表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第一章・剣と魔法の世界編
15/114

三位一体

  Side:黄


「あの、ベーラさん。あともう一つ頼みたいことがあるのですが」


 あたしたちが、ベーラさんの頼みに応えたあと、リヴィアちゃんがもう一つベーラさんに頼むことがあるそうだけど、


「なんでしょうか。リヴィアさん」

「あの、ラヴィニスの事なんでんですが」


 ラヴィニスってたしかあの女騎士の事ね。

 

「合同演習をここでやると、ラヴィニスの身になにか危険なことが起こるかもしれません。どうかここでラヴィニスを匿ってくれませんか?」


 そうか、ラヴィニスって騎士もリヴィアちゃんと一緒に暗殺者に追われているわけだから、

 王都の兵士にはばれてはいけないというわけね。


「それは…「その必要はありません」」


 と、扉の前から声がしてきた。

 コンコン、と扉をノックして入ってきたのは、


「ラヴィニス……!」


 あの女騎士……ラヴィニスだった。

 現在は鎧は着けておらず、簡易な手術衣を着ている状態だった。

 あんなに重傷なのに一日でもう歩けるようになるなんて…… 


「ラヴィニス、まだ歩いてはいけません!」

「いいえリヴィア様。せめて確認したいことを終えてからでないと」

「確認ですか?」

「ええ、そうです」


 ラヴィニスはさみしそうな表情で言う。


「王都に行かれるのですね」

「はい、そうです」

「私もついていくことはできないのでしょうか」


 ラヴィニスの頼みに対してリヴィアちゃんは顔を険しくしている。

 ということは答えは……


「できません。今のラヴィニスには休養が必要です」

「そう、ですか…」


 ラヴィニスは意外とあっさりと引き下がった。

 そして彼女はシアンの方に対して、


「少年、名前は?」

「(少年じゃねえが)シアンだ」

「シアン、改めてお願いしよう。今の私はこの有様で同行することはできない。だから…」

「大丈夫だ」


 シアンはラヴィニスの言葉を遮る。

 不安げなんてない、確固とした様子で言う。


「頼まれるまでもなく、オレ達はリヴィアを守る。だから安心してくれ」

「……かたじけない」


 子供を相手に危険なことを頼むのは気が引けたのでしょう。

 だからシアンは先に……

 本当に鋭いんだかそうでないんだか。


「後から頼むようになってしまい申し訳ないが、ベーラ公爵。しばらくの間私を匿ってもらえないでしょうか」

「構いませんよ。ただし安静をするからにはここを出てはいけませんよ」


 これで、準備は終えたようだ。


「そろそろ時間が近づいてきました。私は今から王都に場所の変更の通信を打ちますので。そろそろ行った方がいいかと」


 時間が近いようね。


「それではみなさん、私達は王城へ続く隠し通路へ行きます」


「おうっ!」

「うむ」

「わかったわ!」 


 私たちはベーラ公爵の屋敷を出てあの森へ向かったのであった。








――――――――迷いの森――――――――


 いやまあ、正式名称がわからないのでこの名前で呼んでいるが、

 ここは私たちがリヴィアちゃんと初めて会った森。

 現在、リヴィアちゃんについていく状態でこの森の中を進んでいる。


「しかしリヴィア。もしこの森の事を知らない人がここにいたらどうなっていたんだ」

「それはですね、きちんと入口から入ったなら道標がありますので道を外さない限りは安全に森を出られますよ」

「外したらどうなるんだ?」

「外しても、森に施した魔法により強制的に方向を変えられますのですぐに道に戻ることができるのです。ただ……」

「ただ?」

「隠し通路目当てで、転移魔法の類でここに来た場合、よほど魔法に詳しくない限りは強制的に迷わせるようになっているのです」

「「……………」」


 転移魔法っておそらく名前の通り転移するんだろうね。

 あたしたち、そんなに危ない状況だったんだ……

 

「あの神……本当になんてことを……!」


 あ、シアンがすごい苛立った様子でぶつぶつ言ってるし。

 あの時は本当に奇跡みたいなものだったのね、お互い。


「着きました。ここが隠し通路の入り口です」


 リヴィアちゃんがそう言い前を見てみると

 そこには何人か乗れそうなくらい大きな岩があった


「いま扉を開けますので少し待ってください」


 と言い、リヴィアちゃんは何かを唱えだした

 それは歌のような祈りのような不思議な言葉だった

 すると……


 


 グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!




 と、岩が動き出した。

 そこには、地面の中に続く形で階段が出てきました。


「それでは、行きましょう」


 あたしたちは地面の中に続く階段を降りて行った。




――――――――――――――――――――――――――――――


 階段を降り隠し通路にたどり着いたあたしたち。

 しかしそこは、


「うわ……暗っ」


 ジメジメしてとても暗かった

 壁にはランタンが設置しているが、放置していたのか火は点いていなかった。と思ったら


 ボッ!


 ボッ! ボッ!


 ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!


 ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!


「うわ……!」


 あたしたちが近づいた途端、ランタンがひとりでに点いた。


「あ、そのランタンはこの通路に人が入ったことを認知するとひとりでに火が点くように魔法がかかっているんです」

「へぇ…」


 便利なものね魔法

 確かに緊急避難の通路だからいざというときに暗くて前に進めなかったら意味がない物ね

 あれ、とふと疑問に思った


「ねえリヴィアちゃん。ここってあの森から王城まで続いているとあるけどそれって結構距離があるんじゃ…」

「はい。もともとは速く移動するための魔法もいくつかありましたが私は覚えていませんでしたので。走って到着するには二~三時間はかかるのです」


 そう、だったら……

 あれ(・・)をやってみるか。


「ねえシアン。あれをやってみない? 【三位一体(トリニティ)】!」


 あたしがそう言ってみるとシアンは……


(うわぁ……)


 案の定嫌そうな顔をしてた。

 もう本当に嫌そうな顔だわ。


「あれって、三人で【音速移動(クイックムーブ)】で移動することだろ。嫌だよオレはそんなの!」

「嫌なの?」

「嫌だよ嫌! 普通に歩け!」

「へえ……リヴィアちゃんとかいろいろピンチなのにそんなこと言うんだぁ」

「うっ!」

「そうだな。守るとか言ってるくせにそんなわがままを……」

「わかったわかったよ! 今回は仕方がなくだ!」


 あっさり折れたね。まあ、場合が場合だからね。


「あの、みなさん。あれって……?」


 ああ、リヴィアちゃんは知らないわね。


「まあ見ればわかるよ。シアン! マゼンタ!」

「おう」

「はあ……」


 どっちがため息かは言うまでもない。

 私は【無重の身一つ(ゼログラム)】で自分の重さをゼロにして、マゼンタの背におぶさる

 そしてマゼンタの重さもゼロにして、マゼンタがシアンの首に跨る(つまり肩車)

 これで完成。


「あの……それは?」


 リヴィアちゃんがぽかんとした様子であたしたちが見ている。

 まあ当然よね。


「これはね、あたしやマゼンタがシアンのように速く移動するために考えた態勢なの」

「はあ…」

「つまりはこう。あたしの能力であたしやマゼンタを軽くしてシアンに背負ってもらい」

「で、俺の《熱》の能力で摩擦熱や運動で生じる熱の影響をなくし……」

「オレの【音速移動(クイックムーブ)】で三人とも速く移動するわけってことだ。はあ……」


 ため息をつくシアン。


「何よシアン。なんでいつも嫌がるの?」

「嫌がるに決まってんだろ! 何が嬉しくて女を背負った男を肩車しなくてはならんのだ! しかも重くないとはいえ、面積的にもきついし、風で飛ばされたり落とさないように配慮しないといけないし、首の後ろの感触が気持ち悪いし、ほんと嫌になるんだよ!」

「そう言わずに、リヴィアちゃんも入れて四人で早く王城にたどり着かないといけないんだから」

「言わせたのはおまえだろぉ――――――――!」


 まったく大変ねシアンは。他人事だけど。


「ただまあ、こんなことを言ってる場合じゃないな。リヴィア、この方法で行くぞ」

「あの、でもどうやってシアンさんに?」

「ああ……」


 そういえばそうね。これ以上肩車は……


「だったらシアン。イエローが俺につかまり、俺がしっかりお前の頭にしがみつくから、王女はお前が抱っこでもしてろ」

「ええ!?」

「ちょっとマゼンタ!?」


 いくらなんでもそれはどうかと、


「王女。早く王城に着きたいんだろ。だったら……」

「……わかりました。シアンさん、よろしくお願いします」

「お、おう……」


 と思ったらあっさり承諾してくれた。

 しかしすごい状態ね。

 シアンがリヴィアちゃんをお姫様抱っこした状態であたしがつかまっているマゼンタにしがみつかれている。

 端から見たらどんなふうに見えるんだか


「それじゃ行くぞ。しっかりつかまれよ。【音速移動(クイックムーブ)!】」


 と、あたしたちはすごい速さで通路を走ったが…


「うお! 壁にぶつかるぶつかる!」

「速すぎて瞬時に対応しづらいんだよ!」

「おい! 足元気をつけろ!」


 そういえば【音速移動(クイックムーブ)】にそんな弱点があったのはすっかり忘れていた。

 まあ、シアンがいろいろ配慮したおかげで無事に行けたが。



――――――――――――――――――――――――――――――



「……! 停まってください! そろそろつきます!」


 リヴィアちゃんがそう言ってきたのでシアンは停まった

 三位……というより四位一体を解除する。


「気を付けてください。番人はここにいます」


 そこは広場のようなところだった。

 円形のようにとてつもなく広い空間に、壁際には悪趣味な石像がある。

 広場からの通路は二つあり、ひとつはあたしたちが来たこちら側の通路。

 もう一つは向こう側にあった。

 ただ、こちら側の通路と向こう側の通路の間に誰かが立っていた。

 それは、全身に高そうなものを身に着けたいかにも成金のような中年の男性であった。


「お待ちしておりましたよ。リヴィア王女殿下」

「マイガン伯爵……!」

「あれが番人か?」

「いえ、違います。マイガン・ラズランド伯爵。お父様に仕えていた臣下の一人で、お父様の毒殺を隠蔽した人たちの一人です」

「毒殺はないでしょうリヴィア様。あなたの父君は過労死だと何回言えば分るのですか?」

「そんなの……!」

「とはいえあの暗殺者も役に立ってませんね。リヴィア様を殺していないなんて」


 語るに落ちているわよこいつ。

 するとシアンが前に出て険しい顔で言う。


「おい。暗殺者ってのはお前が雇ったのか?」

「ふふふ、いいえ。王子殿下が邪魔なあなたを殺すために…」

「嘘です! お兄様がそんなことを……」

「しないとでも? どうせあなたたちはここの番人によって殺されるんですから。真実など知りようもありませんよ」


 ふふふふふ、と笑いながら何かを唱えると成金伯爵は消えて行った。おそらく転移魔法とやらでだ。


「なあリヴィア。番人ってのは…」


 シアンがそう訊いた瞬間


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 …………地響き!?


「動き出します。周りを見てください!」


 周り?とそう思い、周りを見渡してみると…


「なっ……!?」


 なんと、壁際の悪趣味な石像が動き出した(・・・・・)


 鳥のような頭

 蝙蝠のような羽

 そして人のような体

 それは……


「あれは『ガーゴイル』という魔法で動く人形です。独自の自律行動をします。気を付けてください!」


 数は全部で十二体か。ほんと厄介ね魔法って。

 なら…


「皆! それじゃ一丁行きますよ!」

「おう!」

「任せろ!」


 あたしたちは身を構えて、襲い掛かってくる石像に迎撃の準備をしかけた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ