語る彼女
Side:リヴィア
突然ですけど、フィアーラ王国の王様はご存知ですよね。
え、知らないんですか?
はあ、余所から来たのですか。
わかりました。お教えします。
その王様の名前はラルバ・フィアーラ。
……私の父です。
父は王としても、親としてもとてもよき方でした。
私たちはそんな父を尊敬していました。
え? 私たちってことは兄弟がいるのかと?
はい、私には兄が一人いるのです。
レイヴェン・フィアーラ。父の次に王となるお方でした。
兄もとてもすばらしいお方でした。
父からはとても厳しく教養されていましたが、弱音を吐かず、ずっと努力をしていました。
どんなにつらそうなことでも、「大丈夫だ」って笑ってくれるような方でした。
それに、とてもお優しいのです。
兄は、「いずれ父に立派な王になれると認められるため、がんばるよ」とよく言ってました
そんなすばらしい兄でした。
なのに……なのに兄は……
二日前、兄は突然父を……父を……
殺したのです……
……それも毒殺という形で。
そして兄は、父から王の座を奪った後、
暗殺者を雇って私を殺すように……依頼をしたのです。
ラヴィニスはそれにいち早く気づき、私を逃がしたのです。
それから私たちはフィアーラ王国の貴族であり、この街を治めているベーラ公爵の元へ助けに行ったのです。
しかし、兄の雇った暗殺者たちが追ってきてしまったのです。
ラヴィニスは戦ったのですが、数が多いせいで……
そのあと、ベーラ公爵領への途中道にある森に入ったところで、
再び、暗殺者たちに追いつかれてしまったのです。
ここから後にあなたたちが来てくれたのです。
Side:藍
…………マジか。
思った以上に衝撃的な内容だったな。
何より気になったのは……
「お兄さんは王である父を殺して、罪に問われなかったのか?」
「はい。なぜか父に仕えていた臣下が真実を隠蔽し、病死にしたことに……」
ということは、これはリヴィアのお兄さんを利用したクーデターということか?
いや、しかし……
「お兄さんはなぜ、父親を……?」
そう、リヴィアのお兄さんが父親を殺したところがわからない。
なぜ?
「わかりません。お兄様は確かに父の跡を継いで王にになることを目指しておりました。しかし、それは父から受け継ぐために、頑張ってきたのであります。無理に父を殺してまで欲しがるような人ではありません!」
リヴィア……
口ぶりからして信じられないんだな。
だとするならば、いったい…
「私は、ベーラ公爵に援軍を頼むつもりです。もう一度、お城に戻って、本当のことを確かめたいのです。なぜ兄は父を殺したのかを……」
それがリヴィアの目的か。
ならば……
「なあリヴィア。援軍を頼むと言ったが、普通に城には戻れないのか?」
「はい。城の兵士たちは私を見つけた途端に捕らえるでしょう」
え? 捕らえる?
「王女なのに?」
「はい。私より兄の命令を優先するのです」
「それじゃあ何のために援軍を? 王国の騎士と戦うのか?」
「別にベーラ公爵には戦ってもらうわけではありません。詳しいことは、ベーラ公爵との会談で話しますので」
「そうか」
いったいなんだろうか
いろいろわからないことが多い。
だが…………
……気に入らねえ
「あの、シアンさん。どうかされましたか? 何かとても怖い顔をされてましたが…」
「ああ……なんでもない」
いけね、顔に出ちまったか?
気をつけないとな。
「それで、ベーラ公爵との会談はいつだ?」
「あ、はい。明日には可能かと思いますが」
「そこにオレ達が同席することは?」
「普通は無理でしょうが、私から強く言っておけば可能です」
「わかった。オレ達が同席できるよう頼むよ」
「わかりました」
……さて、これで訊きたいことは訊けたようだが
マゼンタとイエローはどうなっているんだろうか
「そろそろ私は戻りますので……」
「ああ、わかった。また会談の席で会おう」
「はい」
と、リヴィアは静かに部屋を出て行った。
……さて、あいつらの帰りを待つか。
――――――――数時間後――――――――
――――――――夜の宿にて――――――――
Side:藍
マゼンタとイエローが帰ってきたところでお互い状況整理をするか。
まずはオレがリヴィアから聴いたことを話す。
オレの話にマゼンタは復唱した。
「そうか。王子が国王を殺し、王座を奪っていると」
「しかもそのことを知っているのは、王子と暗殺に加担したかもしれない臣下の数名ってことね」
「えっ……同じ城に仕えている者でも知らない人がいるの?」
だって毒殺なら急死ってイメージが強いから、少なくとも城にいる人は王が病死とは信じられないんじゃ……
「そりゃあ、使っている毒を少しずつ蝕むような遅行性の毒なら、別に病死と疑われてもおかしくない」
……そう言うもんか?
「けど、んなもん医者が調べたら毒殺ってことがばれるんじゃ……」
「おそらくその医者も臣下の息がかかった者なんだろう。この町に聞いた限り、国王の最後を看取ったのは城内の医者であり、外部の医者は一歩も入ってなかったそうだ」
「……ってことは本当に」
「ああ、これはおそらく臣下が起こしたクーデターだな」
クーデター。武力によって非合法的に政権を奪取すること。だが…
「実際に殺したのは王子だってリヴィアが言ってたようだが」
「そこについてはわからん。毒殺とは間接的な殺しだが、殺したのは王子で間違いないな」
「どうして?」
「あの王女も馬鹿ではなさそうだ。臣下が隠蔽していることに気が付いている時点で殺したは臣下だと思うだろう。しかし、そうではなく王子が殺したと言ってんなら、王子が王を殺した事実をそのまま見たってことなんだろう」
よほど確信的な何かがない限り信じられないってことか。
「だとしても、もしかしたら王子は臣下に唆されてやったんじゃ…」
「王子に会ったことないからわからんが、お前から聞いたリヴィアって話の通りの人物なら、よほどの考えなしじゃない限り唆されて父親を殺すような人じゃない」
「………ってことは」
「ああ、そうだ。つまりは考えられることは二通りある」
マゼンタはこちらに顔を向け真剣な表情で言う。
「一つは、本当に王子が自分の意志で国王を殺したこと。二つは臣下が王子を操って国王を殺したことだ。どちらにせよ臣下が直接国王を殺したという事ではなさそうだ」
「そんな……」
本当にリヴィアのお兄さんが……
本当にお兄さんが実の父を?
「それに、王子が暗殺者を雇って王女を殺そうとしたこともある。王子がやったことは否めないな」
なんだよそれ……
何でこんなことを……
「待って。今考えても仕方がないでしょう。本当の事は直接会って訊いてくればいいじゃない。今考えたところで答えが出るわけじゃないんだから」
そうだ、イエローの言うとおりだ。
リヴィアはそのために、もう一度会うために、ベーラ公爵領の所まで来たんだから。
「わかった、疑問はここまでにしよう。今は明日に備えて寝よう」
「そうだな。それに俺達の目的は変わらない。あの王女を守ることだ」
「そうそう。作戦も王女が考えているようだし、今は一日の疲れを取ることが先決よ」
なら決まりだ。
早いうちにベッドに入り、明日に備えて眠ることにする。
………リヴィアのお兄さん。どんなつもりでこんなことをしたかは知らんが……
……お前の事は兄とは言わせねぇ!
その思いは胸に秘めたまま……
――――――――同時刻――――――――
――――――――ベーラ公爵領のどこか――――――――
Side:三人称
シアン達が寝静まった頃。
ベーラ公爵領内のある建物の三角屋根の上に一人の女性がいた。
しかも普通の人間では足場が細すぎて立てないようなところを女性は余裕な様子で立っている。
「んふふふふ♪ 決行は明日ってとこね♪」
その女性は妙な格好をしていた。
「今やりたいとこだけど、場所が場所だし仕方がないわね♬」
緑を基調とした服装をしており、さらにその女性の髪は透けるほど白い。
そしてなによりも……
「あなたたちと闘える時を待っているわ。神様に気に入られた反逆者さん♪」
なによりも妙だったのは、彼女の背中には淡い半透明の……
「楽しみに、ね。うふふふふふふ♪」
…………翼が生えていた。
その後女性はすぐにいなくなり、誰も目撃者はいないのであった。
屋根に立つ女性とはいったい?
次は作戦会議です




