作戦会議
Side:藍
「……きろ……起きろ……」
うぅん。なんだ、もう朝か? しかしなんだかいつもと違うような……
ああそうか。オレ達は異世界にきているんだったな。
だったら寝起きの一言は昔読んだおとぎ話みたいに「知らない天井だ」って言ってみたいものだ。
と、寝ぼけたことを考えながら目を開ける。するとそこには……
「お、やっと起きたか」
「……………」
そこにはおとぎ話のような知らない天井ではなく、
とてもブサイクな顔をした物の怪の顔がそこにあった。
「誰が物の怪だ」
ボゴッ!
痛っ!?
思いっきり殴られた!!
Side:紅
ったく、いくら寝起きが悪いからと言って人の顔を見ていきなり物の怪扱いとは。
「もう起きろ。朝食の用意はできているそうだ」
「……イエローは?」
「あいつはもう支度を終えている。後はお前だけだ」
「……わかった。痛たたた……」
と、あいつが準備をしたところで俺は部屋を出た。
昨日はいろいろと濃い一日だったが、今日もまた大変そうだ。
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しばらくして、食堂で朝食を食べ終えた後、俺達はベーラ公爵の屋敷へ向かう途中、王女と会った。
「ところでベーラ公爵とはどういう人物なの?」
イエローは興味があるのか王女にそう質問してきた。
「ベーラ公爵は父に仕えていた臣下であり古い友人でもあったのです。ここの領地も国としては重要な土地でありましたので、ここを任せられるのはベーラ公爵しかいないと言われる程とても信頼しているのです」
「へぇ……」
で、今回はその公爵に援軍を頼むという事か。
「リヴィア、オレ達の事はどうだったんだ。会談には同席できるか?」
「はい。ベーラ公爵もぜひ会ってみたいと」
「そうか。なんか緊張してきたな」
この程度で緊張してどうするんだよ。
ったく度胸があるんだかないんだか。
「そろそろお屋敷に到着します。くれぐれもご無礼なことは言わないでくださいね」
と、注意しているが、
俺たちはそう改まった格好をしていない。
シアンに至っては耳当てを着けている状態だ。
王女が玄関前いる秘書らしき人物に言う。
「私、ベーラ公爵に会談の約束を取り付けたリヴィア・フィアーラですが」
「お待ちしておりました、リヴィア・フィアーラ様ですね。そちらの方々は…」
「はい。以前申しました、私とラヴィニスの命の恩人です」
「そうでしたか。それではご案内いたします」
秘書が案内をするのか。
なら、言われた通りついて行くことにする。
そして、しばらくすると椅子と机のある、おそらく応接間である部屋にたどり着いた。
すると秘書が……
「それでは、ベーラ様をお呼びいたしますので、こちらでお待ちください」
「はい。わかりました」
……呼びに行ったか。
俺達は椅子に座り、ベーラ公爵が来るのを待つとする。
するとシアンが……
「思ったんだが、この服装で大丈夫か? でもそんなときの服は持ってないし……」
……いまさらのように服装を気にするのか。それに耳当てには触れてないぞ。
イエローは服装については気にしてはおらんようだ。しかし、座る姿勢はしっかりしている。
「お待たせしました。リヴィア王女殿下にその命の恩人さん」
しばらくして部屋に入ってきたのは、物腰の柔らかそうな初老の女性だ。
この女が……
「はい、ベーラ公爵。ご無沙汰しております」
この人がベーラ公爵か。
うむ、確かに侯爵と呼ばれるだけの何かがありそうだ。
「ふふ、たしかにしばらくは会っていませんでしたね。昔のように呼んでも構いませんのよ」
「いえ、私は……」
「私はそう呼んでほしいのよ」
「……わかりました、ベーラさん。私の事も……」
「わかりましたよ。リヴィアさん」
この二人は旧知の間柄か?
これから真剣な話をするのに大丈夫か?
「それでリヴィアさん。あなたの要件はもしかしたら…」
「はい、ベーラさんにお願い事があるのです」
「やはりあなたのお父様が病死というのは嘘でしたのね」
どうやらベーラ公爵はうすうす感づいているようだ。
「……お父様は毒殺されたのです。お兄様に……」
「まあ! レイヴェン王子殿下が!?」
「はい。信じられない気持ちはわかります。私もいまだに信じられません。しかし、私は見たのです!」
王女……
今にも泣き出しそうな表情だ。
「お兄様がお父様の飲み物に何かを入れているのを……!」
「……………!?」
「私はあの時何を入れていたのかは全くわかりませんでした。それを飲んだお父様もすぐにはなにもなかったのです。しかし……!」
シアンもイエローも沈痛な表情で王女の言葉を聴いている
「あれを飲み始めてから日に日にお父様の具合が悪くなってしまって、それなのにお城のお医様がただの過労だって判断して、そんな状態には見えないって言ったのに、それなのに……それなのに……!」
「リヴィア…」
「とうとうお父様が床に就いたというのに皆は大したことがないと言う。お兄様も毒を入れた張本人なのに『あれくらいでは死なない』と知らないふりして言う。私が外のお医者様に頼もうとしたら、『どこの誰かもわからないやつに国王陛下の身体は診せられん』って止められます!」
王女は慟哭するように語る
「もういいんです、リヴィアさん。もうそれ以上辛いことは……」
「私は、「何であの時止めなかったの」、「何でわからなかったの」っていつも思ってしまうんです。そうすればお父様が、死ぬことには…」
「リヴィアさん」
ベーラ公爵がは王女に向かって言う。
「辛かったのでしょう。大好きなお父様が、殺されるという事が」
ベーラ公爵は泣きそうな王女に語る。
「ショックだったんでしょう。同じく大好きなお兄様がお父様を殺したことも、城のお医者さんが真剣に診てくれなかったことも、リヴィアさんを殺そうと暗殺者を雇ったことも」
ベーラ公爵は王女の顔を見て、一つずつ言葉を選ぶ。
「悔やんでいたのでしょう。 自分がああしていればと」
「ベーラ……さん……」
「でもね……仕方がないことなのよ」
王女は驚きに目を開く
「いったい誰が国王陛下が殺されることを予想していました? 誰が王子殿下がこんなことをすると予想していました? みんな予想外の事なのです。それを悔やんでも仕方がありません。ですので……」
ベーラ公爵ははっきりと
「もう、泣くのを堪えるのはよしましょう。リヴィアさん」
「ベーラさん…」
いつの間にか、王女は泣いていた。
ふむ、ここは……
「イエロー。マゼンタ。やっぱり改まった服が必要そうだし今から三人で買いに行こう」
「……………」
気を利かせているのだろう。だが、もっとまともな口実はないのか?
「ベーラさん。それでいいでしょうか」
「構いませんよ」
ベーラ公爵も察したようだ。というかさりげなくベーラさんと…
「三十分くらいしたら戻ってください」
「わかりました」
そう言い残し俺達は部屋を後にした
そのあとに女の子の泣き声が聞こえたのは言うまでもない
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「リヴィアは暗殺者に追われてからこっちに来るまではずっと耐えていたんだな」
屋敷を出た後、シアンがそう言ってきた。
「(本人に聞いたが)まだ15歳だってのに、大事な家族が殺されて、殺したのも家族で、暗殺者に追われて、仕えていた騎士が殺されそうになって、助けを求めたいのにそう簡単には頼めなくって、それで一人になって、でも頑張らないと、って思うから泣くに泣けなくなって…」
「シアン…」
「オレもまだまだだな。ベーラ公爵がすごく見えるよ」
「俺もだ」
「あたしもよ」
シアンの言葉に皆同意する。
「あたしはね、初めは鍵だからってリヴィアちゃんを死なせるわけにはいかないって思ってた。けどね、だんだんとあんないい子がこんな理不尽な目に合うのが見ていられなくなってね…」
「それは同情か?」
「ちがう、とは言い切れないわ。こんな気持ちを持ったのは初めてだから」
「オレの時はどうだったんだよ」
「あはは、それはどっちかと言うと怒りの方が強かったし」
俺達のいた世界は神に管理され、天使に監視されているので犯罪はそうそう起きない
俺達にとってリヴィアのことはいろいろと初めてなのである
「でもね、たとえ同情だとしても…」
「だとしても?」
「何もしないでただ見るよりはましなんじゃない?」
「それはお節介って言うんじゃ…」
と俺達がそんなやり取りをする中、シアンが突然
「しまった!」
と、言った。
「どうした?」
「どうしたの?」
と訊いたところ
「オレ達、金持ってねえじゃん!」
「「……………」」
当たり前の発言に唖然とする俺達であった。
結局服は買えないままだった。
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結局俺達は服を買わないまま屋敷に戻ってきたのであった
もちろん、秘書の案内でだ。
「すいません。こんなところで……」
「いいんですよ。あなたは若いからあまり無理をしない方がいいんですよ。…あらお帰りなさい」
俺達が応接間の扉を開けて入ると、ベーラ公爵は迎えてくれた。
「あら、服はどうしたのですか?」
「う……売り切れていました」
金がないとは素直に言えなかったようで、シアンはそう言った
服が売り切れるのはそうそう起こらない事なのだが…
「あら、そうでしたか」
しかしベーラ公爵はあまり詮索をしなかったようだ。
「ベーラさん。よろしいでしょうか」
「いいですよ。それで私たちにはどうしてほしいのでしょうか」
「はい。それは……」
王女がベーラ公爵への頼みごと。
それは……
「……王城に忍び込む手助けをしてほしいのです」
「城に忍び込む手助け?」
発言したのはシアンだ
「それって秘密の隠し通路でもあるのでは?」
「はい。王城内に続く隠し通路があるのです」
そんなものがあるとはな。大方、敵に攻められたときの避難通路ってことだろう
なら……
「そういうのは逆から入られないためになんらかの処置を施しているのでは?」
秘密とはいえそういうのを探る者もいるはずだ。
そこから攻められてしまっては全くの逆効果になってしまう
「はい。確かに隠し通路にはそこを守る番人がいるのです」
番人か。簡単には通れないな。
「ならいったいどうすれば…」
「本来なら、ベーラさんに頼んで何人か兵士を同行させるように頼むつもりだったのですが…」
「本来なら?」
「はい。そこをあなたたちに頼みたいのです」
なるほど。俺達が番人を倒すための護衛ってわけか。
「その隠し通路はどこにあるんだ?」
「それは、あの森の中から行くことができます」
あの森、つまり初めて王女と会った森だ
「あれ? あの森って結構広いんじゃ…」
「あの森はもともと隠し通路を逆に使われないためにあるのです。森が広いのではなく、森に施した魔法により強制的に迷わせるのです」
「ええ!! そうなの!?」
シアンは驚いている
つまり俺達は広いから迷ったのではなく魔法によって迷ったってことだ。
王女を拾ってから迷わなかったのは、道案内があったからという事だ。
「ですがリヴィアさん。あなたは城の兵士に追われているのでしょう。城の中に入れても、そこから見つからずに王子のもとへ行くのは至難の業でしょう?」
「はい。かといって強行突破というわけにはいきません。そこでベーラさん。あなたの力が必要なのです」
「私の?」
「はい。確かこの後午後一時に王都とベーラさんの領の間でここの兵士達と王都の兵士達が合同演習するはずでしたよね」
「まさか…」
「そのまさかです。合同演習の場所をここにしてほしいのです」
どういうことかというと
1、合同演習する予定の兵士は多く王都から離れるので城内の兵士は少なくなっている(つまり潜入のチャンス)
2、とはいえその隙を突かれて敵に攻められないよう何時でも両方に行けるように中間の場所で演習を行う
3、それをこの場所で行うという事(つまり気づかれないし、気づいたとしても王都まで時間がかかるそうだ)
無茶だな
いくら片方の領主の権限とはいえそれは無茶である
しかし……
「確かここは、国にとっては重要な土地とか言ってたな」
「はい。それは隣国との国境の近くでもあるからです」
なるほど。ということは
「隣国が怪しい事をするから、こちらの領地でやりませんかってことか」
「そういう事です」
「それが通用するのか?」
そんな理由で王都の兵士を余所へ行かせるなど…
「王都はたとえ攻め込まれても、周りの領地が結託すればいいのです。しかし、この領地は隣国の近くです。なので一度攻められるといろいろ厳しくなるのです」
「なるほどな、つまり…」
1、ベーラ公爵が王都に合同演習の場所をここにする
2、俺達はその隙に隠し通路とやらで王城へ行く(途中番人あり)
急場なのか、ずさんな所もあるがこれ以外には思いつかん。
「なのでベーラさん。どうかお願いできませんか」
「……リヴィアさん。一ついいですか」
「……はい」
「あなたは城に入ったらどうしたいのですか?」
「私は……」
ベーラ公爵の問いに王女はこう答える。
「私は……確かめたいのです」
「確かめたい?」
「はい」
王女は一瞬迷うがすぐに続ける
「お兄様がなぜあんなことをしたのか、それを確かめたいのです」
「王の座はどうなの?」
「私は王の座はいりません。お兄様でもいいんです。ですが、なぜあんなことまでするのかを知りたいんです!」
「もしそれで、王子殿下があなたを殺そうとしたら?」
「そ、それは…」
すぐには答えられない王女
王子とは闘いたくないという事か
「それは簡単だ」
と、ここでシアンが言う。
「もしそんなことがあったらオレが王子を倒す。その後の処置はリヴィアに任せるが、リヴィアを殺そうとする以上お兄さんはオレの敵だ」
「シアンさん…」
「だから何があってもリヴィアはオレが守る」
ったく、こいつは……
「シアン。そこは『オレ』じゃなくて『オレ達』だろう。一人で突っ走んな」
「そうよ、あたしもマゼンタもリヴィアちゃんを守るわ」
俺達がそう言うとベーラ公爵がこちらに向かって頭をさげた
シアンが驚いた声で言う。
「ベーラ公爵!?」
「ベーラさんでいいわ、シアン君。それにマゼンタ君とイエローさん…
ベーラ公爵は切実そうに言った
「リヴィアさんをよろしく頼みます」
それに対し俺達は
「「「まかせてください!」」」
皆で同じことを言ったのであった。
ずいぶん長くなってしまった。キリのいい所がわからなくて
次回はあの騎士をどうするかです(忘れていませんよ)




