あの庭師め……
「ゆみ子ちゃん……?」
どれくらいそうしていたのだろうか。気がつくと部屋は暗くなっており、いつの間にかサティさんがドアの開けて立っていた。
「電気もつけないでどうしたんだい?」
「あ……、いえ、なにもないです! 」
「そうかい? そういえばルミアスを見なかったかい?」
「ルミアスさんですか?」
「うん、さっきから見かけないんだよね」
(ルミアスさんがいなくなった? もしかしてさっき急に元気がなくなったのと関係があるのかな?)
「ゆみ子ちゃんのところにいるかと思って来てみたんだけど、いないみたいだね。晩ごはんもまだのようだし、ユリアンに運ばせるよ」
私はコクリと頷くとベッドまで行き腰掛けた。するとサティさんが目の前に来て、私と目線を合わせて中腰にかがんだ。
「やっぱり、なにかあったのかい? 」
何かあったはずなのに私にはそれがわからない。わからないから首を横にふるしかない。
「そうか。なにかあったら気軽に話しかけにおいで」
サティさんはそう言うと癖のように私の頭をポンポンとして部屋を出て行った。
少しするとドアをノックする音がし、ユリアンさんが入ってきた。
「お嬢様、夕食をお持ちしました」
サティさんに何か聞いているのかいないのかわからないが、何も余計なことを聞いてこない。ユリアンさんが食事をテーブルに並べだしたので、私もベッドから椅子に腰掛けることにした。イスをひき並べられる食事を眺めて、ふとルミアスさんを思い出す。いつも並べてくれるのはルミアスさんだったのに。今日はいつも一緒に食べてくれるサティさんもいない。気を遣ってくれたのかもしれない。
「ユリアンさん、一緒に食べませんか? 」
ユリアンさんは何も言わず、向かいの席に座ってくれた。
「お食事はいただけませんが、お話なら聞きますよ」
まぁ、お嬢様が話したくなったら、の話ですが。と付け加える。
「ありがとうございます」
ユリアンさんの優しさが胸にしみる。なにが起こったのかわからないけど、胸のモヤモヤが消えない。これを話してみようか。
「ユリアンさん、ルミアスさんは見つかりましたか? 」
「ルミアスさんですか? 見つかりましたよ。温室にいたみたいです」
「温室ですか……」
(今日行ったところかな? )
「ルミアスさんと何かありましたか? 」
「え!? 」
何かあったように見えるのかなと思いながらも、ユリアンさんの話を聞き出してみる。
「何かって? 」
「いえ、なにかあると思ってるわけではないんです。ただ、今日ルミアスさんとお嬢様は一緒に過ごされたはずです。それなのにルミアスさんの元気がない。これはおかしいです」
(おかしいのかな……)
頭はクエスチョンマークだらけだ。
「何かあったというか、ルミアスさんの元気がなくなったのは温室からの帰りに庭師さんとお話しをしてからです」
「庭師……?」
ユリアンさんは眉をひそめている。
「はい。帽子をかぶった庭師さんです。その方と何か話されたあとに、元気がなくなったみたいで」
「あの庭師め……」
ユリアンさんがぼそりと呟く。
「わかりました。情報ありがとうございます。これから私は庭師のところへ行って参りますのでごゆっくり夕食を食べてらしてください」
そう言うとユリアンさんは足早に部屋を出て行った。
(ユリアンさんはカメルさんのことが好きだと思っていたけどもしかしてルミアスさんのほうだったのかな……?)
ふと胸が苦しくなる。
そうしてふと先生のことを思い出した。こんなに苦しくなったのは先生のとき以来だ。先生は今なにをしているだろうか。元気にしているだろうか。
夕食を食べる手が止まってしまった。急に眠気がきてしまい、いてもたってもいられない。今にも倒れてしまいそうなほど眠い。
急いでベッドに向かい、横たわる。そのまま意識を飛ばしてしまった。




