エピソード82:新しい風
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無事にドラグーン王国へと帰り着いたナバール一行。
新たな仲間たちの紹介もそこそこに、母上とエイルという「混ぜるな危険」な二人が出会ってしまいます。
王国の、そしてナバールの実家の運命やいかに……!
魔導船アヴァニールから、続々とメンバーが降り立つ。
エイルとドワーフの技術者たち。
そして最後に、異様な殺気を纏ったガーラントら魔族たちが姿を現すと、広場に集まった騎士や文官たちの間に、隠しきれないどよめきが走った。
「まずはアタイから。リファインロックから来たエイルだ。肩書きで言やぁ、先代ドワーフ王の孫で、今の王の姪ってことになるかね。あとはアタイの工房の仲間たちさ。よろしく頼むよ」
エイルが男勝りに挨拶をすると、母上が俺とエイルの顔を交互に見て、何やら楽しげにニヤリと笑った。
「エイルさん、よろしくね。ふふ、素敵な娘さんじゃない」
なんだろう、あの含みのある笑い。
まるで品定めをされているようで、少し背筋が寒くなる。
そして、緊張した面持ちでガーラントが一歩前へ出た。
「我はガーラント。先代ガーラ帝国王の息子だが、今はただの流浪の身……。我は、魔族と人族との混血だ。……今のガーラを追放され、死地を彷徨っていたところをナバール殿に拾われた」
ガーラントの告白に、広場は一瞬静まり返った。宿敵とも言える魔族の血。
しかし、母上は動じることなく微笑んだ。
「ナバールの選んだお友達でしょ? なら、何も問題ないわ。ようこそドラグーンへ。皆さん、長旅でお疲れでしょう? まずは城内でゆっくりしてくださいね」
「……母上」
さすがというべきか。その器の大きさに、俺は改めて感服した。
皆を客間に案内し、一息ついたところで俺たちは円卓を囲んだ。
母上とエドルを前に、これまでの経緯を話す。クロードとの合流、獣王国やエルフの国での死闘。そして、折れた剣を打ち直したこと……。
「まあ、そんなにいっぱい冒険してきたのね!」
「ナバール様、さぞ大変な日々でしたでしょう。よくぞご無事で……」
エドルが感極まったように目元を拭う。
話題は魔王の側近、ギルフォードへと移った。
「我も何度か会ったことがあるが、底の見えない奴だった。力だけで言えば、現王ヴェルガーと互角……いや、それ以上ではないかと我は思っている」
ガーラントの険しい表情に、俺はあの時、ギルフォードに愛剣をへし折られた感触を思い出し、無意識に拳を握りしめた。
「それから……サイレンスで見つけた、霊峰スインウィッシュへ向けられた魔導砲の痕跡。あれが何なのか、明日セト様のところへ行って聞いてみるよ」
「ええ、それがいいでしょうね。あの御方なら、古の因縁についてもご存知かもしれません」
会議が一段落し、夕食まで各自休息を取ることになった。
だが、エイルが「城の中を探検したい」と言い出したので、俺が付き添うことにしたのだが――。
「この城壁システム、どうなってんのさ! この魔導バリスタの自動追尾回路……アタイの工房でも思いつかなかったよ!」
「あら、わかる? ここはね、反動を魔石の共振で相殺するように設計したのよ」
「なるほどねぇ! でもここの回路を少しバイパスすれば、もっと連射が効くんじゃないかい?」
いつの間にか母上とエイルが並んで歩き、楽しそうに技術論を戦わせている。
最強の魔道具師と、天才鍛冶師。
(……この二人が手を組んだら、わが家は空を飛ぶことも可能になるんじゃないか?)
ふと浮かんだ考えが、無意識に口から漏れていた。
二人が、驚きと笑顔で同時にこちらを振り返る。
「いいわね! それ!」
「うんうん! いいアイデアだよ!」
「今の忘れて! ちょっと! あー、二人を、誰か止めてくれー!」
俺の悲痛な叫びは、さらなる魔改造の予感に沸き立つ二人の笑い声にかき消されていった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ガーラントたちの受け入れも無事に済み、ようやく一息……と思いきや、ナバールの失言がとんでもない火種を投下してしまいました。
「空飛ぶ実家」というパワーワードに、エイルとアイリス様の職人魂が燃え上がります。
賑やかになったドラグーン王国。ナバールたちの日常は、まだまだ波乱が続きそうです。




