巻き戻った時間 5
公安に配属希望をだそうと決めた時から親や親戚との付き合いを徐々に減らした。
そもそも人付き合いは得意ではなかったからか、そこに躊躇いを感じたのは家族に対してだけだったかもしれない。なのに、それでも消し切ることができなかったのは私の弱さの象徴だった。大切なものを手放せなかった。その時はそれも含めて強さなのだと思っていた。そうやって言い訳をして自己を肯定していたけども、時間が戻ってからは、そのことに後悔をしている。
もし、存在を消し去ることが私に出来ていたら。すべてを捨てることに躊躇いを持たなかったら。おそらく別人としていつの間にかいないくらいの認識ですごしていただろう。そしてそれは、結果的に、大多数の誰かを守ることにつながっていたのだと思う。
あの場で死ぬことももしかしたらなかったかもしれない。
正義感の強い真っ直ぐな真くんと嘘つきで騙すことが得意な私。本質が違うのだ。お互いに近くなることはあっても重ならない。きっと真くんとはそういう関係なのだと思った。
そして私は嘘をつく選択をした。
「なぁに? それ。違うよ」
平気な顔でついた嘘に自分で内心笑ってしまう。嘘つきはいつまでたっても嘘つきなのだと思う。
昔からうそは得意だった。嘘つきであることは、私自身を守ってきた。そして今回も。時間が巻き戻っても、やはり私は嘘つきであり続けるのだろう。
「そっか……そうだと思ったんだけどな」
「なんで?」
「え?」
「なんでそうだと思ったの?」
そういうと戸惑ったように真くんは視線を揺らして、言葉を濁した。
家に帰るとすぐに部屋に駆け込んだ。
「つかれた」
床に座り込んで口からでたその言葉は自身の耳を通してまた体中を駆け巡る。余計につかれた気持ちになりながら、溜息を出す。
しばらくぼんやりとラグの上に座り込む。
耳慣れた、土曜日夕方の番組の音楽が聞こえた。もう、こんな時間か、とそっと息をはいた。
真っ白な大学ノートを取り出すとシャープペンシルをとりだして今後必要になりそうなものを箇条書きで書き連ねる。時間を無駄にはできない。当面の課題が見えてきていながらそのノートの上に倒れこんだ。見慣れた字は相変わらずお世辞にも綺麗とは言えない。
「あー。もう、どうしよう」
そしてふと思い出す。今日、真くんは鈴ちゃんの結婚相手にだめだと言いたくなったという。そして私もそのことに対してすごく違和感を感じていた。実際に口に出して言われるとそれは前とは違うことであった。前、鈴ちゃんは結婚はまだしていなかった。それに真くんはその相手にネガティブな印象をもっていた。少なくともまともな人じゃなさそうだ、と少しの不安がよぎる。
「どんな人かわからないと」
結婚話までは前もあったのかもしれない、と思うが当時の私に聞こえてなかっただけなのか覚えていない。ただ、もし前はなかったとしたらこれは前の時との大きな差異になるのではないかと考えた。そこからなにかがわかるかもしれない。
一度はっきりとわかってしまったその違いは、何かにこびりついたかのように離れてはくれなかった。




