巻き戻った時間 3
「聞いててよかったね」
「本当に」
「なんて言って聞いたの? 贈り物を贈りたいって??」
「違う違う。なるべくさり気なくなるように。ほらテレビとかで芸能人が買い物する番組をみながらあの場にいたら何がほしい? っていうふうに聞いたよ」
「自然だね! ならきっとバレてないね!」
「問題は自分で買ってないかどうかだよな」
思いのほか時間がかかった買い物はピンクにラッピングされた箱に入っている。リボンは鮮やかな青色で真っ白の紙袋に入ったそれを真くんは満足そうに眺めていた。店員さんが好意でつけてくれたカードがリボンの間に挟まっていた。
「聞いてても結構選ぶの難しかったね」
思いのほか真剣に考えていたのだと今更になってわかる。決まったことに対する安堵感を感じながら口を開いた。
「そうだなぁ」
「鈴ちゃん、喜んでくれたらいいね」
「喜ぶだろ」
なんてことないようにいう真くんだが少しそわそわとしているのが読み取れた。真くんは昔から鈴ちゃんが大好きで、今回の結婚に関しても叔父さんよりも反対していたとお母さんから聞いた。
「私、鈴ちゃんの相手さんのこと詳しく知らないんだけど、どんな人?」
へらりと笑っていうと、真くんは少し顔をしかめる。
「どんな人……か」
「あるじゃん、いろいろと。優しそうとか、体格がいいとか、頼りになりそうとか。あれ?会ったんじゃないの?」
「まぁ、会ったけど……。しいて言うならチャラそう」
顔をしかめたままいうそのネガティブな発言に真くんがこの結婚に今も反対している気持ちなのがはっきりと伝わった。
「真くんは」
「ん?」
「鈴ちゃんの結婚反対なの?」
真くんはそれにこたえることはなく、ここに入ってお昼にしようか、とファーストフード店の前で足をとめた。
所謂ファーストフード店にはいり、少しおそい昼食を、と食べ物を目の前にした私は鈴ちゃんの結婚については答えたくないのかと自己完結して真くんの話たかったことを聞くことを優先させる。私から話を振ったほうがいいのかと少し悩みつつ真くんを見ると、怖いくらいに真面目な表情をしていた。
手に持っていたポテトを落としそうになり、慌てて口に入れる。ポテトを数本食べた頃真くんが意を決したように口を開いた。
「あー……その、さっき話しかけたことなんだけど」
思っていた以上に緊張していたのか、真くんの声はカサカサで、真くんは慌てて水を流し込む。
「大丈夫?」
「大丈夫」
一言目を発したからなのか、真くんは躊躇いなく話し始める。
「おかしい話になる」
躊躇いなく、それでも少しだけ言いにくそうにいう真くんに感じる違和感も、聞かないほうがいいと思ってしまう気持ちも隠すことはなく、口を開いた。
「おかしい話?」
どこかとがったような声に内心で失敗したと思うものの、真くんはそれを気にした様子はない。
「先に言っておくが俺は中二病でもなんでもないからな」
言い方はのんびりとしていたが表情は真剣だった。その表情にどきりとしたのは隠しているということにやましさを感じていたからかもしれない。
「なんか、時間が戻ったみたいなんだ」
神妙な顔をしていう発言に私が反応をするよりもはやく、あぁ、違う! と真くんは叫ぶように声を上げた。
「違和感はあったんだ。けどはっきりしてなくて。ただ、姉貴の結婚相手を紹介された時にやめろって言いたくなったんだ。違うってどうしてだが言いたくなって。だから結婚に反対してないかって言われたらそうとはいえないけど、純粋に嬉しいとは思ってて、相手がちょっと……って何言ってんだ俺」
真くんは早口でまくしあげる。その言葉にヒヤリと背筋に冷たいものが走る。口をはさむより先に真くんは言葉を続ける。




