狙われたトルド
お部屋の移動。
ビック隊長暗殺により部屋を移動する羽目に。
お隣さんも当然変化することに。するととんでもない話が漏れ聞こえることに。
確かお隣は市長の娘たち。
情報収集とは言え壁に耳を当てて盗み聞くなどお嬢様としてあるまじき行為。
ただこれも暗殺者から王子とメグレン様を守る為。ある意味国民として当然の事。
さあ変態暗殺令嬢探偵の本領発揮と行きますか。
それにしても私を真似てビアンカまで…… 何とはしたない。
冷静に盗み聞きするところを見るとこちらまで恥ずかしくなってくる。
動きあり! どうやら喧嘩して飛び出して行ったみたい。
ここは止めなければ。ついお節介をしてしまう。
「ごきげんよう。どうされましたか? 」
先輩令嬢を装う。私だって似たような境遇ですが実際お嬢様だから。
喧嘩は仕方ないとして内容が内容だけに放っておけない。
「ほほほ…… 取り込み中なのでそれでは失礼します」
どうにか取り繕うが焦りが見える。
何と言っても盗み聞きしていたから何で揉めたかまでバッチリ。
「待ってお二人とも。今市長さんは元気? 」
とにかく落ち着かせる。その上で少しでもお話が聞けたらな。
市長多忙により娘たちが。市長に危害を加えてないか心配になる。
最低でもこれだけでも確認しておかないと。
「はい。父はラクエラには現在おりません。隣の市長と共に西の外れの友好国へ」
どことは詳しく言えないそう。これでは市長の安全が確認されたことにならない。
しかしこれ以上踏み込めばこちらの思惑まで悟られる。余計な言動は取れない。
相手はただの令嬢でも市長の娘でもない。私と同じ暗殺者。
冷静さを失えばそれだけこちらも危険。巻き込まれる恐れだってある。
監視役がいれば余計に危険。ですがトラブル回避は奴らだって歓迎してるところ。
「では舞踏会でまた。ごきげんよう」
そう言うと止めるのも構わず行ってしまった。
追うようにもう一人も無言で後にする。
冷静になったようだしこれ以上はどうすることもできない。大人しく戻ろう。
まだ舞踏会までは時間がある。新たな手掛かりについて話し合うとしますか。
「大胆! まさか市長の娘になり替わるとは…… 」
驚いた様子のビアンカ。でもそれ以上の疑問がある。
「でもおかしくない? まるで市長が来るのを知っていたみたい。
それに十組二十名に小さな女の子タイプが二人もいれば気づきそう」
と言っても地下室ではライバルとは極力避けていたからな。
でもそれでも記憶に残りそう。
結局二人を目撃できたのは初日の悲劇の時だけですが。
どうやら市長の娘のようにそれぞれ役割があるらしい。
ただの令嬢の偽物と言う訳でもなさそう。
私たちも仲のいい姉妹でお嬢様だから。
そんな風に自分に合った人物に最終的にはなり替わるのかもしれませんね。
「とにかく舞踏会では彼女たちの動きを徹底マークしますよ。
暗殺の兆候があれば全力で止める。もうそれしかありません」
ビアンカに言われるまでもなく彼女たちを初めから怪しいと睨んでいた。
市長が王子のパーティーを放って別のところに出掛けて行くなどあり得ない。
もちろん絶対ないとは言いませんがそれだって代理を小さな娘に任せるはずない。
今度の王子訪問はラクエラの未来が懸かっている。
そんな大事な時期にラクエラを離れるのも不可解。
しかも取りやめ可能な公務を理由に欠席など非常識にも程がある。
これはある程度確信が。でもそれを顔には出さなかった。
かわいらしい娘さんたちがよくやってると好意的に解釈してる。
「ねえビアン。さすがに王子の耳に入れておいた方がよくありません? 」
もう自分が分からない。王子を狙う暗殺者か暴漢から身を守る王子護衛隊なのか。
「それは確かに…… しかし何と言えばいいか? 」
ビアンカも賛成らしいがどうもはっきりしない。すぐにでも報告すればいい気も。
「あの市長の娘は真っ赤な偽物だから気をつけてと」
難しいことではない。でもビアンカの言うように証拠がない。
彼女たちが怪しいのは間違いないが決定的証拠がなければどうにもこうにも。
実行しなければただの妄想で終わる。
慎重を要する。でもここら辺で王子たちの恩を売るのも賢いやり方。
これで完全に私たちは信用されるでしょう。
「一応はお付きの者に伝えておきます。それでいいですね? 」
「よろしくない! 」
だからそのお付きの方が狙われてるんでしょう? 本人に言ってどうするの?
私がメグレン様に告白…… 報告しないと。
二人では怪しまれるので一人で行くとビアンカの単独行動。
怪しい。まだビアンカだって完全な仲間とは言えない。
我が屋敷のメイドになるまでどのような道をたどったかも分からない。
今は誰だって信じられない状況。いくら私のメイドでも……
いや違う! 私たちはどんな状況でも互いに信じあい助けあう。
何があっても疑わない。最後までやり遂げる。それがパートナー。
ビアンカを信じられなくなったらお終い。
そうしなければこの関係にまで終止符を打つことになるでしょう。
でもだからってお付きの者に直接言うのだけは控えてね。
本人だって多少の覚悟はあるでしょうがさすがにかわいそう。残酷。
ビック隊長毒殺の直後では笑い事では済まない。
屋敷の者が舞踏会が始まったことを知らせにきた。
まずは招待客が揃わらないことには始まらないそう。
こうしてビッグ隊長毒殺事件の謎を残したまま舞踏会が開催される。
続く




