第26話
私たちの波状攻撃に、ダイキリはわざとらしく肩をすくめて見せた。
「え~?手厳しいなぁ。わたしは皆のために精一杯やってるのにー」
そう言って笑う彼女の笑顔は、相変わらず眩しいほどに明るい。
この奇妙な三人の時間は、まるで嵐の前の平穏のようだった。
私たちはカクテルのグラスを挟んで笑い合い、茶化し合い、束の間の「家族」のような温もりを享受している。
だが、その足元には、父という名の怪物が掘った深い穴が口を開けて待っている。
私は、冷えたダイキリを一口飲み、その鋭い酸味で込み上げる不安を押し殺した。
◆◇◆◇
それから、あくる日の夜遅く
散乱した資料の隅で埃を被っていた、古い青色のカセットテープが偶然私の指先に触れた。
指先に伝わるプラスチックの硬質な冷たさ。
それは他のどのテープよりも古びており、剥がれかけたラベルは経年劣化で茶色く変色し
もはや何が記されていたのかを判別することは叶わない。
「……あら?」
私は首をかしげながら、その「青」を拾い上げた。
これまでの調査で嫌というほど父の肉声を聴いてきたはずなのに、こんなテープがあったなんて、今まで気づかなかった。
「どうしましたか?」
背後からアルベルトが、影のように微動だにせず尋ねてくる。
その無機質な問いかけに重なるように
ダイキリもテーブルから顔を上げ、興味津々といった様子で身を乗り出してきた。
「テープよ。これだけまだ聞いてないみたい。日付は……かなり昔のものね」
「これだけ青くて、なんだかワクワクしますね!」
ダイキリが、まるで宝物でも見つけた子供のように嬉しそうに目を輝かせる。
その無垢な期待が、今の私には酷く場違いなものに思えてならなかった。
「はしゃぎすぎよ……」
私はため息混じりにテープを眺め、わずかに指を止めた。
父に関する新たな証拠かもしれない。
けれど、これまで聞いてきたどの記録よりも、取り返しのつかない
「何か」が詰まっているような気がして、薄ら寒い怖れが胸をよぎる。
しかし、毒を食らわば皿まで。
ここで立ち止まっていては、復讐の果実を手にすることはできない。
「……まぁ、確かめてみましょうか」
私が決意を口にすると同時に、ダイキリが既に店の奥から接続ケーブルと古いテレビモニターを引っ張り出してきていた。
相変わらず、こういう時の彼女は仕事が早い。
「任せてください! 音量調整も完璧にしておきます!」
彼女は鼻歌まじりに手際よく配線を整える。
そのあまりの能天気さが、今は少しだけ──




