エピソード98:覚悟の刃、不滅の壁
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激突するナバールとギルフォード。
因縁の二人がついに剣を交えます。
王としての覚悟を胸に、圧倒的な成長を見せるナバールの刃。
しかし、追い詰められた策士の笑みの裏には、最悪の結末が隠されていました。
クレーターの底で、ギルフォードは血に塗れながら不気味に笑った。
背中の翼は無残に引きちぎられ、ドワーフたちの爆撃によってその身体は満身創痍。
かつての気高さなど、もうどこにもない。
「……くく、あははは! ほう、これがドラグーンの新王ですか。
これほど大きなダメージを負い、翼すら失った私を、上空からの不意打ちの挙句に斬るのですか?
正々堂々、剣を交えることもなく?」
ギルフォードはわざとらしく肩をすくめ、歪んだ挑発を俺に投げかけてくる。
「みっともないですな。やはり、人の血が混ざった愚かな半純血は無粋極まりない。
正義を騙る割には、複数で寄ってたかって一人の老兵を追い詰めるとは、随分と卑怯な英雄譚もあったものです」
かつて我が国を滅ぼしかけた宿敵の言葉。
確かに、古い騎士道の美談や英雄譚の舞台なら、今の俺は「卑怯者」と謗られるのかもしれない。
悪は罠や裏切りなどの姑息な手段を使うのが当たり前で、それを正義が正々堂々と打ち破るからこそ美談になるのだから。
だが、俺の心は一ミリも揺らがなかった。
「……お前の言う通り、俺は英雄でもなければ、高潔な騎士でもない。
ただの不器用な男だ。そして――これは戦争だ」
俺はただ、目の前の悪を、この国を脅かす脅威をここで終わらせる。
その揺るぎない覚悟だけが胸の奥で静かに燃えていた。
構えた剣、そして俺の全身から、黄金のオーラが爆発的に吹き荒れる。
「いくぞ、ギルフォード」
音を置き去りにする速度で踏み込み、一気に斬りかかった。
ギルフォードは咄嗟に指揮棒を抜き放ち、狂ったような魔力障壁を展開して俺の一撃を弾き返す。
「ちっ、口車には乗ってはくれないようですね……!」
言葉の応酬は終わり、鉄と魔力の衝突音が戦場に響き渡る。
数合、十数合と火花を散らして切り合う中で、明確な力の差を肌で感じていた。
ギルフォードがどれほど深手を負っているとはいえ、俺の剣筋は以前とは比べ物にならないほど鋭く、重い。
奴の目に見る見ると驚愕の色が広がっていくのが分かった。
「舐めるなよ、小倅がァァッ!」
ギルフォードが叫び、魔力を爆発させる。
かつて俺を絶望の淵に叩き落とした、虚空から数十本もの魔力の剣を作り出す魔法。
それらが一斉に俺へと牙を剥いた。
だが、今の俺には全てが見えていた。
それだけじゃない。
手に握る、エイルが魂を込めて打ってくれた新王の剣が、まるで俺の意志に呼応するように歓喜の声を上げて震えている。
「そんなものは、もう通じない!」
一歩も退かず、神速の剣閃で迫り来る魔剣をあっという間にすべて叩き落とした。
ギルフォードは歯噛みし、今度は空間を埋め尽くすほどの数十本の魔槍を現出させ、一斉に放ってくる。
しかし、今の俺は叩き落とすだけでは終わらない。
流れるような剣捌きですべての軌道を反らし、逆にギルフォード自身に向けて弾き返した。
「なっ……、ごはっ!?」
自らの魔法に切り刻まれ、ギルフォードが後退する。
追い詰められた策士の顔から、完全に余裕が消え失せていた。
「これならどうですッ!!」
ギルフォードが狂乱気味に放ったのは、かつてエルフの砦を一瞬で吹き飛ばした、最大級の破壊の魔力弾だ。
凝縮された絶望の光が俺を呑み込もうと迫る。
俺はただ、深く息を吸い、剣を真っ直ぐに振り上げた。
王のオーラが、眩い黄金の光となって刃に集束していく。
「これで、終わりにする!」
黄金の光刃が空間ごと魔力弾を両断し、一刀の下に切り裂いた。
直撃の余波でギルフォードの指揮棒が粉々に砕け散り、奴は無様に尻餅をつく。
死の恐怖が、その老いた顔を支配していた――はずだった。
「……く、くく。素晴らしい。ですが、私の役割はここまでです」
血を吐きながら、ギルフォードの口元が不気味に吊り上がる。
その目は決して諦めてなどいなかった。
奴は初めから、俺のこの一撃を誘っていたのだ。
「――さあ、目覚めの時間ですよ。ヴェルガー様、いや、偉大なる我が主よ……!」
奴が天に向けてそう叫んだ、次の瞬間。
俺が放ったトドメの黄金の斬撃「ドラゴンスラッシュ」がギルフォードの首へと迫る直前、戦場全体の空気が一瞬で凍りつくような、圧倒的なプレッシャーが吹き荒れた。
ドンッ!!
俺の魂を込めた斬撃が、漆黒の巨大な爪によって、いとも容易く受け止められていた。
そこに立っていたのは、禍々しい漆黒のオーラを全身から噴き出す、竜人化――いや、もはや魔神化と呼ぶべき恐るべき姿を遂げた、真の宿敵。
だが、その姿はどこか異様だった。
かつての傲慢なまでの王の威厳はなく、その瞳は混沌に濁り、激しい苦悶に歪んでいる。
「……ア……、オレ……、ウ……、オ……」
ヴェルガーの口から漏れたのは、言葉にすらならない、獣のような呻き声だった。
完全に何かの意思に心を侵食され、理性を忘却しつつある男の、それはまるで魂の悲鳴のようでもあった。
ゾク、と背筋に冷たいものが走る。
この手で「止めなければならない」と誓った男が、今、最悪の化け物として俺の前に立ちはだかっていた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「これは戦争だ」と言い切るナバールの覚悟、本当にシビれましたね!
ギルフォードを圧倒するほど強くなった新王の姿にスカッとしたのも束の間、
ラストに現れたヴェルガーの異様な姿に、一気に戦慄が走りました。
理性を失いつつあるかつての王を前に、ナバールはどう立ち向かうのか。
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