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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第四章・神と人間の世界編
101/114

再戦 その壱

まず初めに戦うのは……

それでは、どうぞ

―――――――――――――――断章―――――――――――――――


  Side:三人称


 そもそも三人は悪魔から力を授かる前はそれなりの地力と言うものがあった。

 反逆を始めたときに比べればまだまだ発展途上であるが、七年前の時点でもそれなりの強さはあった。

 と、いうわけで……


「……よく来たわねシアン。逃げずにここまで来たことは褒めてあげる」

「そりゃそうだ。お前は壁云々言っていたけど、そう言うお前自体も壁なんだな」

「そうよ。反逆なんて無謀なことを考えるあんたを放っておくわけにはいかないでしょ?」


 時刻は夕方。場所はさっきと同じく路地裏袋小路。

 今回はあくまで一対一と言う事で、シアンとイエローはマゼンタの立会いの下互いに向かい合っていた。


「ルールは簡単よ。どんな戦い方でもいい。自分の持てる力を出して相手を倒せば勝ち」

「ずいぶん曖昧だな。それになんでもありっていいの?」

「なによ。本当の殺し合いにルールなんて存在しないのよ。反逆して戦うのは、たぶんどんなことが来ようとも卑怯なんて言えないわ」

「そうか。まあそんなのこっちにとっても都合がいいが……」


 そう言ってシアンは懐にしまったものを出した。

 それは、長さ約三十センチの短い木刀であった。

 ただし振りやすく反りがある。


「あんた……剣を使うの?」

「ああ。実はオレの家には隠れ刃物がある」

「そんなもので天使に立ち向かうつもり?」

「そんなのオレの剣技を見てからにしろ!!」


 すると、気迫に満ちた態度でシアンは木刀を構えだす。

 疑いの目から驚きへとかわるイエローは両こぶしにグローブをつけて構えだした。

 これは拳打を主体とした格闘の構えである。


「おいおい、お前に至っては素手で戦うのか? 大丈夫かよ天使相手に?」

「別に? あたしは反逆するなんて言ってないから。天使と拳で打ち合う未来なんて訪れないよ」

「…………そうか」


 いろいろと言いたいことがあるが、戦う前なのでやめるとする。

 そして、緊張の空気が広がり、シアンもイエローも互いにまっすぐ相手を見る。

 マゼンタに至っては何も言わずにただ二人を見続ける。


「それじゃああんたが反逆することにどれほど力を入れるか……見せてもらうわ」

「ああ、上等だ」

「なら、行くよ!」

「来い!」


 動き出したのはイエローから。

 こうして反逆を志すシアンとそれを止めるイエローの一対一の勝負が始まったのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:黄


 そう言えばあたしってジョヌとはともに行動していた時があったし、ブルーが王子を甦らせたところとか、他の天使は知っているのになんでよりにも寄ってヴェールなのか。

 ヴェールがどういう天使なのか知っているのはシアンとマゼンタのみであたしが現れたときにはもう勝負は決まっていた。

 だから、どういう戦い方をするのかわからないし性格もわからなかったんだが……


「あはははは! 死ね! 死ねえええええええええええええええ!!」

「ちょ、待って! 待ってってば!!」


 なんか笑いながら空を飛んで、雷を落としているんだけど!?


「あはははは! なに生意気に逃げているの! ゴミはゴミらしく燃やされなさいよ!」

「……! こいつ……!」


 さっきからこいつは背中の輝く翼で空を飛びながら、あたしの真上で雷を落としている。

 あたしはなんとか走って必死にかわしているんだけど、どうにも休ませる暇を与えてはくれない。当然だけど。


「ねえねえねえ! あなたって逃げるしかないの! 反撃ぐらいしなさいよ!」

「…………!」


 まったく……厄介な相手ね。

 雷なんて実態が曖昧な攻撃じゃあ、軽くしてダメージを減らすことはできない。

 ジョヌのようなバカ正直な戦い方は相性がいいけど、こいつのようなひねた戦い方は正直苦手よ。

 その上、


「だったら食らいなさい! 【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】!!」

「!」


 あたしは逃げながら溜めていた力で、手のひらの黒い球体をヴェールに向かって放つ!


「あはははは! 無理無理!」

「…………!」


 外された……!

 それも余裕綽綽で……!


「どうしたの? さっきから変な攻撃ばっかり、うふふふふ♪」


 ……さっきからこればっかりよ。

 攻撃され、逃げ、反撃しても躱される。


 殴る蹴るのような直接的攻撃は不可能。

引する重力の爆弾(グラビトンボム)】はさっきのように躱される。

重たい空間(グラビトン)】は走りながらじゃ困難だし、範囲を定めるにもすぐに逃げられてしまう。


 つまるところあたしに残された手段は【重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】で同じく空を飛ぶこと。

 しかし……


「うふふ♪ 【鳴神なるかみ】!」


 バリッ!


「!」


 ヴェールがあたしに向かって雷を落とす。

 またか……!

 再びあたしは走りだし、上から落ちる雷を躱そうとするが……


「間に合わない……!」


 こうなったら……!


「【強引な重力の歪曲グラビティディスタート】!」

「!?」


 あたしは雷が直撃する点にのみ強力な重力のゆがみを作った。

 すると、


「う……危なっ…………!」


 雷はなんとかあたしを逸れ、近くの地面に落ちた。

 危ない危ない。今のは咄嗟だったからうまくいくかどうか……


「あはは……なんであたらないの?」


 ……あ、いけない。

 さすがに気付かれそうね。


「おかしいねえ……さっきから雷を降らせているのに全く当たらない。雷って結構速いのよ。うふふふふ……♪」


 ヴェールが不気味な笑みを浮かべながら何かを呟いている。

 ……今のうちに!


「【重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】!」

「!」


 今ヴェールが呆けているうちにあたしは【重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】で一気に大空へと急上昇する。

 もちろん目指すはヴェールの元!


「なに…………!?」


 いくらなんでもあたしが空を飛ぶとは思っていなかったのか、ヴェールは驚いて動けない。

 なら好機よ!


「行っけええええええええええええええええ!!」


 空中で静止しているヴェールにあたしは思い切り飛び蹴りを浴びせる!


 ゴッ!!


 当たった……!


「……うふふ、そんな訳がない」

「…………!?」


 …………え!?

 直前で……止まっている……!?

 なにかに……壁みたいなものに阻まれている……!?


「うふふ、【空気圧くうきあつ】。あなたって空飛べたのね。うふふふふ……♪」

「くっ……!」


 防御壁でも張ってるわけ……!?

 折角の奇襲が……やばい……!


「あはは、残念♪ 【鳴神なるかみ】!!」


 バリバリバリバリバリ!!


「がああああああああああああああああああああ!!」

「あっははは!! そうそういい声で鳴いて!!」


 ……やっぱり、駄目か……!

重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】は擬似的に空を飛べるけど、使用中だとほかの技が使えない……!

 けど、ただの蹴りや拳じゃ通用しない……!


「ぐああああああああああああああああああああ!!」

「あはは! ゴミクズ女、こんなにも雷を浴びるのは初めてなんじゃない?


 この女……!

 全身が……しびれる……!

 けど!


「まだよ…………!」

「ん?」


 しびれるし激痛だけど……

 なんとか意識を振り絞って、空中のままヴェールの足首を掴む。


「……なにをするの?」

「……あんたを、空から引きずり落とす!」

「え?」


 言っておくけど……ただでは転ばないわよ!


「【超重の身一つ(ロングトン)】!」

「!?」


 空中でヴェールの足首を掴んだまま空を飛ばなくなったあたしとヴェール(・・・・)に超重量の重さがかかる!


「!?!?!?」


 突如かかる負荷にヴェールも空を飛ぶ力が足りず地面へ落ちていく。

 なにをする気なのか察したヴェールが静止の声をかける。


「な、ちょ、待て……いくらなんでもこれ……!」

「雷のお礼よ!」

「…………!?」


 もう遅い!

 空中から地面へ到着する瞬間あたしはヴェールの足首を掴んだ手を上にあげて、ヴェールの頭を強制的に下に向ける!

 このまま落下すればヴェールの頭部は地面に激突する!


「【打ち下ろす一撃ヘヴィパイルドライバー】!!」

「ちょ……待…………!?」


 ドゴォォォォォォ………………ッ!!


「…………!」


 なんとか……決まった。

 超重となったヴェールの体重と同じく超重のあたしにあの高さなら相当よ。

 ヴェールは頭から先に地面へ叩きつけられている為、地面の中に頭が埋まった状態になっている。

 普通の人間ならかなり危険な状態になる。


「これで、どう…………?」


 このまま倒れてくれるといいけど……


「くくくくく……あははははははははは!! あーっははははははははははははは!!」


 ……そううまくはいかないわよね。

 うつ伏せになりながら笑っているよ。


「うくくくく……よくもやってくれたわね」

「…………!」


 無傷……とまではいかなくても、ほんの少ししか効いていない。

 全然安心できないじゃない。

 あたしは警戒しつつヴェールから距離を取った。

 ヴェールがゆっくりと地面から立ち上がってあたしに気味の悪い笑みで見つめる。


「……あら、まだ体が重い。空へ飛べない」

「無駄よ。【超重の身一つ(ロングトン)】の効果はずっと続くわ。あたしが止めようとしない限りね」


 時間的制約があるあたしの力だけど【無重の身一つ(ゼログラム)】や【超重の身一つ(ロングトン)】に限ってはこれといった制約はない。

 つまり……


「うふふ、この戦いの間あたしは飛べないのね。ふふふ……」


 ヴェールは顔に手を当てて笑い続けていると、


「……やってくれる!」

「!」


 またも彼女から強い殺気を感じる。

 ……笑んでいるのに、怖気が止まらない。


「あっはははは! せっかく天使化したのに、あたしったら変な油断なんかしちゃって遊んじゃうから、どうしようもない状況になっちゃったわね♪ うふふふふ……!」

「まったくよ。こんな大事な戦いの時に笑いながら手を抜くって……ふざけているの?」


 ここから先、どうやって戦うか考えつつも、先ほどの状況に叱咤する。

 するとヴェールが苦笑するように言い訳をする。


「いやいや、あたしだって真剣よ。神様の事は大切だって思うのよ。でもね……」


 ……なに?


「……最近神様、なんだか笑うんだよね。くくくくく……!」

「…………?」


 え…………?

 何の話?


「笑う。笑う……笑う! ねえ、自分が仕える主が、あたし以外の誰かに微笑むってどういう気持ちかわかる?」

「…………」


 いや……えっと……

 だから何の話?


「うふふふふ……! しかもその原因が目の前にいる。これはもう……笑わずにはいられないでしょう?」

「いや、なんで!?」


 原因が目の前って、なんであたしのせいみたいになっているの!?


「神様が笑う。だからあたしも笑う。神様と一緒に笑って、あなたを嬲って殺すのよ! うふふふふ……♪」

「…………」


 なんかすごい逆恨み感がするんだけど……

 けど、あたしは無関係って、言えるわけはないよね。


「だからさ…………死ね!!」

「!」

「【鎌鼬かまいたち】!」


 ヒュヒュヒュ!!


 …………!?

 何か来る!

 ヴェールから何かが来ると直感したあたしは、すぐに横に飛んで回避する。

 直後、あたしはヴェールに向かって一直線に走り出した。


「……【疾風迅雷しっぷうじんらい】!」

「…………え?」


 …………?

 なに?


「……あはは、体が重すぎて走れない」

「そりゃそうよ無理に動けば、足が自壊するわ!」


 どうやらヴェールは移動しようとしたらしいが動くことはできないようだ。

 ならば好都合!


「うふふ、来ないで! 【鳴神なるかみ】」


 ヴェールのもとから雷が横一直線にあたしに向かって放たれる。

 しかし、


「【強引な重力の歪曲グラビティディスタート】!」

「!」


 右手先に一瞬だけ展開し、雷を弾くように流す!


「あれ? はずされた?」

「そんな直線的な攻撃、通用しないわ!」


 今のヴェールは攻撃の直後だからすぐに避けられる様子じゃない!


「【重たい一撃(ヘヴィブロー)】!」


 あたしは別の技を出したけど、すぐに右手に重さを込めてヴェールに向かって殴りかかる!

 これで…………!


「……あたらない!? なにかに阻まれてる……!」

「……ふふふ、【空気圧くうきあつ】はそう簡単に破られない」

「さっきの防壁か……!」


 空中であたしの蹴りを止めた防壁……!

 結構頑丈じゃない!


「ふふふ、よかった。こっちの方は通用しないようね」

「くっ…………!」

「でも……離れて! 【急爆風きゅうばくふう】」


 ブオォッ!!


「なに…………!?」


 急にヴェールとあたしの間の空間が、まるで爆発するような大きな衝撃が現れた。

 そのせいであたしは吹き飛ばされ、距離を取られた……!


「がぁ…………!?」

「よしよし、離れたところで【大御雷おおみかずち】!!」

「!? やばい……!」


 あたしから距離を取った後、ヴェールを中心に空から複数もの雷が生き物のようにうねり落ちる!

 あ、一つこっちに来る!


「【強引な重力の歪曲グラビティディスタート】!」


 あたしのもとに降り注ぐ大きな雷を、一部分のみによる重力のゆがみにより強引に軌道を曲げる!

 軌道を変えられた雷はあたしの近くに落ちた。


「あれ? また外された……?」

「危なかった……!」


 攻撃を防ぐやすぐにあたしはまたヴェールのもとへと駆ける。

 まだ大きな雷が落ち続けているけど、当たらないように気を付けて進む。


「あはは……生意気な!」

「生意気で結構よ!」


 接近したところで問題はある。

 あの見えない防壁のようなものをどうやって貫いて攻撃するか……!

 方法は一つだけ浮かぶけど……!


「【大烈風だいれっぷう】!」


 ゴォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


「!」


 今度は風……!?

 それも向かい風だし、なんて勢いよ……!


「ほらほら、体を重くしないと飛ばされちゃうよ♪」

「…………!」


 だめ……いくら超重にしても……!

 一歩も……歩けない……!

 それどころか、後ろへ返される……!


「あら、動けないの? うふふふふ……そうよ、大罪人ゴミクズ大罪人ゴミクズらしく、ねじ伏せられなさい。ふふふ……!」

「こいつ……!」


 さっきからむちゃくちゃよ……!


「あたしがその気になれば、人類なんて簡単に滅ぶ! 弱い人間なんか、塵のごとく吹き飛ばされるのよ!!」

「なんですって……!」


 こいつニコニコばっかりしててとんでもない事言うわね……!

 あたしたち人類はこんなのばっかりに管理されたって言うの!?

 こんな……人の命を軽く見るような女に……!


「あはははは! 人間! お前はどうして戦ったりするの!?」

「……は!?」


 また急に話が変わっているんだけど……

 なんなのよこいつ……!


「だってそうでしょ! どう考えても人間が神様や天使に勝てないとわかっているくせに逆らうなんてばからしいでしょ!?」

「そんなの……やってみないとわからないし、そもそも神の管理に不満があったからに決まっているでしょ!!」

「あはは♪ 生きることになんの不満もない環境なのに、なんて罰当たりなの!! 本当に人間ってどうしようもない罪人クズね!!」

「…………!」


 ヴェールは……もう狂っていると言ってもおかしいくらい笑い続けている。

 まるで……


「神様も神様よ! どうして今の世界に満足できない人間を許すの!? なんで身の程をわきまえないで逆らうような罰当たりに、異世界送りなんてするの!?」

「え…………?」


 そ、それは……

 なんで…………


「いったい神様はなにを考えているの!? もう十分すぎるほど人類に絶望した神様が、今更あなたたちに何を期待しているって言うの!?」

「!?」


 期待……!?

 どういう、ことよ…………?


「わからない! わからない!! わからない!!! なぜ……なぜ……なぜ神様はくだらない争いが終わっても笑わないのに……








 ……あなたたちのことになると笑うようになるの!?」








「…………!?」


 笑っている……!?

 神が…………!


「あはははは! 悔しい、悔しい! こんな感情を抱くのは初めてよ!!」


 ヴェールが自らの体を抱きながら錯乱しそうな表情で叫んでいる!


「あたしがどんなに頑張っても、笑わなかった神様が、どうしてあなたたちのことになると、楽しそうに笑うのよ!!」


 ……笑う!?

 神が……あたしたちに対して……!


「それが本望なの!? そうであることが本望なの!? でもね神様……買いかぶりすぎちゃいけないのよ!!」


 もう何が何だかわからないわよ!

 何を言っているのよこいつ!!


「見ていてください神様!! 今目の前にいる大罪人ゴミクズが、あたしに対して手も足も出ない、何もできないまま殺されるさまを!!」

「!」

「おチビちゃんやおデブさんの時は無理だったけど、今度こそ殺して見せます! あはははははははは!!」


 まずい……!

 今のあたしは超重の身でかろうじて向かい風に立ち止っている状態!

 つまり動けないってのにどうするっていうの……!


「あなたはただの雷程度じゃ無理だから……」


 するとヴェールが右手を大きく上へと掲げて広げると、


「あたしの最高にて最強の技で殺してあげる!!」

「!」


 周りからとてつもない暴風が吹き荒れる中、ヴェールの掲げた右掌に…………


 コオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォ…………!!


「え!?」


 なんか……白く光り輝く球体のようなものが出ている……!


「…………は?」


 なに、あれ……?

 なんだかわからないけどあの白い球体……!

 どんどん大きくなっていく……!?


 バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!


 なんか不吉な音も出てる!?


「あはは……あはははは…………!」


 なんだろう、やばいものしか想像できない……!


「【神の息吹(ソウフル・デ・デュウ)】」

「え…………?」


 神の息吹(ソウフル・デ・デュウ)


「天使としての本領を発揮した状態で、なおかつ周りを気にしないところでしか使えない、あたしの最強の技よ」

「!」

「風とは天の気まぐれ! 種子を運び、雲を運び、そして気に入らない大地を吹き荒らす!」


 なんですって……!

 こんな時になんて技を!?


「うふふふふ……あたしに傷一つ与えられないような弱者に使うような技じゃないけど、天使の偉大さを思い知らせるにはちょうどいいかもね! あははははは!!」


 ……ヴェールの右手の球体が、雷みたいにバチバチと異様な音を立てながら異常なほどに大きくなっていく。

 これってジョヌの溶岩といい勝負くらい大きい……!


「うふふ……死ねぇ!!」


 こんな時もなおヴェールは笑いながら、右掌に集まった光る球体がマゼンタの【熱線ねっせん】みたいに、太い線状となってあたしに襲いかかってきた!

 今の状況、風は止まない! 普通に避けることはできない!!

 だったら……


「【重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】!」

「!」


 前方から吹き荒れる風も構わず、あたしは空を飛んで躱すことを選んだ。

 直後にあたしの真下にヴェールが放った、白い光線が勢いよく通り過ぎている!


「…………!」


 白い光線が消えた後……

 地面が消失して……焼け焦げている……

 こんなの……無茶苦茶よ……!


 ビュゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウ!!


「…………がっ!?」


 風が…………強い!

 やはり吹き荒れる暴風は強く、あたしの身体は力で抗えずに飛ばされてしまう。

 けど、


「……ふふふ、生意気な」


 おかげでギリギリ、ヴェールの光る白い球を回避することができた。

 あとは何とかこの暴風の中、安定しないと……!


「あ……く……ぅ……!」

「うふふ、空は飛べても、この吹き荒れる【大烈風だいれっぷう】の中じゃ自由に飛べないもんね! ほら!」

「!?」


 風の方向が……!


「軌道変更ぐらい可能よ!!」

「ぐあっ!?」


 ヴェールが暴風の流れを地面に向かうように変えた。

 このままだとあたしは。空中から地面へ強制的に叩き落されてしまう。


「させない!!」


 流れって言ってもそこまで広くない。ほんの一部分なら避けられる!

 風……あいつの暴風から逃れないと!

 そして、目的の場所へ……!


「人間のくせに生意気ね。さっさと落ちなさい! 【大御雷おおみかずち】!」

「!」


 雷まで……

 危ない! 当たったら終わり!

 なんとか……何とかあの場所へ……!


「? 何処へ行こうっていうのよ!」

「!」


 飛ばされたらだめ!

 あと少し……!


「あはははは! 地へと落ちなさいって!!」


 落ちるわけにはいかない!!

 あと少し…………!


「……着いた!!」

「!?」


 ようやくたどり着いた!

 はるか上空……ヴェールの真上に!


「!? 真上を取ってどうするというの!?」


 ……たった一回しかできない荒技!

 この一撃に賭ける!


「【超重の身一つ(ロングトン)】!」

「!?」


 はるか上空、

重力操作で浮遊移動(グラビティムーブ)】を解除し、自らの身を超重として、ヴェールに向かって、急降下する!

 よし、次は……!


「……ふふふ、そう。やる気ね♪ でも!」

「!?」


 え……!?

 ヴェールの左手にさっきの白い球体……!?

 いつの間に……!


「あはは! ただむやみに風を動かしただけじゃないわよ!!」

「まずい……!」


 いまあたしはヴェールの真上から超重の身となって落下している最中。

 避けられない……!


「あはははは!! 今度こそ死んで!! 【神の息吹(ソウフル・デ・デュウ)】!」

「…………!」


 攻撃が……来る……!

 ヴェールの放った白くて大きい光線があたしに向かう。

 あたしは……


 ……だめ、死ねない。

 こんなとろで死ぬわけにはいかない。

 シアンを……マゼンタを残して……!


「死ぬわけにはいかないわよ!!」

「!」


 予定よりちょっと早いけど……

 出し惜しみしている場合じゃない!


「【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】!!」


 超重のまま落下中にためた力で、右手に黒い球体を発動させる!


「膨張しなさい!!」

「!?」


 グオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


 あたしの突き出した右掌から、球体は膨張し、ヴェールの白い線を飲み込む!


「…………!?」


 さすがのとんでもない光線も、【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】の前には通用しないようね!

 だったら……

 今【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】が膨張したまま、ヴェールのもとへ突撃すれば!!


「…………やばい!?」

「今更回避に移ったって無駄よ!」


 今のヴェールは超重で飛べないし、早く動こうにも……


「この距離ならいける!」

「…………ははは」

「覚悟しなさい! ヴェール!!!」

「人間風情がぁ! あっはははははははははははははははっ!!」


 そして、空中から地上へ直行するあたしと、地上であたしを見上げたまま笑うヴェール。

 距離は徐々にまっていく。

 これで……!



――――――――――――――――――――――――――――――



「はぁ……はぁ……はぁ…………!」


 ま、参ったわね……

 敵を倒すことばっかり考えて、着地のことはすっかり忘れてた……

 おかげで足が片方……折れちゃったわね……

 まだ起き上がれない。平原の上、あたしは仰向けに倒れている。

 けど……


「あはは……きつい…………」

「それはお互い様よ……いや、そうでもないわね」


 あたしの左側の傍で、左半身を消失させたヴェールが同じく仰向けに倒れていた。

 断面は見えないし見たくない。


「うふふ……おチビちゃん以上に、傷つけられたわ♪」

「……よくこんな時でも笑っていられるわね」


 ほんのついさっき……

 あたしとヴェールが衝突する寸前、ヴェールはいったいどういう手を使ったのか、超重の身だってのに、半歩横にずれることができた。

 そのせいで【引する重力の爆弾(グラビトンボム)】はヴェールの左半身……頭は外れたが腕や足、脇腹の部分……を喰らい、結果ヴェールは、超重の身でもあって立てなくなってしまい、今あたしとならんで仰向けに倒れている。


「うふふふふ♪ 痛みなんて所詮、生存の本能に過ぎない。しかし四輝天使あたしたちは神様から生み出された概念故、必要ない。神様が健在なら甦らせることも可能だしね」

「……最後になんて事言うのよ」

「うふふ、おチビちゃんやおデブさんにつけられた傷がなくなっていることに、疑問は抱かないの♪」

「…………」


 確かに言われてみれば怪我がなくなっていることに疑問は抱くけど……

 でも天使だし、回復ぐらいできる程度しか思ってないんだけど……


「うふふふふ♪ と言うか、いいかげんにあたしにかけたこの身体が重くなる奴、解いてくれない?」

「なに言ってるのよ。そんなことしたらあんた、背中の翼で飛ぶつもりでしょ?」

「うふふ……ばれちゃった♪」


 まったく……油断も隙もないわね。


「でもいい判断よ。もしも飛べたならそのまま戦いを続けるつもりだったわ」

「まだ戦うつもりなの……」


 半身なくしても戦い続けるって……

 それが天使だからこそ、なのか……


「で、止めは刺さないの?」

「え?」


 止めって……


「うふふ♪ いくら神様から生まれた身で、再生も可能だからと言っても、限度はあるわ。亡骸そのものが完全消失してしまえば、再び造られることはあっても、再生なんてできなくなるし」

「…………」

「こんな所で無駄話をするくらいなら、さっさと殺して進みなさいよ」


 ……そうね。

 本来なら敵であるこいつにさっさと止めを刺して先へ進むべきだと思うでしょうね。

 でも…………


「止めは……刺さないわ」

「……はぁ? なぜ」

「シアンから伝言があるわ」

「あら、おチビちゃんに?」


 まったく、なんでこんなこと言わなきゃならないのかしら。


「どんな内容かは聴いてないけど、でも『お前に大事な話がある。聴きたかったら生き延びろ』って」

「……ふふふ、偉そうに♪」


 まったくだわ。

 ここに来る直前、あたしかマゼンタに言ったんだもの。

 突然すぎるし、そんな事余裕がないとできないって思っていたけど……


「あんた、シアンとまた戦いたいんでしょ? だったらここで死ぬわけにはいかないわよね」

「あら? 正確には雪辱よ。本気で殺したいくらい、あの子たちの事を想っているんだから…………!」

「…………」


 そう言うと、またヴェールは危険な笑みを浮かべてクスクスと笑いだす。

 まったく、こいつったら……


「でもいいわ♪ そんなこと言ってくれるのなら、先へ進むことを許してあげる」


 そう言うとヴェールは指を鳴らしてよくわからない言葉を言い出した。

 すると、周りの景色が急激に歪んでいく。


「!?」


 これって……!

 この仮想空間から、出られるという事なの……!


「最後に訊いていいかしら、お姉さん」

「……なによ」


 周りが歪んでいく中、ヴェールはあたしになにかを訊いてきた


「あなたってさあ、神様や四輝天使あたしたちに逆らっていて、怖いって思わないの?」

「え?」


 なんだか唐突な質問が来たんだけど……


「生物とは死ぬことには恐怖するものよ。反逆こんなこと、考えただけでも恐ろしいのに、実行に移しているなんて命を捨てる事なのよ」

「それは……」

「教えて。あなたは死を恐れたりしないの?」

「…………」


 死を恐れたりしないですって?

 ……そうね。


「あたしは……別に死ぬことは怖いと思っていないわ。恐れているわけないじゃない。だって……」


 あたしに女でいることを許さなかった父。

 その父に辛い目に会わされ、いつもいつも涙を流していた母。


 そんな環境の中で、あたしは決して幸せとは呼べない状態だった。


「……辛い生活を生きて、それで自分から何もしないで、ただされるがままになるのは……もっと嫌よ」

「へぇ……そういうこと、そういうことね」


 ……何がそう言う事なのかしら。

 よくわかんないんだけど……


「でもね、反逆者のお姉さん。あなた達がこの先、神様にいったい何をぶつける気なのかしら?」

「?」


 へ?

 ぶつける?


「暴力? 意思? 何なのかは知らないけど、神様はあなたたちの事を期待しているのよ」

「だから期待ってなによ! 何を言っているのよ!?」

「うふふ……! 詳しくは先へ進むことね。だって神様は……」

「待って! ヴェール!!」


 ヴェールの言葉を最後まで聞けず、あたしはこの空間から強制的に出て行かれることになってしまったのだった。

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