舞踏会開催危機
ビック隊長毒殺の衝撃はかなりのもの。護衛隊の面々の士気にも影響が出ている。
それは王子も同様でおかしくなって笑い続ける始末。
普通は悲しみに暮れて涙が止まらないのに王子の場合は笑いが止まらない。
可哀想に。ビッグ隊長喪失は精神に相当来てるのでしょう。
「ダメです王子! これ以上はいけません。名誉の為にも俯いたままで」
お付きのお爺さんはどうにか取り繕おうと必死。
もう完全にバレてしまってるのによくやる。
震えていたのは悲しくてではなくどうにか笑わないように堪えていただけ。
王子の感情もまだ計りしれませんが苦労されているのは分かる。
誤解するのは違う。一緒に笑ってあげるのもやはり違う。
ここは落ち着くまで側で見守るのがいいでしょう。
少しだけ…… ほんの少しだけ感情を動かされたかな。
「すると王子はまだ立ち直れてないと? 」
ビアンカが確認する。
「そうだ。だからこれ以上は責めないでやってくれ」
誰も責めてない。理解したいがそう簡単なものでもないでしょう。
「それで舞踏会はどう致しますか? 」
一時間後に始まる。王子も招待客の令嬢だってまともな精神状態ではない。
延期か中止もあり得る。本来それほどのこと。
ただこのまま屈して引き下がれば王子の汚点にもなりかねない。
暗殺を防げても王子の評価が急落すればそれは由々しき事態。
国王に信任されない事態にもなりかねない。
そうなればますます国家が不安定になる。
やめるにやめれない。強行開催が濃厚。
「できるならこのまま…… 」
お付きのお爺さんは王子の安全よりも王子自身の評価を優先する考え。
それはそれで正しい判断。王子の為になるのだから。ただそこまでの覚悟はない。
王子の身に危機が迫っているのも事実。選ぶに選べない状況で困惑しているよう。
私たちにもそれが手に取るように分かる。
「よろしんですか? 王子は未だにこの状態なんですよ? 」
ビアンカは無理だと決めつける。ですがこのようなことは日常茶飯事とも言える。
ただ笑ってる王子は不気味。民の前に姿を見せるのは憚られる。
少なくても感情を抑えられるようになるまで待つべきでしょう。
開催危機。私としてもこのまま舞踏会を取りやめて明日一番で戻るべき。
それくらいの対応をしないと次は王子だってあり得る。
暗殺側から見れば舞踏会開催はありがたいのですが私たちは守る側だから。
「一時間ほど遅らせて充分に王子が回復し警備体制も整ってからと言うのは? 」
冷静なメグレン様の提案。
「しかし…… 王子は…… 招待客だって…… 」
お爺さんの方は難色を示す。守り切れる自信がないのだろう。
ここで協力を申し出たい。しかし立場があまりに微妙。
本当に協力者なのか自分でも分からなくなっている。
今回のいざこざさえも全て奴らの計画通りで手の内だとすれば中止を進言すべき。
奴らがどう出るかまったく分かってない。
「そうですね。メグレン様のおっしゃる通りですね。私どもは賛成致します」
勝手に賛成するがまだ迷ってるんですけど。本当に困ったビアンカお姉様。
「そうかい。だったら協力して欲しいなお嬢さんたち」
メグレン様は握手を要求する。
ビアンカお姉様が遠慮がちなものだから私が代わりに。
「はい。メグレン様! あなた様の為にこのマリオネッタが存在するのです! 」
まずい。勢いでおかしなことを言ってしまう。
もう恥ずかしくて顔がどんどん赤くなっていく。
「ははは…… 面白い子だ。でもできれば王子を見守って欲しいな」
メグレン様が困惑気味。もうそうすると恥ずかしくて恥ずかしくて。
手を掴んだものだから振りほどきそうになる。
「素敵なお嬢さんだ。さあ手を取って進もう」
キザったらしいことを言って手のひらに誓いのキスをする。
うわ…… 女ったらし野郎。でもメグレン様がやるとどうしてか許せる。
持って生まれた才能とでも言うのでしょうね。ああもう本当に素敵。
マントやマスクでは隠し切れない高貴なオーラを体全体から感じる。
ますます虜になる。ああメグレン様と一緒になれたらな。
「大丈夫ですよメグレン様。絶対にハッチ王子をこの手でお守りします! 」
「うん。でも決して無理しないでくれ。そこまでは求めてないからね」
気遣うメグレン様。その間も笑い続ける王子。これは相当重症でしょう。
「では君たちから一時間遅れで舞踏会が開催されると伝えておいてくれ」
メグレン様はそう言うと王子を伴って部屋の外へ。
どうやらまだ本調子ではない王子。大丈夫かな?
「そうだ。ビッグ隊長が漏らした王子の秘密とは? 」
王子は退場。代わりにお付きの爺さんに尋ねる。
もう私たちは仲間。隠しごとは一切なしにしてもらわないと。
「秘密…… それをお前たちごときに言うと思うのか?
協力を要請したがそれ以上は求めてないぞ。
王子の秘密に迫ろうとするのはどう言うつもりだ? 」
まずい。勢いで教えてくれると思ったのに。これでは逆に不信感を募らせるだけ。
「はあ…… しかし協力すると言うことはそう言うことですよ」
ビアンカも譲らない。頑なに隠すのはなぜか? 秘密とは結局のところ何?
こうしてモヤモヤを残し舞踏会へ。
続く




