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コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


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エピソード90:誓いの夜、星空の下で

いつもご愛読いただきありがとうございます。


王都を埋め尽くす歓喜の嵐。

ナバールが国民へ向けて放った、新時代の幕開けを告げる演説とは……。

そして、婚礼を翌日に控えた静かな夜。

不器用な二人が交わした、星空の下での約束を見届けていただければ幸いです。


 翌日。

 王城のバルコニーに立った俺の前に、地平線を埋め尽くさんばかりの国民が集まっていた。

 先代を失い、見えない敵の影に怯えていた彼らの瞳に、俺は真っ直ぐに応えるべく声を張り上げた。



「ドラグーンの同胞たちよ! 俺たちは今、歴史の大きな嘘を打ち破り、真の夜明けを迎えようとしている! 種族を分かつ偏見は、敵が仕掛けた毒に過ぎない。俺は、その鎖を断ち切るために立つ!」



 俺は隣に立つエイルの手を、高く掲げた。



「紹介しよう、未来のドラグーン王妃エイルだ! 彼女は、折れた王家の剣を蘇らせた最高の職人であり、俺と共に世界の危機へ立ち向かう誇り高き戦友だ! 披露宴はこの戦いに決着をつけ、世界に真の平和を取り戻した時、誰もが心から笑い合える場所で執り行う。俺は、この愛すべき国と、彼女を守り抜くことをここに誓う!」



 一瞬の静寂。

 直後、地を揺らすような歓声が爆発した。



「ナバール王!」「エイル様!」「ドラグーンに栄光あれ!」



 暗闇に差した一筋の光を掴み取るように、国民の声が空へと響き渡る。

 公に「未来の王妃」と定義したことで、国全体で彼女を支える体制が整った瞬間だった。



 



 発表を終えた城内は、明日執り行われる「婚礼の儀」の準備で戦場のようだった。



 魔導船のドックでは、アルテオが「やれやれ、主役は気楽でいいねぇ」と零しながらも、ドワーフの精鋭たちと共に、船体に未知の防護術式を刻み込んでいく。



 一方、演習場ではオーウェンが「王妃様を守る騎士団が、これでは話にならん!」と吼え、ボロボロになりながらもガーランドと模擬戦を繰り返していた。皆、それぞれの場所で死力を尽くしている。



 そして俺とエイルは――。



「ナバール、背筋を伸ばして! エイルちゃん、ステップが遅いわよ!」

「ほらほら、王家の礼法はそんなに甘くありませんぞ。さあ、もう一度!」



 母上とエドルの過酷な「婚礼作法スパルタ指導」により、心身ともに削り取られる一日を過ごした。

 ドレスの裾を捌ききれずに転びかけるエイルを支え、慣れない正装で冷や汗をかく俺。

 ようやく解放された頃には、夜の帳が深く下りていた。



 テラスで二人きり、静かな夜空を見上げる。



「……ドレス姿のエイルは、本当に綺麗だったよ。もちろん、今の君も素敵だけどさ」



「ど、どうしたんだいナバール。嬉しいけど、あんまりいつも言わないようなことを……」



 エイルが少し戸惑ったように、しかし嬉しそうに頬を染める。



「吹っ切れたんだ。エイルが不安そうに震えるのを見て気づいた。何があっても、君を悲しませることだけはしたくないって。……エイル、君は本当にかわいい。その飾らない、一生懸命なところが大好きだ」



 俺の手が、エイルの火照った頬にそっと触れる。



「アタイは、エルフほど白くないし、日焼けもしてる。いつも油とすすにまみれて……」



「そんなことない。その肌は、君が懸命に鉄を叩き、夢を追ってきた証だ。俺は、その温かい色が、何よりも愛おしいよ」



 我慢できなくなり、俺は彼女を強く抱きしめた。

 腕の中に収まる彼女の鼓動が、驚くほど速く打っている。



「ナバール……。アタイも、好きだよ。あんたの……その、不器用な優しさが」



「ずっと、一緒にいよう」



「大事にして……くれよな」



 消え入りそうな声で囁くエイルを見つめ、ゆっくりと顔を近づける。

 二人の唇が重なり、甘く、深い口付けを交わした。その時――。



『――そこまでにするんじゃぞ! 我の目の前でこれ以上は毒が強すぎる!』



「セト様!?」



 突然の声に、俺たちは弾かれたように離れた。



「そうよ、婚姻の儀は明日なんだから。続きは、正式に夫婦になってからにしなさい!」



「お、お母様っ!?」



 背後の扉から、セト様と母上がニヤニヤしながら顔を出していた。

 エイルは顔から火が出るほど真っ赤になり、俺の背中に隠れる。



「まったく、目を離すとこれじゃ。婚姻の儀を前に身を慎め。ナバール、お主も節度を持てと言っておるじゃろ」



「もう、アランと一緒ねぇ。あの人も隙あらば私を連れ出そうとしてたわ」



「父上も、そうだったんですか……?」



 俺が呆れ半分で聞き返すと、母上は懐かしそうに星空を見上げた。

 瞬く銀河の向こうに。



 父アランが、「それは言うなよ」と弱りきったように頭をかき、それでも最後には「よくやった」と、どこか不器用そうに親指を立てて笑っている姿が、うっすらと浮かんだ気がした。


最後までお読みいただきありがとうございました。


ナバールとエイル、ついにここまでの関係になりました!

演説での王としての姿と、二人の時の素の姿のギャップを楽しんでいただけていれば嬉しいです。

そして最後に現れた父アランの影。不器用な愛は、しっかりと受け継がれているようです。


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