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追われる者




控室を飛び出し屋敷を逃げ回って合流した仲間と外へ。

これで捕まることはない。しかし暗殺に失敗したので処刑される恐れもある。

あまりに親切な監視役の仲間。まさかもう命令が下ったか?

急いでリナを連れ逃げ出したいが知らせる術がない。


「ははは…… あんた仲間なんだよね? 」

もうここまで来れば一安心。無理して逃げる必要もない。

騒ぎもなければ追手の気配もない。もう安全なのになぜこいつはまだついて来る?

まるで私らを観察するかのように。監視役とは言えもう充分だろう?

「信じろ。悪いようにはしない。さあ早く! こっちだ! 」

逃走を手伝ってくれた仲間で恩人。だがどこまで信用していいものか。

「だから味方? 仲間だよな? お願いだからきちんと答えてくれ! 」

「おいおい騒ぐなって。いくら逃げ切ったと言っても一時的。

もっと安全な場所に。人の来ないような…… うんあそこがいいだろう」

煌びやかな世界から現実世界に戻される真っ暗な闇。

ここが本当の世界。私らみたいなアウトローにはお似合いの場所。


「おい聞いてるのか? 仲間なんだろう? 」

どうしても信じられなくて強く当たる。

「仲間でライバルで…… もちろん敵だ! 」

そう言うとナイフを手に襲い掛かって来る。

もはや躊躇も情けもない。処刑人へと急変。

まさか処刑する為に連れ出すとは…… これなら大人しく捕まってるんだった。

タイミングよくハッチ王子が来るから逃げてしまった。


「やめろ! 仲間じゃないか! 」

どうにか説得するがもはや聞いてない。ただ獲物を求めて最後まで。

それが人間。本能で襲おうとする。

「嫌だ! 王子を暗殺して金持ちに…… 」

「往生際の悪い奴だな。お前が失敗したら相棒はどうなると思う? 」

「まさかリナまで……  」

「動揺するなって。まだ何もしてない。お前を処刑してからだ」

そう言うと躊躇うことなく胸に突き刺さる鋭い何か。

痛いとはさほど感じない。ただ凄く暖かい。どうしたんだろう? まるで夏の様。

祝福を受けてるかのよう。それは誰もがそうであるようにたどる道。


「悪いな。これも命令だからな。お前に恨みはない。だがケジメって奴だろうさ」

「ううう…… お願い…… 」

これ以上はもう言葉にならない。急激に寒気が襲って来る。

それなのに息は苦しい。眠気みたいのまで。もう目を開けているだけで精一杯。

「悪いな。命乞いは聞くなと言われてる。それほど非情にならないと務まらない」

自分の正当性をアピール。やはりこいつも怖いのだろう。

罪悪感に苛まれるのを恐れている。もう関係ないけれどそれでも……


「あの…… うげ! 」

止めの一発。情け容赦がない。清々しいほどだ。

「いい旅立ちを。寂しくないようにすぐに仲間を送ってやるからな。待ってろよ。

へへへ…… いい奴だろう? 」

結局のところ皆狂っている。初めからそうだった者に途中で狂った者。

でも実際に多いのはもっと後。あるいは気づかずにそのまま旅立つことに。


どうであれ襲撃に失敗した者は粛清される。この事実は変わらない。

多くの暗殺者は自分が自分がと我先に進むからその分脱落も早い。

これは仕方ないこと。とは言え最後を選んだ方が最終的にはよいのかもしれない。

それが仮にいくら分かっていても選択できやしない。

王子暗殺した者のみが莫大な金を獲得できる仕組み。

ゆっくり待つなど誰もできるはずがない。我先にと仕掛ける。

こうして自称市長の娘は瀕死の重傷を負う。



「ちょっと放して! お姉様が待っているんです」

「もう演技はいい。トルドたちにもバレバレだ。ほらついてこい! 」

「ごめんなさい…… もうお金はいりません。だから…… 」

「おいおいそんな情けないこと言うなよ。さあ帰ろう。待ってるからよ」

自分の運命が分かってるのでうんとは言わない女。


「やめて! 来ないで誰か! 」

助けを求める。散々人を傷つけておいて今更助かろうとする愚か者。

それが暗殺者の運命。金で釣られてそれこそ僅かな招待状を奪い合った勝者。

何人犠牲にしてその血塗られた招待状を手に入れたのか?

最初の心構えはどうしたのだろう? 情けない。あまりにも情けない。

それが訓練を受けた本物の暗殺者なのか?


「本当に悪いな。お前に恨みはない。しかし作戦に失敗した責任を取ってもらう。

それが掟だっただろう? 忘れたとは言わせない」

これ以上の騒ぎは起こせない。急いで処分しなければならない。

「それはそうだけど…… 私はミスをしてない。何もしてないよ」

往生際の悪い女の言い訳は長引くばかり。これでは埒が明かない。困ったもの。


「寝言を言うな! お前は失敗してないかもしれないが相棒はミスしたのさ」

「まさかそんな。聞いてない。まさか失敗したの? 」

何となくだけど気付いていた。でも成功したと疑ってない。

そうしないとやってられない。やる気が出ないのだ。

「そうだ。お前の相棒があのトルドの爺さんを暗殺し損ねた。

そのケジメって奴だ。可哀想だがこれは紛れもない事実だから仕方ない。

さあもう大人しくしてくれ。分かってるとは思うが逃げられない。

鉄の掟があるのをお前だって理解してるんだろう? もう無理をするな」

こうして偽市長の娘は暗殺失敗のミスの責任を取ることに。


               続く

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