12話 不良男子と女子転校生
翌日、朝から俺へ強制……もとい校長から呼び出しを電話の方がかかってきた。
そのため校長室で2人して何も喋らず、静かに時計の音を聞いているのだが。
「結局、何の事で呼んだんだ」
「まぁ焦るな、要件自体はすぐ終わるしお前に取って悪い話じゃないはずだ」
校長先生は書類を1つ1つ目を通しながら、俺への問に答える。
悪い話じゃないって言うのが一番信用ならないんだがな。
こいつの呼び出し自体は去年から良くあることなので別に気にもしていない。親しい、というよりは別々な利益の元で関わる機会が多かったからだ。まぁ主に俺が起こす暴力事件が原因なのだが。
「この前の事件については何も弁明もしないし、それに正当防衛で通るだろ。それにこっちにも今後の事も考えればそろそろ、話があった」
そういう俺に対して校長は手を上げ制してくる。
「そうだな。役者が揃うまでに別な話をするか」
別な話?
そう疑問に思っていると、校長は手招きでこちらに寄るように促した。
大きい声で言えないことって事は性別変わるとかの関係がある話か。
「まずテストだが、お前はテストを2回受けてもらう。知ってるだろうが、お前は体が1つだが個別に入学しているせいもあって不公平にならないようにしないと行けない。言いたいことは分かる、問題を別に作らせているからそこはお前が大変なだけだ。午前中の内に全科目受ける訳には行かないため、夏休みに入る前には終わらせるようにする……まぁ赤点をどちらか取らなければな」
「あ、あぁ……ただそれだけならメールで、しかも呼び出すほどじゃないだろ。義務はあるかもしれないがそんな構えるほどじゃない」
「私だってそんなどうでもいい事1つでお前に時間を裂きたくない。問題はもう1つの方で、近々修学旅行があるのは知ってるな?」
どうでもいいことなのか、直前でもう1回テスト受けろなんて言われたらたまったものじゃないが。それはそれとして、修学旅行か……後1ヶ月先の筈だがなんだってそんな話を?
修学旅行、修学旅行……あ、そうか。
そういえば3泊4日だから午前午後で性別が変わる俺に取っては参加できる訳がないし、俺はお留守番ということか。別に俺には関係が薄いと思うが。
「それなんだが、学園側でも意見が割れてな……お前の素行が悪すぎてクラスの職員が居ない時に問題を起こされると困る。という意見があってな、是が否でも修学旅行へ連れて行って生徒でもいいので監視を付けろとうるさいのだ」
「なっ!?」
「それなら自宅謹慎でもいいだろうと思うが、今度は転校生として来たお前の存在がまた邪魔なのだ。転校生でしかも学校に通っていない子を、午後しか行動出来ないのに修学旅行だけでも思い出を作らせる優しさはないのか!?という意味不明な意見も含めて女性職員も同意してしまい。どうにか参加させることが出来ないか問われてしまったのだ」
長々と喋る校長に疲れないのか?と思いつつ。
そういえばその話について俺も話があったんだった。
「そういや、職員にも話をするって話はどこに消えたんだ?」
「もちろん言ったさ、しかしな。今のお前とあっちの実物、見比べて納得できるやつが何人いると思う?」
一つ溜めて大きく深呼吸をした。次に校長は口々にクラスや職員の印象の言葉を並べ始める。
……素行が悪くて喧嘩腰、午前しか授業を受けないしまともに聞きもしない。友達いない。最近はしてないが騒動を起こすわ警察の厄介になるわ、ボコボコにするし苦情は増える一方だ。
逆に彼女単体で見てみろ、勉学の為に午後登校でしか学校に来られず小中の経歴無し。なのにクラスの印象は良い、他のクラスとの交流してるじゃないか、勉強も不足してるように見えないし。この前の騒動も相まって評判が上昇してるぞ。
心臓まで含めてボコッボコである。
おい待て友達居ないは関係無くないか!去年に色々やらかしたし、グレていたとはいえそこまで酷い事したつもりも無いぞ。警察の厄介になったといっても、事情説明したら無実だって分かってもらえたし。
「そもそも……」
コンコン
「入っていいぞ」
俺が反論を言う直前に入口の扉から控えめなノックの音がし、それを聞いた校長はすぐに入室の許可を出した。
話を聞けよ……。
心の中で悪態を付きつつ、誰が聞いてるか分からない状況で迂闊に俺の現状を喋るわけにはいかない。溜息を吐いて扉を開けた主の方を向くと。
「失礼します……校長先生どのような要件でしょうか」
「失礼します。あ、高橋……君おはよう」
入ってきた人物は、美河さんとかなめ。
何故この2人が?と校長の方へ顔を向けると、悪い笑みを浮かべて手招きをした。
2人が俺の横に並ぶと校長は俺の方へ視線を向け、次に2人を見た。1つうなずくと今回の本題である話を始めた。
「お前らを呼んだのは、これからの事だが。この前佐藤叶愛、君が襲われた事で教育委員会も対応を求めてきた。しかし、どうもきな臭くてな。そこで1人困った時に助けてくれる奴を紹介しようと思ったんだ」
校長はそう言って俺を指差した。
「はぁ?」
間抜けにもそんな声を出す。2人の方を見ても俺がその人だということに驚いているのか、1歩後ずさっている。
まぁそりゃそうだろうな。普通に面識は無いし、隣の席で俺が見てるくらいしか接点も無い。加えて言うなら俺は素行が悪い不良らしいからな。
呆れるように両手を上げて溜息を吐きながらわざとらしく校長に講義する。
「なんで俺なんだ、他にも正義感強い馬鹿みたいな奴いるだろ。こいつらとの接点もほぼ無い、加えればこんな不良に誰が助けを求めるんだ?」
「うるさいぞ女々男」
あ?と返しても怯むわけも無く、校長は2人の方へ笑顔で根拠を説明した。
「知らないと思うが、こいつは高橋愛菜の従兄妹だ。馬鹿みたいに捻くれてるが、根は良いやつだと両親や本人も口に出していたぞ。それに腕っぷしも姑息な所も良い点ばかりだ」
「ちょっと待て、そんな事……」
「言っちゃって良いのか?」
ぐっ。事情を知られるわけには行かず、唇を噛んでごもる。
最初から説明しなかったのはこれの為か!くそっはめられた。
2人は驚きで声を出せていないみたいだ。
本当に面倒ごとに関わると余計な事しか増えねぇ。
すると校長は俺の方をじっと見てきて真剣な顔で声を出す。
「お前の体質、それを治すにも結局は必要な事だ。それに、この先バレ無いという根拠がどこにある。むしろ、この先だれか1人でも気の許せる相手がいないとどうなる。その嘘を隠し通すのか?それは真実を知ったお前もそいつも同じ苦痛を受けることになるんだ。バレてしまって笑って許せる関係ならいい、それ以上になってしまえば取り返しのつかない事になるんだぞ」
「ちっ」
その言葉に俺は舌打ちをして校長から視線を外す。そのまま俺は扉の方へ2人を見ずに歩き始める。
「助けて欲しかったら言え、その時は気分次第で助けてやる」
俺は校長室から出ていった。
知ってるさ、何度も何度も父親に言われた。
近すぎれば嘘は隠し通せなくなってくるし、会う時間も過ごす時間も楽しくなってきてしまう。そしてその内誰かの事を好きなったとする、それを果たして言えるだろうか?
関係が崩れる、友達が友達で無くなる。分かっていてもその人が周りに言いふらすかもしれない、周りはそれを知って気持ち悪がられるかもしれない。不安に不安が重なって結局自分は何も出来なくなって行くのだと。




