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コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


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エピソード78:死の都サイレンス

いつもご愛読いただきありがとうございます。


一行がたどり着いたのは、禁忌の地「死の都サイレンス」。

かつて繁栄を極めた魔導都市の成れの果てと、そこで彼らを待ち受けていたものとは……。


「高度を下げて! 回路が焼き切れる前に降ろすよ!」


 アルテオの鋭い声がブリッジに響く。

 魔導船の船体は、大気中に渦巻く異常な濃度の魔導エネルギーにさらされ、フィーン、キィーンと悲鳴のような金属音を立てていた。


 スロープから滑り出すように着陸したのは、かつて広場だったと思われる、ガラス状に溶け固まった大地の上だった。

 エンジンが停止し、静寂が訪れる。だが、その静寂こそが「死」そのものだった。



 ハッチが開くと同時に、重苦しい圧力が一行を襲う。

「……うっ、なんだ、この空気……。魔力が濃すぎて、息が詰まる……」


 エイルが胸を押さえ、膝をついた。彼女の自慢のピンク色の髪が、周囲のエネルギーに反応して微かにパチパチと放電している。

 後ろに続くドワーフの技術者たちにいたっては、顔面蒼白でその場に座り込んでしまった。


「しっかりしろ、エイル! クロード、すぐにタウロスの出力を上げろ!」


 ナバールが叫ぶ。

 クロードが迅速に操作パネルを叩くと、グラン・タウロスから淡い青色の魔導障壁が展開された。

「『中和結界』最大出力です。……ふぅ、これで結界内なら安全を確保できましたよ」



 障壁に守られ、ようやくエイルたちが荒い息を整える。

 エイルはゴーグルを直し、忌々しげに外の景色を睨んだ。

「ありがとよ、ナバール。……アタイとしたことが、不覚だ。エルフの血が流れてるとはいえ、魔法は得意じゃないんだよ……」



 障壁の外に広がる光景は、地獄というよりは「時が凍りついた墓場」だった。

 かつては壮麗な魔導都市だったのだろう。

 天を突くような塔の残骸が、飴細工のように捻じ曲がり、壁には熱線に焼かれた人々の影が黒々と焼き付いている。

 周囲の木々は葉の一枚にいたるまで透き通った結晶へと変じ、不気味な光を放っていた。


「千年以上前に一瞬で滅んだ、か。兵器か、あるいは禁忌の実験の暴発か……。どちらにせよ、まともな感性を持っていれば、数分で精神が焼き切れてしまいますな」


 オーウェンが平然とした足取りで、結界の外へと踏み出す。

「僕も行くよ。魔導に関しては僕が誰よりも適任でしょ?」


 アルテオもまた、飄々とした態度で後に続いた。

 この異常な魔導環境において、達人級の「気」を操るオーウェンと、魔導の天才であるアルテオだけは、呼吸するようにエネルギーを受け流していた。



 二人は周囲の探索を始める。

 瓦礫の陰から、半透明のレイス(亡霊)がゆらりと姿を現した。だが、彼らは襲ってくる様子はない。

 ただ、かつての日常をなぞるように、頭のないまま虚空を見つめ、あるいは動かない魔導具を操作する仕草を繰り返しては消えていく。


「害意はないようだけど……。この濃密な魔力が、残留思念を無理やりこの世に繋ぎ止めているんだろうね。まさに死の都だ」



 アルテオが壊れた噴水に触れる。

 水はトロトロとした銀色の水銀のように淀み、生命の拒絶を物語っていた。


 千年以上も前にその役目を終えた街灯がいまだにチカチカと栄華を照らそうとしている。

 また、とうに聞く相手もいなくなったスピーカーが「……避難……してください……」などと途切れ途切れに話しかけている。



 一回りして戻って来たアルテオとオーウェン。


「アルテオ、応急修理の目処は?」

 ナバールがタウロスの陰から声をかける。


「エイルたちの体調を考えると、ここには長居できないね。食料と精神的な限界をみて、三日が限度だね。最低限、空に浮かべるようになれば、一気にドラグーン王国まで飛ばして、そこで本格的な休息をとろう」


「……三日か。分かった。俺も周囲の警戒に――」



 ナバールが結界から一歩踏み出したその時だった。

 タウロスから「人型の生物反応複数接近」のアナウンスが流れる。


 背後の瓦礫の山から、これまでのレイスとは明らかに違う、鋭く、研ぎ澄まされた「殺意」が放たれた。


「――何者だ!」


 低く、地を這うような声。

 同時に、ナバールの足元にザン! っと一本の黒い槍が突き刺さる。

 それは、魔導エネルギーを凝縮して作られた、実体を持つ魔法武器だった。



 瓦礫の陰から姿を現したのは、ボロボロの外套を纏った影。

 フードの隙間から覗くその瞳は、人族のようだが、禍々しい魔族の光を宿していた。

 他にも、その肌には竜人の鱗が混じっている者や、耳がエルフのように尖っている者たちがいた。


「……生きている者が、この聖域を汚すか。ガーラの刺客か、それとも迷い込んだ愚か者か」


 ナバールは身構え、その「混血の魔族」を真っ向から見据えながらも、違和感、いや何か自分も抱いていた思いを感じていた。


「俺たちは、旅の者だ。争うつもりはない!」


「黙れ。この地で生きる我らにとって、外の者はすべて敵だ……!」


 静寂の都に、初めて生きた者の火花が散ろうとしていた。


最後までお読みいただきありがとうございました。


突如として現れた「混血」の影。

ナバールが感じた既視感の正体とは一体何なのか。

そして、彼らとの接触が物語に何をもたらすのか……。

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