日曜日の誕生日 5
「16歳です。高校1年生」
その言葉でやっと愛をどこで見かけていたのか、どうしてわたしが愛について知っていたのかを思い出した。
「あ……」
「え?」
漏れた音に近い声は拾われて聞き返される。
「あの、学校で見かけたことがあるな、とおもって」
ごまかすようにそういうと、みるみるうちに愛の顔がこわばっていくのが分かった。
「知って……」
「今、思い出しました。すみません」
謝罪を口にするが愛の顔色は少しずつ悪くなっていく。
「愛さん?」
大丈夫ですか?と手を伸ばすとそれを予想よりも強い力でふり払われる。
「さわらないで」
今会話をした中で一番凛とした声でいわれ、思わずその手を引っ込める。先ほどまでの態度との違いが大きすぎる。
愛はハッとした顔になり、顔色は余計に悪くなる。しまった、いろいろと間違えた、と後悔しながら愛にもう一度声をかける。
「愛さん……あの」
手を伸ばさずに声をかけるとそれはスタートダッシュのピストルの合図のように愛は駆け出していた。
「……足、はっやぁ」
運動が苦手で文化系美少女のような見た目の愛の姿に思わずつぶやいた。そして追いかけるわけもなく、来たときのように数分目をつむる。
私の知っている人は誰もいないお墓は誰か管理しているのか綺麗に管理されている。桶に溜まっていた水が眩しく反射して揺れた。
太陽はもう十分に上っていた。
お寺を出て、目的などは私にはなくて地元をぶらりとさまようように歩く。
懐かしい気持ちになるとそれがなんだか無性に悲しさを呼び起こさせた。
潰れたはずのスーパーがある。やめたはずの人がバイトをしている。引越した人がそこにいる。亡くなったはずの人がまだ生きている。
それは昇華したはずの気持ちがふつふつと再燃しそうになるには十分すぎた。
未来から過去にきたところで、そんなに自分は成長できていない。
なにかを選択するときにはきっと同じ道をたどってしまうのだろう。そんな情けない現実に失笑がこぼれた。未来を知っているからといえ私にできることなんて、なにもないに近かった。
時間が戻ればいいのに、と冗談で口に出さなかったわけではない。しかしいざ戻ると置いてきた後悔があふれて身動きがとれなくなる。
そうか、だから真くんは私にそうじゃないかと聞いたのか。戻ってから、私から違和感を感じたのだろう。同じ状況の人が一人でもいたらそれは救いになるのだと思う。
救いか。
助けになるってわかっていても、私は、そんな存在、いらない。
しみついた後悔はぬぐいきれるものではないし、また、ぬぐうつもりもなかった。




