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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
83/114

上書きする未来 3

 波の音が近い。

 数回角を曲がるとそこは開けた場所で海が一面に広がった。管理のされていない伸びきった草や蔦が足元を覆う。もう色のすすけた遊泳禁止の看板は傾いていた。海岸線は見えないが海の地平線は見えた。太陽の位置がちょうど水面に接しそうな高さにまで落ちている。水面にそのまま反射をしてきらりきらりと輝く。青い海を赤くきらりきらりとそめていた。


 「わ……」

 その一瞬の景色に感嘆の声を上げると桐谷が強い目を向ける。

 「なに?」

 その視線に問うと別に、と顔をそむける。そして思い出したように後付けで口を開いた。

 「ほらあそこ」

 指をさした先は少しだけ草が倒れている。

 「人がとおったみたいじゃね?」

 確かに人が一人通ったみたいな小道ができていた。

 「愛が通ったと思うの?」

 その道を見てそんな確信は私にはわかない。

 「そうだったらいいと思う」

 「ねぇ、桐谷」

 「あ?」

 ごめんけど、そう言葉をつづけたら怪訝な顔をする桐谷が視界にはいる。先ほどの少し弱弱しい桐谷の雰囲気とは一変して何事もなかったような様子が気にかかった。

 「あのさ。愛に会って謝るんだよね?」

 確認のようにいうと桐谷は口を閉ざして数秒の間目を閉じた。

 「謝らないの?」

 問うように、少し強い口調で言うと桐谷は深く息を吐き出した。

 「藤吉さんは、知っているかな」

 ささやくような言葉は耳に届く。

 「何、謝らないつもりなの?」

 「もし、知らないのなら言わないということも選択肢の中にあってもいいんじゃないかと思ったんだ」

 「は?」

 低い声が出た。桐谷はひきつった笑みを浮かべる。おそらく自分でも言っていることが最低だとわかっているのだろう。

 誰にいうのかわからないいいわけのように早口で桐谷はまくしあげた。

 「だってそうだろ。知らないことをわざわざ伝えるよりも知らないのならばそれを騙しつづけるのも一つの手じゃないか」

 その発言に溜息をつくと桐谷は焦れたようにだから、あのさと言葉を何度か発しては引っ込めた。

 「すべてを伝えるのが何も正しいことじゃないだろ」

 「まぁ。確かにその考え方はあるけれど」

 「だろ?」

 少しの同意を見せると得意げに桐谷は笑う。

 「でも今回のことに関してはそれは同意しかねるわ」

 否定の言葉をするりと口にすると桐谷の表情が固まる。

 「今回のことはどう考えても桐谷が全面的に悪いのにそれを隠して通常通り接して?騙すの?それは反省しているとは言えないし、今までしてきたことを継続させることになるんじゃない?」

 「じゃあ、なんていえばいいんだよ!君をいじめていた原因を作ったのは僕です、すみません。とでも?そんなことを言ったところで、俺の気持ちなんて伝わらないだろ。言うべき言葉もかける言葉もわかんねぇよ!」

 「じゃあ黙っているの?そのつもりで愛に会いにいこうって誘ったの?私に一緒にうそをつけっていうの?」

 「そうじゃない。そうじゃないけど」

 困惑したような声が数度聞こえる。かさりと草をわける音が聞こえた。

 「これ以上、藤吉さんと距離を広げたくない。でもどうしたらいいのかわからない。ただ笑ってほしいだけなのに」

 「それを奪ったのは」

 桐谷でしょうという続きを桐谷の言葉をかぶせられて止めた。

 「わかってる!でも、もう笑ってくれなくなるかもと思うと、なんていえばいいのかわからなくなる!」

 「なんでいつまでも自分の気持ちを優先させるの。なんでそうやって自分のことばかりなの。今本当に大切で優先させるべきなのは愛の気持ちじゃない……の」

 ぱちりと視線があって思わず言葉を途切れさせる。

 「え」

 「あ?」

 揺れたツインテールが海への道に消えていく。思わず青くなった顔に桐谷は何があったと首をかしげるばかりである。ぱくりぱくりと数度口を開閉させてごくりと唾液を飲み込んだ。

数日更新できずにすみませんでした!

素敵感想までいただいてうはうはしてます。


■桐谷

海まできたけどぐだぐだ

■愛

どこに、いるのかな~

■志乃

あ。ぱくぱく


明日にはまた続きをあげられたらいいなぁ。

九月中ごろまでまた少し更新停滞するかもです。すみません。

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