エピソード96:千年の因縁、蒼穹の決戦
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エタンの地に、かつてない規模の連合軍が集結します。
四方を囲まれた魔王軍、そして余裕を崩さないギルフォード。
戦場が熱を帯びる中、空を駆ける一筋の影が物語を千年前の因縁へと導きます。
「ほう、まさか『サイレンス』のような魔導砲まで作り上げているとは」
ギルフォードは、空に消えた光の残滓を眺め、驚きを口にしながらも余裕の笑みを浮かべていた。
「しかしながら、強化された化け物……いえ、魔族たちは止められるでしょうか?」
彼が指揮棒を振ると、理性を失い怪物と化した魔族の群れが、一斉にエタンへ向けて南進を開始した。
だが、その進軍を遮るように、突如として魔法攻撃の雨が降り注ぐ。
東側の獣王国方面から、二十数台の魔導車が土煙を上げて駆け込んできた。
車上に陣取ったエタンの魔導士部隊による砲撃だ。
さらに魔導車からは、ボナヴィスタ率いる獣王国の遊撃部隊をはじめ、歴戦の傭兵団が次々と飛び降りる。
「ガハハ! 戦士であるからには、戦に出んでどうする! 息子よ、遅れるでないぞ!」
「父上! 少しは自重してくださいと言っているでしょう!」
サイリーン王子の制止も聞かず、ボナヴィスタは豪快に先陣を切った。
「ふむ、これらはもはや理性すらなし。
武人として手を合わせたかったものだが……不器用な相手に用はないのう」
ボナヴィスタはどこか懐かしい響きのある溜息をつきながらも、襲いかかる怪物たちを紙切れのように切り伏せていく。
西側のドラグーン側からは、騎士団に加え、サリバンとビオラ率いる魔導部隊が展開。
魔族たちがドラグーン領内へ逃げ込まぬよう、鉄壁の防壁を築いていた。
そして北側。
退路を断つように現れたのは、エイシェンツリーから駆けつけたアストリア王たち連合軍。
その最前線には、愛する者を守るために剣を抜いた最強の将軍、オーウェンが立っていた。
最後に南、エタン城。
正面から魔王軍を迎え撃つのは、アルテオ、ナバール、エイル、ガーランドたち連合軍の主力。
上空では、魔導船『アヴァニール』が、魔王軍の前線に向けて高高度からの空撃を開始していた。
「ふう、いつの間にこんなものを……。
これでは私の魔導士としての出番がなくなりますね」
苦笑いしながら呟くクリスだったが、その指示は的確だった。
イーデルとボネットが作り上げた対空自走砲と対地上戦車。
その性能を熟知した彼は、自身が呪文を唱えるよりも早く、鉄の塊たちを自在に操って包囲網を破ろうとする敵を無慈悲に蹴散らしていく。
ガーランドたちは、クロードが放つ眠りや麻痺、幻影の魔法で動きを封じられた敵を、呼吸を合わせるように次々と片付けていく。
アルテオは戦場全体を俯瞰し、一糸乱れぬ指揮で各部隊を連動させていた。
ナバールは敵を切り伏せながら、この惨劇の指揮者であるギルフォードを探し求めていた。
その時、戦場の中央にいたギルフォードが、不快そうに上空を見上げた。
「ふむ、あれは少々厄介ですね。今のうちに落としておきましょうか」
ギルフォードの背から漆黒の翼が突き出され、彼は重力を無視して天高くへと舞い上がった。
「そこにいますね……ナバール王の大切な妃が。
ああ、素晴らしい。再会を待ちわびる王の足元へ、その美しい亡骸をお届けして差し上げる。
それこそが、私なりの最大限の祝辞ですよ」
不敵な笑みを漏らしながら、ギルフォードは流星のような速度で魔導船へと肉薄していく。
――だが、その行く手を阻むように、眩いばかりの光が空を裂いた。
「……おや。その眼光、その気配。覚えがありますね」
ギルフォードが空中で急制動をかけ、忌々しげに目を細める。
「千年前、偉大なるオルディオス様に楯突いた、古臭い竜とお見受けする」
魔導船の甲板から、千年の時を超えて響くような、静かだが圧倒的な威厳を纏った声が返ってきた。
「相変わらず、薄汚い羽を羽ばたかせているな。
千年前、主の影に隠れて逃げ回っていた鼠が……」
そこに立っていたのは、古の守護竜、セト。
「あの戦いの代償か、随分と力は衰えたようですが。
……我らが主の復活を邪魔するのであれば、ここで死んでいただく他ありませんね」
不敵な笑みを消したギルフォードが、呪うような殺気を放つ。
対するセトも、鋭い眼光でかつての宿敵を射抜いた。
「衰えたとはいえ、お前のような羽虫を叩き落とすには十分だ。
……今日こそ、そのしぶとい命を刈り取ってやろう」
空を駆ける魔族の策士と、船を守護する伝説の竜。
千年前の続きが、今、遥か高空で幕を開ける。
最後までお読みいただきありがとうございました。
クリスをも驚かせたジジイたちのメカ兵器、そしてついに相まみえたセトとギルフォード。
丁寧な言葉の裏で、ナバールの愛する人を標的にしようとするギルフォードの執念には背筋が凍ります。
果たしてセトは、かつての宿敵を討つことができるのか。
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