第35章 美織のライバル上京する
明くる日、久保美空がギターとキャリーバッグを手に上京して来た。社長が東京駅まで迎えに行って、代々木の寮に入った。美織は朝から事務所にいた。スタジオでピアノを弾いていた、久保美空が来ると言う事で楽しみにしていた。美織は大学で声楽をやっているせいか正統派のディーバでった。美空は少し荒削りだがタレントせいは持っていた。作詞作曲の技術もそれなりに持っていた。だから宮園社長がスカウトを決めたのだと思っていた。昨日の面接では美空は大学は東北大学出身で経済学を勉強していたと言っていた。仙台の国分町でのライブは始めてから1年だった。歌は高校時代から軽音部でボーカルをしていたらしい。作詞作曲は独学で覚えたと言っていた。美空は明朗活発でとても可愛い感じの女性だった。そんな娘がこれからこの事務所へ入所するというのだから美織は楽しみで仕方なかった。宮園社長は、この時、とんでもない事を考えていたのであった。美空のデビュー曲発売日と美織の新曲発売日を同じ日にする事を考えていたから美織はそれをこの後聞く事となる。美織はすでに新曲を準備していた。タイトル【the smell of autumn】と【winter song】の2曲を用意していた。直接、愛を語る歌は封印していた。美織はスタジオでピアノを弾いていた所に社長と久保美空が入って来た。「美織、お疲れ様。久保さん、来たぞ!」社長の後に久保美空が隠れるようにたっていた。「おはようございます。」美空が美織の目を見て頭を下げて挨拶をした。「おはようございます。昨晩は有り難う御座いました。」美織も美空を見て頭を下げて優しく微笑んで挨拶をした。「ここがレコーディングスタジオなんですね?」美空が社長と美織の顔を交互に見た。「そうだ!すべてここでレコーディングする。美織は何していた?」社長が美織を見て話しかけて来た。「曲を書いていました。」美織は社長は顔を見てニカッと笑った。「よし、美空のデビュー曲に合わせて美織の新曲もリリースする。どちらが売れるか競争だ!」社長が二人の顔を見た。美織は嫌な顔を見せた。自分が落ち目なのをわかっていたから自信はなかった。社長はそんな美織をわかっての提案であった。少しはやる気になってくれればと思っての親心であるのを美織はまったく気づかなかった。美織はその事を知ったのは後日、筒井マネージャーから聞かされての事であった。美織はタイトル【the smell of autumn】(秋の匂い)のリリースを決める。美空はタイトル【solitude】(孤独)をリリースする。今、このスタジオで二人の方向性が決まった。でもやる事は今までと代わりなかった。まずは社長が美空にスタジオに入って【solitude】を歌うように支持した。美空はギターを持ってマイクの前に立った。社長がマイクを除菌シートで拭いて社長はコントロールルームへ美織と共に入った。美空は緊張を隠せずにいたが社長が「スタート!」と言うと表情がガラリと変わり堂々と歌い上げた。一人の女性の孤独感をしんみり歌った曲であった。ポップス的なバラード調曲。「はい!オッケー!」社長が拍手をした。美織も拍手をして「中々やりますねぇ?」美織がそう言って社長の目を見つめた。「思った通りだ!良い歌だ!普通のポップスだな?美織のR&Bとは違うな!それで良い。」社長は美織の目を見て満足気な顔をした。「社長、録音したんすか?」美織が社長の顔を見て優しく微笑んだ。「あたりまえだ!美織のもあるぞ!一番最初のやつ?聴いてみっか!成長の度合いが良くわかるぞ!」社長は美織の顔を見てニヤリと笑った。「嫌!結構です。美織は社長の顔を見てニヤリと笑った。「美空さん。中々良い歌だ!後日、これをレコーディングする?準備しておいて下さい。」社長はマイクを通してスタジオ内の美空に告げた。「はい。分かりました。」美空はコントロールルームの二人を見て優しく微笑んだ。美織はコントロールルームを出てスタジオの美空の背中を叩いて「デビュー、おめでとう!今度はライバルだね。」と美空の顔を見て優しく微笑んで二人はガッチリと握手をした。「宜しくお願いします。」美空は笑顔で美織の顔を見た。「私は負けないわよ。」美織は美空の目を見てニヤリと笑った。社長はスタジオの二人の会話を聞いてコントロールルームでニヤニヤしていた。「美織は何か新曲はあるのか?」社長がマイクでスタジオの美織に尋ねると「ありますよ。任せて下さい。」美織は大口を叩いて笑った。「そうか?それなら安心だ!」社長は美織の顔を見て優しく微笑んだ。美空がコントロールルームに呼ばれ編曲について話をした。そこへあまり見た事のない女性がコントロールルームに入って来て、「社長、お疲れ様です。」深々と頭を下げた。「遠藤君、ご苦労さま。今度君が担当する。久保美空さん。宜しく頼む。」社長は女性の顔を見て優しく微笑んで肩を叩いた。「久保美空さんだ、マネージメント頼むよ。」社長は久保美空に遠藤留奈を紹介した。「今後、久保美空さんのマネージャーを担当させて頂きます。遠藤留奈です。宜しくお願いします。」遠藤は美空の顔を見て静かに微笑んだ。「久保美空です。宜しくお願いします。」美空は遠藤の顔を見て優しく微笑んでガッチリ握手をした。「美織も遠藤君と会うの始めてだよな?」社長が美織の顔を見た。「はい。宜しくお願いします。」美織が返事をした。「梅澤美織さんの事は知っています。会うの始めてですが。こちらこそ宜しくお願いします。」二人は握手をした。「これで、役者が揃ったな?俺も頑張るか?二人を売らなきゃならないからな!」社長は自分に気合を入れた。「一週間後からレコーディングだから二人とも楽譜を出してくれ!編曲は俺がやるから。」社長は二人の顔を見た。こうして、顔合わせは終わり、一週間が経った。午前中から美空のレコーディングが始まった。美織もコントロールルームで美空のレコーディングを見守った。カメラの成田さん、スタイリストの長谷川さん。メイクの佐藤さんも来ていた。勿論オーケストラメンバー全員いた。久保美空の【solitude】の録音が始まった。ワンテイクでは済まなかった。ツーテイクでオッケーサインが出た。美空は緊張していた。可哀想だったが仕方ない。「荒削りだが上手い!素人に毛が生えたレベルか?」社長は苦笑いを浮かべて、頭をかいた。「はい!次、美織だ!先輩、良いところ見せろよ。【the smell of autumn】か?頼む。」社長は美織の目を見つめた。美織はコントロールルームを出てスタジオに入ってオーケストラメンバー全員に頭を下げた。社長がマイクを除菌シートで拭いた。社長がコントロールルームに戻るとすぐに「スタート!」が出た。社長の編曲により前奏はバイオリンから始まった。秋の匂いがしてきそうな曲で歌が始まり静かに終わった。ワンテイクで終了した。「美空のシングル発売日は7月20日になる。美織のシングル発売日は8月10日になる。宜しく頼んだ。それまでにはネット広告を充分に差し込む。」社長は二人の顔を見て優しく微笑んだ。二人の運命が動き出した。




