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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
87/114

上書きする未来 7

 愛を家まで送ろうかと話をしたら愛はそれを断った。

 「今のおうちの人優しくしてくれているの。志乃ちゃんならともかく、桐谷くんは男の子だし」

 へにゃりと笑ったその表情にはもう桐谷を責めるものはない。

 そっか、といって近くまで送って愛と別れたあと、黙ったままついてきていた桐谷が息を吐くように言葉を漏らした。


 「なんで、許すんだよ」

 「なんで、って」

 苦しそうに吐き出した桐谷は唇をぎりりと噛んだ。

 「俺は、許されることをしてない」

 「うん」

 「責められた方が楽だ」

 吐き出した桐谷の唇から血が垂れる。

 「勝手だね。それは桐谷が楽になりたいだけじゃない」

 桐谷に投げやりにいうと帰り道をサクサクと歩き出す。

 後ろから追いかける音がして衝撃に耐える。肩をつかまれて振り返ると胸倉を押すように持って勢いのままに壁と激突する。きっと背中に跡ができていそうだと思いながら情けない表情をした桐谷を見る。親しくなればなるほどに見えてくるのは桐谷の自制心のなさで、耐えられないままに力を込めて壁に私を押す。クッと痛みで息を漏らす。

 「お前に、何が、わかる」

 「さっきも言ったね、それ」

 なんとかかすれた声を出す。少し緩まる力に呼吸を数度した。

 「お前みたいに、家族がいて、大切にされていて、恵まれていて」

 否定をする気はなかった。私に家族がいるのも大切にされているのもそれは事実だからだ。

 「それで何がわかる!一緒だと思ったのは藤吉だけだ!藤吉に許されなくてもよかった。俺のものになってくれないのなら。一生俺を憎んでほしかった」

 情けなく顔をゆがめた桐谷の眉間にデコピンをする。はっとした表情の桐谷にいたい離してというと申し訳なさそうに離した。しょげた様子の桐谷にはやく帰るよ、と口にした。

 「桐谷の家のことは桐谷が話したじゃん」

 「おう」

 「知ってるよ、でもそれと愛のことは別でしょう」

 後ろからついてくる気配を感じながら口にする。返事はない。

 「愛に対して悪いと思うならこれから償えばいい。違う?」

 「俺はそんなことをしていい立場じゃない」

 その言葉に許すという言葉を聞いてなかったの?と聞くと聞いていた、と返す。

 「許されるのも許されないのも選ぶのは桐谷じゃない。桐谷は受け入れるしかできないんだから。選べる立場の愛の判断に従いなよ」

 「受け入れるしかできない、か」

 復唱する桐谷に、何を言えるのか、悩みながら言葉を発した。

 「愛が許すって言ったんだから。今からがんばればいいんじゃない?」

 「でも」

 ネガティブな発言をしようとする言葉を遮る。

 「まだちゃんと振られてないじゃない。振られたら、だれだっけ?桐谷の友人の白井くんも誘って慰め会をするよ」

 ためらいながらさんきゅとつぶやいた言葉にいいよと返す。無言で暗くなった道を歩くと桐谷はぽつりと口を開いた。

 「白井は、どうかな」

 「え?」

 「白井の好きな子を俺は利用したからな」

 思わず、その言葉の意味を考えてしまう。

 「どういうこと?」

 「由里、深津由里ってさっき聞いたろ?」

 「百合の花を置いた人だね」

 「白井の好きな人だった」

 「知ってたの?」

 桐谷はそれ以上何も口にはしなかった。



 家に帰って部屋に戻ろうとしたら有生の部屋があいた。

 「おかえり」

 「ただいま」

 「あのさ」

 「桐谷のこと?明日聞いて」

 「違う」

 有生は言葉を遮った。

 「この間言ってた、おやじのこと」

 有生の目は真剣なものだった。




桐谷くんと愛ちゃんは愛ちゃんすっきり。桐谷くんもやもやの終わり方です。

■桐谷

もやもや

■愛

すっきり

■有生

まってた

■志乃

待たれていた。


次回は有生くんのターン。キーワードは父親のPC!


あ。更新が今毎日してますが9月中ごろまでは少しスローペースになりそうです。すみません!

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