ラーリットの暗殺者たち
ドローとリナ。
リナとは生まれた時から一緒だった。だから自然に仲良くなった。
現在姉妹を演じてるが当然本当の姉妹ではない。
生まれはラクエラにある教会近くの孤児院。
別にそこ出身だからってどうとかじゃなくとにかく貧しかった。
ここにいる者は親に捨てられたか最初から知らないか。
そこから這い上がって幸せな未来を掴むことは難しい。
不可能じゃないがほとんどの奴は荒んで行き不幸な結末を迎える。
それこそ大きくなる前にその生涯を終えるのがほとんど。
地道に貧しい生活を続ければ多少の光は見いだせるんだろうが我慢がないから。
教えられてない。堪えようなどとしても無駄。考えずに行動する。
そんな私たちみたいなのが幸せになるには大金を稼ぐこと。
それがラクエラでは不可能じゃない。今は我慢。慣れない我慢を強いられる。
これも金の為。莫大な報酬を得るにはそれくらいする。
金もないから食いものも服も満足にない。そこらのボロを着ていた記憶がある。
ガキの頃に二人で孤児院を脱走した。探されも追いかけられもしなかった。
手の掛かるのが二匹いなくなったぐらいにしか考えてないんだろうさ。
おっと当時の言葉遣いが出ちまう。おっといけない。
今はお嬢様。市長の娘の美人姉妹で通っている。
お父様はどうしておられるかしら?
ははは!
素ではもう笑いっぱなし。
誰がこんな小汚い市長の娘がいるかよ。
二人とも十五前後だけどずっと飢えていたからこんな風に小さいまま。
これじゃただのガキさ。王子にはお似合いかもな。
あれだけ目一杯食える環境なのにでかくならないのは食わず嫌いなんだろうよ。
王子がちびだと周りが大変だな。引き立てるのも苦労するさ。
今だってエスコートされてたがあれでは相手が可哀想だ。
お相手探しには見えない。よくて姉弟。親子だろうあれは。
ははは…… 可哀想だからどっちかが一緒になってやるか。
いやいや無理だったな。暗殺する手はずになっていたっけ。
王子暗殺はどうやらそんなに簡単じゃないらしい。
どうも奴らにもこの王子にも裏があるようだ。
そんな暗殺者の中でも私たちはまだマシらしいな。
他の奴と違って私たちはいつでも一緒にいられる。互いを心配することもない。
それだけ有利に働く。さあ王子は無視してお付きの爺を始末するか。
別に爺には何の恨みはない。それを言えば王子もだが。
しかしこれも命令だから恨むなよ。
刃物も銃も持ち込めない。ただのパーティーだって無理なのに王子主催の晩餐会。
いつも以上に警戒。ビック隊長毒殺で厳重警戒。入れないどころか捕まっちまう。
大馬鹿でない限りそんな失態を犯さない。
それでも凶器になり得るものはすべて没収。だから手ぶらで通るしかない。
リナは臆病だからそれでは不安だと嘆く。だがここには市長の娘として来てる。
問題ないさ。あるとすれば本物の市長が来ること。
まずそれはあり得ないか…… 王子来訪の前に家族で外国に行ってもらっている。
血迷って戻って来ることはないだろう。
すごいぜラーリット!
奴らの組織のこと。ラーリット。正式名称かまでは不明だが。
組織の野郎が口を滑らせた以上間違いないだろう。酔った男を相手した時に。
最低なロリコン野郎だったな。だが一番落としやすいのも奴だった。
奴らからはたまにラーリットと謎の単語が飛び交っていた。
しかしそれを結びつけるのは至難の業。
ふう…… 嫌な思い出だな本当に。
「ドロー! 」
ここではその名を出すなと言ってるのに口が滑るリナ。
「何? トイレでも行きたくなったか? 」
こいつは緊張するとすぐにトイレに行きたくなるから困る。
「違う。見つかったよ。トルドの爺さん」
目だけはいい。だから見張りを任せることもある。
私が盗んでリナが逃走路を確保。しかし三回に一回は捕まって拷問を受ける。
基本的に完璧な計画を立てられないし何度やってもリナが成長しない。
そんな時リナは楽しそう。ただ思いっきり入れられるのがそんなに嬉しいか?
惨めな体罰だぜまったく。泣き叫んで懇願してもそれでもブタ野郎共は止めない。
抵抗すれば悪化するだけ。そうリナのように大人しく受け入れるのが正しい。
「この盗人が! 二度と悪さするなよ! 」
大体いつもこんな風に罵られる。それはお前だと心の中で思っている。
そんな最低な生活から抜け出すためにあの招待状を手に入れた。
ラクエラの奴は男も女も子供も大人も似たような境遇の者。
どこからか湧いて溜まった者。
そして今は市長の娘だ。もちろん市長の娘になった覚えはない。
でもいいよな。こんな派手な服を着せて飯も腹一杯だからな。
ボロの服に戻るのが嫌になるほど。このまま市長の娘でいさせてくれたらな。
乗っ取っちまうか? ははは! それも悪くない。
「リナは大人しくここにいろ! がっつくなよ! 正体がバレる」
言い聞かせては見たものの不安は尽きない。急いで実行しないとな。
では作戦開始と行きましょうか。
きちんとしたお嬢様。市長の娘として恥ずかしくないように振る舞う。
後はトルドの爺さんが一人になったところで始末すればいい。
続く




