリヴィアも信じられない様子だったが突然声が響いてきた。
「うふふ、な~に~、この茶番は?」
オレは声がした方へ振り向く。
「そんなことで、人が人を殺すのは許されないことなのよね~」
そこには一人の女がいた。
「人を殺すに限らず、大きな罪を犯した者はね、みんな罪人って呼ぶのよ♪」
女は透けるように白い髪で、奇妙な格好をしてた。
「たとえどんな理由であれ、どんな主義であれ、人を殺すことはみんな罪人、まあ例外もあるけど……」
女は緑を基調とした、芸術家のようなひらひらの服を着ていた。
「あなたはとんでもない罪人ね、ほんと面倒くさい構ってちゃんね」
そして女は冷酷にこういった。
「そんな罪人に救いは必要ない。そんな罪人は……
……死んで♪」
その瞬間……
王子は胸の穴から血を流し何も言うことなく……
死んでしまった。
「お兄……様…………」
リヴィアが呆然と呟く。
なんで、これでよかったんじゃなかったのか。
これで仲直りじゃなかったのかよ。
やっと…やっと……、
解り合えたのに……!!
「お兄様あああああああああああああああああああ!!!!」
「うあああああああああああああああああああああ!!!!」
オレは、オレは……!
あの女の方へ走っていた
よくも……よくも……!
「よくもおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「なによ。死人の仇を殺したというのに……」
なんなんだよお前!
何でこんな……
台無しにするようなことを……!
「【音叉刀】!うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
オレは音叉刀で容赦なく女へ斬りかかろうとした。
だが、
「【鎌鼬】」
ビュン! と風切音が
その時
ズバッ! ズババッ!!
「があああああああああああっ!!!」
いつの間にかオレは、
全身を切り刻まれていた
「なによ、これが神様に興味を持たれた人間? すぐに熱くなるし、攻撃も単純だし、期待外れね♬」
「なに……!?」
オレは痛みにより幾分か冷静になった
今こいつは何を言っていた……!?
「神様に興味を持たれた人間」だと!?
そしてオレは気づく
緑の服
透けるように白い髪
そして…
(目を凝らさないと視えないが……あれは、翼!?)
まさか……
そんな……
なぜ……
オレは気が付いた。この女の正体を……
するとリヴィアが咬みつくように女に訊いた。
「あなたは何者なんですか!! どうしてお兄様を!?」
「あらあら、殺した理由は言ったでしょ。まあ、あなたには知られてほしくないし眠らせてもらうよ」
「なにを……!?」
「!?」
女が手を振ると、突然リヴィアが倒れてしまった。
「リヴィア!」
「大丈夫よ、眠っているだけ♪ さて、私の事、直に会ったことはないけど。わかるでしょ」
オレは混乱から抜け出し、確かめるように問いかけた。
「神に仕えし四輝天使の一翼だろ!!」
「うふふふふ♪」
正解なのか女は喜ぶように微笑んだ。
「そうよ、初めまして♪あたしは四輝天使の一翼、〈翠嵐〉のヴェールよ。よろしくね♪」
女はそう言ってもう一度微笑んだのであった。
四輝天使とは何か
それは次回へ




